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2016年12月31日 (土)

ドイツで2030年からガソリン・ディーゼルエンジン販売禁止

 ドイツ連邦参議院は、2030年までにガソリンやディーゼルエンジンを動力とする自動車の販売を禁止する決議案を採択した。決議案なので法的拘束力はないものの、将来的に政策への影響は必須である。

 しかも、ドイツは欧州委員会にこの禁止案を採択するよう求めている。VWを始め、ドイツ3社がEVにシフトしたのはこのためだろう。

 また、オランダでも2025年までにガソリンやディーゼルエンジン自動車の販売を禁止する法案が出されている。ノルウェーでも、2025年までにガソリン・ディーゼルエンジン自動車の販売を禁止するエネルギー政策が検討されている。これらの法案が可決すれば、新車はEVか水素を燃料とする自動車しか販売されないことになる。欧州のインフラ整備の状況からして、水素自動車よりもEVが本命になることは間違いない。ノルウェーでは、既にEVの普及率が24%を超え、首都のオスロは世界のEV首都とも言われている。

 ノルウェーのEV販売第1位はe-Golfである。同車の航続距離は134kmしかないことから、今後、高性能EVが発売されれば、爆発的に売れるかも知れない。

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2016年12月30日 (金)

EVの充電網

 EVの普及には、実用的な航続距離を提供するリチウムイオン電池が必要なだけではない。急速充電網も必要なのである。

 欧州のEV用充電設備の規格団体Comboは、2017年には400カ所、2020年には数千カ所の超急速充電ステーションを設置すると発表している。超急速というのは、直流350kWhを用いるからである。

 急速充電はテスラの独自規格(スーパーチャージャー)が有名なものの、それでも120kWhである。テスラの1/3の充電時間で済むことになる。日本の規格団体CHAdeMOは50kWhでスタートした。CHAdeMOが350kWhに対応するのは、2020年である。EVの普及も含めて、日本は欧州に負けるかも知れない。欧州での超急速充電網は、BMW、ベンツ、VW、アウディ、ポルシェ、フォードが主体となって進める。ドイツ勢が全て参加していることから、ドイツ車のEV移行の本気度がわかる。

 日本は三菱iMiEVと日産リーフを2010年に発売して、乗用EVに先行していたはずである。気が付けばドイツ勢に遅れていたとならなければ良いのだが。

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2016年12月29日 (木)

EVのバッテリー(2)

 テスラ・モデルSのリチウムイオン電池は、パナソニック製の18650バッテリーセルである。エネルギー密度は250Wh/kgで、この値はリチウムイオンの限界値といわれている。

 テスラは最近、パナソニックと共同開発した新バッテリーセル2170をネバダ州の電池工場ギガファクトリーで製造すると発表した。この2170が、テスラ・モデル3に搭載されるものと予想される。

 テスラは2170を、世界で最も優れたセルであると同時に最も安価なセルになると発表した。実は、現行の18650バッテリーセルは、2013年に日本の新エネルギー産業技術総合開発機構NEDOが2020年のリチウムイオン電池と発表した性能なのである。テスラは日本が予想した2020年レベルを既に実現していたのである。18650のコストは2万円/kWhといわれ、24kWhなら48万円となる。2010年の日産リーフ発表時のバッテリー価格は24kWhで240万円だった。18650のコストも驚異的な低価格なのである。

 2170は18650を性能的にもコスト的にも凌駕しているというのだからすごい。VWが発表した2020年のEVというのは、テスラの性能を織り込んでいるに違いない。

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2016年12月28日 (水)

EVのバッテリー(1)

 これからのEVの電池はリチウムイオンになる。パソコンやスマホに使われているリチウムイオンと同じと考えて良い。

 一般的にリチウムイオンを長持ちさせる秘訣といえば、過放電に注意、20%~80%までの領域で使用、熱に注意等である。これらは、EVのリチウムイオンにもそのまま当てはまる。

 満充電にすると寿命が短くなるので、充電は80%に抑える方が良い。日産リーフではロングライフモードがあり、これで充電すると80%で抑えられる。完全に放電し切ってしまうと充電できなくなるので、20%まで下がれば充電するようにする方が良い。バッテリーの上がったテスラのロードスターが充電しなくなったので、修理に出すとバッテリー交換と言われ3万2千ドルを請求されたという有名な話がある。これからのEVは、完全放電しない様に20%程度に下がれば燃料は0と見做して走れなくなる様な制御を入れるはずである。また、急速充電は普通充電以上にバッテリーが発熱するため、夏場の急速充電は控えた方が良い。

