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2018年5月31日 (木)

自動運転(8)

9.2.2.縦方向制御
 上記環境認識センサで前方走行車両や障害物を認識し,自車両の進行方向,すなわち縦方向の制御を行う.縦方向制御は,レーダクルーズから発展し,全車速レーダクルーズ,低速レーダクルーズ,被害軽減自動ブレーキへと発展した.レーダクルーズはある車速で走行中(40[km/h]以上が一般的)ドライバがセットした車速を維持する様にスロットルを制御し,セットした車速より遅く走行する前方走行車と車間距離が詰まるとスロットルとブレーキを制御して,適度な車間距離を維持したまま前方走行車に追従した様に走行するシステムである.ただし,セット可能速度以下になると,システムはキャンセルされ手動で運転しなければならない.このセット可能速度を0[km/h]以上にしたものが,全車速レーダクルーズである.更に,渋滞時の発進,停止を繰り返し時に対応したものが,低速レーダクルーズである.そして,セットした状態に関係なく,前方走行車に対して追突する危険性があるとき,自動的にブレーキ制御するものが被害軽減自動ブレーキである.

 これら縦方向制御のシステムは,共通して前方監視用のセンサが必要で,電波レーダ,レーザレーダ,車載カメラの何れかを搭載している.この前提で縦方向制御の基本機能は,先行車がいないときは設定した車速で定速走行を行い,先行車がいる場合は車間距離を制御しながら追従走行を行う.

 この縦方向制御の要素で重要なものが,定速度制御と加速度制御である.これらの制御は,上位システムである車間制御ECUからの速度または加速度指令に対し,外乱等の影響をできるだけ受けないようにスロットル開度を制御するサーボシステムである.

 定速度制御は,設定車速付近の安定性が重要である.制御対象のスロットル開度-車速特性は一次遅れ系で近似できる.

 加速度制御は,停止状態からの発進や定常追従状態からの再加速等の状態に対応する.発進,再加速時は変速機の特性等から,車両運動は強い非線形性を持つためフィードバック制御だけでは不安定になるため,加速度制御はスロットル開度マップに基づいた制御を行うことが多い.指令車速 は、指令加速度 を用いて求める.指令スロットル開度は,求めた指令車速 における指令加速度 を達成するために必要なスロットル開度マップ出力値から求める.

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2018年5月30日 (水)

自動運転(7)

9.2.1.3.車載カメラ
 コンピュータ技術のハードウエアとソフトウエアの発達により,車載カメラから得られた画像を処理することによって,環境認識が可能になってきた.前方監視では,室内に設置した単眼カメラで前方走行車や車線,歩行者,標識等を認識するシステムや,ステレオカメラで2カメラ間の対応を取り,対象物体までの距離を計測するシステムが実用化されている.

 車載カメラの画像処理による環境認識の課題は,遠距離になると対象物体が小さく映り解像度が悪くなるため,認識距離がレーダに劣ることである.

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2018年5月29日 (火)

自動運転(6)

9.2.1.2.レーザレーダ
 レーザはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの略で,電波レーダと区別するためレーザレーダと称する.またライダーLight Imaging Detection and Rangingと称することもある.使用するレーザは,波長800[nm]前後の赤外線半導体レーザが一般的である.

 レーザの特徴としては,
・目に対する安全性だけを注意すれば環境負荷は小さい
・空間解像度を上げることができる
・規制が少ない
ということがある.目に対する安全性とは,赤外線の不可視光であるため,目に高エネルギーが入って熱による損傷を負わさないようJIS規格がありその基準を守る.基準値以下でも,100[m]以上の距離を計測出来るため実用上問題ない.レーザは光であるため,照射光のビームを絞ることが可能で空間解像度を電波レーダより上げることができる.また,目の安全性以外の規制がなく,開発の障害が少ない.

 対象物体までの距離計測手法は,電波レーダのパルス方式が適用でき,照射パルスと反射パルスの時間を計測する.電波レーダのアンテナ方式に対応するものは,照射光をミラーを回転させファンビームとすることで,電波レーダの機械捜査方式に相当する.

 レーザレーダの課題は,雨や雪等の天候の影響を受けやすいことである.レーザ光自体の雨や雪による減衰は対策可能である.しかし,レンズ前面に雨滴や雪粒が付着し,照射光の光路が乱されたり、受光レベルが減衰する問題がある.

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2018年5月28日 (月)

自動運転(5)

9.2.1.環境認識センサ
 環境認識センサは,自動運転において非常に重要なセンサで,これらのセンサが運転支援システムで実用化されたため,レベル2以降の自動運転が可能になった.

 環境認識センサの代表的なものは,電波レーダ,レーザレーダ,車載カメラである.電波レーダは,主にアダプティブクルーズコントロールや自動ブレーキの前方走行車の認識に使われ,レーザレーダは電波レーダの機能にその他の障害物検出機能が加わり,車載カメラでは更に交通標識等の認識が加わる.

9.2.1.1.電波レーダ
 レーダはRadio Detection And Rangingの略語であり,レーダに電波を付ける必要はない.しかし,後述するレーザレーダが使われ始めたため,レーザと区別するために電波レーダと称する.使用周波数帯域は,前方走行車認識用のものは76G[Hz]帯域のミリ波が使われるため,図9.3に示すようなミリ波レーダとも称する.

 ミリ波帯域の電波の特徴としては,
・大気での減衰が大きい
・波長が短い
・帯域を広く取れる
ということがある.大気での減衰が大きいため他のレーダからの干渉が少なく,波長が短いためレーダを小型化することが出来,帯域を広く取れるため距離分解能を高くとるこが可能となる.

