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2018年8月31日 (金)

ドライバ状態(11)

 運転に使う筋肉の状態を計測することによって、ドライバへの負荷がわかる。計測方法としては、表面筋電図を用いる。

 表面筋電図は筋肉の収縮によって生じた電気信号を計測した波形である。波形の大きさは、そのまま筋力と見てよい。

 筋力の指標は、最大随意収縮MVC(Maxima Vountary Contraction)時の筋力の何%を使ったかというものが使われる。MVCの10%の使用でも繰り返すと筋疲労が起きる。筋疲労が起きると、発揮できる筋力が低下し、表面筋電図における振輻の増大と低周波化が出現する。速筋繊維の多い部位の方が、遅筋繊維の多い部分より疲れたときの低周波数化が大きい。筋力と共に運転姿勢の評価も重要である。運転姿勢の計測は、快適性向上や疲労低減、操作性向上の他、事故時の障害軽減、脇見検知、頭部の動揺による車酔いの防止に役立つ。更に、シートに対してどのように過重をかけているかを、体圧分布の計測によって評価する。

 体圧分布で座り心地やディストラクションが起きているかどうかがわかる。また、猫背になる度合いや座り直しを体圧分布から測定し、運転疲労や眠気の程度を推定することも可能である。

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2018年8月30日 (木)

ドライバ状態(10)

 皮膚電気活動EDA(Electrodermal Activity)も自律神経系の指標となる。なぜなら、汗腺活動が未梢交感神経に支配されているためである。

 手のひらや足の裏の発刊は精神性発汗部位であるため、その皮膚電気水準は覚醒水準を反映する。皮膚電気反応は剌激や情動にも反応し、心拍のようにDRやORでの違いはない。

 また、皮膚温(Skin Temperaure)も自律神経系の指標である。計測は単純に、サーミスタや熱電対を皮膚表面に貼り付けて計測する。赤外線カメラを用いれば非接触計測も可能である。注意としては、計測部位に直射日光や風が当たらないようにすることである。必ずしも線形にならないものの、皮膚温は皮膚血流が増えると上昇する。精神的ストレスや情動により、末梢交感神経が活発になると血管収縮が起こり、血流量が減少することによって末梢皮膚温が低下する。逆にリラックスしたり覚醒度が低下すると上昇する。精神負荷による皮膚温低下では鼻部への影響が大きいため、体幹温度に近い額との差を指標にすることが可能である。

 ORでも血管収縮が起こり末梢皮膚温が低下するものの、心拍よりも反応が遅い。抹消皮膚温は大きな呼吸や喫煙でも低下するので、注意が必要である。

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2018年8月29日 (水)

ドライバ状態(9)

 次に用いられる自律神経系の指標は、血圧である。血圧自体が自律神経が制御する目的変数なのである。

 したがって、血圧がわかれば自律神経の状態は判明する。ところが、運転中に無理なく正確な血圧計測の実現困難なところに難がある。

 運転中でも無理なく計測できるものとしては脈波である。脈波は指先や耳たぶから計測可能であり、心拍数とみなすことができる。しかし、心臓から血管を通して得られる鼓動なため、心拍から丸まっているため精度が悪くなっている。特に心拍変動の計算に影響する。また、指先では脈波振幅PLA(Pulse Amplitude)は弱まり、逆に耳たぶでは強まることもある。これは定常反射が起きたとき、指先では血管が収縮し頭部では血管が拡張するためである。脳により多くの血流を送り、新しい情報を理解しようという身体の仕組みとされている。

 呼吸も自律神経系の指標として使うことができ、休息時は深くゆっくりした呼吸、緊張・不安時は浅く早くなる。注意を集中するときや驚いたときは一時的に停止させ、息を呑むという表現もあるほどである。

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2018年8月28日 (火)

ドライバ状態(8)

 自律神経系の指標として使われるものは、心拍や呼吸数である。特に、心拍は各種心拍計で計測可能なため、実用性が高い。

 医療用の心電図には各種心拍波形にPQRSTというように名称が付いており、心拍解析には一番大きい鼓動を現すR波を用いる。

 R波の最大値の間隔をRRI(R R Interval)と呼ぶ。脈の間隔はほぼRRIと見なせしてよいものの、厳密にはRRIとは異なる。RRIがわかれば一分あたりの心拍数HR(Heart Rate)がわかり、心拍数の変化で自律神経の働きを推定可能となる。一般的にHR上昇は身体や精神負担の指標、HR低下はリラックス度や覚醒低下の指標となる。また、外界に意識を集中するとHRは低下し、内面に意識を集中するとHRは上昇する。防御反射DR(Defective Reflex)でHRは上昇し、新規刺激に対して起こる定位反射OR(Orienting Reflex)ではHRは低下する。トライバ状態に関連させると、緊張場面ではHRが上昇し、疲れるとHRは低下する。

 更に、RRIの変動を心拍変動HRV(Heat Rate Variability)と呼び、RRI変動の周波数成分で解析する。高周波成分HFは副交感神経に関連し、低周波成分LFは交感神経に関連する。

