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2018年9月30日 (日)

ドライバ状態(40)

 当研究室では、ドライバ状態の検出に自覚症しらべ、顔表情評定、心拍計測、脳波計測の4点を手段として取り組んでいる。ドライバの特性と経験を知るため、WSQとDSQも使用している。

 ドライバ状態の評価は、ドライビングシミュレータの使用を基本としている。また、左ハンドル車の助手席に模擬コックピットを装備した研究車両での実車評価も行っている。

 生体指標の検出として、心拍計と脳波計を使ってわかったことは、ドライバ特性として人によらない共通な傾向はあるものの、個々の個性が強いということである。これは、心拍においても脳波においてもいえることである。そのため、本研究室で研究開発している手法は、個々のドライバ特性を学習するものが多くなっている。

 本研究室では自動運転時代に備え、カメラやライダーを外部環境センサとして使用する研究も行っている。しかし、自動運転時代もドライバ特性は重要なため、全員がこの分野の基礎を勉強して欲しい。

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2018年9月29日 (土)

ドライバ状態(39)

 以上、ドライバ状態について、現在わかっていることを中心に紹介した。何れの内容も、全て文献として発行しているものなので、興味のある内容は原著で勉強して欲しい。

 振り返ってみると、最初に負荷、ワークロード、ストレスを定義し、車酔いの問題、運転がもたらすプラス効果を説明した.そして、ドライバの状態を計測するためにどのような手法があるかを紹介した。

 ドライバの状態で重要なことは、疲労と覚醒度の状況をいかに正しく計測できるかである。人間の精神活動も含めた内容は、対象者の主観を切り離すことができず、現代でも客観的な生理指標で全てわかるとはいえないところが面白い。

 この領域はまだまだ未解明なところが多く、研究が必要な分野である。諸君は問題を明確にし、新たな研究として取り組むこと。

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2018年9月28日 (金)

ドライバ状態(38)

 乗車時の視覚を工夫することによって、酔い防止に使えることもわかっている。実験的にも確認できており、被験者を回転させ同方向に回転する視界を与えると酔いが強まり、静止視界や逆方向に回転する視界を与えると酔いが弱まる。

 ただし、これは半規管が刺激される回転振動のときのみ有効である。つまり、視覚は前庭感覚に強く影響を与えるということになる。

 この特性を利用すると、車酔いを防ぐ車載ディスプレイを考えることができる。カーブ時に車載ディスプレイを見ていると酔いが発症する。これはディスプレイを見ているため前方景色が見えないため、運転予測ができないためと考えられる。そこで考えられたのが、ヨーレートに応じて画面表示を射影変換するものである。画面を平面と見立て、見る方向を変わったように射影変換すると、車両運動の方向(カーブの向き)がわかるのである。こうして画面を変形させると、酔いが緩和するのである。

 乗車時にスマホだけを見つめていると同様に酔いが発症する。スマホの表示画面全体をヨーレートによって射影変換させると、酔いが軽減することも確認できてる。

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2018年9月27日 (木)

ドライバ状態(37)

 大型バスでは、乗用車と違った車酔い傾向となる。これは、大型バスのロール、ヨー、ピッチの共振周波数が格段に低いことや、車体が大きいため座る位置によってヨー、ピッチの移動量が大きくなったり視界が妨げられたりするためである。

 特に、後部の方に乗ると前方景色が見えないため、動きの予測ができず酔い易くなる。大型バスにおいても、車両運動が予測できるよう前方景色が見える方が酔いにくいのである。

 上下振動は酔いへの影響が少ないためか、2階建てバスの上階と下階で酔いやすさの差はない。一般的に、後ろの席に行くほど酔い易く、窓側より通路側の方が酔い易い。また、男性より女性の方が酔い易く、景色が見えないときに酔い易くなる傾向が女性の方が顕著である。大型バスで酔わないようにするためには、前方席の景色が良く見えるところに座ればよい。乗用車の3列シートミニバンでは、後席になるほど酔い易いかというと差異はない。

 景色さえ見えれば良いということで、側方の景色を見せても酔い防止に効果はない。少しでも良いので、前方景色が見えることが肝心である。

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2018年9月26日 (水)

ドライバ状態(36)

 自動車の場合は、上下振動では酔いが発生しない。乗車姿勢としては、着座姿勢が最も酔い易い。

 乗員頭部への振動では、頭部の左右振動と前後運動が酔い易い。しかし、頭部の上下振動では酔いは発生しにくい。

 また、ドライバは同乗者より酔いにくい。これは、これから起こる車両運動が予測できるので酔わないと言われている。すなわち、運転操作に対して能動的か受動的かが酔いに大きく影響するのである。例えば、スラローム走行する車両の助手席乗員が遠心力に逆らわず頭部の動きを委ねたときと、求心力の方向に頭部を傾けたとき、遠心力に委ねた方が酔い易いのである。