 こういう理由で、EVの長期使用にはノウハウと小まめさが必要である。日産がノートをシリーズ・ハイブリッドとしたのは、現段階では正解かも知れない。

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2016年12月27日 (火)

VWのEV

 EVの風向きが変わった。最近の欧州車はPHVに軸足を置いていた。

 ところが、今年のパリショーでVWが航続距離600kmのEVを300万円前後で2020年に発売すると発表した。これにメルセデスベンツが応えるように、EV向けの新ブランドEQを立ち上げ2025年までに10種類のEVを立ち上げると発表したのである。

 2017年後半には、いよいよテスラ・モデル3が発売される。400万円で航続距離が345kmである。このモデル3に予約が殺到している状況から、VWのすごさがわかる。航続距離345kmでは日常の足になっても、旅行には使えない。なぜなら、EVの航続距離の実力はカタログ値の半分と考えて良いからだ。300km走れば何とかなる。あと気になるのは充電時間である。急速充電が実用的になっていることを期待しよう。

 もう一つ気になるのが、バッテリーの劣化である。使えば使うほど劣化して性能が落ちていくバッテリーも進化するのだろうか。

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2016年12月26日 (月)

自動運転とフォグ・コンピューティング

 自動運転に必要な計算をクラウドでやるには無理がある。個々の車両に搭載された高性能計算機が必要な計算を行うべきであり、自動運転はフォグ・コンピューティングといえる。

 自動運転車に搭載された、ライダーやカメラ映像の処理を行って環境を認識する車載コンピュータがエッジ・デバイスである。このエッジが生成したデータをクラウドに上げるのである。

 個々の自動運転車両が自車周囲の走行環境を認識しているので、これらの車両が認識状況をクラウドに上げれば、完璧な交通状況がわかるはずである。フォグ・コンピューティングは完璧を目指しており、まさしく道路交通のフォグは自動運転の普及によって完成するといえる。今でも各車両の位置情報をクラウドに上げるプローブは実用化している。しかし、プローブ情報だけでは、その経路が開通しているかどうかしかわからない。この情報に、実際の道路情報、交通状況や場合によれば映像情報が加わるのである。

 プローブは全車が協力しているわけではないものの、十分役立っている。自動運転によるフォグ・コンピューティングも、自動運転の初期段階から役立つものになるものと期待できる。

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2016年12月25日 (日)

フォグ・コンピューティング

 いろいろなものがインターネットに繋がれていることをIoT(インターネット・オブ・シングス)という。最近では、IoE(インターネット・オブ・エブリシング)へ進化している。

 IoTに対応するコンピューティング環境がクラウドであった。IoEに対応する環境は、フォグ・コンピューティングという。

 クラウドでは、雲の中で計算されていた。ところが、IoEになると全てのもので計算が必要になり、雲で計算していては届くまで間に合わない状況となって来る。そこで、雲ではなく霧の中で計算しようというのだ。これがフォグ・コンピューティングである。つまり、それぞれのもの側でも計算力を上げようということである。もの側をエッジ・デバイスといっている。

 2020年には世界のデータの10%がエッジ・デバイスから作られるといわれている。既にオープン・フォグ・コンソーシアムが設立され、標準化が模索されている。

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2016年12月24日 (土)

エコフィットネス

 12月18日にカリフォルニアのサクラメントで、エコフィットネスが開業した。フィットネスクラブのサイクリングマシンでトレーニングすると、それで発電したエネルギーが環境保護に繋がるというのがエコフィットネスである。

 使用するマシンは、スポーツアート社が開発した発電マシンとしては少々高価なものである。スポーツアート社のコンセプトは、トレーニングで発生した運動エネルギーを電気に変換して有効活用することなのである。

 マシンをこぎはじめると、最初はペダルに直結した発電機により低電圧の交流が発生する。その電圧は昇圧されてブーストされ、直流に変換される。それから60Hzの交流に変換され、家庭用電源グリッドに提供されるのである。ペダルの入力からの変換効率は74%とのこと。更に、エコフィットでは会員に対し、1カ月の発電量が500ワット(すなわち45分のサイクリングジムを週三回ペース)に達っすると、会費を5%割引する。最大割引率は20%で2000ワット分だ。

 エコフィットネスでは太陽電池の設置を検討しており、うまく行けばトレーニングによる発電と合わせるだけでジムのエネルギーを賄えるかも知れない。一家に一台、発電バイクの時代を期待したい。

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2016年12月23日 (金)