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2018年8月27日 (月)

ドライバ状態(7)

 運転に必要な外界情報の90%以上は視覚情報である。そのため、視覚系の生体計測で得るものは多い。

 指標として使えるものは、眼球運動、視野、瞬目、瞳孔である。眼球運動の測定には、視線検出も含める。

 眼球運動は、随意的なものか不随意的かによって意味合いがことなる。随意的眼球運動とは、意識した視線の動きや注視するときの両眼が内側に輻輳するものが代表事例である。不随意的眼球運動とは、無意識的または反射的、もしくは生理的に常時起きている眼球運動である。頭が動くと自然と注視点を見るためにおこる前庭動眼反射VORや固視微動等がある。VORは眠気により遅れるため、これを正確に検出できると眠気予兆に使える。また、高速に眼球を動かすサッカードはメンタルワークロードの指標として用いられる。視野については、視覚的な負荷が増加すると有効視野が狭窄することが知られている。瞬目は、覚醒水準の推定のために用いられる。

 瞳孔を収縮するのは副交感神経、拡大するのは交感神経に支配されている。そのため、眠気や疲労で縮瞳し、興奮すると散瞳するものの、明るさ変化による瞳孔変化の影響度の方が大きいため実用化が難しい。

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2018年8月26日 (日)

ドライバ状態(6)

 脳波の研究は1929年に始まった。以来、脳波と心的状態との対応関係が明らかにされつつある。

 定常脳波の周波数帯域研究では、脳波をデルタ波(0.5~4Hz)、シータ波(4~8Hz)、アルファ波(8~13Hz)、ベータ波(13~30Hz)、ガンマ波(30~Hz)と分け、覚醒状態との対応付けがわかっている。覚醒状態では、ベータ波、ガンマ波が優勢になり、覚醒水準が落ちてくるとアルファ波が増え、眠気が強くなるとシータ波が活発になり、入眠するとシータ波となる。

 また、特定の認知情報処理が行われたときに惹起する数十μVの電位変動を事象関連電位と呼び、数々の認知行動と頭のどの部位で発生するかがわかっている。例えば、顔や自動車の正面画像を認識したとき、後頭・右側頭部に事象関連電位が惹起することが有名である。また、作業に集中すると前頭部にシータ波が出現したり、ある動作を行ったりその動作のイメージをするだけで中心溝周辺のアルファ波の振幅が減衰する。特にこの現象は、ブレイン・マシーン・インタフェースの指標に使われている。

 事象関連電位はドライバ状態検出に有効にみえるものの、定常脳波よりも弱い信号のため一回の計測では観測できない。つまり、何回も同イベントを起こして脳波を加算平均処理しばければ検出不可能な信号のため、リアルタイムに使えないのである。

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2018年8月25日 (土)

ドライバ状態(5)

 ドライバ状態を客観的に捉えるため、生体計測が必要となる。なぜなら、ドライバ状態は、神経系、感覚器系、運動器系、循環系、消化器系、呼吸器系、内分泌系、免疫系に影響し、その影響を生体計測で観測可能だからである。

 生体計測の利点は、客観的な計測が行えること、定量的な計測が行えること、余分な作業負担をかえずに計測できること、ドライバ本人が意識しない変化を計測できること、生理メカニズムに基づく解釈が行えること等である。しかし、生理指標の現れ方は個人差があり、個人でも日内変動や食事や運動の影響を受けやすく扱いにくいものでもある。

 生体計測から得られた指標からわかるとされるドライバ状態は、次のようなものがある。脳波からは、覚醒レベル、リラックス度、慣れ、注意、期待、運動の意思。眼球運動からは、熟練度・ヴィジランス等の情報取込み意図、注意の範囲、興味、不安。瞬目からは、覚醒水準、注意集中、視覚刺激への興味、いらいら・不安。自律神経系指標からは、驚き・ヒヤリハット、緊張・興奮、注意集中、倦怠。筋骨格筋系指標からは、運動の意思(随意筋)、感情(表情筋)、精神緊張(運動に不要な筋の活動)、筋疲労。

 これらの指標が正しく得られたとしても、人の状態と観測量が線形になることはまずない。良くてもシグモイドであり、逆U字等になると解釈を間違えるので注意が必要である。

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2018年8月24日 (金)

ドライバ状態(4)

 車好きには、ドライバ状態をプラスにするものが何かは直感的にわかると思う。それは運転の楽しさである。

 運転の楽しさはチクセント・ミハイのフロー理論や、レースで重要なゾーン理論で説明可能である。自動車が人間に与えるプラスの影響は運転の楽しさだけではなく、人間を幸福にする道具そのものという考え方もある。