 これは前後方向や横方向においても同様である。頭部振動の位相が車両振動の位相と180度ずれるとき、最も酔い易くなる。

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2018年9月25日 (火)

ドライバ状態(35)

 ドライバ状態シリーズの最後は、車酔いの基礎的知見で締めよう。車酔いは、自動車の振動刺激、動揺刺激、視覚刺激によって生じる。

 振動刺激、動揺刺激については乗り物一般について多くの研究事例があり、基礎的知見が蓄積されている。船酔いは歴史があるため、酔う条件がわかっている。

 船の振動は上下で代表され、上下の振幅が大きいほど酔いやすく、0.167Hzが一番酔い易い。これより周波数が高くなると、急激に酔わなくなる。振動方向が前後、左右等になると多少ピーク周波数が変わるものの、総じて0.1~0.3Hzが酔い易く、1Hz以上になると酔わなくなる。回転振動や並進振動と回転振動の組み合わせでも酔うものの、明確な条件はわかっていない。

 組み合わせ振動で傾向としては、横方向振動にロール動揺を加えたとき、ロール振動の位相が横方向振動の位相より進むほど酔わなくなる。この組み合わせにピッチ振動を加えると酔い易くなる。

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2018年9月24日 (月)

ドライバ状態(34)

 ドライバ状態で近年重要になっていることは、運転中の意識喪失である。すなわち、体調が急変し、意識がなくなって交通事故に繋がる場合の懸念である。

 高齢化社会に伴いドライバの年齢も高齢化し、成人病の発症リスクの高いドライバの割合は確実に増えている。欧米の調査では、交通事故死亡者の最大十数%が、体調急変によるものである。

 体調急変の原因としては、運送事業者の場合でほぼ8割が脳血管、心臓系疾患によるものである。ドライバ側の対策としては、普段の健康管理に注意しなければならない。特に普段の健康診断で、脳血管系や心臓系リスクの指摘を受けた場合、リスク改善に努力しなければならない。その上で、車両側での対策は次の3つのフェーズで考えられている。まず、意識喪失により車両制御不可能になる場合はデッドマンシステムを構築する。これは何らかの手法でドライバの意識喪失を検出し、車両を路肩等に安全に停止する制御をするものである。次に、ドライバの意識はあるものの運転が不完全な場合、ドライバが緊急停止ボタン等を操作し、車両を安全に停止すると共に救急支援を行う。そして、ドライバに自覚症状がない場合の対策として、バイタルセンサで体調を検出し対策を講じることになる。

 3つ目の対策でドライバの体調を検出するものは十分に実用化されているとは言い難い。つまり、われわれの研究テーマの一つである。

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2018年9月23日 (日)

ドライバ状態(33)

 運転に影響を与えるのは飲酒だけではない。薬物によっても影響を受ける場合もある。

 そして、薬物には治療を目的とした医薬品と、麻薬等の違法薬物がある。違法薬物は法律で禁じられているため、まずは論外としておこう。

 基本的に、道路交通法第66条により、過労、病気、薬物等で正常な運転ができない恐れがあるときに運転してはならないと定められている。つまり、薬物によって運転に影響を与える場合もあるということである。例えば、風邪薬を飲んで眠たくなれば、確実に運転に影響を与える。ところが、国内の交通事故の統計で、薬物の影響に関するものは集計されていないのである。そのため、市販薬ならパッケージの注意書きに運転への影響が書かれていないかを調べること、医師による処方箋時に運転への影響を言及されないか注意することが重要である。

 特に医師による処方箋時では、運転への影響を説明することになっているものの、とても運転できないような状態で診断されることもあって説明されない場合もある。こちらから聞いてみることが重要である。

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2018年9月22日 (土)

ドライバ状態(32)

 それでは、どれくらいのアルコール量で運転に影響が出るか見てみよう。まず、運転に必要な注意力への影響は、血中濃度0.01%でも発生するのである。

 反応時間やトラッキング能力では0.02%から、ハンドル操作は0.03%から影響が出始める。350mlの缶ビール1本で、血中濃度は最大0.02%まで上がることを考えれば、極めて少量の飲酒から影響が出始めるといえる。

