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2018年10月31日 (水)

運転中のインタラクション(31)

 リアルタイムに使えないというSEの欠点を解消したのがリアルタイムステアリングエントロピー法RSE(Real-time Steering Entropy)である。RSEの発表は2015年と新しい手法である。

 RSEは走行コースを規定する必要がなく、基準走行と評価走行も区別する必要がない。かつ、オンラインでリアルタイムに計算できるという優れた手法である。

 計算手順は、SEと同じく150ms毎の舵角データを取得しPEを計算する。SEでは走行データをすべて記録し、オフラインでPE分布を計算していた。これに対しRSEでは、再帰的計算となるPE分布の更新を行う。具体的には、長時間のPE分布と短時間のPE分布に対し、PEの変化点を置き換えるのである。そして、長時間分布のエントロピーと短時間分布のエントロピーをSEと同じ計算で算出し、これらの差分値とそれぞれのPEの比の対数を合計したものをRSEのエントロピー値とする。

 RSEでサブタスクを行ったときのメンタルワークロードの評価が妥当なものと報告されている。ただし、ドライバの運転姿勢、ステアリング把持位置、路面状態等の外乱の影響を受けることが注意点である。

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2018年10月30日 (火)

運転中のインタラクション(30)

 SE法はエントロピー名を付けたように、ステアリング操作の滑らかさ(粗さ)を評価する手法である。すなわち、メンタルワークロードが増すにつれ、ステアリング操作が粗くなることに着目した手法である。

 先行研究では、車載情報機器の操作が複雑になるほど、ステアリングエントロピー量が増加した結果となっている。また、眠気が増してもエントロピー量は増えるため、眠気評価を検討した研究もある。

 計算方法は、150ms間隔のステアリング操舵角データについて、過去3点から現在の舵角値を2次補間で予測する。そして、この予測値と実舵角値との差を舵角予測誤差PE(Prediction Error)を算出する。次に、一回の走行データからPEの90%ile値を求めこれをα値と呼び、αの倍数で出現頻度を9のビンに分類する。ステアリング操作が滑らかなほど中央が尖った形となり、粗くなると中央が下がって両側があがるダレた形となる。最終的に、これら9つのビンの割合の対数を合計したものをエントロピー量と定義する。

 SE法はメンタルワークロードを運転パフォーマンスで評価できる優れた手法である。欠点はリアルタイムで使えない点である。

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2018年10月29日 (月)

運転中のインタラクション(29)

 メンタルワークロードの評価法として、主観的評価法、サブタスク法を紹介した。また、生理計測結果からメンタルワークロード量を評価することも可能である。

 主観的評価の事後評価や、不自然なサブタスクをこなさず、通常の運転操作だけからメンタルワークロード量を推定できればもっとも妥当性が高いと考えれる。これが運転パフォーマンスによるワークロード計測法である。

 基本的には、ドライバが行うステアリング操作量、アクセル・ブレーキペダル操作量、視線等が利用可能である。具体的な手法として定着しているものは、ステアリング操作量を解析するステアリングエントロピー法SE(Steering Entropy)がある。

 SE法では、ドライバによるステアリング操作量だけを計測するため、非侵襲、非接触手法であり、ドライバは計測を意識せず自然な状態で計測できるという利点がある。また、走行中に連続して計測できるため、ワークロードの変化を捉えやすい。これらはSE法の他、走行車線に対する横位置を用いるものがあるものの、車載カメラが前提となり、追加装置が不要なSE法が優れており感度も高いといわれている。

 ステアリング操作量に着目した手法はSE法だけでなく、操舵入力の周波数や操舵の切り返し頻度を解析するものもある。これらの中でSE法は使用頻度が圧倒的に高い。

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2018年10月28日 (日)

運転中のインタラクション(28)

 サブタスク法の最大の注意点は、運転と関係のないサブタスクを組み合わせることである。これをすると不自然な状況で運転に影響を与えてしまうからである。

 また、サブタスクによって通常の運転ができなくなることも問題である。ドライビングシミュレータの使用により運転行為の臨場感が希薄になり、運転操作よりもサブタスクを優先させることがある状況は避けなければならない。