 人の幸福感の中で主観的幸福感は、生活満足感、感情、徳の三つの要素により成り立つ。これは経済的に数値化される客観的幸福感とは異なる。自動車を持っていれば行きたい所へ行きたい時間に行くことができ、これは生活満足感そのものに繋がる。感情面では、フロー体験を生じさせることで関係することがわかる。フロー体験は、新しい可能性を探るようになる等人生にプラスになる効果がある。そして、自動車に乗っていると、不必要にアクセルをふかさないとか、燃費の良い運転を心がけて環境に寄与しようという徳の面でも意識が高まる。つまり、自動車は人の徳をも向上させる道具といえる。

 自動車は、生活満足感、感情、徳という主観的幸福感の三要素に貢献する道具なのである。この考え方を知りつつ、更なる自動車技術の発展を考えてみよう。

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2018年8月23日 (木)

ドライバ状態(3)

 ドライバ状態でもう一つ知っておかなければならない負の側面は、車酔いである。車酔いが起きる状況とメカニズムを理解しておかなければならない。

 人類が初めて乗り物酔いに遭遇したのは、船を発明したときである。以来、発明される乗り物すべてで酔いが発現し、動揺病という正式な名称も付いている。

 1Hz以下の往復運動を動揺と呼び、乗り物酔いはまさに1Hz以下の揺れで発症するため動揺病と呼ばれる。動揺病は実際の身体に対する揺れだけでなく、視覚刺激だけでも発症することは、ドライビングシミュレータを使っているわれわれがよく知るところである。そのため、動揺病のメカニズムとしては、視覚や感覚器官(半規管、耳石器)の感覚に矛盾があると発症するといわれている。つまり、感覚情報の組み合わせの過去の記憶と異なると酔うというわけである。したがって、感覚矛盾に慣れると発症は収まる。慣れ(トレーニング)の間隔は1週間以上開けると効果がないこともわかっているので、2~5日間隔で体験するとよい。

 年齢別では、12~15歳が発症しやすく、幼児は乗り物感覚の記憶がないので酔わない。また、加齢と共に酔わなくなり、女性や感受性が高い人は酔いやすい。

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2018年8月22日 (水)

ドライバ状態(2)

 ドライバ状態で最も重要なものは眠気である。実際、眠気が生じる時間帯で交通事故が多発している。

 そこで、眠気が生じる生体メカニズムを理解しておくことが重要であり、眠気対策もそのメカニズムに即したものが妥当である。眠気は脳内の睡眠中枢と覚醒中枢によって調整されている。

 睡眠中枢は、1種類の神経伝達物質γアミノ酪酸(GABA)を介して作用する単純なメカニズムである。ところが、覚醒中枢は、多種類の神経伝達物質(ヒスタミン、オレキシン、ドーパミン、セレトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリン等)を介して作用する複雑なメカニズムとなっている。抗ヒスタミン剤を飲むと眠くなるのは、覚醒物質を阻害するからである。眠気を誘う要因は、睡眠不足、体内時計、睡眠惰性の3要素がある。睡眠不足は言うまでもない。身体にはさまざまな体内時計があり、脳内の視交叉上核にマスタークロックによって協調され、眠気に関する体内時計の調整を受ける。睡眠惰性とは、起掛けの覚醒度が低下した状態で、二度寝したくなる状態のことである。

 睡眠不足になると、睡眠誘発物質が蓄積して眠くなる。また、仕事を続けると脳神経細胞間の結合量が増加し、これを解消するため睡眠が誘発される。

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2018年8月21日 (火)

ドライバ状態(1)

 当研究室の課題の一つ「ドライバ行動の解析」の基礎として、当面の間、関連事項の基礎的なことをまとめて行く。先ずは、ドライバ状態から。

 ドライバ状態は運転する時間によって変化する。変化する程度やかかる時間は、ドライバへの負荷、ワークロード、ストレスによって異なる。

 負荷、ワークロード、ストレスは混同して使い勝ちなので、これらの意味を明確に使いわけよう。「負荷」を用いるときは、ドライバに負担がかかり疲労させるときを想定している。負荷は肉体的でも精神的でもよい。これに対し、ワークロードを用いるときは、単に疲労だけに繋がるのではなくドライバのプラスになる状態変化(ウォーミングアップや活性化)に繋がるときに用いる。そのため、単にワークロードとは言わずメンタルワークロードと、精神的なタスクが伴う。ストレスは、もともと外部の有害刺激に対する非特異的な適応症候群のことであり、そのときの運転環境に対するドライバの対応能力を問うときに用いる。

 運転負荷、運転ワークロード、運転ストレスと並べると同じ意味としか思えなくなる。これからは、明確に使い分けよう。 

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2018年8月20日 (月)

車載LiDAR(20)

 LiDARが自動運転の標準センサになるため、開発環境も整備されつつある。スタンフォード大学の自律走行車プロジェクトがGoogleカーのベースになったように、スタンフォード大学で開発されたROS(Robot Operating System)がロボット走行の標準アプリケーションとして使われている。

 ROSはロボット走行のための認識と制御の基本的なアルゴリズムが実装されており、認識で使われるSLAMは、ポイントクラウドが取得できるセンサを前提としている。すなわち、LiDARによるセンシングが前提なのである。

 ポイントクラウドが得られるセンサは、LiDARだけではなくステレオ画像処理で画素毎に測距可能なKinect等もある。しかし、Kinectの検出距離が数mしかないため、屋外での使用を考えるとLiDARしか実用性はない。更に、ROSからポイントクラウド処理に特化したPoint Cloud Library(PCL)も出現した。また、ROSのSLAM機能をベースとして、公道の自動走行を可能とするAutowareが名古屋大学から発表されている。

 ROS、PCL、Autowareを使うとLiDARベースの自動運転が容易に実行可能となる。しかし、今回説明したアルゴリズムは単純なものばかりなので、初めは自分でスクラッチからプログラミングしてみよう!