ドローン同士が衝突しないメカニズム

 ドローンが将来人間を運べる時代が来るかも知れない。その時代にドローン同士が衝突しないメカニズムを考えている研究者達がいる。

 彼らは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究グループの研究者である。彼らの研究テーマは、パーソナル航空機のための人間に快適な衝突回避ナビゲーションと題されている。

 衝突しないメカニズムと聞くと、ドローンにライダーやレーダーを取付け、衝突を回避するよう制御していると思うかも知れない。しかし、彼らの解決策はもっと単純であり効果絶大なメカニズムといえる。ドローンを同じ高さで飛ばせば、ドローン同士の衝突が起こり得る。しかし、ドローン毎に飛行高度を変えれば、高さ方向ですれ違うことができるので衝突は起こりえない。つまり、衝突しないメカニズムとは、近隣のドローンの飛行高度を変化させることなのである。

 ぎりぎりに回避していては、乗員に不快感が発生するかも知れない。そこで、彼らは回避する距離差についても、不快さを感じさせない値を検討しているのである。

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2016年12月22日 (木)

ウーバー対カリフォルニア当局

 カリフォルニアでウーバーが自動運転タクシーのサービスを開始するに当たって、州当局とうまく行っていないようだ。カリフォルニア州は自動運転の実験を許可しているので、それに相当する実験データの提出をウーバーに求めたそうだ。

 ウーバーの自動運転タクシーは、ボルボXC90をベースにしたものである。これにルーフ上に360°回るライダーを取り付けている。

 ウーバーの主張は、この自動運転タクシーは「self-driving car」であって「autonomous car」ではないというのだ。つまり、ウーバーの自動運転タクシーは、走行環境を認識して自動で運転するものの人間のドライバーが常に監視をしないといけないものという主張で、決して完全自動運転車ではないというのである。従って、自動運転走行の許可申請も行わないというのだ。高度な運転支援システムの集合体という訳である。

 ウーバーの主張は、最近のメルセデスの主張に似ている。メルセデスはレベル3の自動運転機能を発表しているにも関わらず、これはレベル2なのでドライバーが責任を持って操作せよというのである。

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2016年12月21日 (水)

コンマワンの開発中止

 Comma.aiはジョージ・ホッツが立ち上げた普通の自動車を自動運転に変身させるキットを販売するために作られたベンチャーである。ジョージ・ホッツは天才ハッカーとして有名である。

 現在27歳のジョージ・ホッツは一か月で自動運転車を開発したそうだ。そして、カメラベースでノーマルカーを自動運転に変身させるキットを10万円程で販売することを目標にしてきた。

 ホッツによれば、自動運転キット・コンマワンはテスラのオートパイロット並の性能としている。2016年内の発売を目指していた。ところが、NHTSAはコンマワンの安全性を懸念するとの書面をComma.aiに送ったといわれる。そのため、コンマワンの発売は棚上げになったそうだ。オートパイロット並の性能では安全性が心配だったということだろうか。

 取り合えず動く自動運転のプログラムは難しくない。しかし、どんな状況や天候でも安全に動く自動運転のプログラムは難しい。

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2016年12月20日 (火)

グーグルからウェイモへ

 グーグルで研究されていた自動運転プロジェクトが、ウェイモ(Waymo)というベンチャー企業として生まれ変わった。ウェイモはグーグルの持ち株会社アルファベット傘下となる。

 アルファベットは2015年にグーグルが起こした持ち株会社で、全てのグーグルの事業の親会社となる。グーグル自身もアルファベット傘下となる。

 自動運転プロジェクトがウェイモに変身したということは、いよいよ自動運転を使った事業を開始するということである。ところが、ウェイモで実用化を目指す自動運転は、グーグルのハンドルがない自動運転車コアラを実用化することではなく、自動車会社に自動運転の技術を提供することになる。やはり、完全無人の自動運転を実用化することは、すぐには難しいという判断だろう。

 具体的には、フィアット・クライスラーの自動車をウェイモが自動運転に改造し、ライドシェアサービスを始めるらしい。目標は2017年度までということなので、もうすぐ発表があるかも知れない。 

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2016年12月19日 (月)

エンジンの偶力

 エンジンの振動にはこれまで説明した慣性力によるものと、もう一つ偶力によるものがある。エンジンの偶力とは、エンジン本体を回転させようとする力である。

 4気筒の場合、1・4番の気筒と2・3番の気筒が逆位相になりバランスが取れているので偶力は発生しない。ところが、3気筒エンジン等では、両端の気筒運動を相殺するものがないので次の偶力が発生する。