 低濃度でもアルコールの影響が出るのは、酒に弱い被験者だからかも知れない。そこで、酒の強さと運転の影響の現れ方の調査も科学警察研究所で行われてた。その結果によると、アルコールの血中濃度の影響度は酒の強さ弱さに影響されなかったのである。酒が強い弱いというのは、アルコールの分解過程で生じる猛毒のアセトアルデビドに対し、不快に感じる者は酒が弱いと自覚し、不快症状を感じない者が酒が強いと思っているのである。脳の麻痺という観点では、酒が強い弱いは関係ないのである。

 アルコールの飲酒が進めば、明らかに交通事故リスクは高まる。若年ほど飲酒量の増加によるリスクの増加度が高いのである。

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2018年9月21日 (金)

ドライバ状態(31)

 飲酒運転は法律で禁じられている。もし法律で禁じられていなかったとしても、飲酒運転が危険なことでやっていはいけないと誰もが思うはずである。

 そもそもアルコールを摂取して酔うというのは、脳が麻痺状態になるということである。個人差はあれ、誰もが血中のアルコール濃度に応じて確実に脳が麻痺する程度が進むのである。

 肝臓でアルコールを分解できる量は個人差があるものの、1時間で5gというものである。したがって、飲めば飲むほど酔いが醒める時間がかかるのである。例えば、350mlの缶ビールは約14gのアルコール量となるので、たったビールの小1缶のアルコールを分解するのに3時間弱もかかるということになる。アルコールで最初に麻痺するのは、大脳の網様体である。ここが麻痺すると、理性の活動が低下し抑えられていた大脳辺縁系の活動が活発になる。すなわち、本能や感情がむき出しになるのである。この軽い酩酊状態は、血中アルコール濃度0.15%までのことである。これ以上摂取すると、小脳まで麻痺が広がり運動失調状態となる。つまり、千鳥足で歩くようになるのである。この強い酩酊状態は0.3%までのことである。

 更に飲酒し血中濃度0.3%以上0.4%以下になると海馬まで麻痺し、今の状態を記憶できなくなってしまう。そして、これ以上血中濃度が上がると、脳全体の延髄まで麻痺し呼吸中枢が働かなくなって死に至るのである。

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2018年9月20日 (木)

ドライバ状態(30)

 睡眠以外の眠気対策はカフェインの取得である。運転中にカフェインを取ると、挙動変動が少なくなったという報告もある。

 カフェインはアデノシンの働きを抑制するだけであって、睡眠物質自体を減少させるものではないことに注意が必要である。カフェインの効果は30分後に出るため、30分以内の仮眠と組み合わせると効果が増すといわれている。

 2000ルックス以上の高照度光も覚醒水準を高める効果があり、青色の波長の効果が高く作業成績も改善するという研究例がある。ただし、青色光は眼精疲労の原因にもなるので実用化は難しく、光は体内時計に影響を与えるため副作用も懸念されている。また、ガム、冷水洗顔、冷風、会話、ラジオ、振動等の方法はあるものの、ほとんどの場合は主観的眠気だけに作用し作業成績が向上しない。つまり、マスキング効果を発生させかえって交通事故の危険性を高めてしまう危険性があるといえる。

 一般的に覚醒中枢に働きかける対策は、主観的眠気だけを改善し作業成績への効果は限定的なことが多い。睡眠中枢に働きかけ、睡眠物質を除去することが王道である。

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2018年9月19日 (水)

ドライバ状態(29)

 睡眠を取ると、覚醒中に蓄積したアデノシン等の睡眠物質が除去され、覚醒中に効率が低下した神経ネットワークも最適化される。また、睡眠中枢の働きが抑えられ、覚醒中枢の働きを活発化させる。

 すなわち、睡眠は睡眠中枢に直接働きかける方法であり、15~20分の短時間の仮眠から効果がある。仮眠とは一般的に4時間未満の睡眠を指し、付加的仮眠、補償的仮眠、予防的仮眠の3種類に分ける。

 付加的睡眠とは15~20分の短時間睡眠のことであり、午後の軽い主観的眠気と作業成績の両方を改善する。仮眠が30分以上になると、深い睡眠となる徐波睡眠を引き起こし、徐波睡眠から目覚めさせると睡眠惰性なる寝ぼけ状態となって主観的眠気も作業成績も仮眠前より悪化してしまう。補償的仮眠は、睡眠不足を解消させる仮眠であり、ノンレム睡眠とレム睡眠の1周期の90分が良いとされる。予防的仮眠とは、徹夜が予想される場合に予め取る仮眠である。ただし、午前10時と午後8時は睡眠禁止帯と呼ばれる体内時計が眠りを許さない時間帯なので、この時間帯に予防睡眠を充てても意味がない。

