PBL in LDS(11)

 三つめのテーマは、イギリスと日本の事故テータの比較解析である。同じ左側通行右ハンドルの国での相違という点もあるし、日本では稀なラウンドアバウトがイギリスでは主流という点が興味深い。

 担当チームもラウンドアバウトに焦点を当て、計画段階からラウンドアバウトについて調べることが重要としていた。その時点での指摘は、事故発生個所も調べ、交差点での事故率が日英で違うならラウンドアバウトが浮かび上がるというものだった。

 そして調査した結果、日英の交差点での事故率に大きな違いがあった。そのため、ラウンドアバウトがキーになるという仮説を立てた。ラウンドアバウトのメリットの一つに、交差点付近の渋滞が減るということがある。実は、渋滞時は追突事故等の事故が発生しやすくなる。つまり、ラウンドアバウトによって渋滞が減り、そのために事故が減るのかも知れない。

 日本にもラウンドアバウトはあるものの、その地点での事故が減ったとは言い難いようだ。大きな交通システムは、利用者とのコンセンサスが重要で常識化しなければ効果は出ない。

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2019年8月14日 (水)

PBL in LDS(10)

 二つ目のテーマは、簡易ドライビングシミュレータを用いたドライバ特性の解析である。ラフバラー大学での協力者と参加学生とのデータの比較解析を行うものだ。

 ラフバラー駅から大学までバスに乗って来た学生達は、そのバスの運転が日本のバスより荒い運転だったことが印象的だったようだ。日英ドライバの運転特性の差は、ステアリング操作の滑らかさにあると仮定して解析を進めたようだ。

 実際、日英のドライバのステアリングエントロピーを比較すると、日本のドライバーの方が滑らかだった。N数が少なく一般性を語るのは難しいものの、普段運転していても日英の違いを結構感じるので、担当チームの仮説は詳しく検証する価値は十分あると思われる。イギリスからフランスへドライブしたとき、フランスの方が運転が穏やかで、イギリスに戻ると周囲の運転が荒く感じることや、カットイン等が強引なことを考えると、納得してしまうのである。

 イギリスにも安全確認の停止線はあるものの、停止線で完全に止まってしまう車両はおらず、徐行で安全を確認している。こういうこともステアリング操作に影響するのだろうか。

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2019年8月13日 (火)

PBL in LDS(9)

 PBL5日目は、LDSでの作業が終わり、各チームから結果を発表する最終デザインレビューである。テーマの難易度というより、どうしても時間のかかるテーマもあり、出来映えは様々だった。

 一つ目のテーマは、TSRCが所有するドライバの走行データを構造方程式で解析するというものだった。TSRCのデータは、カーナビの有り無しの走行データである。

 この走行データは、GPSの時系列データと加速度、及びドライバの挙動や顔を映したビデオデータである。そのため、われわれが通常行っているCANデータを解析する手法は使えない。走行コースとビデオデータからドライバの目線を観測して、どういう状況でディストラクションが起きるかどうかを検討するしかなかったようだ。データの管理が厳しく、朝9時から夕方5時までしかデータが使えず、担当チームは時間切れ感があった。構造方程式は変数間の関係をパスを用いて現し、潜在変数をうまく見つけることが重要となる。チームは因子として、意識と無意識を設定したところまでは面白いものの、モデルの計算まではできなかったようだ。

 こちらの教授は短い期間でよくやったと評価してくれたものの、ディストラクションの定義等に再考が必要とコメントしていた。カーナビの有り無しの違いで、カーナビを見る状況とディストラクションの関係を明確化する必要があるからである。

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2019年8月12日 (月)

PBL in LDS(8)

 四つ目のプレゼンは、TSRCのリーダーでもあるPBLの受入教授からだ。教授は交通安全の人的要因の研究が長く、最近は衝突安全から予防安全、自動運転へと研究をシフトさせている。