 ドライビングシミュレータで現実的な運転状況を設定して実際の走行に近い状況を再現したとき、これにサブタスクを適用すること自体が現実的でないと考えられる。そのため、ある種の人工的な走行環境でサブタスクとして新しい車載機器を使うという状況の方が評価としての正当性があるものと思われる。現実的な走行状況では、サイドミラーの確認行動を運転に埋め込まれたサブタスク、すなわち、埋め込み型サブタスクととらえ、各種運転状況下でサイドミラー確認行動がどのように変化するかを監視するといった手法がよい。

 運転行動の中には、各種運転状況で頻度が変わるものがあり、埋め込み型サブタスクとみなせる。メータ、インナミラーの確認、また視線の動き等がこれにあたる。

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2018年10月27日 (土)

運転中のインタラクション(27)

 注意資源には限界があり、タスクによって注意資源の要求レベルが異なる。注意資源を十分使った運転成績は良好であり、不十分だと成績が悪くなると考える。

 すると、注意資源がタスクによってどの程度余裕があるかでサブタスクの影響が説明できる。すなわち、サブタスクが余裕資源の中で行われる限りは、運転に影響も与えないしサブタスクの成績も良好である。

 ところが、サブタスクが余裕資源の中で行われず、注意資源を運転に費やすことを優先すれば、サブタスクの成績が悪化する。このとき、サブタスクを優先させると運転に影響が表れるのである。そのため、余裕量をみたいときは、運転よりも優先度が必ず低くなるサブタスクを設定すればよい。この場合、サブタスクの成績は余裕量に敏感に反応することになり、余裕量の指標となる。

 なお、課題の特性によって用いる注意資源が異なることに注意が必要である。視覚課題と聴覚課題では注意資源が異なり干渉しないものの、課題が複雑になると干渉することも考えられる。

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2018年10月26日 (金)

運転中のインタラクション(26)

 サブタスク法で運転に関するワークロードを推定する原理を、心理学的概念から考えてみよう。これには、情報処理と注意の働きに関するモデルを導入する。

 基本的なモデルとしては、ドライバは走行環境から必要な情報を選択的に取得し(選択的注意)、その情報を知覚して認知し操作するため注意資源を配分して処理を行う(分割的注意)。サブタスクを与えることによって、この情報処理のどの部分に影響を与えるかを考えるのである。

 携帯電話をサブタスクとしたとき、ドライバは通話のためある程度注意を会話に向けている。会話の内容が複雑になると注意量が増え、運転に配分可能な注意資源が減り運転に影響を与える。運転操作に慣れていて無意識に運転できる部分には影響は出ない。しかし、意識して行わなければならない状況になると、サブタスクで資源を取られ、運転に向けた認知過程に影響が出るものと考えられる。

 この考え方は、利用可能な注意資源は一定という仮定を置いている。運転に注意資源を使っても余裕のあるときはサブタスクがこなせるという考え方である。

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2018年10月25日 (木)

運転中のインタラクション(25)

 視覚のサブタスクに関しては、ドライバの視覚を断続的に遮断することによって運転時の視覚的要求を評価する手法が考え出された。この手法は後にオクルージョン法としてISO化されている。

 また、ドライバの周辺視野にLEDを配置し、ドライバが不定期なLEDの点灯に気づくかどうかをみる周辺刺激検出法PDT(Peripheral Detection Task)が開発された。運転状況が複雑になったり電話をするとLEDの検出率が悪化する。

 オクルージョン法は運転行動への影響を評価し、PDTはサブタスクの成績によってドライバの認知状態を推定しようというものである。サブタスク法はこのように適用の目的が異なる2種類のものがある。前者のものは、運転中の携帯電話の影響、実際の会話の影響、これらの関連事項として記憶課題がある。後者のものは、サブタスク自体がドライバへの負荷を与えず、運転に影響を与えないものが望ましい。

 PDTの場合、LEDの点灯に気づくかどうかというサブタスクは非常に単純なものである。単純で運転に影響しないので、サブタスクの成績だけを問題にすれば良いのである。

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2018年10月24日 (水)

運転中のインタラクション(24)

 自動車電話をサブタスクと捉えた初期の実験例として、1969年のものを紹介しておこう。それは、自動車電話をしながら、二つの障害物間を通過できるかどうかというものである。