 1日の内で取ることができる徐波睡眠の量は決まっているため、日中に徐波睡眠を取ると夜の寝付きは悪くなる。仮眠を取ると体内時計を狂わす原因になるため、時間管理が重要となる。

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2018年9月18日 (火)

ドライバ状態(28)

 眠気による事故の割合は、全体の1~2割に及ぶことがわかっている。そのため、眠気を検出するだけなく、眠気を低減させる覚醒化技術が必要となる。

 覚醒水準は脳内の睡眠中枢と覚醒中枢の相互作用により決定し、どちらに働きかけるかで効果が異なる。その効果とは、主観的眠気と作業成績である。

 睡眠中枢に働きかける対策を取ると、主観的眠気と作業成績の両方が改善する。ところが、覚醒中枢に働きかける対策は、主観的眠気を改善するものの作業成績は改善しないのである。例えば、徹夜明けの状態だと主観的眠気はないのに作業成績が悪化することが知られている。また、この状態で眠たくなったので運動すると主観的眠気は低下するものの、作業成績は改善しないままなのである。このような主観的眠気と作業成績の乖離は、覚醒水準のマスキング効果と呼ばれ作業能力の過大評価が生じる。すなわち、マスキング効果が起きている状態で運転していると、運転能力が低下しているため交通事故の危険性が高まるのである。

 覚醒水準を高める最も効果的な方法は仮眠を取ることである。ただし、眠り方によって効果が異なることに注意しなければならない。

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2018年9月17日 (月)

ドライバ状態(27)

 ヴィジランスと心拍変動が関連することも先行研究で明らかにされている。ヴィジランスの遅延に伴って、心拍変動の一部成分(0.02~0.08Hz)が増大するのである。

 その精度はPERCLOSには劣るものの、主観指標や脳波よりも良い場合もある。しかし、これは睡眠不足の場合の事象であり、通常睡眠状態のヴィジランス低下の予測精度は低い。

 ヴィジランスと心拍の関係は、RRIの低周波成分と高周波成分よりもRRIの標準偏差と相関が高いことも報告されている。これによれば、RRIの標準偏差は1分後のヴィジランスの成績を予測でき、かつ個人差に影響されにくいとされている。RRIの周波数解析では一定時間の観測期間が必要になる。ところが、標準偏差であれば数泊のデータからも解析が可能となり、時間分解能が優れているといえる。

 以上、これまで説明した各種覚醒度計測法で注意することは、眠気以外の要因に影響されないことが重要である。また、外部環境に影響されない計測器である必要がある。

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2018年9月16日 (日)

ドライバ状態(26)

 まばたきを眼瞼活動といい、覚醒低下に伴い変化する。すなわち、眠気が発生すると、まばたきの回数が増加や減少し、目を閉じたり開けたりする時間も延びる。

 特に単位時間当たりの閉眼時間の割合PERCLOS(Percent time that the eyes are more than 80 percent closed)が増加する。PERCLOSはヴィジランス低下との相関が高いといわれている。

 先行研究によると、連続運転中のPERCLOSとPVTの相関は0.77と報告されている。よって、PERCLOSでヴィジランス低下が予測可能といえる。しかし、PERCLOSは1分以上観測する必要があり、PVTは1分より短い時間で変化するため、時々刻々と変化するヴィジランスは検出できないという課題がある。そこで、複数の指標を用いてヴィジランスを評価する手法が開発されている。その代表例が、JDS(Johns Drowsiness Scale)である。JDSは重回帰分析を用いて、瞬目持続時間、閉瞼・開瞼の相対速度等の複数のまばたき情報から眠気を0から10の11段階で評価する。

 ところが、JDSよりも単独の指標がヴィジランス低下を検出する割合が高い場合もある。よって、それぞれの手法を利用する場面をよく検討する必要がある。

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2018年9月15日 (土)

ドライバ状態(25)

 覚醒水準が低下すると、眼球運動にも変化が現れる。眠気によって変化する眼球運動には、サッカード、緩徐眼球運動、前庭動眼反射の3つが知られている。

 サッカードについては、覚醒低下に伴い最高速度PV(Peak Velocity)が低下し持続時間D(Duration)が延長してサッカード速度波形の突度(最高速度と持続時間の比)PV/Dが減少する。また、PV/Dが下がったときに覚醒を促すとPV/Dは増加する。