Fco = √3・a・mrt・Rω^2(cosθ+ cos2θ/λ)

ここでaとは、気筒間の距離である。第一項が偶力の1次成分、第二項が偶力の2次成分となる。

 水平対向4気筒エンジンでは、対向しているピストン運動で偶力が相殺されそうなものの、オフセットされ対向しているため、オフセット量をbとすると、二次偶力の、

2mrt・Rω^2(cos2θ/λ)

が残る。一次慣性力、二次慣性力、一次偶力、二次偶力が全て発生しない振動面からみると理想的なエンジンがあり、それが直列6気筒エンジンである。かつて、BMWのインライン6気筒エンジンは、シルキー6と呼ばれた。絹の様に滑らかに回ることから、この様に呼ばれるようになったのである。 

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2016年12月18日 (日)

ピストン・クランクの運動(3)

 ピストン・クランクの往復・回転運動により、慣性力が周期時に動くことがわかった。すなわち、エンジンは振動し共振することがあるため、何らかの振動対策を行う必要がある。

 単気筒エンジンの場合、コネクションロッドとクランクの結合部のビッグエンドの反対側の両腕に釣合錘を設置する。こうしてクランクの慣性力Fc2の平衡を取るようにする。

 多気筒エンジンの場合、各気筒の回転質量を同一平面に移動してバランスを取る。4気筒エンジンでは、1・4番が上死点にあるとき、2・3番を下死点にあるようにすれば、質量の重心はクランク回転中心と同一になりバランスが取れる。これを静的釣合という。静的釣合で一次振動はなくなるものの、二次振動については気筒間が180°のため、cos2θ成分が4気筒で同一方向となり、

4mc1・Rω^2cos2θ/λ

の不平衡力が残る。この二次慣性力と平衡を取らせるため、例えば2本の2mc1・R/λの質量を持ったシャフトをエンジン回転の2倍の速度で内向きに回せたりする。これをバランスシャフトという。

 2ストロークサイクル2気筒エンジンでは、2気筒を180°ずらせば静的釣合は取れる。しかし、クランク軸方向にモーメントが発生するため、両気筒ビッグエンドの外側に釣合錘を設置する。

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2016年12月17日 (土)

ピストン・クランクの運動(2)

 平均ピストン速度は、エンジンスペックでストロークがわかれば容易に計算できることがわかった。乗用車では10~18[m/s]が一般的で、オートバイでは20[m/s]を超えるものもある。

 ピストンは往復運動をしているため、慣性力を知る必要がある。往復運動の質量をmrt、慣性力をFrtとすると、

Frt = -mrt・Rω^2(cosθ+ cos2θ/λ)

と表せる。この式の第一項を一次慣性力、第二項を二次慣性力と称する。慣性力は一次慣性力と二次慣性力の和で表されており、両者の周期が異なることに注意しよう。θはクランクの回転角度なので、慣性力はθによって変化する。二次慣性力の周期が一時慣性力の周期の2倍になるので、両者が強め合うときと弱め合うときが生じることがわかる。

 ピストンとクランクはコネクティングロッドで結ばれており、ピストンとの結合部は上下の線加速度、クランクとの結合部は角加速度を受けている。これらを往復質量mc1、回転質量mc2ととらえると、往復慣性力Fc1と回転慣性力Fc2はそれぞれ次のように表すことができる。

Fc1 = -mc1(cosθ+ cos2θ/λ)
Fc2 = mc2・Rω^2

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2016年12月16日 (金)

ピストン・クランクの運動(1)

 バルブ構造は、代表的なエンジンの機械力学分野である。もう一つ重要なエンジンの機械力学要素は、ピストンとクランク運動である。

 クランク半径をR、コンロッドの長さをℓ、クランク角をθ、コンロッドの傾斜角をφとする。コンロッド長とクランク半径の連桿比(れんかんひ)をλ(=ℓ/R)とおくと、ピストンの変位xは、

x = R + ℓ - (Rcosθ + ℓcosφ)

となる。cosθが 1 - (sin^2θ/λ^2)であることから、xを二項定理で展開して2項目までで近似すると、

x = R {(1 - cosθ) + ( 1 - cos2θ) / 4λ}

となる。ピストン速度vとピストン加速度αはxをそれぞれ一階微分、二階微分すると得られるので、角速度をωとすると、

v = dx/dt = (dx/dθ)(dθ/dt) = (dx/dθ)ω = Rω{sinθ+ (1/2λ)sin2θ}

α= dv/dt = (dv/dθ)(dθ/dt) = (dv/dθ)ω = Rω^2(cosθ+ cos2θ/λ)