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2018年8月19日 (日)

車載LiDAR(19)

 今ではお馴染みのぶつからない車は、ボルボのシティーセーフティから始まった。導入は2009年である。

 シティーセーフティで採用された車間距離センサは、固定ビーム方式のLiDARである。当時、ミリ波レーダに押されて日本からは車載LiDARが消えた頃のことだった。

 シティーセーフティのLiDARは車室内のルームミラー前方、かつワイピングエリア内に搭載されており、雨天時もLiDAR前面のウィンドウシールドの雨粒をワイパが払拭し、雨天でも使えるようにした。追突事故が低速(30km/h以下)で多発することに着目し、作動領域を30km/hまでとした。また、搭載車両の前方地面7mに向けてレーザ光を送射して、遠方の余分な反射光を排除し、誤動作を抑制している。30km/hまでの自動ブレーキで、ドライバのシステム依存を防止するため常に急ブレーキをかける仕様なら、数mの車間距離がわかればよいのである。また、30km/hなでなら、前走車が水しぶきをあげることもなく正確に車間距離を計測できる。

 このシティーセーフティに採用されたLiDARは、1990年代初頭にSクラスに搭載されたACC用のLiDARそのものなのである。初めて登場したLiDARが、現代の自動ブレーキの先鋒として蘇ったのである。

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2018年8月18日 (土)

車載LiDAR(18)

 自動運転技術が必要な分野は自動車だけではない。AGV(Automated Guided Vehicle)の高度化やドローンの自律飛行等、自律移動ロボットの範疇となる分野はすべて対象となる。

 自律移動ロボットはインフラを不要とするところに特徴があり、自動運転同様、自己位置推定と障害物認識が必要な技術となる。そのため、低コストなLiDARの量産が望まれている。

 ベンチャーの多くは、車載LiDARだけではなく自律移動ロボット用としても使えるように考えているのではないだろうか。レーザ光を発生させるLDは、検知距離を伸ばすためには高出力にする必要があるため、コストを抑えようとすると複数使用は難しくなる。そこで、LDを1個だけを回転させて水平方向に360°スキャンする方式(2D-LiDAR)が最も低コストな構成になるものと思われる。このようなLiDARが100$で販売されれば、一気に高機能AGVや自律飛行ドローンが実現可能になるはずである。このとき水平面の距離情報だけでは情報量が足りないため、補間はカメラを用いればよい。

 本研究室で2D-LiDARと360°カメラを組み合わせた環境認識系を開発しているのは、こういう理由による。距離情報(D)と映像情報(RGB)の組み合わせはRGB-Dデータと呼ばれ、当面、RGB-Dデータを使った環境認識が研究トレンドになるだろう。

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2018年8月17日 (金)

車載LiDAR(17)

 ヴァレオLiDARの製造元は、前述のドイツのIBEO社である。ミラーだけを回転させる方式で量販トライを続け、やっとアウディA8で花開いたのである。

 ミリ波レーダはフェイズド・アレイ方式のため、機械的なスキャニング機構はない。そのため、機械的なスキャニング機構を敬遠する自動車メーカもあり、メカレスによるスキャニング機構を採用するLiDARが望まれている。

 LiDARの将来性を見込んで、欧米では多くのベンチャーが数年後の100$LiDARの販売を謳っている。しかし、車載部品は品質への要求が厳しく、車載経験のない部品メーカーでないと実現が厳しい。そのため、LiDAR開発開始をアナウンスしたボッシュやコンチネンタル等の大手電装部品メーカーの登場が待たれる。日本では、パイオニアがMEMS方式によるLiDAR販売を公表しており、かつてスキャニングLiDARを販売していたデンソーにも期待したい。

 自動運転のレベル2は、今後30年のトレンドになると思われる。車載LiDARは標準装備になる可能性があり、量販に参入する部品メーカーも増えるだろう。

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2018年8月16日 (木)

車載LiDAR(16)

 悪天候による視界不良時でも自動運転ができるということは、ドライバの監視義務が免除されるレベル3ということになる。人間の視覚機能を超えるセンシング技術ができないと、常時レベル3の実現は難しい。

 また、レベル3でシステムが正常に作動しているにも係わらず、事故が起きればシステムの責任、つまり製造メーカーの責任になる。そのため、レベル3の商品化のハードルは高い。