 障害物間の幅は一定でなく、通過できるものもあればできないものもあるという状況設定だった。被験者数は224人にも及んだ。

 電話の内容は一般的な会話ではなく、短い文が読まれ、それが正確かどうかを判断するというものだった。最も影響が出たのは、障害物間の幅が狭く通り抜けができない状況のときである。電話課題をしていると、通り抜けできないという判断ができなかったのである。通り抜けできるときは、電話課題をしていると通過速度が低下した。しかし、ステアリング操作には影響がなかったのである。

 それまで電話での会話は、運転能力に影響しないと考えられていた。しかし、この実験によって、知覚と意思決定能力に影響することが証明されたのである。

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2018年10月23日 (火)

運転中のインタラクション(23)

 メンタルワークロードは、被験者の申告による主観的な方法だけで評価されるのではない。サブタスクをこなすことによって、どのように運転行動が変わるかでメンタルワークロードを推定する手法がある。

 このサブタスク法とは、主ワークたる運転をしながら運転に関係のないタスクを同時に行う方法である。運転の変化だけではなく、サブタスクの成績も分析対象となる。

 運転におけるサブタスク法は、1960年代から実験された。そのときのサブタスク課題は、音声による数字の弁別や暗算だった。このときの実験結果から、サブタスクの成績が運転環境に応じて変化することが見いだされたのである。これにより、サブタスク法によってドライバの余裕心的資源(Spare Mental Capacity)が測定できることが示されたのである。

 実際に運転中に暗算することはない。しかし、当時から問題になり始めた運転中の自動車電話の影響を明らかにすることができたのである。

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2018年10月22日 (月)

運転中のインタラクション(22)

 これまで紹介した主観的ワークロード評価手法は、いずれも手続きが複雑である。評価を1次元化して、スケールの違いだけで回答すれば非常に簡便に運用できるものができるはずである。

 これを実践したのがRSME(The Raiting Scale Mental Effort)である。オランダの博士課程の学生Zijlstraが博士論文で提案したものだ。

 これはあるタスクに対して、精神的努力を表現した1次元スケールの該当する箇所に印を付けるだけのものである。努力の程度を9段階(Absolutely no effort, Almost no effort, A little effort, Some effort, Rather much effort, Considerable effort, Great effort, Very great effort, Extream effort)で表現し、これを非等間隔に配置した。

 RSMEの回答時間は1分未満であり、他手法より抜群の短時間評価が可能である。しかし、表現方法や文化の違いにより、感度が落ちる国や地域があることが課題である。

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2018年10月21日 (日)

運転中のインタラクション(21)

 当研究室でも使っている「自覚症状しらべ」は日本産業衛生学会産業疲労研究会が提案したものである。提案年は1970年と半世紀近くも経つ古いものである。

 しかし、現在でも使われている日本発の優れた作業の経過に伴う疲労感評価ツールである。自動車運転の疲労感評価にも適用されている。

 被験者は眠気・だるさに関する症状のⅠ群、注意集中の困難さに関する症状のⅡ群、身体的違和感に関する症状のⅢ群の3因子に基づく30項目について、〇×を回答する。これを作業経過に伴って回答を続け、各症状の変化をみることを目的としている。更に、その項目を訴えた人数を対象人数で%化した項目訴え率と、項目群の訴えられた項目総数を10倍の対象人数で割って%化した項目群訴え率を比較評価する。

 労働環境の変化から2002年に改訂され、眠気感のⅠ群、不安定感のⅡ群、不快感のⅢ群、だるさ感のⅣ群、ぼやけ感のⅤ群を5段階で評価するものになった。研究室で使っているのはこの改訂版である。

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2018年10月20日 (土)

運転中のインタラクション(20)

 NASA-TLXやSWATとの比較に出される手法にWP(Workload Profile Method)がある。これはTsangとVelazquezが提案した手法である。

 この主観的ワークロード評価手法は、多重資源モデルを反映させたものである。資源モデルとは、タスクにどのような資源を投入したかに着目したものである。

 被験者がタスクを実行後、費やした注意資源の割合を評定シートに記入することによって評価を開始する。注意資源とは、処理段階として、処理対象を検出、理解、区別、記憶、問題解決、意思決定等にどの程度注意を注いだかという知覚・中枢に関わるものや、反応・選択にどの程度注意を注いだかである。また、処理様式として、空間的か言語的な処理か、そして、入力として知覚系聴覚系の処理負担、出力として手や音声の反応に注意を注いだ資源を申告する。これらの資源と各タスクを行列として、それぞれに0か1で評定してワークロードを計算する。