となる。

 平均ピストン速度は、クランクの回転速度をn[rpm]とすると、Ln/30(Lは行程)となる。一方、ピストンの最高速度は Rω = ωL/2 = πLn/60 となり、平均速度のおよそ1.6倍ということがわかる。

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2016年12月15日 (木)

バルブ機構(3)

 OHC方式にはカムシャフトが1本のものと2本のものがある。1本のものがS(single)OHCであり、2本のものがD(double)OHCである。

 SOHCでは、一本のカムシャフトで吸気側と排気側のバルブを押す必要があるため、ロッカーアームが用いられる。DOHCでは2本のカムシャフトの役割を吸気側と排気側に専念させることができ、カムが直接バルブを押す構造を取ることができる。

 DOHCはカムとバルブの間に部品がないため、最も高速化が可能なバルブ駆動方式といえる。全てのバルブ機構でカムシャフトはクランクの回転をベルトかチェーンで伝達させている。初期ではチェーン駆動によりクランクの回転をカムシャフトに伝えていた。やがてゴムの耐久性が上がり、騒音面で優れるベルトが使われるようになった。しかし、ベルトが摩耗して破損することがあったり、サイレントチェーンが開発され、またチェーンが使われるようになっている。

 カムシャフトを軸方向に移動させるアクチュエータを追加し、軸方向にカムのリフト量を変えると、回転域によってバルブのリフト量を可変にすることが可能となる。また、ロッカーアームのレバー比を変えて、リフト量を変化させることも可能である。

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2016年12月14日 (水)

バルブ機構(2)

 SV方式はガソリンエンジンの誕生から1900年当初という初期によく使われた方式である。クランクの回転をチェーンかベルトでカムシャフトに伝え、カムシャフトが直接バルブを押す方式である。

 ただし、名前が示す通りバルブがシリンダーの側面に取り付けられている。そのため、燃焼室は細長くなりノッキングが発生しやすい構造である。

 よりコンパクトな燃焼室形状を作るため、次に現れたのがOHV方式である。バルブをシリンダー上部に配置するため、サイドバルブのカムの位置からタペットとプッシュロッドを配置し、更に上からバルブを押す構造にするためにロッカーアームを用いた。そのため、燃焼効率はSVより大きく向上したものの、バルブに至るまでに動く部品が多く運動慣性質量が大きなるため高速化は苦手だった。

 OHVの欠点を解決するために登場した構造が、OHC方式である。カムからバルブまでの慣性力を減少させるため、カムシャフトをシリンダー上部に移動させタペットやプッシュロッドを廃止したのである。

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2016年12月13日 (火)

バルブ機構(1)

 今年の自動車工学の授業で、バルブ機構を知らなかった学生がいた。最近はエンジンを開けたりしないので仕方ないと思い、以前やっていた自動車工学シリーズの補足をしばらくの間い続けることにする。

 エンジンの面白いことの一つに、エンジンを駆動するための機構が全て自己完結的なところがある。すなわち、スターターでクランク軸を回して着火すれば、後はスロットルの開き具合に応じて自動的に回転するところである。

 バルブ機構は、4ストロークサイクルの燃焼行程に応じてタイミング良く燃焼室の吸排気ポートを開閉する。また、エンジン出力は、エンジントルクとクランクの回転速度の積で表されるので、エンジンを高出力化しようとすれば高回転化しなければならない。そのため、バルブ機構も素早く動くメカニズムである必要がある。バルブの開閉は、基本的にカム機構によりバルブ位置を変位させる。カムシャフトが回転してカム山がバルブを押し、バルブスプリングで元の位置に戻る。ところが、歴史的に燃焼室上のカムが直接バルブを押すようになったのは最近のことで、カムとバルブの間に、タペットやプッシュロッド、ロッカーアームを介する方式を長らく採用していた。

 代表的なバルブ駆動方式は、サイドバルブ(SV)方式、オーバーヘッドバルブ(OHV)方式、オーバーヘッドカムシャフト(OHC)方式、ダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)方式である。SV方式は現代のエンジンでは皆無となるものの、ちょっと古いハーレーで見かけることができる。

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2016年12月12日 (月)

ロサンゼルスオートショー(6)