 オーナーカーの自動運転ではなく、タクシーの代替となる自動運転サービスでは遠隔モニタリングを加えてレベル3以上のサービスが実現可能といわれている。そのような自動運転サービスではLiDARは十分使える。オーナーカーの自動運転ではレベル2であれば、ドライバの監視義務があるので悪天候を気にしなくてもよくなる。車載カメラによる画像処理も悪天候時は適用が困難なため、当面の間は上記のように、レベル3以上は遠隔監視付きの自動運転サービス、オーナーカーの自動運転はレベル2で商品化されるものと思われる。

 LiDAR実用化の最大の課題は、車載用機器メーカーの出現である。現在、車載用として販売されているスキャニングタイプのものは、アウディA8に搭載されているヴァレオ製LiDARだけである。

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2018年8月15日 (水)

車載LiDAR(15)

 スキャニングLiDARによるポイントクラウドデータの取得とNDTマッチングにより自己位置推定が可能になった。また、環境データとマッチングしない領域を障害物とみなし、パターン分類による障害物認識も可能になった。

 すなわち、自動運転で必要な自己位置推定と障害物認識がLiDARで実現可能になったのである。行動計画に必要となる交通信号の認識等は、カメラを追加すればよい。

 ミリ波レーダでは障害物認識ができても、自己位置推定は難しい。障害物認識も走行車両は認識できるものの、歩行者、二輪車は得意でない。自動運転にはACC機能も必要なので、ミリ派レーダがなくなることはないが主役はLiDARになるものと思われる。これまでLiDARは計測距離がミリ波レーダに劣るとされていた問題もあった。しかし、新世代のLiDARでは車間距離計測で200m、歩行者計測で100mを唱えるものも現れだしている。残る問題は、悪天候(雪、霧)である。

 これまでのレーザ光は、900nm付近の近赤外線を使っていた。より波長の長いレーザが使えれば、天候に対して強くなることが期待できる。

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2018年8月14日 (火)

車載LiDAR(14)

 遠距離の密度が低下したポイントクラウトに確率共鳴をどのように適用するかというと、単純にノイズとなる偽りのポイントクラウドを加える操作を行う。これによって、ポイントクラウドの密度が上がることになる。

 単に偽りのポイントクラウドを加えるだけではなく、ノイズの種類も限定する。確率共鳴で性能向上を図るには、どんなノイズでも良いわけではないからである。

 予め、どのようなノイズが適度なノイズになるか実験的に求める。すなわち、環境中で分類すべきクラスを歩行者、二輪車、自動車という3種類に分け、それぞれの縦横高さのポイントクラウドのクラスタサイズをパラメータにしているため、3種類の縦横高さについて適度なノイズを探すのである。ノイズの種類としては、白色ガウスノイズが適していることが実験的に判明した。このノイズでは分散値がパラメータとなるため、歩行者、二輪車、自動車用の縦横高さの分散値を変化させ、もっとも正しく分類できるものを探す。

 こうして得られたそれぞれのノイズを、遠距離の密度が低いポイント部分に加える。そして、歩行者か二輪車か自動車のどれに一番近いかを検討するのである。

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2018年8月13日 (月)

車載LiDAR(13)

 確率共鳴が観測されている現象や応用した事例をいくつか紹介しておこう。生物の感覚器官では豊富な例が観測されている。

 前述のヘラチョウザメやザリガニの他、コオロギもノイズとなる気圧の変化がある方が天敵を感知しやすいことが観測されている。カエルやラットでも同様の現象がわかっており、人間においても適度なノイズにより視覚、聴覚が向上する。

 この確率共鳴を工学的に応用する試みとしては、弱い信号を強調する分野に多く見られる。医師が用いる手術用把持鉗子では触覚が重要になるので、振動デバイスで鉗子に振動を加えて触知覚を向上させるものが有名である。また、感覚だけでなく行動モデルにも確率共鳴を適用するとパフォーマンスが向上することもわかっている。例えば、ライオンの集団の全個体が獲物集団を追いかけるより、時々違う方向に寄り道するライオンのいる方が全体としてより短時間で獲物集団を捕食できる。これの応用例として、全車両がナビゲーションを使って同一短時間ルートを通ると渋滞することに対し、全体の3割だけがナビゲーションを使った方が渋滞しにくくなる実験結果も得られている。

 感覚器官においては、適度なノイズが隠れた信号をあぶりだすのである。そして、集団行動や仕事においては、適度なノイズがパフォーマンスを向上させる。

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2018年8月12日 (日)

車載LiDAR(12)