 次に、緩徐眼球運動SEM(Slow Eye Movement)とは、覚醒状態から睡眠に移るときの眼球のゆっくりとした振り子運動のことである。例えば、SEMが出現するとブレーキの反応時間が遅くなることから、このとき警告を出すとブレーキ反応が早くなり事故が減少することが報告されている。ただし、SEMと前庭動眼反射や円滑性追求眼球運動を区別しなければならない。

 前庭動眼反射とは、頭が動いたとき視覚のブレを補正するため頭の動きと反対方向に不随的に眼球が動く反応である。覚醒低下に伴い前庭動眼反射の速度が低下し、これは個人差が少ないものと考えられている。

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2018年9月14日 (金)

ドライバ状態(24)

 覚醒水準が低下すると、瞳が収縮する。更に、0.8Hz以下の瞳孔ゆらぎが生じる。

 そのため、縮瞳と瞳孔ゆらぎが生じると、眠気が自覚されることも確認されている。すなわち、縮瞳と瞳孔ゆらぎを計測できれば、眠気が検出できることになる。

 縮瞳が起こるのは、覚醒低下により副交感神経が活発化したためである。その状態で、意識的か無意識的に覚醒努力をすると交感神経が活発化する。すると、瞳は拡大する散瞳が起こる。ただし、この状態は長く続かず、副交感神経がすぐ活発化する。よって、縮瞳と散瞳が繰り返されることになり、瞳孔ゆらぎが生じると考えられている。

 ところが、瞳孔変化は眠気だけで起きるのではない。最も影響を受けるのは光の状態であり、心的要因によっても変化することに注意しなければならない。

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2018年9月13日 (木)

ドライバ状態(23)

 人間の顔の表情は、内面状態を外部に言語以外で伝えるために存在すると考えられる。そこで考えられたのが、顔表情評定である。

 運転中のドライバの顔をビデオで録画し、2名の評価者が眠そうかどうかを独立に5秒毎の5段階評価を行う。全体の80%以上が一致するまで繰り返し、一致しない20%未満の箇所だけ平均値を用いる。

 顔表情評定における眠気の5段階とは次のとおりである。
1:まったく眠たくなさそう
2:やや眠そう(視線移動が遅くなる。唇が開き始める)
3:眠そう(まばたきがゆっくりになり頻発する。口が動く。座りなおす。顔に手をやる)
4:かなり眠そう(意識的まばたき。頭を振る。無用な体全体の動き。あくび。深呼吸)
5:非常に眠そう(瞼を閉じる。頭が前に傾くか後ろに倒れる)

 顔表情評定は、5段階を正しく理解すると、評定者間の一致度が非常に高くなる。そのため、ドライバの眠気評定のベンチマークとして利用されることが多い。

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2018年9月12日 (水)

ドライバ状態(23)

 運転手の自覚のないまま、瞬間的に眠ってしまうことがある。この微小睡眠を計測するには、脳波計測が適している。

 4~7Hzのシータ波の出現を観測することによって、微小睡眠がわかる。このシータ波が3秒連続で出現すると微小睡眠となる。

 更に、ヴィジランスと関連する脳波は、シータ波よりも遅い1~4.5Hzといわれている。前頭葉からこの周波数が出ると、ヴィジランスの成績が下がるのである。

 ただし、脳波計測の成否は計測機の性能に依存している。電極が乾式か湿式かも影響する。

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2018年9月11日 (火)

ドライバ状態(22)

 運転時の眠気をリアルタイムに計測する手法は、運転挙動(運転パフォーマンス)を測定する方法と、眠気に関連する生理指標を測定する方法がある。代表的なものを紹介していこう。

 眠気によって注意力が低下すると、運転に関わる操作頻度が低下したり修正操舵量が減少する。また、車線に沿った走行が難しくなる。

 これらの反応を、単調度、操舵量、蛇行率の3項目とみなすと、例えばファジイ推論を用いて注意力を判定することが可能となる。これは運転注意力モニタとして、注意力を推定する手法でMDAS(Mitsubishi Driver's Attention monitoring System)という名称で実用化されている。MDASはカメラによる車線認識機構を持ち、車両の蛇行、修正操舵の量とウインカ等の操作頻度を計測する。これらの計測値をファジィ推論を用いてドライバの注意力レベルを推定している。ドライバに対しては、注意力は1分毎に棒グラフで表示し、注意力レベルに応じて表示色を変化させ警報音も加えて表示し注意力の喚起を促している。注意力の推定結果によって車間距離警報のタイミングも変化させており、注意力が低下するほど警報タイミングを早くするようにしている。また、単調運転時は香りを1/fゆらぎで発するシステムとしている。