 対象物体までの距離計測手法は,
・パルスドップラー方式
・FMCW方式
・二周波CW方式
がある.また,アンテナ方式は,
・機械捜査方式
・ビーム切替方式
・フェーズドアレー方式
・ディジタルフォーミング方式
がある.

 電波レーダの課題は,光より波長が長いため空間解像度が低く,物体の詳細形状が認識しにくい点と,対象物体の電波の反射特性に依存するため,歩行者の認識が不得意という点である.

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2018年5月27日 (日)

自動運転(4)

9.2 運転支援システム(Driver Assistance Systems)
 運転支援システムとは,自動運転の最も初期レベルのレベル1に相当し,自動運転システムの基本となる.9.3節で述べる実用可能となった環境認識センサを使って,ドライバの安全性,快適性,利便性を向上させる単一機能をシステム化したものである.基本的なシステム構成は,入力(環境認識センサ,車速センサ,ステアリンセンサ等),処理(車載コンピュータによる判断,制御処理),出力(スロットル・ブレーキ・ステアリングアクチュエータ,表示等)となる.現在実用化され国際標準化項目に挙がっているものは次のものがある.なお,各入力・処理・出力は主要なもののみ記す.

・レーダクルーズ(Adaptive Cruise Control Systems):定速走行に加えて前方車間距離を制御,入力(車間距離センサ),処理(縦方向制御),出力(スロットルアクチュエータ)
・車間距離警報(Forward Vehicle Collision Warning Systems):前方走行車の車間距離を計測し追突の危険性があるときに警報,入力(車間距離センサ),処理(追突危険性判断),出力(警報)
・超音波ソナー(Maneuvering Aid for Low Speed Operation):駐車時の車両周辺の障害物を検知し警報,入力(超音波障害物検知センサ),処理(障害物認識),出力(警報)
・車線逸脱警報(Lane Departure Warning Systems):走行車線を示す境界線を検知し逸脱すると警報,入力(車線認識センサ),処理(車線逸脱量判断),出力(警報)
・後側方警報(Lane Change Decision Aid Systems):後側方の走行車を検知しレーンチェンジ時に警報,入力(車両検出センサ),処理(検出車両位置推定),出力(警報)
・全車速レーダクルーズ(Full Speed Range Adaptive Cruise Control Systems):レーダクルーズによる車間距離制御を車両停止まで実施,入力(車間距離センサ),処理(縦方向制御),出力(スロットルアクチュエータ)
・低速レーダクルーズ(Low Speed Following Systems):渋滞路の低速時に対応したレーダクルーズ,入力(車間距離センサ),処理(縦方向制御),出力(スロットルアクチュエータ)
・被害軽減自動ブレーキ(Forward Vehicle Collision Mitigation):前方走行車と追突の危険があるときブレーキ制御,入力(車間距離センサ),処理(縦方向制御),出力(ブレーキアクチュエータ)
・長距離バックソナー(Extended-range Backing Aids systems):駐車時の周辺警報から検知距離を伸ばしたもの,入力(超音波障害物検知センサ),処理(障害物認識),出力(警報)
・カーブ進入速度警報(Curve Speed Warning System):規定速度以上でのカーブ進入を警報,入力(GNSSによる現在位置取得,地図),処理(適正速度演算),出力(警報)
・レーンキープ(Lane Keeping Assist System):走行車線内を走行するようステアリングを制御,入力(車線認識センサ),処理(横方向制御),出力(ステアリングアクチュエータ)
・自動駐車(Assisted Parking System):既定の駐車枠に自動で駐車するようステアリングと駆動を制御,入力(駐車枠検出センサ),処理(駐車起動計画),出力(ステアリング・ブレーキアクチュエータ)

 これらのシステムの情報処理は,安全性,快適性,利便性の目的から,ドライバに危険事象を警報するものとドライバの運転操作を支援するものに分かれる.システムを作動方向で分類すると,アクセルやブレーキ操作に関連する前後方向の縦方向制御となるもの,ステアリング操作に関連する横方向制御となるもの,そして駐車操作を支援するものに大別出来る.レベル2以降の自動運転は,車間距離や障害物検出の環境認識センサの入力をもとに,縦方向制御と横方向制御を基本とし,自動駐車は駐車軌道計画が応用される.以下,自動運転の基本要素となる環境認識センサ,縦方向制御,横方向制御,駐車起動計画について述べる.

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2018年5月26日 (土)

自動運転(3)

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9.1.2 自動運転に必要な技術
 自動運転といった場合,運転支援システムだけをイメージしやすい.しかし,現在ではエレクトロニクスや通信などさまざまな技術が進歩しており,それらを使えば,遠方の情報を入手して,逐一ルート選択に反映させてより高効率な運転を実現することなども可能となる.このため,運転支援システムにナビゲーションシステムとインフラ情報提供システムを組み合わせたものを自動運転システムといい,自動車業界ではこのシステムの開発を進めている..

 (1)運転支援システム
 運転支援システムの主な技術としては,
1.自車線の前走車を認識して追従制御する技術
2.自車線前方の障害物を検知して自動停止する技術
3.走行車線を認識してステアリング操舵を車線に沿うように制御する技術
がある.

(2)ナビゲーションシステム
 ナビゲーションシステムの技術としては,最も重要なものが
・現在位置を正確に検出する技術
である.この技術で重要な役割を担っているのがGNSS(Global Navigation Satellite System)である..

(3)インフラ情報提供システム
 インフラ情報提供システムの技術としては,
・提供される情報の内容と提供方法(通信方法)
が重要である.この技術で重要となのが,高度道路交通システムITS(Intelligent Transport Systems)である.