 NASA-TLXやSWATに比較すると、WPの感度が一番良いという比較論文がある。所要時間も短時間のため、試す価値はあるものと思われる。

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2018年10月19日 (金)

運転中のインタラクション(19)

 アメリカの空軍アームストロング航空宇宙医学研究所も主観的ワークロード評価手法が開発された。これはSWAT(Subjective Workload Assessment Technique)と呼ばれるこの手法は、三つの評価尺度を用いる。

 この尺度項目とは、時間切迫性、精神的努力、心理的ストレスである。これを高中低の3段階の項目が設定されるので、27通りの組み合わせができる。

 この27通りの組合せを実験者が順序を付け、それに基づいて1~100の尺度が与えられる。具体的には、27通りの組合せは、27枚のカードで準備される。カードには尺度項目の高中低のどれかの説明が書かれており、被験者は27枚のカードの説明を読み、ワークロードへの寄与が低い順にカードを並べる。評価者は実験目的に応じて、それぞれのカードに重みを付け、最終得点が決定される。

 SWATの欠点として、評価時間がかかることや重み付けの手続きが複雑なことがあげられる。そのため簡素化された手法も提案されており、改良の余地があるものと思われる。

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2018年10月18日 (木)

運転中のインタラクション(18)

 次はNASA-TLXである。NASAが開発した主観的ワークロード解析手法である。

 TLXはTask Load Index を意味する。Index(尺度項目)を六つとし、これに基づいてワークロードが評定される。

 この六つの尺度項目は下記のものである。

・精神的要求:どの程度、精神的かつ知覚的活動が要求されたか?
・身体的要求:どの程度、身体的活動が必要だったか?
・時間的圧迫感:作業や要素作業の頻度や速さにどの程度、時間的圧迫を感じたか?
・作業達成度:実験者によって生っていされた作業の達成目標の遂行について、どの程度成功したか?
・努力:作業達成レベルに到達するのにどれくらい一生懸命作業を行わなければならなかったか?
・不満:作業中、どのくらい不安、落胆、いらいら、ストレス、不快感、あるいは安心、喜び、満足、リラックス、自己満足を感じたか?

これら六つの尺度から二項目を対比させ、尺度の重要度を決める。6つから2つを比較するため、15種類の一対比較を行うことになる。被験者はそれぞれの尺度のスケールを高い/低いの間で決め、評価者はそれを100点満点で点数化する。それを各項目の一対比較で得た重要度で正規化した加重平均ワークロードスコアWWL(Mean Weighted Workload Score)得点を算出する。

 日本では日本語化された日本語NASA-TLXがよく使われる。また、運転タスク用にフランスの国立研究所がDALI(Driving Activity Load Index)を考案し、カーナビのワークロード評価に利用されている。

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2018年10月17日 (水)

運転中のインタラクション(17)

 運転中のインタラクションには、先月紹介したドライバ状態の中のメンタルワークロードが重要になる。すなわち、インタラクションによってメンタルワークロードがどのように変化したか、また、インタラクションしているときにどのようなメンタルワークロードだったかが重要ということになる。

 そのため、メンタルワークロードの計測方法を知らなければならない。まずは、質問紙による計測方法のCooper-Harper Raiting Scale から。

 これは航空機の操縦性について、パイロットへの要求や航空機の特性の適切性を評価するために考案された評定尺度である。パイロットが決定木構造のYes/Noに回答していくと、対象となる航空機操縦に対する評定値が1~10の整数値で得られる。ワークロードが高いほど評定値も高くなる。オリジナルの評定尺度は航空機に特化したものなので、他産業に利用するときは決定木の構造をそのままに質問事項を修正する。

 この手法は、対象システムの操作の困難さがワークロードの要因となるものに適している。また、対象システムの部分要素評価が困難なため、システム全体のワークロード評価に用いる。

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2018年10月16日 (火)

運転中のインタラクション(16)