 運転挙動による測定方法の欠点は、運転挙動に影響するものが眠気だけでない点である。運転挙動は、眠気の他に体調、疲労だけでなく、心理状態、ストレス状態、天候、そして周りの交通状況に大きく影響されるのである。

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2018年9月10日 (月)

ドライバ状態(21)

 眠気は主観的にも評価可能で、SSS(Stanford Sleepiness Scale)やKSS(Karolinska Sleepiness Scale)が有名である。SSSには疲労の観点があり、KSSは眠気だけを扱う。

 SSSとKSSの結果は高い相関があり、どちらを使ってもよい。主観的手法は眠気変動に対する感度が高く、脳波とも高い相関を示す。

 ところが、主観的評価の自覚的眠気は、客観的評価の他覚的眠気と乖離することがある。例えば、4時間睡眠、及び6時間睡眠を続けた被験者は、最終的にPVTの成績が4時間睡眠の者は全断眠2日と同程度まで悪化し、6時間睡眠でも全断眠1日と同程度に悪化する。ところが、この状態で自覚的眠気はあまり増加せず、4時間睡眠と6時間睡眠で自覚的眠気のレベルは同程度になる。すなわち、自覚的眠気は過小評価される傾向にあるといえる。

 少しの刺激でも自覚的眠気は低減するため、眠気を自覚しないままヴィジランスは低下する。つまり、運転手の眠気評価は主観的評価だけでは不十分といえる。

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2018年9月 9日 (日)

ドライバ状態(20)

 覚醒度が低下するとヴィジランスも低下することが知られている。この状態では、オミッションエラー(標的が出現しても無反応)とコミッションエラー(標的がないのに反応)が増加するのである。

 覚醒低下するとオミッションエラーが発生するため、補償努力という意志的かつ無意識的な努力することによりコミッションエラーが増えるものの通常通り反応できることもある。しかし、補償努力は長く続かないので、パフォーマンスが悪い状態が出現する。

 覚醒低下では補償努力のある状態とない状態を繰り返し、これを覚醒状態の不安定性という。この不安定性に基づく評価指標を与えるのが、精神運動ヴィジランス課題PVT(Psychomotor Vigilance Test)である。PVTの実施方法は、2秒から10秒に1回の割合でカウンタが動いたらすぐボタンを押すというものである。所要時間は10分で、反応時間、500ms以上反応が遅れるオミッションエラー、そしてコミッションエラー等をパフォーマンスの指標とする。PVTを運転に適用するため、実施時間を短縮したPVT-A(Adaptive Duration Version)とPVT-B(Brief)が開発されている。

 PVT-Aは、PVT実施中に必要な情報が得られたらテストを中止して短縮化する方法である。PVT-Bはテスト時間10分を3分に短縮したものである。

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2018年9月 8日 (土)

ドライバ状態(19)

 眠気の測定法は、睡眠傾向か傾眠か、客観的測定法か主観的測定法かで大別できる。これら各種測定法は、睡眠傾向か傾眠のある側面だけを測定しているので、実験目的によって評価法を決めることが重要である。

 睡眠傾向は、睡眠潜時反復検査MSLT(Multipe Sleep Latency Test)と覚醒維持検査MWT(Maitenance of Wakefulness Test)がある。MSLTは寝付く時間、MWTは起き続けることができる時間で、両者の相関は低く別の過程を評価していると考えられている。

 MWTは覚醒維持機能に着目した検査法なので、運転模擬課題のパフォーマンスを予測することが可能である。実施方法は、暗室に設置したリクライニングチェアに座った被験者が、目を開けた状態で開始して何分で寝るかというものである。20分もしくは40分の検査を1日に4回実施し、被験者へは眠らないように教示する。MSLTはこの教示を眠るようにしたものである。

 MWTの方がMSLTより入眠潜時が長くなる。また、加齢に伴い入眠潜時が長くなる。

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2018年9月 7日 (金)

ドライバ状態(18)

 覚醒度と眠気は混同してしまう。実は、眠気自体の正式な定義は統一されていないのである。

 寝つくまでの早さを睡眠傾向といい、覚醒から睡眠に移行するうとうとした状態を傾眠という。睡眠傾斜と傾眠は相関関係はあるものの、区別すべきものである。

 覚醒とは、睡眠から興奮の範囲で中枢神経系の非特異的な活性化のことである。覚醒度は脳波からわかる。覚醒度が低下すると傾眠や睡眠が生じる。覚醒度が高過ぎると過覚醒といい、中程度の覚醒が最もパフォーマンスが高く最適覚醒水準という。ヴィジランスとは、特定の期間と事象に対し注意を払い続けている状態のことである。持続的注意や、持続性のアラートネスととらえてもよい。ヴィジランスは、断眠の負荷や生体リズムの変化に鋭く反応し、傾眠によって低下する。しかし、眠気発生要因以外にも影響を受けるので注意が必要である。