 最後5番目のチームは、KTMとキスカである。KTMはオートバイメーカー、キスカは工業系のデザイン会社で、どちらも本社はオーストリアである。

 KTMはモトクロスのレースイメージが強いので、未来の自動運転にもそのイメージを反映するのかと期待がかかる。そして、このチームのテーマは自動運転車のレースである。

 2050年の設定として、自動運転により完全な安全を手に入れた代わりに、自動車での移動は退屈なものになってしまったとしている。そして、ロサンゼルスの廃墟と化した高層ビルの一角で、年に一度、自動運転車のレースが行われ、人々はそれに熱狂するというものだ。レースは直接見に行っても良いし、VRグラスで参加すると自動運転車の視点が提供され、家にいながらエキサイティングなレース体験もできるとしている。競技方法は単に速さを競うのではなく、サーキットを100周して最もエネルギー消費の少なかったものが優勝というものだ。

 以上、5チームの2050年の自動運転が提案され、コンテストなので結果が出された。優勝チームは、ホンダ、レゴ&トリガーであった。

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2016年12月11日 (日)

ロサンゼルスオートショー(5)

 4番目のチームは、CHオート&クリエイティブ・モバイルである。CHオートは中国の自動車設計会社で、クリエイティブ・モバイルは2010年に設立されたエストニアのビデオゲームのベンチャーである。

 CHオートは、テスラモーターズのモデルSに対抗するEVを発表すると話題になったことがある。自動車会社が入っているので、このチームの提案は2050年の自動運転車そのものである。

 基本コンセプトは、乗員はカプセル形状の室内に乗り、そのカプセル自体に数々の動力セットを付け替えてそれぞれの自動運転車に変身するというものである。先ず、大型のドローンをカプセルに組み込むと空を飛行する自動運転車となる。2050年でも実現性は難しいかも知れないものの、可能性としてはあるだろう。そして、次に装着する動力セットは、リニアモーターである。これを装着し、チューブの中を滑走する。これも面白い。そして最後が、4輪の付いた動力セットであり、最も従来の自動車らしくなる。彼らの提案では、自動車セットになるのはドラッグレースを行うときであり、クリエイティブ・モバイルの影響かと思われる。

 自動運転時代の動力は、電気とモーターが占める割合が高まっているだろう。EVという観点から自動車の未来を考えると、ドローンやリニアモーターも思い浮かんで来る。

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2016年12月10日 (土)

ロサンゼルスオートショー(4)

 次のチームは、ファンダゴ&ジャントVRの作品である。ファンダゴはアメリカの大手映画チケットの配給会社で、ジャントVRは映画館用の大規模VRを手掛ける2013年に設立されたベンチャーである。

 どちらの会社も自動車は専門でないので、ユーザーエクスペリエンスに特化した作品である。設定としては2036年の完全自動運転となったBMWi3を使っての想定だ。

 作品のイメージビデオには、サンドラ・ブロックが登場し、映画関連を鮮明にしている。この時代の自動車はオーナー所有からカーシェアリングを前提とし、午後6時50分に予約したファンダゴ・ムービー・ライドの到着からビデオイメージは始まる。ムービー・ライドとは、i3のウインドウ全てがスクリーンとなって映画や映像を映し出す自動運転車である。室内は今まで通りの自動車そのもので、利用者はナビ画面のメニューから映し出すシーンを選び出す。すると、車室内から外があたかも宇宙を走っている様な映像で覆われたり、荒野を走行している様なものに変化して、利用者はそれを楽しみながら目的地に搭乗するという提案である。

 移動しながら、全方位で映画や映像を楽しめるのは面白いと思う。通常の映画よりも、ストーリー性のある面白い世界を走らせると楽しみも増えるだろう。

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2016年12月 9日 (金)

ロサンゼルスオートショー(3)

 次はチーム・クレヨラ&クオロスの作品である。クレヨラはアメリカの老舗クレヨン会社で、クオロスは中国の自動車会社、奇瑞汽車(チェリー自動車)のことである。

 クオロスが提案したものは、メルセデスがCESで提案したような自動運転車である。すなわち、室内には操作系は一切なく、乗員は対面で座ることができ、窓はなく全てモニタが貼り巡らされている。

 そこから面白いことが、クレヨラとのコラボである。乗員が持っている2050年のクレヨンでモニタに落書きすると、それが即座に3Dモデルに変換され、モニタの中で動き始めたり室内にホログラムで投影されたりするのである。象の絵を描けばその像が3D化されアニメーションさながら動き始め、車の絵を描けばその車があたかも外で並走しているようにモニタに映し出されるのである。