 トラッキングタスクにおける人間の制御動作が微分方程式で表現できると、伝達関数が求められる。伝達関数でモデリングできると、シミュレーションできるため機器の設計に非常に役立つものになる。

 先行研究において、各項の係数を調整するだけで伝達関数形式に表現できるためには、次の条件を満たすこととしている。

①強い非線形性がないこと
②人間の制御動作が目標値に対し反射的に行われること
③制御動作が不規則でないこと

 伝達関数はむだ時間や時間遅れ、比例、微積分動作で構成される。むだ時間や時間遅れは人間の心理的または生理的性質の反映であり、比例・微積分動作が機器の特性を表していると考えられる。

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2018年10月15日 (月)

運転中のインタラクション(15)

 目標値の難易度はC/D比によっても特徴付けられる。C/D比とは、操作器の操作量と表示器でのカーソル変位量の比である。

 C/D比を極端に大きくしたり小さくしたりすると、操作器の操作量とカーソル移動量が乖離してしまう。その結果、目標値の追従が困難となる。

 また、加齢によって感覚機能や認知機能、運動機能が低下するため、知覚運動協応の能力も低下する。したがって、トラッキングタスクの反応速度、追従操作能力が低下する。そのため、ターゲットとカーソルの偏差やバラツキが増加する。高齢群と若年群を比較した運転操作での研究例では、高齢群は道路の中心ラインに対する偏差が有意に若年群より大きく、追従操作の正確性が低下していたと報告されている。

 被験者のトラックンぐタスクの成績は平均的な偏差の算出が基本である。カーソルの移動方向が反転するときのオーバーシュートやアンダーシュートのパターンも取ると、被験者特性が特徴づけられる。

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2018年10月14日 (日)

運転中のインタラクション(14)

 トラッキングタスクの難易度は、目標システムや制御システムの特性、操作器の形状・特性、外乱によって決まる。難易度を高くするには、目標値を変動させたり、操作器のC/D比(Control-Display Ratio)を複雑にする。

 目標値が変動するとタスク操作が難しくなるのは直感的にわかる。難易度に関する目標値の要因としては、目標値の連続性/不連続性、周期性/ランダム性がある。

 目標値がステップ信号という不連続なものになると、被験者は素早い対応が求められる。このとき、変動周波数が1Hz以上になると追従操作が遅れて対応が困難となる。連続な変化でも1Hz以上の周期(例えば正弦波入力で)で変動すると、追従操作は対応困難となる。更に、ランダムな変化にすると、被験者は目標値の予測が難しくなり、周期的な変動よりも対応困難となる。

 この特性を踏まえて、目標値変動に関するタスクの難易度を設定する。ノイズを印加したときは、難易度をローパスフィルタのカットオフ周波数を変えて難易度を調整する。

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2018年10月13日 (土)

運転中のインタラクション(13)

 自動車の運転操作もトラッキングタスクとみなすことができる。カーブ路で車線を逸脱しないように運転する状態はトラッキングタスクと直感的にわかる。

 ドライバは車線位置を知覚認識し、その位置に到達するようステアリングとペダルで操作する。目標となる車両状態と制御された車両状態の偏差を0にしようとするところは、トラッキングタスクそのものである。

 運転操作はステアリングホイールによる横方向制御と、アクセル・ブレーキペダルによる縦速度制御で構成される。すなわち、2変数の目標値のトラッキングタスクである。ドライバは追従する道路環境を知覚し、目標となる道路線形に対応して車両速度制御するには、追跡作業系と補正作業系のトラッキングタスク問題とみなすことができる。

 追跡作業系では、目標となるコースと捜査対象となる車両の運動の両方を知覚することができる。補正作業系では、コースと車両の相対的関係を知覚することになる。

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2018年10月12日 (金)

運転中のインタラクション(12)

 トラッキングタスクとは、目でターゲットを追いながら手動でカーソルを合わせる作業である。追値制御や追従制御といわれる手動制御の一つである。

 ターゲットは目標値、カーソルを制御値とみなし、これらの間の偏差を0にすることを目的とした制御作業と定義できる。ターゲットは目的に応じて移動する。

 作業者は表示器に提示され移動するターゲットとカーソルの位置を認識し、偏差を0にするようカーソルを移動させる。偏差を0にするため、カーソルに必要な操作を予測しながら操作器を操作する。作業者は知覚した目標値や偏差量に協応して運動器官を制御しているため、トラッキングタスクは知覚運動協応を要する作業といえる。