 眠気は疲労の一症状となる場合もある。ただし、眠気が疲労とは無関係に変化するものでもある。

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2018年9月 6日 (木)

ドライバ状態(17)

 長距離運転での眠気、疲労は重大な事故を引き起こし、制度上長距離運転そのものをなくすことも現段階では難しい。そこで、次のような対策が取られたり、考えられたりしている。

 先ずは、長時間拘束されることになるキャビンやシートを人間工学的見地から改善することである。また、運転以外の荷役作業が負担になることもあるので、運転以外の作業を極力減らすことである。

 次に、過労を防止する対策が重要である。疲労の進展を防ぐ対策は、短時間に取る「手休め」、もう少し長い「休憩」、一日単位の「休息」、週単位で疲れを取る「休日」となり、これらを確実に取ることが重要となる。特に、高速道路では取りにくい「手休め」をどう取るかが考えどころである。そして、十分に睡眠時間を確保することである。睡眠はただ時間さえ確保すれば良いのではなく、良い睡眠を得るという質が問題になる。睡眠の質を上げるためには、サーカディアンリズムから、夜に眠る方が良い。深夜運転が避けられなければ、眠くなったときに仮眠を取ることが効果的である。

 制度的には、夜勤の交代制や長時間連続運転の禁止が有効である。労働省のガイドラインでは、4時間を連続運転の上限としている。

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2018年9月 5日 (水)

ドライバ状態(16)

 職業ドライバの中でも、トラックの長距離運転手の過労運転が重要な問題である。なぜなら、長時間運転で生じた過労による事故が多いからである。

 長距離運転労働の負担には、連続性、拘束性、環境の直接作用、危険性、勤務時間制という特徴がある。運転は不注意が許容される時間が極めて短く、疲労や眠気により容易に危険な状態になるため疲労・眠気対策が重要な課題となる。

 特に眠気問題は深刻である。深夜の長距離走行では十分に睡眠を取って出発したとしても眠気が生じてしまい、眠気が日常化している。休息が不十分になると、慢性的に強い眠気と闘う運転が日常的になってしまう。健常者の眠気に最も影響する要因は、睡眠不足とサーカディアンリズムである。徹夜の長距離運転ではこれら両方の要因が重なる典型例となり、違法となるレベルの飲酒運転に相当するという報告もある。中程度の睡眠不足でも、連続すると強い眠気が生じることも明らかになっている。高速道路の居眠り運転は、あくまでも睡眠不足とサーカディアンリズムの問題であり、走行環境が単調で眠気を促進するのではないといわれている。トラックの深夜運転は産業構造上避けられないことが多いため、眠気対策は避けられない。

 また、眠気の他に問題になるのが、身体への負担である。長時間の運転姿勢により、腰痛リスクが高くなるのである。

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2018年9月 4日 (火)

ドライバ状態(15)

 生体に負荷がかかると負担が生じる。負担は負荷がなくなれば解消するものの、負担のかかった時間が長引くと負荷をなくしても負担が解消しない状態が疲労である。

 この概念を運転にあてはめると、負荷を運転作業の強度とみなして、それに応じた負担の持続時間により運転疲労が現れることになる。休息により疲労がなくなって初めて疲れていたと確認できることもあり、休息しても解消しなければ慢性疲労ということになる。

 運転に特有な疲労として、ストレス疲労とスキル疲労がある。ストレス疲労とは、運転中の外的刺激によりドライバは緊張状態が続いた結果現れるものである。スキル疲労とは、複雑な知覚・運動協応作業を続けることにより技能の不調として現れるものである。職業ドライバでは、運転作業に加えて、深夜運転、日内リズム(サーカディアンリズム)の底部時間での運転、急ぎ運転、休息がとれない長時間運転等が更に運転疲労を高める。運転疲労の指標として、主観評価と客観評価がある。主観評価は前回紹介した「自覚症しらべ」等を使い、客観評価はこれまでに紹介した脳波、心拍数、心拍変動、呼吸数、CFF(Critical Fusion Frequency)、反応時間、ミラー確認頻度、副次動作(座りなおし、顔をさわる、窓を開ける、あくびをする等)や運転パフォーマンス(アクセル、ブレーキ、ステアリング操作特性の変化、車間距離の変化、レーン内の走行位置の計測等で行われる。これらの計測で、疲労の発現・進展・回復の3過程を評価する。