 これは自動運転社会のユーザーエクスペリエンスを表現したものである。自動車に乗ればアートな活動ができるというアイデアも面白い。

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2016年12月 8日 (木)

ロサンゼルスオートショー(2)

 まず、チーム・ホンダ、レゴ&トリガーから紹介しよう。自動車メーカーと玩具メーカーとアニメーションスタジオのコラボである。

 このチームの特色は、アイデアは2050年の主役になる子供達に考えさせたことである。十数人の子供達がレゴで未来の自動車を組み立て提案するところから始まる。

 その子供達の作品を、ホンダが実物サイズにデザインし直し、実際に予想される未来テクノロジーで現実味を持たせる。それを3Dプリンターを使って実際に製作したのである。トリガーはそのデータを3D化し、アニメーション化して、2050年のロサンゼルス市街を走り抜ける自動運転車を映像化した。未来都市を縦横無尽に自動で走り抜け、西海岸から洋上もモーターボートさながら推進する小型船の様な形状をコンテスト作品としたのである。

 この車は子供達のアイデアだけでは終わらず、更に大人のアイデアを加えている。アイデアを見て方向性が見えたので、大人が手を加えても子供達は満足しているようんだ。

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2016年12月 7日 (水)

ロサンゼルスオートショー(1)

 11月18日から27日まで、ロサンゼルスオートショーが開催された。そこで催されたデザインコンテストの状況を知らせよう。

 テーマは2050年の自動運転車である。自動運転車そのものだけでなく、自動運転をベースとしたユーザーエクスペリエンスも含んだものである。

 主催者の狙いとしては、自動運転が普及することにより、ロサンゼルスの街がどのように進化するのか?自動運転を通して、ユーザはどの様な体験ができるのか?この体験を提供する自動運転車はどのようなものか?そして、自動運転車やその室内での体験が、人の生活様式をどのように変えるか?というものを示すことになる。

 コンテストには5チームが出品したので明日から順に紹介しよう。これら5チームとは、Team Honda, Lego, & Trigger、Team Crayola & Qoros、Team Fandango & Jaunt VR、Team CH Auto & Creative Mobile、Team KTM & Kiskaである。

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2016年12月 6日 (火)

自撮り用ドローンで最良のもの

 ドローンの使い方に、空中からのカメラ撮影がある。しかし、安全性等を考慮すると、以外と難しい場合が多い。

 空中から自撮りする使い方に限って、最良のドローンと言われているものがある。それが Fotokite Phi である。

 カイトの名が示す通り、ひもが付いたドローンである。使用者はリモコンでドローンを操縦するのではなく、単にひもを持っているだけで良い。操作は写真のシャッターだけである。ひもに引っ張られる方向を自動的に向くよう制御しているのである。これで安全にドローンを使うことができる。実際にBBCが Fotokite Phi を採用している。例えば、スキーをしながらでも Fotokite Phi は安全に追従し、スキーヤーを空撮できるのである。

 この Fotokite Phi は持ち運び時は水筒サイズの円筒ケースに入れ、使用時はケースから取り出してプロペラ取り付け部を広げて使う。これで250ドルは高くないと思われる。

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2016年12月 5日 (月)

自動運転模擬裁判(2)

 続けて、12月に行われた自動運転模擬裁判の2回目である。今回の状況も前回と同じ条件で自転車が飛び出し、自転車に対し急ブレーキをかけたものの間に合わず自転車の方が死亡したというものである。

 原告は自転車の方の家族、被告は自動車メーカーである。原告の主張は、加速しながら車線変更するか、事故多発地点を想定しもっと低速で走行するか、歩行者保護のためのフードエアバックを装着すべきだったとして、メーカー側に責任があると主張した。

 被告の証言は、左斜め後方のダンプカーの加速を検知したため、車線変更を断念し急ブレーキ制御を行ったと主張した。また、渋滞だったので制限速度60km/hに対し50km/hで走行しており、事故多発地点という情報は確認できなかった。そして、フードエアバッグは普及率が低く高級車セダンにしか装着されていないので、ワゴン車への搭載は考えれれなかったとした。裁判官3名の合議の判決は、今回は被告の主張を全て合理的と判断し、原告側敗訴となった。

 原告の主張によっては、判決が変わる可能性があるものの、メーカー側がユーザの期待値に応えるものを合理的に開発すれば良いとの印象を受ける。しかし、現段階での模擬裁判の判決は、技術の進化とユーザの期待値と共に変わらざるを得ないだろう。

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2016年12月 4日 (日)

自動運転模擬裁判(1)