 遠距離でポイントクラウドの密度が下がると、同一物体上のポイントかどうかわからなくなる。そのため、ポイントクラウドを結んで形状を検討することはできなくなる。

 この現象を回避するため、確率共鳴を利用が可能である。確率共鳴とは、信号に雑音を加えることにより、微弱信号を強調する手法である。

 北米の川に棲むヘラチョウザメは、長く伸びた上顎でプランクトンの出す微弱な電気信号を捉えて捕食する。ミズーリ大学の研究チームが、ヘラチョウザメが泳ぐ水中に不規則に変化する弱い電流を流す実験を行った。すると、ヘラチョウザメは、電流を流さないときより、より遠くのプランクトンも見つけて捕食できるようになったのである。また、ザリガニは静かな水中より、水流がありせせらぎ音のある方が獲物を見つけやすいことも知ら得ている。生物の感覚器に適当なノイズを印可すると、認識性能が向上するときがある。信号処理は一般的に、如何にノイズを抑制するかが重要である。性能向上を目的としてノイズを加えることは、以ての外だった。

 遠距離でポイントクラウドの密度が低下することは、信号に微弱になること相当する。これは、ノイズを加えて微弱信号を強調する確率共鳴を使える可能性があるということである。

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2018年8月11日 (土)

車載LiDAR(11)

 デンソー製LiDARはポリゴンミラーを回転させて送射ビームをスキャニング化していたことに対し、ベロダイン製LiDARは送射ビーム64本と受光素子64個ごと回転させた。そのため、ベロダインLiDARは360°スキャンが可能になったのである。

 ミラーを回転させる方式のFOVが狭くなるかというとそうでもなく、IBEO社製LiDARはミラー回転ながら広いFOVを達成していた。アウディA8に採用されたIBEO LiDARは、バンパー埋込タイプながら140°以上のFOVとなっている。

 IBEOのスキャニング機構は、送射ビームを4本とし、それを直角に反射する平面ミラーを回転させることによって広角FOVを実現させた。反射波もその反射ミラーを通して受光し、レンズ全面の雨滴によるビーム光路の歪みを抑えている。スキャニング機構は他にもあり、モーターを使ってミラーを回転するようなメカ的に回転する機構のないメカレス方式が注目されている。メカレス方式としては、固定された送信角の異なる多数のビームを送射するフラッシュ方式、MEMS(Micro Electro Mechanical System)により微小ミラーを搖動させるMEMS方式、電波レーダのように各レーザ素子から放射されたレーザ光を空間で合成して放射指向性を得たフェーズド・アレイ方式等がある。

 いずれの方式も、送射ビームの間隔は遠距離になるほど広がる。つまり、遠距離の障害物のポイントクラウドの密度は低下するのである。

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2018年8月10日 (金)

車載LiDAR(10)

 対象物体認識を目的としてポイントクラウドを用いるときは、個々のポイントの接続(マージ)から始める。これは同一物体上のポイントとみなすためである。

 マージするときの最大距離δを適当に設定し、δ以内のポイントは同一物体とみなすのである。ポイント3点を結ぶと平面ができるので、その平面の法線ベクトルを微小物体面の向きとして扱う。

 マージしたポイントクラウドデータから、物体の縦横高さのサイズがわかる。走行環境で重要になる同物体は、歩行者、二輪、自動車に大別できるので、縦横高さの3軸でこれらの計測データをクラスタリングすると、3つのクラスタが出現する。クラスタ間の分離面はSVM(Support Vector Machine)で決定すればよい。未知のデータの特定は、どのクラスタに配置されるかをみればよい。この方法はポイントクラウドのマージができれば、容易に物体認識が可能となる手法といえる。課題は、遠距離の物体には適用できないことである。

 LiDARの送射ビームは鋭く、スキャンビームは遠距離になるほどビーム間隔が広がる。そのため、遠距離の障害物のポイントクラウドの密度が低下してしまうからである。

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2018年8月 9日 (木)

車載LiDAR(9)

 環境データとアンマッチするポイントクラウドデータが、静止環境以外の障害物データである。これらの障害物もICPかNDTによるスキャンマッチングを適用可能である。

 すなわち、事前計測した対象物体のポイントクラウドデータと、障害物データをスキャンマッチングして照合するかどうかをチェックするのである。ただし、環境データと障害物データのマッチングのやり方はかなり異なる。

 環境データの場合は同じルートを走行するため、座標系に平行にずらしてマッチングするだけでよい。ところが、障害物データの場合は見る方向によって形状が異なるため、座標系に平行だけでなく回転させたずれも考慮しなければならなくなる。更に、認識させたいだけの、全周囲方向から収集した障害物のポイントクラウドデータが必要となる。そこで、認識対象を自動車、二輪車、歩行者というようにクラス化して、どのクラスに属するかを計算するという簡略化手法を用いる。

 これは、近傍のポイントクラウドを同一物体とみなして認識対象全体の縦横高さが計測できることを前提とする。そして、認識クラスを縦横高さのサイズで分類するのである。

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2018年8月 8日 (水)

車載LiDAR(8)

 ICPは適度なサイズの領域を、膨大なポイントクラウドデータ中で位置をずらしながら対応点を求める手法である。対応点の定義は点間距離が最小となる位置を検索したときとし、画像処理のテンプレートマッチングと同様である。

 これに対しNDTは、まず空間をグリッド状に分割し、グリッド内のポイントクラウドを正規分布で近似する。マッチングする領域もグリッドとなるため、対応度の定義はマハラノビス距離を最小化することになる。