 知覚運動協応とは、知覚によって認識した空間の位置に、自分の手を差し伸べるために適切に筋肉を動かす命令を生成する能力である。よって、トラッキングタスクの成績は、作業者の知覚運動協応能力とみなせる。

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2018年10月11日 (木)

運転中のインタラクション(11)

 フィッツの法則は、マウス等のコンピュータ入力機器では強力な評価ツールとなる。それでは、自動車HMIの評価に使えるのだろうか。

 カーナビのような多機能な車載システムでは、メニュー形式での機能選択が定着している。特に日本語入力ではキーのポインティングによって行われるため、フィッツの法則の適用が可能である。

 ただし、車載マウスはないので、ジョイスティックやタッチパッドが導入されており、これらの操作性評価に適用するのである。センターコンソールにダイヤルがあり、これを回してメニュー選択するものは1次元的ポインティングデバイスと見なすことができる。よって、ダイヤルの形状や位置、メニュー画面のボタンのサイズや配置の評価にフィッツの法則が使えるのである。

 実験においては、フィッツの法則でカーソルの初期位置が重要となるので、入力装置を異なった位置に配置してデータ収集を行う。ターゲットのサイズを変えるのは言うまでもない。

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2018年10月10日 (水)

運転中のインタラクション(10)

 フィッツがフィッツの法則を提案したのは1954年のことである。この法則が注目され始めたのは、コンピュータへの入力装置の研究が始まってからだった。

 1970年代になって、コンピュータへの各種入力装置の評価が始まった。そのとき、スタンフォード研究所SRIでフィッツの法則を使用したのである。

 SRIではキーボードの次の入力デバイスとして、カーソルキー、ジョイスティック、そしてロータリーエンコーダを2つ直交させて入力デバイスを評価した。これらは、カーソルを移動させるポインティングタスクであり、フィッツの法則で最も成績の良かったものがロータリーエンコーダを2つ直交させたものだった。その結果、コンピュータへの入力装置としてこのデバイスの導入が進んだのである。ちなみにこのデバイスがマウスである。

 フィッツの法則を追試した実験では、相関係数が0.95以上とモデルが非常に正確であることを示している。上記、マウスの成績が最もよかったと発表されたのは、1978年とフィッツが法則を提案してから24年度のことだった。

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2018年10月 9日 (火)

運転中のインタラクション(9)

 ポインティングタスクのターゲットまでの距離が長くなると、ポインティング操作時間は長くなる。ターゲットのサイズが小さくなっても操作時間は長くなる。

 オハイオ州立大の心理学者ポール・フィッツは、ポインティング操作時間の法則を提案している。これはフィッツの法則と呼ばれ、ターゲットまで移動するのに必要な時間がターゲットまでの距離と大きさの関数としたものである。

 フィッツの法則によれば、操作時間をMT(Movement Time)、ターゲットまでの距離をA、ターゲットのサイズをWとすると、
MT=a+b・log2(2A/W)
なる関係が存在する。ただし、aとbは定数である。log2(2A/W)を困難さの指標ID(Index of Difficulty)と呼ぶ。ターゲットまでの距離が長くなったりターゲットサイズが小さくなるとIDが大きくなるため、直観的に合うものである。bの逆数1/bをパフォーマンス指標IP(Index of Performance)と呼ぶ。フィッツの法則を使って、タスクが難しくなると操作時間がどう変わるかを評価し、インタフェースのパフォーマンスを評価する。

 IDが小さいところではフィッツの法則が当てはまりにくいこともあり、補正バージョンも提案されている。それらはIDをA/W+0.5としたり、A/W+1.0とするものである。

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2018年10月 8日 (月)

運転中のインタラクション(8)

 インパネやコラムのスイッチ操作は、一般的にはポインティングタスクという。正確には、指示があって手や指を伸ばすことをリーチングと呼び、リーチングによってボタンを操作することをポインティングタスクと呼ぶ。