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2018年5月25日 (金)

自動運転(2)

9.1.1 自動運転レベル
 自動運転は誰が運転するか,誰が周辺状況の監視を行うか,非常時は誰が対応するかによって,下のように6段階のレベルが制定されている.このレベルはSAE(米国自動車技術会)が制定したものである.国ごとに多少のレベル分けに相違はあるものの,基本的にはこのSAEレベルが世界標準となっており,日本もこの基準に従っている.

レベル      運転        周辺状況の監視  非常時対応
0(非自動)   ドライバ      ドライバ      ドライバ
1(運転支援)  ドライバ/システム ドライバ/システム ドライバ
2(部分的自動) システム      システム      ドライバ
3(状況依存自動)システム      システム      ドライバ
4(高自動)   システム      システム      システム
5(全自動)   システム      システム      システム

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2018年5月24日 (木)

自動運転(1)

 今回から、自動運転の概略に入る.当研究室の主要テーマなので、常識的に知っておいて欲しい.

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9.自動運転(Automated Driving)
 近年,自動運転の研究開発が急速に進んでおり,一部はすでに実用化されているものもある.たとえば,緊急時にブレーキを制御して追突を防止するものなどは多くの車両で導入が進んでいるし,自動駐車なども一部の車両で実用化が始まっている.自動運転が実用化されれば,このような安全性の面だけでなく,輸送効率,環境性能,利便性などの向上にもつながる.

 本章では,まず自動運転とはなにかを説明し,その後に,自動運転実用化の核となる運転支援システム,ナビゲーションシステム,インフラ情報提供システムの三つの技術について解説する.

9.1 自動運転とは
 自動運転といっても,そのレベルは幅広い.たとえば,通常の運転はドライバが行い,衝突しそうなときだけブレーキをかけてアシストしてくれるものや,運転などはシステムがしてくれるが,適宜判断はドライバが下すものなどもある.最終的には,ドライバは座っているだけで運転もなにもしなくてよいものに向かうだろうが,そこまでたどりつくにはさまざまなハードルがある.

 ここではまず自動運転レベルについて一般的な基準を示し,自動運転に必要は技術を紹介する.

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2018年5月23日 (水)

EV,FCV,HV(最終回)

 EV普及の鍵は2次電池の性能が握っている.当面の主流は,パソコンやスマホに使われているリチウムイオン電池といわれている.

 リチウムイオン電池はメモリ効果のない理想的な電池ともいわれている.それでも寿命はあり,満充電の繰り返しで500回程度である.致命的な欠点が過放電であリ,満充電も電池寿命には良くない.

 なぜ満充電や過放電が寿命を縮めるかというと.電極の構造と特性にある.リチウムイオン電池の正極にリチウム金属酸化物,負極に炭素材が用いられる.Li酸化物に含まれるリチウムイオンが,充放時に電極に挿入されたり脱離したりする.このとき,電極の体積が変化する.すると,電極界面にクラックが発生し,電極の重要な材料となる活物質が破壊される.そのため,満充電は体積変化の割合が大きくなり、電池の寿命を縮める.そして,過放電は電極がつぶれた状態になってしまうため,電池の寿命を縮めることになってしまうのである.

 満充電にすると寿命が短くなるので,EVには充電を80%に抑えるロングライフモードのあるものもある.完全に放電し切ってしまわないよう,20%まで下がると充電を始める方が良い.また,急速充電は普通充電以上にバッテリーが発熱しこれも短命化の原因になるため,夏場の急速充電は控えた方が良さそうである.EVの長期使用には,ノウハウと小まめさが必要である

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2018年5月22日 (火)

EV,FCV,HV(22)

8.4.大容量バッテリーの活用
 EV,FCV,HVは,エンジンだけの車両に比べ,巨大な容量の駆動用バッテリーを持っているため,家庭にも電気を供給するという新たな活用方法がある.例えば,旧型の日産リーフのバッテリー容量は24[kWh]で,これは一般家庭2日分の電気量である.すなわち,EV等の大容量バッテリーは,停電時の家庭用バックアップ電源として活用できるのである.

 また,車両の大容量バッテリーを家庭で充電する際,夜間電力を利用すれば電力の分散利用に貢献出来る.夜間電力は昼間より安価なため,経済的でもある.

8.5.ソーラーカー(solar car)
 EVへの電源供給方法として,太陽光発電も可能である.実際に,二次電池を使用せず直接太陽光発電で走行するソーラーカーもある.


 現状の太陽光パネルは,変換効率が20%程度しかなく,1[m2]で出力200[W]となる.太陽光パネルを付けられる車両ルーフやボンネット等の面積を6[m2]とすると,得られる出力は1200[W]となる.太陽光パネルの電圧を昇圧するためのコンバータの変換効率等を考慮すれば1[kW]程度の出力となる.これから計算すると,日産リーフの容量24[kWh]のバッテリーを満タンにするには24時間もの充電時間が必要になる.当然太陽のない時間は十分に充電はできないので,1日の日照時間や晴天率等を考慮すれば,必要な充電時間は一週間程度にもなる.このため,太陽電池の変換効率の向上が実用化に向けての課題である.ただし,車両に載せた太陽光パネルの利用は難しくても,住宅用太陽光パネルの活用は可能である.

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2018年5月21日 (月)

EV,FCV,HV(21)

(4)シリーズパラレルHV(1モータ方式)
 2013年に登場した日産・スカイラインは,インテリジェントデュアルクラッチコントロールと名付けられたシリーズパラレル方式を提案した.これは,エンジンとモータの出力軸を同一直線上に並べ,エンジンとモータ間(クラッチ1),モータと駆動軸間(クラッチ2)にそれぞれクラッチを設け,2つのクラッチの状況により1モータのシリーズパラレル方式を実現するものである.