 ICPに対しNDTは粗いマッチングとなる。しかし、その分計算時間は短縮される。ICPより高速になった分精度は落ちことになるものの、意外と高精度である。これは、膨大なポイントクラウドに対し行い、環境情報(3Dデータ)が多彩なため問題がなくなるためである。SLAM(Simultaneous Localizing and Mapping)というと自己位置推定と地図製作を同時に行うという意味になるものの、予め獲得した環境情報のポイントクラウドに対して、2回目の走行時にスキャンマッチングで自己位置を推定することもSLAMと呼ばれ、LiDARで行っているのでLiDAR SLAMと呼ばれる。

 LiDARは自己位置推定だけでなく、自動運転の次に重要な障害物認識も同時に行う。全周囲でスキャンマッチングを行うため、部分的に照合しないところが障害物といえるからである。

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2018年8月 7日 (火)

車載LiDAR(7)

 自動運転技術の最大重要事項は自己位置推定である。GoogleHDL64Eで行った自己位置推定が現在の自動運転のデファクトスタンダードとなった。

 それは、自律移動分野で自己位置推定をSLAMで行う流れに乗ったものである。すなわち、LiDARによる予め製作したポイントクラウドによる環境地図上を、NDTスキャンマッチングで自己位置を計算する手法である。

 レーザビーム1本で得られる距離情報はポイントと呼ばれ、レーザから送射されたビームの先端部の空間座標情報を持つ。高さ方向に64本あるレーザビームが360°回転するため、車両天井のレーザを中心とした全周囲にポイント群が生成され、これをポイントクラウドという。車両の車速センサによる移動量(オドメトリー)により、車両が走行した経路のポイントクラウドが得られ、2回目に走行するときはNDTNormal Distributions Transform)でスキャンマッチングを行い、現在位置を計算する。スキャンマッチングとはデータ同士のデータ照合のことであり、SLAMでは環境地図データに現在位置データを照合して現在位置を照合する。

 スキャンマッチングの代表的な手法はICP(Iterative Closest Point)である。NDTICPより簡略した手法なものの、十分な精度が得られたのである。

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2018年8月 6日 (月)

車載LiDAR(6)

 2009年、Googleは自動運転の一般道での公道実験を開始した。スタンフォード大学のアーバン・チャレンジチームが引き抜かれ、方式も何もかもそのまま継続したのである。

 この方式は、ベロダイン社製のHDL64EなるスキャニングLiDARを車両天井に搭載し、事前走行して得た環境のポイントクラウドデータに対してNDTでスキャンマッチングしてSLAMを行うことが基本方式である。アーバン・チャレンジと違っていたのは、使用した車両くらいのものである。

 HDL64Eは2007年のアーバン・チャレンジのために開発されたLiDARである。当時、環境が複雑で地図のない一般道を、車両を自動で走行させるためには精度の良いポイントクラウドデータが必要なことがわかっていた。そのため、車両天井から縦方向に送射する64本のレーザビームを受光素子毎360°回転させ、自車周囲360°の環境の3D情報たるポイントクラウドデータを得るのがHDL64Eの使命だった。

 このLiDARがスキャンするレートは5~15Hzで、検知最大距離は100mである。つまり、1秒間に最大15回、自車周辺360°の100m以内のポイントクラウドデータが得られるのである。

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2018年8月 5日 (日)

車載LiDAR(5)

 ACC用センサとしては抜群の相性を示したミリ波レーダは、自動運転用センサとして使おうとすると大きな欠点がある。それは空間解像度が低く、追従走行以外には使いづらいということである。

 相対速度が容易にわかるため、高速道路では前方走行車とそれ以外からの反射物を分離することは問題なかった。ところが、空間解像度が低く物体形状を見ているわけではないので、停止車両とガードレールの区別は付かないのである。

 そのため、前方停止車に対する自動ブレーキ制御、いわゆる「ぶつからない車」への適用が難しいという問題があった。また、一般道路では交通環境が複雑になり、ACCとしての使用も難しくなり、高速道路以外で使うためには画像処理とのフュージョン等が必要になったのである。この頃から、Googleが自動運転の一般道路での公道実験を始め、自動運転の可能性を示し始めていた。Googleが使ったセンサはミリ波レーダではなく、スキャニングLiDARだった。Googleシステムは、2007年のアメリカ国防高等研究計画局DARPAが行ったアーバン・チャレンジに優勝したスタンフォード大学チームの方式をそのまま適用したものである。

 Googleシステムを使うと、ミリ波レーダでできなかった一般道路の自動運転が一気に可能になった。以降、この方式が現在までのデファクト方式となっている。

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2018年8月 4日 (土)

車載LiDAR(4)

 ドイツから始まったミリ波レーダの流れは日本にも波及し、日本のスキャニングLiDARもミリ波レーダに置き換わって行った。こうして2010年頃には、日本市場から車載LiDARは消えて行ったのである。