 自動運転車が事故を起こせば責任はどうなるか、というのは関心のある問題である。機械学会の市民フォーラムで9月と12月に自動運転が事故を起こしたときの模擬裁判が開催されたので、今回は9月の内容を紹介しよう。

 事件が起きたときの想定は、一般道路で自動運転中のワゴン車が片側2車線の右側車線を走行中、渋滞していた反対側車線の車の間から自転車が飛び出した状況である。そして、自動運転車は自転車との衝突を避けるため、減速して左側車線に変更したところ後続のダンプカーに追突され自動運転車の後部座席乗員が死亡したというものである。

 原告は自動運転車の後部座席乗員の家族、被告は自動運転車を製造していた自動車メーカーである。原告は、自動運転車が自転車に対して急ブレーキをかけるか、車線変更後に加速すれば事故は防げたので、メーカー側に責任があると主張した。証人として、自動運転車の開発経験者が登場し、自動運転の性能や原告が主張する制御を行った場合の可能性等を議論した。その結果、車線変更すれば後続のダンプカーが減速して追突を避けられると判断することが最良の制御だった証言した。裁判官3名の合議判決は、ダンプカーの減速を期待した判断は不十分として原告側勝訴となった。また、裁判官から、反対車線が渋滞している時は飛び出しを想定して減速する制御を考慮すべしとの意見があった。

 反対側車線が渋滞しているときは、ベテランドライバーなら用心して走行するはずである。自動運転車の制御に、その様なノウハウをどの程度反映させれば良いのだろうか。

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2016年12月 3日 (土)

50年前のVRグラス

 バーチャル・リアリティの研究は50年も前から始まったと言える。しかし、50年前にも十分バーチャル・リアリティが研究される状況があったといえる。

 アメリカのSF作家ヒューゴー・ガーンズバックは、発明家でもあった。50年前、彼はVRグラスの前身ともいえるTVグラスを造っていたのである。

 TVグラスは、1963年、ガーンズバックが78歳で発明したもので、わずか140gの小型TVを眼鏡のように目の前に装着するものであった。外観はまさしくVRグラスそのものである。彼は発明家として、電気で熱して髪型を整えるブラシや、バッテリー内臓で周囲を照らす鏡のような珍発明が多かった。当時としては、このTVグラスもその類と思われたかも知れない。ところが、50年経った今では、彼の発明で最も価値のあるものは、このTVグラスといえる。難点は、発明が早すぎたのである。

 SF小説には、ヒューゴー賞という栄誉ある賞が1953年から続いている。このヒューゴーはガーンズバックの名前であり、彼にちなんで付けられた賞名である。

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2016年12月 2日 (金)

遠赤外線レーザレーダ

 自動運転時代の本命センサーはレーザレーダである。ところが、レーザレーダにも問題はある。

 まずはコストであり、次が雨や霧に対するロバスト性である。コストの方は、100$ライダーを唱えるベンチャーが数社現れたので期待できそうだ。

 レーザレーダは近赤外の波長を使うため霧のときは減衰し、人間同様霧では十分に見えなくなる。この問題を解決するレーザレーダが発表された。それはイスラエルのベンチャー企業 Oryx が発表した遠赤外の波長を使うレーザレーダである。通常のレーザが800ナノの波長に対し、Oryx の波長は10ミクロンと長い。そのため、霧でもほとんど減衰しないのである。これは期待できる。

 Oryx の技術者がこのレーザを開発し始めたのは6年前だそうだ。同社の技術者は20名程度しかいないものの、自動運転の世界を変えるかも知れない。

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2016年12月 1日 (木)

No.2掃除ロボット

 家庭用の掃除ロボットは、ルンバがシェアNo.1である。アメリカでシェアNo.2にボットバックという掃除ロボットがある。

 ボットバックはネイト社が開発しており、日本でも発売している。ルンバにはないユニークな機能を持っている。

 まず、ルンバの丸型に対して、ボットバックはD字型である。掃除をする部分がフラットになっているため、壁にぴったりと合わせることが可能である。そして最大の特徴は、最近のぶつからない車さながらにレーザレーダを装備しており、部屋の地形を計測しながら記憶し、効率よく掃除できる点である。ボットバックのレーザレーダは、単に障害物を見分けるのではなく部屋の形を計測できるものなので、自動車に搭載されているものよりも高性能ともいえる。

 日本の導入され既に2年経つが、知名度は十分とはいえない。他の日本の家電メーカーも掃除ロボット分野に参入しているものの、先行したルンバの牙城は崩せないでいる。

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