 エンジン,クラッチ1,モータ,クラッチ2,駆動軸の順に配置することにより,クラッチ1を離しクラッチ2を繋げればモータだけによるEV走行が可能となる.通常走行時はクラッチ1とクラッチ2を繋ぐと,エンジン出力が利用でき,エンジンだけの走行やモータ駆動力も合わせたパラレル状態が可能となる.減速制動時は,クラッチ1を離してクラッチ2を繋ぎ,モータによる回生を行う.

(5)PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)
 モータ駆動用バッテリの蓄電量を上げ,家庭用コンセント等の外部電源からプラグで直接そのバッテリに充電できるようにしたものがプラグインハイブリッド(PHV)である.PHV同様に,EVに適用したPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)もある.HVやEV方式は何でも良く,独立にプラグでの充電機構を持つ.PHVがプラグで充電した電力だけで走行可能な距離は,バッテリ容量により,20[km]から60[km]以上に及ぶものまである.

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2018年5月20日 (日)

EV,FCV,HV(20)

3)シリーズパラレルHV(2モータ方式)
 1997年に登場したトヨタ・プリウスは,THS(Toyota Hybrid System)と名付けられたシリーズパラレル方式を提案した.これは,エンジンを発電だけに機能させるのではなく,駆動力として使用することも出来る方式である.そのため,必要に応じてエンジン出力とモータ出力の両方を使って,シリーズ方式よりも強力な駆動力を得ることができる.また,完全にエンジンを停止させ,モータだけで走行することも可能である.

 THSは,エンジンと駆動用モータの他,発電用モータと動力分割機構から構成されている.駆動用と発電用のモータを2つ持っているため,2モータ方式とも呼ばれる.この動力分割機構で,エンジン出力を車輪の駆動力と発電モータ用の駆動力に分割する.

 車両停止状態ではエンジンを停止させ,発進は駆動モータだけで行う.すなわち,EV状態となる.発進後はエンジンを始動し,動力分割機構により発電モータ用と車輪駆動用にエンジン出力を分割する.分割比率は走行状態によって異なり,動力分割の比率は遊星歯車によって配分される.急加速時は,バッテリからの電力で駆動用モータを回転させ,エンジンの駆動力にモータの駆動力を加えるパラレル状態とする.減速制動時は,駆動用モータの回生エネルギーを充電用に使う.車両が停止すると,再びエンジンも停止させる.バッテリの消費状態によっては,充電用にエンジンを始動させる.

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2018年5月19日 (土)

EV,FCV,HV(19)

8.3.1.HVの方式
 HVはエンジン出力とモータ出力をどのように組み合わせて駆動するかにより,シリーズ(series)方式,パラレル(parallel)方式,シリーズパラレル(series parallel)方式の3種類がある.
 
(1)シリーズHV
 エンジンは発電のためだけに使用し,駆動はモータだけで行うのがシリーズ方式である.この特徴から,エンジン発電機を持ったEVと見なせる.図8.16にシリーズ方式の構成を示す.エンジンは発電に適しており,発電だけに使えば燃料消費率の良い定回転を行える.モータは低回転時にトルクが大きいので駆動に活かすことができる.このように,それぞれの用途を分けることでトータルでの燃費を良くしている.また,バッテリ容量によっては,エンジンを停止して電力だけで走行する状態も可能となる.そのため,大型バッテリを搭載可能な、大型車両で採用される傾向にある.

 充電はエンジンによるだけでなく,減速時にモータを回生ブレーキとして働かせることでも行う.エンジンはガソリンの場合もあればディーゼルの場合もあり,燃料電池をエンジンに代わるものと見なせば,FCVもシリーズ方式の範疇となる.

(2)パラレルHV
 エンジンとモータの両方を駆動力として使用するのがパラレル方式である.エンジン出力と変速機の間にリング状のモータがある.これにより,車両発進時や加速時にモータの駆動力をアシストに使い,減速時は回生ブレーキとして使う.この方式ではモータのトルクを大きく取らないため,モータ用のバッテリーも小さくでき、内部構造をコンパクトにまとめることが可能である.

 通常のエンジン用のバッテリー以外にモータ用の高圧のバッテリーを持ち,このバッテリーの充電は,エンジンとモータの両方で行う.通常は駆動用モータの減速時を回生ブレーキとし,そのときモータを発電機として利用する.

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2018年5月18日 (金)

EV,FCV,HV(18)

8.3.HV(Hybrid Vehicle)
 ハイブリッドとは,2種類以上の異なったものを組み合わせることであり,エンジンとモータを組み合わせた車両をハイブリッドカーHVと呼ぶ.モータ出力が弱くエンジンのアシスト程度のものをマイルドハイブリッド,モータ出力が強くモータだけによる走行も可能なものをストロングハイブリッドと呼んでいる.

 HVは,エンジンとモータそれぞれの長所を相補的に使う.エンジンの最大の長所は燃料供給インフラが充実し,いつでもどこでも容易に燃料が入手可能なことである.一方,モータの最大の長所は,モータに給電しないときは充電機として扱えることで,減速時に回生エネルギー が得られることである.これらによりHVはつぎのような長所がある.

・加速時はモータトルクを上乗せでき,エンジンを小型化して燃費を向上させることができる.

・減速時はモータが発電した電力をバッテリーに回生し,また発電による減速効果を上乗せして車両全体のブレーキ力を向上させることができる.