 プレゼン内容は、自動運転の信頼性である。信頼は、相手が確実なので信用することと、相手への期待を前提とした希望があるそうだ。

 教授は自動運転のドライビングシミュレータで一般のドライバに協力を得て、自動運転から手動運転へのテイクオーバーに至る状況をデータ解析していた。車両側には、ヘルスメータと称する自動運転のシステムの状態を表示するバーがインパネ中央上部の見やすい位置にあり、自動運転に故障がないかや、テイクオーバーリクエストを表示する。このシステムの体験を5日間に渡って行い、ドライバの挙動変化を観測した。その結果、ドライバは体験回数によって自動運転への信頼性に変化が生じたり、自動運転の姿勢や、テイクオーバー時の状況によって反応が変化することがあったそうだ。

 今後の実験テーマはいろいろ考えられるものの、実験協力者を増やして定量的な解析をやらないといけないとしている。そして、どのような自動運転がドライバに受け入れられるかも重要としている。

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2019年8月11日 (日)

PBL in LDS(7)

 三つ目のTSRCのプレゼンは、中国から来ているPh.Dが研究しているものだった。彼は水素燃料自動車に適したコクピットを研究している。

 中国は内燃機関からEVへの転換に熱心だった。これまではリチウムイオン電池を使ったEVの開発に、政府も補助金を出していた。

 しかし、中国は電力を火力発電に頼っており、火力の燃料は石炭である。そのため、ガソリンから電気にシフトしたとしても、必ずしも環境が改善されるとは限らないというジレンマを抱えている。そこで、中国政府が着目しているのが、水素燃料自動車なのである。トヨタが水素燃料自動車を実用化したことが引き金となり、今年になって中国政府は水素自動車に補助金を出す方針を固めた。EVへの補助金はカットされるらしい。

 そのような背景を受け、彼はHMIの観点から燃料自動車に適したコックピットを探っているのである。プレゼンの内容は彼の研究内容より、水素燃料自動車の実現性を主に取り扱っていた。

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2019年8月10日 (土)

PBL in LDS(6)

 次のTSRCのプレゼンは、自動運転テーマ専任の研究員によるものである。もちろん、欧州委員会の予算で行われているものである。

 そのテーマは、V2Xの課題解決である。始めたばかりだそうなので、背景と方向性の紹介だった。

 このプロジェクトはLEVITATE(Societal Level Impacts of Connected and Automated Vehicles)と名付けられ、自動運転の影響を測ろうというものである。共同している大学は、オーストリア工科大学、アテネ工科大学、中国の同済大学、ミシガン大学で、研究所では、オランダ交通安全研究所、ノルウェー交通経済研究所、オーストラリア交通安全センター等で、特に行政としてはウィーン市の都市開発部門が加わっている。欧州では10年後に自動運転が実用化されるとみており、そのときの安全性、経済性への影響度を予測しようとしているのである。

 LEVITATEプロジェクトは8つの作業部会で構成され、全体のリーダーはラフバラー大学である。TSRCは2つの作業部会を担当し、その一つが乗用車のユースケースであり、一番われわれに馴染み深いものである。

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2019年8月 9日 (金)

PBL in LDS(5)

 TSRCからは合計4つの研究内容を紹介していただいた。二人のPh.Dと研究員、こちらの教授の四人の日替わりのプレゼンである。

 最初に紹介する研究は、自動運転における追越し制御に関するものである。ギリシャから来ているPh.Dが研究しているものだ。

 追越し走行は、当然、自動運転でも行われる。運転支援システムが追従走行までで、追越し制御をかけるとなると、やはり自動運転からになるだろう。ここでの問題提起は、追越し制御がドライバに快適かどうかということである。もちろん、自動運転の追越しの方が手動運転より安全であり、自動運転の追越し制御は危機回避や利便性の向上からなくてはならない制御になるはずである。そのため、ドライバに受入てもらう自動追越し制御はどのようなものかというのが研究のテーマである。