 職業運転では、腰痛、痔、むちうち症、胃・十二指腸潰瘍、神経性胃炎、椎間板ヘルニアの既往症歴が高い。また、同じく、肩こり、関節痛、腰痛、背部通、胃もたれ、胸やけ、胃痛、嘔吐等の持病を持つ割合が高まる。

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2018年9月 3日 (月)

ドライバ状態(14)

 ドライバ状態は主観的評価も重要である。心理学的手法による実験では、生理指標による客観的データより主観的データの方が信頼できるといわれている。

 主観評価を数値データとして取り扱うためには、尺度水準を考慮することが重要である。心理学的尺度として、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度の4つが考えられている。

 間隔尺度に基づく疲労や眠気に関する調査票としては、産業疲労研究会が製作した「自覚症しらべ」や労働科学研究所が製作した「MWSチェックリスト」がある。自覚症しらべでは、ねむけ感、不安定感、不快感、だるさ感、ぼやけ感の5要因を25の質問に変え、5段階で評価できる。MWSチェックリストでは、精神的作業負担を評価するための、眠気、リラックス、全般的活性、緊張、注意集中困難、意欲減退の6因子が2項目ずつ含まれた12の評定項目を7段階で評価する。眠気やリラックス等との因果関係構造を分析することも可能である。精神的負荷と負担を評価するためには、日本語版NASA-TLXもよく使われる。また、ドライバが認識した状態を発話させ、その内容をカテゴリに分類して解析する手法もある。客観性を高めるため、カテゴリの分類は2名の評価者が独立して行い一致したものだけを用いる。

 主観評価で重要なことは、信頼性のあるデータが得られるような実験協力者への教示や実験計画を行うことである。主観評価に一貫性がない場合は、まず、協力者への教示や課題内容を疑ってみるべきである。

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2018年9月 2日 (日)

ドライバ状態(13)

 ストレスは内分泌系や免疫系に作用する。そのため、血液、尿、唾液等の体液を解析するとストレス状態がわかり、特に唾液は採取の容易性からよく利用される。

 ストレス反応の経路は、視床下部→脳下垂体→副腎系に至るHPA系と、交感神経→副腎髄質系のSAM系に大別される。HPA系が反応すると副腎皮質から血中にコルチゾールが分泌され、代謝が促進される。SAM系が反応すると、副腎髄質から血中へカテコールアミン(含アドレナリン)が分泌され、鋭敏なストレス反応を引き起こす。

 唾液からはHPA系のコルチゾールと、免疫系指標となる分泌型免疫グロブリンA(slgA)が検出できる。一方、SAM系のカテコールアミンは唾液からは測定困難なものの、交感神経の作用で分泌されるクロモグラニンA(CgA)とαーアミラーゼが検出できる。slgAは慢性ストレスで減少し、緊急ストレスで増加する。肯定的な感情と音楽でもslgAは増加し、運転の楽しさと関連するという研究もある。CgAは緊急ストレスで増加し、運転の緊張感の指標に関連する。

 唾液の採取、解析はわれわれには難しそうに思える。しかし、専用キットが販売され、測定受託サービスを行う会社もあるので、対象外ではない。

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2018年9月 1日 (土)

ドライバ状態(12)

 人間の感情や状態は顔の表情に出るため、表情を解析してドライバ状態を推定することも可能である。表情は表情筋によって作られるため、顔面筋電を計測することが基本となる。

 30程ある表情筋のうち、11の筋肉が基本表情の喜・怒・悲・恐・嫌・驚を生成する。また、上瞼を開く上眼瞼挙筋は表情筋には分類されていないため、同時に計測する必要がある。

 感情を頭に思い浮かべるだけで表情筋の電位は記録されるものの、実際に感情を感じた方が強い電位が記録される。逆に表情筋を動かせてある感情を表現すると、内面の感情にも影響するともいわれている。表情筋から感情を推定する研究は、基本動作単位に分割された対応表から感情に対応付ける手法が確立しており、顔画像処理による感情推定はこの手法を元に開発されている。ところが、表情筋と眠気や疲労を推定する研究は少なく、人の判断で眠気を推定する手法「顔画像評定」が一般的である。顔画像評定を使うと、他指標より軽度の眠気をとらえる利点があり、多くの研究のリファレンスに利用されている。

 非接触に顔画像を解析し、眠気だけでなく疲労等も含めたドライバ状態を推定する手法が望まれる。課題は、外乱光、眼鏡、サングラス等にどう対応するかである。

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