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2018年5月17日 (木)

EV,FCV,HV(17)

8.2.3.高圧水素タンク(high-pressure hydrogen tank)
 FCVの燃料となる水素は気体である.気体を効率よく大容量搭載するには圧力を高めて貯蓄する必要がある.そこで開発されたのが,高圧水素タンク(high-pressure hydrogen tank)である.現在では,700気圧タンクが実用化されている.

 高圧水素タンクは,内層に水素を封じ込めるプラスチックライナー,中層に耐圧強度を確保する炭素繊維強化プラスチック層,表層に表面を保護するガラス繊維強化プラスチック層の3層構造でできている.多くのFCVではこの高圧水素タンクを複数個搭載している.

 高圧水素はそのまま燃料としては使えないため,インジェクタによって700気圧から10気圧程度にまで減圧されてからFCスタックに供給される.

 水素を高圧水素タンクに充填するときは,水素ステーションの充填ノズルから,車両のレセプタクルを経由して車両の高圧水素タンクに水素を送る.水素は気体のため逆流が見えず,また高圧で充填するため異物が流入する危険性もたる.そのため,レセプタクルは水素ガスの逆流防止,及び異物流入防止という重要な機能を備えており,水素ステーションと充填速度を制御するための赤外線通信機を装備している.なお,水素ステーションで高圧水素ガスを高圧水素タンクに充填するわけだが,断熱圧縮のためタンク内のガス温度は上昇する.これにより,タンクの許容温度を超えてしまうことがあるため,高圧水素タンク内には温度センサが設置されている.充填の際は,この温度センサと水素ステーションの装置がつねに通信し,タンク内が許容温度以下であるようになっている.

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2018年5月16日 (水)

EV,FCV,HV(16)

8.2.2.燃料電池
 燃料電池の発電原理は,水の電気分解の逆の原理であり,水素と酸素を電気化学反応させ電気を作るものである.化学反応をまとめるとつぎのようになる.

(負極)H2 → 2H+ + 2e-
(正極)(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O
(全体)H2 + (1/2)O2 → H2O

 この反応を行うため,燃料電池は,電極となる両側のカーボンと電解質の間に触媒として作用する白金で合成された燃料極を入れた構造となっている.そして,燃料極には水素,電極には酸素が流れるようセパレータで密閉した板状のセルを基本単位とする.一つのセルが発生する電圧は約0.7[V]と低いため,必要な電圧を得るために,セルスタックというセルを積み重ねた構造とする.

 燃料電池には,その材料や方式の違いによりいくつかの方式があるものの,固体高分子膜形燃料電池PEMFC(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)方式が採用されている.PEMFC方式は,起動が早く,運転温度も80~100℃と比較的低い.触媒には高価な白金を使用するものの,室温動作であり小型軽量化が可能なため,自動車用の燃料電池となったのである.

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2018年5月15日 (火)

EV,FCV,HV(15)

8.2.1.FCV構成
 FCVの構成は,電子制御装置,ACモータ,パルス幅変調(PWM)インバータ,トランスミッション,駆動用バッテリーとなる.この構成はEVと基本的には同じである.

 FCV特有のものとしては,高圧水素タンク,FCスタック,昇圧コンバーターがある.高圧水素タンクは,燃料電池に供給する水素の貯蔵庫である.FCスタックは燃料電池本体であり,発生した電気を一旦昇圧する昇圧コンバーターと電気をモータへ送る駆動バッテリーから構成されている.原理的には,燃料電池で発生した電気で,直接DCモータを駆動することが可能であるが,ACモータを使用して効率的に使える電圧に昇圧することが一般的である.

 昇圧コンバーターはEVでも使うことがあるため,FCVだけに必要な技術は,燃料電池のFCスタックと,高圧水素タンク,および高圧水素の制御技術である.

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2018年5月14日 (月)

EV,FCV,HV(14)

8.2.FCV(Fuel Cell Vehicle)
 EVが航続距離を延ばすためには電気容量の大きい二次電池が必要となる.このため,各種二次電池の研究開発が進められているが,二次電池の代わりに燃料電池を積んで航続距離をガソリン自動車並に延ばそうと考えたものが燃料電池自動車(fuel cell vehicle:FCV)である.

 FCVは,水素と酸素の化学反応によって発電する燃料電池を使う.駆動方法はEVと同じくモータであるが,燃料として水素を使用するため,必要なインフラ(水素ステーションなど)や水素タンク等の貯蔵・制御方法がEVとは大きく異なるため,FCVとして区別することが一般的である.

 FCVの長所として,次の点が挙げられる
・走行時の排出が水蒸気のみである
・エネルギー効率が高い
・石油以外の多様な燃料が利用可能である
・騒音が少ない
・充電が不要である

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・コストが高い
・燃料供給インフラが必要である

 本節では,まずFCVの構成を説明し,続いて,FCVの特徴である燃料電池のしくみと高圧水素タンクについて説明する.

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2018年5月13日 (日)

EV,FCV,HV(13)

5)キャパシタ(capacitor)
 ここまで説明してきた電池は化学反応で電気を発生させていたが,化学反応ではなく,電荷そのものを蓄積するいわゆるコンデンサを使ったものもある.そのデバイスをキャパシタという.蓄積容量を上げると,二次電池として使える可能性があり,電気二重層コンデンサ(electric double-layer capacitor)の大容量化が研究開発されている.しかし,EV用ほどの大容量化がまだ難しく,HV用の比較的小容量のものが実用化されている.

 電気二重層キャパシタは,図8・12に示すように電極材料に活性炭が使われ,電解液と電極の界面付近に電荷が配向する電気二重層現象により電荷を蓄える.化学反応により電気を蓄える二次電池と異なり、活性炭表面におけるイオンの物理的な吸着だけでエネルギーを蓄える.必要となる電圧を得るため,複数のセルをつなぎ合わせたバンク構造で使用するが,各セルの電圧のバラツキを抑えるためのバランス回路が必要になる.