 進め方としては3ステップで考えており、第一ステップで追越しの定義を行うそうだ。そして、第二ステップではドライバの追越し挙動を解析し、第三ステップで安全性を評価するとしている。

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2019年8月 8日 (木)

PBL in LDS(4)

 PBLで学生達には4つのテーマを課した。事前にこちらの教授と打ち合わせて決めた内容である。

 傘下学生数からすると、4つのテーマは多すぎる(チーム人数が少なすぎる)ことになる。しかし、次年度以降に繋げたいので、今年の学生には頑張ってもらうことにした。

 まず一つ目は、TSRCが所有するドライバの走行データ解析である。これは特に、構造方程式を応用してドライバ特性を解析する条件を付けた。次に二つ目は、簡易ドライビングシミュレータを用いたドライバ特性の解析である。ラフバラー大学での協力者と参加学生とのデータの解析を行う。そして三つめは、イギリスと日本の事故テータの比較解析である。同じ左側通行右ハンドルの国での相違から、国内への提案が期待できる。最後の四つ目は、シニアカーの実態調査である。ラフバラーに来て日本より遥かに多い電動シニアカーを見ているため、取組を思い立った。

 これら四つのテーマを3~4人のチームで進める。いろんな面で集中して取り組まないと短期間での成果は難しい。

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2019年8月 6日 (火)

PBL in LDS(3)

 タイトルのLDSとは、Loughborough Design School のことで、日本風に言えばラフバラー大学デザイン学部である。こちらでは学部や学科をschoolと言う。

 こちらではPBLをやっていないそうなので、開催許可を求めたときはPBLの説明をしなければならなかった。今回、活動に興味をもってもらえれば、次回の開催も見込めそうだ。

 PBLの日程は、月曜から金曜をラフバラーでの課題達成とし、土日はロンドンで現地交通調査を行った。初日の月曜は午後の開始となる。午後の開始としたのは、深夜便で日本からロンドンの早朝着で移動し、その後ロンドンからラフバラーまで電車で移動して、ラフバラー大学に到着する移動時間のためである。ここで課題を発表し、チーム編成となる。火曜から金曜まで、午前中に1時間程度TSRCメンバーから研究内容をプレゼンしていただいた。そして、水曜に中間デザインレビューを行い、金曜に最終デザインレビューを行った。

 旅慣れていると、早朝着便では到着後すぐ行動できるよう、到着機内の中で睡眠時間を確保する。今回、直行便ではなかったのと、初めてのヨーロッパ、初めてのイギリス訪問という学生が多かったので、月曜は辛かったようだ。

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2019年8月 5日 (月)

PBL in LDS(2)

 TSRCが係る欧州プロジェクトには、DaCoTA、SafetyNet、PENDANT等がある。この欧州プロジェクトというのは、いわゆる欧州委員会ECが制定したものである。

 欧州連合EUの加盟国は、独自の国家を維持しながらも、経済や交通政策等は一体のものになっている。そのため、交通政策や交通安全研究は、国家を超えた枠組みで欧州委員会が行うのである。

 欧州委員会でも交通安全の目標は、ビジョンゼロである。もともとビジョンゼロは欧州で提唱されたもので、交通事故の死亡者をゼロにしようというものである。スウェーデンで提唱されたものが、欧州委員会で採用されたのである。現在のビジョンゼロは、2050年に死亡者ゼロと定義されている。これを目標にして、DaCoTA(Road Safety Data, Collection, Transfer and Analysis)は事故データ分析を行い、政策提言の基礎にしようというプロジェクト、SafetyNetは欧州各国の事故データベースをリンクしようというプロジェクト、PENDANTは障害事故データに医療情報を合わせた新たな事故データベースをつくるプロジェクトである。

 これらのプロジェクトは終了しており、現在TSRCは自動運転の調査を開始している。もちろん、欧州委員会が自動運転に注目しているからである

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