 空間上のスイッチ操作は三次元的ポインティングタスク、マウスによる画面操作は二次元的ポインティングタスク、ダイヤルによるメニュー操作は一次元的ポインティングタスクである。ポインティングタスクにかかる時間を計測すると、理想的な操作系が設計可能となる。

 計測のやり方は、まず、トリガー信号が出されたときの開始地点をホームポジションとして設定する。複数のターゲットがあるときは、全てのターゲットが見えており、予めどのターゲットを操作するかも提示しておく。操作時間は、トリガー信号提示から手や指が反応するまでの反応時間、手がターゲットまで移動するまでの移動時間、スイッチを操作するクリック時間または選択時間に分解して計測する。

 移動時間のときの手の動きは、大きくターゲットに迫る弾道運動(フィードフォワード)と小さく正確にスイッチを狙う修正運動(フィードバック)からなる。スイッチが小さくなると修正運動の割合が増え、繰り返すと減少する。

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2018年10月 7日 (日)

運転中のインタラクション(7)

 反応がエラーかどうかの判定は、選択反応タスクにおいては明らかに間違い選択としてわかる。見越し反応や反応遅れについては、反応時間の分布から決定する。

 反応時間が極端に短い場合は見越しエラー、長い場合は反応遅れエラーとしてもよい。ただし、エラー判定に主観が入るため、統計的処理を用いて客観性を持たせる。

 よく使われる方法としては、平均値±2×標準偏差または平均値±2.5×標準偏差の外側データをエラーとみなす方法である。データ数が多い場合は平均値±3×標準偏差としても良い。また、回帰的方法として、最大値と最小値が平均値±2×標準偏差のデータ範囲に入っているかどうかをチェックし、入っていなければ最大値と最小値を取り除いて再び平均値と標準偏差を計算して最大値と最小値が入っているかどうかを繰り返すものがある。最大値と最小値が平均値±2×標準偏差に入れば終了とする。

 回帰的方法は反応時間分布が左右非対称のため、右側に伸びるデータを取り続けるという欠点がある。これへの対策としては、最大値を取り除いてから平均値と標準偏差を計算し、その後最大値を戻して回帰的手法を適用するとよい。

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2018年10月 6日 (土)

運転中のインタラクション(6)

 反応時間の統計処理は、次のように考えると正規分布の過程が適用可能となる。まず、一人の被験者のM回のデータを平均してその被験者の代表値とする。

 この操作をN人の総参加者について行い、N個の平均値を取得する。こうすると、この平均値については正規分布過程を適用できることになる。

 なぜならば、中心極限定理によれば、元の分布がどのようなものでも、そこからの平均値は正規分布に従うとあるからである。これによって、N人の平均値に対し、条件を変更したときの有意差ありなしはt検定が適用できるようになるのである。正規分布の仮定をより強くしたければ、M回の値を多くする。一般的には、最低でも3回、できれば10回を目標とする。

 ただし、実験内容により繰り返し試行が難しい場合もある。そのため、予備実験で分布形状を事前に確認することが重要である。

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2018年10月 5日 (金)

運転中のインタラクション(5)

 反応時間は一定ではないので、統計分析の必要がある。しかし、反応時間は0にはならないので、その分布は値が大きい方にすそ野が広がる形となる。

 すなわち、正規分布を仮定した統計的検定がそのまま適用できないことが多い。反応時間の理論分布はex-ガウス分布や逆ガウス分布である。

 ex-ガウス分布とは、正規分布と指数分布を合成したものである。これは、反応時間特性を考えて、0から徐々に立ち上がり値が大きい方に伸びる形状を模擬したものである。また、逆ガウス分布とは、モーメント母関数がガウス分布のモーメント母関数の逆関数になっている分布である。これは、ランダムウォーク過程の所要時間の分布であり、反応時間は脳内の処理プロセスがランダムウォーク過程と考えられるのでそれを適用したものである。

 反応時間データは右に伸びた非対称分布となるため、個人データについては正規分布を仮定したt検定をそのまま適用できない。そのため、データ解析は複数人の実験が前提となる。

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2018年10月 4日 (木)

運転中のインタラクション(4)

 反応時間の計測は、ミリ秒単位で計測する。従って、刺激は1ms以内に提示できるものを使用する。

 視覚刺激ではPC画面を用いることが多く、PCでの表示特性を理解しておくこと。例えば60Hzのリフレッシュレートだと16msの遅れが生じるため、実験目的に適さないこともある。