 キャパシタの長所としては次の点が挙げられる.
・内部抵抗が低く短時間で充放電が行なえる
・充放電による劣化が少ないので製品寿命が長い

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・電圧が低い
・自己放電によって時間と共に失われる電気が比較的多い
・充放電時に電圧が直線的に変化する
・価格が比較的高い

 キャパシタは,単独でEVのエネルギーを全てまかなえるほどの大容量は難しいものの,他の二次電池を補完する補助電池やHV用として実用化されている.

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2018年5月12日 (土)

EV,FCV,HV(12)

 EVの実用化課題の航続距離,充電時間,電池寿命,安全性,重量,コストは,すべて二次電池そのものの課題である.リチウムイオン電池は,これらの課題に直結するエネルギー密度を上げると安全性が下がるため,これ以上の向上は難しく,コストを下げるのも難しい.そこで期待されているのが,全固体電池である.

 全固体電池とは,リチウムイオン電池の電解液を固体にしたものである.リチウムイオン電池は電極での酸化還元反応がないので,電解質は単にリチウムイオンの通り道の役割でしかなく,その通り道を固体に変えたのが全固体電池である.電解質を液体から固体に変えるだけでは,界面抵抗値が大きくなり,液体の電解質を超えるものにはならない.しかし,スズ,ケイ素,塩素等で組成した固体電解質を使うと液体よりも性能が向上する.

 全固体電池の長所には次の点が挙げあれる.
・エネルギー密度が上がりEVの航続距離が向上する
・超高速充電が可能
・長寿命化
・設計の自由度が大きい
・電解液を使わないので液漏れに起因する発火事故がなくなる
・自己放電

 しかし,次の欠点もあわせ持つ.
・固体電解質そのものが燃えやすい
・量産方法が確立していない

 全固体電池は,EVの課題の中の航続距離,充電時間,電池寿命を解決する可能性があるので,大いに開発が期待されている.

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2018年5月11日 (金)

EV,FCV,HV(11)

3)リチウムイオン電池(lithium-ion battery)
 リチウムイオン電池は,電解質中のリチウムイオンが電気伝導を行う二次電池であり,正極にリチウム金属酸化物,負極にグラファイト等の炭素材を用いる.従来の鉛蓄電やニッケル水素電池では,電極と電解質の間で酸化還元反応が行われ,電極間を流れるイオンは電解質由来のものである.ところが,リチウムイオン電池では,電極と電解質で化学反応は起きず電解質の中をリチウムイオンだけが移動するという特徴を持つ.このような電池を,ロッキングチェアー型またはシャトルコック型電池と呼び,電解液はリチウムイオンの通り道としての役割しかない.
 
 放電時の化学反応はつぎのとおりである.
(負極)LiCoO2 → Li1-xCoO2 + xLi+ + xe-
(正極)Li1-xCoO2 + xLi+ + xe- → LiCoO2
(全体)Li1-xMO2 + CLix → LiMO2 + C

 充電時はこの逆の反応が起こる.

 リチウムイオン電池の長所としては次の点が挙げられる.
・得られる電子がxe-とx倍になるため,他の二次電池よりもエネルギー密度が高 い
・メモリー効果が無い
・自己放電がニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池の1/10程度と非常に少ない

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・過放電、過充電共に異常発熱の危険性があり、保護回路が必須である
・大電流放電に適さない
・低温特性がニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池よりも劣る

 リチウムイオン電池は鉛蓄電池やニッケル水素電池より同じ体積で電気容量を増やせるため,上記短所を克服しながらEV用として用いられている.

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2018年5月10日 (木)

EV,FCV,HV(10)

2)ニッケル水素電池(nickel–metal hydride battery)
 ニッケル水素充電池は,正極に水酸化ニッケル,負極に水素や水素化合物,電解液に濃水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を用いる二次電池である.放電時の化学反応はつぎのとおりである.

(負極)MH + OH− → M + H2O + e−
(正極)NiOOH + H2O + e− → Ni(OH)2 + OH−
(全体)MH + NiOOH → M + Ni(OH)2

 充電時はこの逆の反応が起こる.

 ニッケル水素電池は,ニッケルカドミウム電池のカドミウムを水素吸蔵合金に置き換えたものであり,長所としては次の点が挙げられる.

・有害物質であるカドミウムを含まない
・ニッケルカドミウム電池よりも容量密度が高い
・内部抵抗が小さく、大電流放電が可能である
・低温特性に優れ低温時の電圧降下が少ない
・ニッケルカドミウム電池よりメモリー効果が小さい

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.

・過放電に弱く,完全放電すると電池が劣化し容量の低下が起こる
・自己放電が大きい

 ニッケル水素電池は,次に述べるリチウムイオン電池よりもエネルギー密度は低いものの,リチウムより安価なニッケルを使うためコストが安く,低温にも強いため,通常の自動車の使用条件と同等でコストの上昇を抑える必要のあるHVで用いられることが多い.

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2018年5月 9日 (水)

EV,FCV,HV(9)

1)鉛蓄電池(lead-acid battery)
 鉛蓄電池は,正極に二酸化鉛(PbO2),負極に鉛,電解液に希硫酸を用いる二次電池である.放電時の化学反応はつぎのとおりである.

(負極)Pb + SO42- → PbSO4 + 2e-
(正極)PbO2 4H+ + SO42- + 2e- → PbSO4 + 2H2O
(全体)Pb + PbO2 + 2H2SO4 → PbSO4 + 2H2O

 充電時はこの逆の反応が起こる.