 LiDARからミリ波レーダに変わった理由は、性能差だけではなく適用システムに依存することころも大きかった。当時の最大の適用システムは、高速道路で前方車に追従走行するACCだったのである。

 ミリ波レーダが採用した物体検出に使う信号処理はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式だった。FMCW方式、すなわち周波数変調連続波は、周波数を変調した連続波を送信し、送信波と反射波のビート周波数の差から距離を求める方式である。この方式の特徴は、距離だけでなく相対速度も同時に計測できることである。LiDARのTOF方式で相対速度を計測する場合、一回の計測では距離しか求めることができない。そこで、2回計測してそれらの距離差から相対速度を求めることになる。つまり、相対速度の計測が1回の計測分遅れることになる。ACCでは前方走行車の相対速度計測が重要な制御要因になるため、ACCへの適用はミリ波レーダが圧倒的に有利だったのである。

 ドイツのアウトバーンでACCを利用するとき、使用速度域の関係から車間計測距離が長く、相対速度を速く、そしてある程度の霧や霞でも使えることが重要である。そのため、当時、ACCへの適用はミリ派レーダがベストマッチといえた。

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2018年8月 3日 (金)

車載LiDAR(3)

 スキャニングLiDARの登場により、日本における高速道路でのACC用センサとしては、ほぼ問題はなくなっていた。ただし、それは晴天時に限ったことだった。

 当時、LiDARを使ったACCでは、雨天時に動作させない仕様が多かった。具体的には、ワイパースイッチがオン状態では、ACCが作動しないようになっていたのである。

 当時、ACCが雨天時に作動させないのは、レーザ光は雨による減衰があるので、雨天時は計測精度が落ちるためと思われていた。実際は、雨による減衰はあるものの、車間距離計測の精度が極端に落ちるほどではなかった。問題は、LiDARを室外に設置しているため、投光レンズ窓の前に付着した雨粒により本来の光路が歪み、更に受光レンズ窓に付着した雨粒により光路が歪むため、対象物体の位置情報が大きくズレてしまうのである。更に、前方車が跳ね上げる路面水のスプラッシュ自体を検出し、車間距離を短く計測するという問題もあった。そのため、自動車業界ではLiDARは雨雪に弱いというレッテルが貼られたのである。

 ドイツではボッシュがミリ波レーダを登場させ、ACC用センサは固定ビームLiDARからミリ波レーダに置き換わった。ミリ波レーダはLiDARよりも車両検出距離が長く、雨に強かったのである。

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2018年8月 2日 (木)

車載LiDAR(2)

 ビーム固定方式のLiDARは、どうしても視野角FOV(field of view)は狭くなってしまう。より広角のFOVを達成するため、固定ビーム方式の次にスキャニング方式のLiDARが開発された。

 スキャニング方式の基本的な考え方は、投光ビームを絞ってシャープにし、回転するミラーによってファンビームにして投光角を広げるというものである。代表的なものはデンソーが製造したポリゴンミラーを回転させるものである。

 ポリゴンミラーの構造は、六角柱の中心が同方向に回転し続けるものである。六面の反射面があるため、理論的には60°までスキャン方向のFOVを広げられる。現実的には面と面の境界を避けたり、投光ビームをレンズで形成後に別の反射ミラーでポリゴンミラーに投光するため、16°のFOVとしていた。ポリゴンミラーを使う最大のメリットは、ミラーの反射面毎に垂直方向の角度を変えることができることである。つまり、1番目の面から6番目の面まで垂直方向の角度を、例えば1°ずつ減らしていけば、縦方向のFOVを5°以上持つことができ、かつ縦方向に6の解像度を持つことができるのである。

 実際の縦方向のFOVは4.4°だったので、縦×横が4.4°×16°で6×105画素の深さ画像の取得が可能となっていた。この画像をスキャンサイクル10回/秒で生成したのである。

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2018年8月 1日 (水)

車載LiDAR(1)

 自動運転にはLidarが俄然注目されている。こうなった背景を説明した後、Lidarの現状と課題をまとめてみよう。

 遠方にある自車前方の障害物を検知する方法として、古くから電波レーダーとLidarが研究開発されていた。実際に車載され販売されたのは、1990年代初頭で、Lidarの商品化の方が早かったのである。

 当時のLidarの構造は、レーザダイオードLDを使用してパルス光を発光し、その反射光を飛行時間TOF(Time of Flight)を計測し車間距離を測定していた。投光には3個のLDを使った固定ビームを3本使い、スキャニングは行われていなかった。そのため、直線路の自車走行レーン前方車両が対象となっていた。また、レーザ光の反射は、前方走行車の後面に設置されたリフレックス・リフレクタからの反射を想定していた。メルセデスベンツのEクラスにアダプティブ・クルーズ・コントロールACCとしてオプション設定され、そのLidarはドイツのADCというメーカーが製造していた。

 この頃、日本でもADCと同様の固定ビームのLiDARが開発され車載された。その適用システムはトラック用の車間距離警報であった。

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