 音による刺激では、単純音は特に問題ない。しかし、音声の場合は立ち上がりが緩やかなため、開始時間の定義が難しくなる。同様に、発話を反応とする場合は、反応時間の定義が難しい。指や足で反応する場合も、選択反応タスクでは各指や足と選択肢ボタンまでの距離を同じにする工夫が必要である。

 反応時間は基本的にばらつくことにも注意が必要である。単純な反応タスクで同一人物同一条件でも、繰り返して一定になることはない。

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2018年10月 3日 (水)

運転中のインタラクション(3)

 反応時間は刺激と反応の適合性によっても異なる。例えば、右の刺激で右のボタンを押す方が反応時間が短く、右の刺激で左のボタンを押すと長くなる。

 選択反応の場合は、刺激の出現確率によって反応時間が異なる。出現頻度が高いと反応時間が短くなり、低いと長くなる。

 反応時間には順序効果があり、直前の試行に影響を受ける。例えば、選択肢が2つの場合、同じ刺激の方が反応時間が短くなり、逆の刺激で長くなる。ただし、刺激間の時間を長く取ると影響はなくなる。刺激間の時間が短い場合、繰り返し効果が発生し反応に対する促進効果が生まれる。したがって、順序効果をなくすような実験計画が必要となる。また、実験の経過時間によっても反応時間は変化する。実験開始直後は反応時間が短く、その後ほぼ一定になり、実験時間が長くなると反応時間は長くなる。しかし、実験最後には反応時間は短くなる。

 実験最後に反応時間が短くなる現象は、終端効果と呼ばれる。被験者が実験終了を知ると、タスクに全力を注ぐようになるからである。

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2018年10月 2日 (火)

運転中のインタラクション(2)

 刺激信号提示前に準備信号を出すと、反応時間が異なる。準備信号から刺激までを先行時間と呼び、先行時間が250msのとき反応時間が最も短くなり、それ以上でも以下でも反応時間は長くなってしまう。

 反応時間には被験者の準備状態が影響し、自分で準備状態が作ることができる状態にしていると反応時間が短くなる。また、この状態では反応時間も安定するので、必要に応じて準備状態を作る実験シナリオが必要になる。

 また、刺激内容、種類、刺激の強さ、ノイズの大きさによって、反応時間が異なる。感覚種類によっても反応時間は異なり、視覚、聴覚、触覚という代表的な感覚種類で比較すると、触覚、聴覚、視覚の順で早くなる。単純反応タスクでは、聴覚刺激の代表値が200ms、視覚刺激では200~250msとなる。刺激の強さでは強くなるほど反応時間は短くなり、ノイズを加えると長くなる。反応部位では、下肢より上肢の方が早く、上肢では腕で反応するより指で反応する方が早い。

 ボタンを押すのと離すのでは、離す反応の方が早い。ペダル操作の反応では、ペダルを踏むよりも離す方が反応が早い。

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2018年10月 1日 (月)

運転中のインタラクション(1)

 ドライバ状態の次は、運転中のインタラクションについて連載する。近年の高度な車載機器では、ドライバとのインタラクション研究が不可欠だからである。

 インタラクション(interaction)とは、インター(inter)とアクション(action)を合成した造語である。要は、相互作用、交互作用、相互交流という意味合いになる。

 運転中のインタラクションでは、まず、これに関わる人間特性を知っておく必要がある。その中で、最も重要なものが反応時間である。刺激が提示されてから反応するまでの時間を反応時間と定義し、刺激をトリガー信号と呼ぶ。反応時間を調べるタスクとしては、単一刺激に対して単一反応をみる単純反応タスクと、刺激の内容に応じて複数の選択肢から選ぶ選択反応タスクがある。刺激数と選択肢の数が増えると反応時間は長くなり、Hickの法則では選択肢の数+1の対数に反応時間が比例するとされる。これが選択肢のエントロピー量となる。

 トリガー信号から反応までを試行(Trial)と呼び、試行間の時間を試行間隔時間ITI(Inter Trial Interval)と呼ぶ。ITIを一定にすると被験者が次の刺激を予測してしまうため、ランダムに変動させることが肝心である。

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