 鉛蓄電池の長所としては,次の点が挙げられる.
・容量当たりのコストが安い
・微弱電流から大電流まで,広い範囲で放電が安定している
・メモリー効果が無い

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・他の二次電池と比較して体積エネルギー密度、重量エネルギー密度が小さい
・過放電に弱く,過放電が発生すると性能が大きく低下し回復しない
・電解液に硫酸を使用するため破損時の危険が高い
・極寒時に電解液の凍結破損の危険性あり

 鉛蓄電池は,単セル あたり2[V]と比較的高い電圧を取り出すこともでき,正極と負極となる電極材料の鉛のコストも安価なため,二次電池の中では最も生産量が多い.しかし,他の新型電池の性能の向上によって鉛蓄電池の短所の方が目立つようになり, 鉛蓄電池を採用する新型EVはなくなりつつある.

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2018年5月 8日 (火)

EV,FCV,HV(8)

8.1.2 二次電池(rechargeable battery)
(1)電池の基本的なしくみ 
 EVの航続距離を決定する重要なキー技術が二次電池である.

 二次電池の充放電の仕組みを,亜鉛と銅の金属を用いたダニエル電池で説明しよう.まず,放電時は,電解液に溶けやすい金属でできている負極の亜鉛が電子を残して電解液に溶けて亜鉛イオンになる.電子は電線を通って銅の正極へ流れる.正極では流れてきた電子と電極の周りで電解液に含まれている銅イオンが結びついて,銅が析出する.負極,正極また,全体で起こっている化学反応をまとめるとつぎのようになる.

(負極)Zn → Zn2+ + 2e-
(正極)Cu2+ + 2e- → Cu
(全体)Zn + Cu2+ → Zn2+ + Cu

 なお,放電を続けると負極の亜鉛が,やがて全部溶けてなくなってしまい,反応できなくなる.

 充電は放電とは逆の反応で,電池外部の電線から逆向きに電流を流すことで,正極で析出した金属を電解液中に溶かし,負極で金属を析出させる.

(2)各種電池
 自動車に使われる主な二次電池としては,古くから使われて来た鉛蓄電池,8.3節で説明するHVの登場で普及したニッケル水素電池,そして,これからの主流になるリチウムイオン電池がある.更に,実用化が望まれる全固体電池がある.それぞれ電極や電解物質等の素材が異なる.ここでは,各種電池のしくみについて説明する.

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2018年5月 7日 (月)

EV,FCV,HV(7)

4)インホイール・モータ方式
 ここまで説明してきたモータ方式では,ガソリン自動車と同様に,動力源から動力輪までに距離があった.動力源と動力軸を直結することにより,画期的にそれを短くしたのが,インホイール・モータ方式である.動力源と動力軸の距離があるほどエネルギー損失が大きくなるため,インホイール方式は動力エネルギーをそのまま動力軸に使えるといえる.

 インホイール・モータ方式は直結減速機構を持つ方式と持たない方式がある.減速機構を持つ理由は,モータの大きさと最大発生トルクはほぼ比例するため,減速機構を用いてモータの大きさを小型軽量化するためである.減速機構方式では遊星歯車でモータ速度を減少させる.モータシャフトとホイール・ハブの間に設定される遊星歯車のギヤ比は10:1程度となる.

 減速機を持たない方式では,ハブの回転側に回転子が直接取り付けられており,固定子はハブの固定側に取り付けられる.そのため,モータの速度制御が直接輪速,車速の制御となる.

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2018年5月 6日 (日)

EV,FCV,HV(6)

3)SR(switched reluctance)モータ方式
 最近注目され始めているのがSRモータである.SRモータは,電子制御装置,SRモータ,SRコンバータ,およびトランスミッションから構成されている.

 SRとは,スイッチト・リラクタンスの頭文字である.SRモータ は,ステータに捲かれた巻き線に流す電流を切り替えてロータを回転させる.SRモータの原理は19世紀初頭から考えられていたが,パワーエレクトロニクス素子が実用化されて,ようやく使えるようになった.

 SRモータの長所はつぎのとおりである.

・永久磁石が不要である.
・ロータに巻き線がないため,堅牢かつシンプルな構造で,高速回転域でも高効率が維持できる.

 永久磁石には希土類元素(レアアース)が用いられており,レアアース価格の高騰により,SRモータが注目を浴びているという面もある.しかし,トルクリップルが他のモータよりも大きいため,モータ単体での振動・騒音を軽減するための工夫が必要である.

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2018年5月 5日 (土)

EV,FCV,HV(5)

2)ACモータ方式
  DCモータ方式に代わって利用が広がっているのが,交流を使うACモータ方式である.ACモータは,電子制御装置,ACモータ,パルス幅変調(PWM)インバータ,およびトランスミッションから構成されている.PWMインバータは,ACモータ用に直流電源を交流に変更し,更にACモータの回転速度を制御するものである.インバータ回路のパワーデバイスには,IGBT(insulated gate bipolar transistor)が用いられる.ACモータの特徴はつぎのとおりである.

 ・周波数に応じた一定の回転速度を保ち、回転速度のムラが少ない.
 ・トルクのムラも少ない. ・耐久性がある.
 ・ 大型化が可能.
 ・制御装置はDCモータ用より複雑になる.

 ACモータには,誘導モータと同期モータがよく使われる.

  誘導モータとは,固定子の回転磁界によって、回転子に誘導電流が生じて、それが磁極を作り回転する仕組みのモータである.代表的なものとして,回転子に巻き線を利用する巻線型とかご型の回転子を利用するかご型がある.コスト,メンテナンス,耐久性等の点から,EVではかご型誘導モータが多用されている.

 同期モータとは,回転子が永久磁石か電磁石,または鉄になっており,固定子のコイルに流す電流(励磁電流)の周波数に対して回転子のスピードが同期する.誘電モータの方が制御は難しいものの,高回転域を使う用途に適している.同期モータは低回転・高トルク域を多用する用途に向いている.

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2018年5月 4日 (金)

EV,FCV,HV(4)

(2)モータの方式
 前節ではDCモータを使ってしくみを説明したが,DCモータのほかにも,交流を使用するACモータがある.また,永久磁石や整流子を使わないSRモータも開発されている.DCモータ,ACモータ,SRモータいずれもEVに使われている.ここでは,それらのしくみの違いについて説明する.自動車用として特別に開発された車輪のハブ内部に装着するインホイール・モータも使われているので,これについても説明する.

1)DCモータ方式
 DCモータは,主要コンポーネントであるDCモータとDC-DCコンバータ,また電子制御装置,トランスミッションから構成されている.DC-DCコンバータは直流チョッパともいい,速度に応じてON時間とOFF時間の比率(デューティ比)を変えて平均電圧を変化させ,モータの速度を制御する.

 磁界を発生させる磁石を界磁といい,DCモータは界磁の方式によって次の三つに分類される.
1)電磁石界磁型・自励方式~ステータが電磁石で,ロータとは同電源
2)電磁石界磁型・他励方式~ステータが電磁石で、ロータとは別電源
3)永久磁石界磁型    ~ステータを永久磁石にしたもの
なお,電磁石界磁型には,電機子とコイルを直列に配置する直巻方式と,並列に配置する分巻モータがある.

 DCモータの欠点としては,つぎのことがあげられる.
・入力電圧が変動するとトルク変動が起こるため,モータ速度が制限される.
・ブラシが摩擦と無線周波妨害の原因となる.
・大型化が難しい.
また,摩擦によってブラシが消耗するため,整流器とブラシの定期的なメンテナンスが必要である.

 DCモータは初期のEVから長期にわたって使われてきたが,効率がわるくメインテナンスが必要なため,現代では他の方式にとって代わられている.

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2018年5月 3日 (木)

EV,FCV,HV(3)

8.1.1.モータ
(1)モータの基本的な仕組み
 モータは,永久磁石(固定されているのでステータという),電流が流れるコイル(回転するのでロータという),コイルと連動している整流子,コイルに流れる電流の向きを変えるためのブラシから構成されている.単純な直流モータ(DCモータ)を例にモータの基本的なしくみを説明する.

 電圧をかけて一方のブラシに電流を流すと,整流子コイル,整流子の順に電流が流れ,もう一方のブラシに至る.このとき磁界が発生し,磁石のはたらきにより,コイルの向きが変わる.これが繰り返されることでコイルが回転する.モータでは,この回転運動を動力にする.コイルの回転運動は電圧の高低に比例するので,電圧によって最終的な動力を制御する.電圧の極性によってコイルを逆転させることも可能である.

 実際のモータは,180°回転で相が変わる基本的なコイル構成ではなく,より滑らかに安定するよう3相のコイルで構成されていることが多い.また最近では,位置センサでロータの回転位置を検知し,インバータ回路でコイルへ流れる電流方向を切り替えてU相,V相,W相の磁力の向きを変えることでブラシを不要としたブラシレス・モータがある.ブラシ付きのモータは低コストなどの長所があるが,摩擦による騒音があり,また摩擦があるためブラシに寿命があるなどの問題もある.ブラシレス・モータはそのような問題を解決したもので,今後,寿命と静音が望まれメンテナンスがやりにくい分野に使わるものと思われる.

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2018年5月 2日 (水)

EV,FCV,HV(2)

 電気自動車(electric vehicle:EV)は,ガソリン自動車がガソリンを燃料として内燃機関であるエンジンで動力を得ているのに対して,バッテリーに蓄積した電力でモータを回して動力を得ている.

 電気自動車の基本的なパワートレイン構成は,バッテリー,コントローラ,インバータ,モータである.バッテリーでつくった電気を,直流モータ(DCモータ)を使用した場合は電圧をインバータで増幅し,交流モータ(ACモータ)の場合はインバータで直流から交流に変換してその電気でモータを回し,動力源としている。

 EVは,動力源以外に変速機やブレーキシステムがEV用に変更されるものの,構成は基本的にガソリン自動車と同じであり,その構成でとくに重要となるのが,モータとバッテリー(電池)である.本節では,モータとバッテリーのしくみについて説明する.

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2018年5月 1日 (火)

EV,FCV,HV(1)

 以前に掲載した自動車工学を見直しているので、今月は何章かを再掲する。まずは、8章のEV、FCV、HVから。

 第2章で説明した内燃機関を動力源としたガソリン自動車が20世紀に目覚ましく進歩した一方で,1920年頃以降,電気モーターを動力源とした電気自動車EVは廃れていった.しかし,21世紀に入り,環境問題やエネルギー問題が深刻化するとともに,再びEVが注目され始め,開発が大幅に進んでいる.

 環境を配慮した自動車としては,電気を充電したバッテリーだけで走るEV以外にも,電気を自ら発生させる燃料電池自動車FCVや,ガソリンやディーゼルエンジンと電気モーターを両方備えるハイブリッド自動車HVの開発も進んでいる.

 ガソリン自動車に対して,これらEV,FCV,HVなどを次世代自動車という.本章では,それら次世代自動車の特徴的なしくみについて説明する.

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