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2018年11月30日 (金)

運転中のインタラクション(51)

 エコ運転にも応用されたゲームニクス理論を紹介しておこう。これは日本のTVゲームを基に造られた日本発の技術である。

 ゲームニクスには下記の5原則があり、それぞれの原則に基づいた詳細な方法論が開発されている。それらは曖昧なものではなく、600にも及ぶ具体的なものである。

1.直感的で快適なインタフェース
2.マニュアル不要のユーザビリティ
3.はまる演出
4.段階的な学習効果
5.リアルとバーチャルのリンク

 具体例を示すと、原則2の詳細に「操作の誘導方法とルールの暗示」があり、その項目の一つに「画面切り替えのタイミングでルールを伝える」というノウハウがある。これは、画面をタッチして次の画面に切り替えるシステムのわかりにくさを解消するものである。このノウハウを使うと、画面操作はあるカテゴリ内で小さく動かし、大きく画面が切り替わるとカテゴリが変わったことをユーザが容易に理解することができるのである。

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2018年11月29日 (木)

運転中のインタラクション(50)

 車両側でエコドライブを支援するため、数々の工夫も織り込まれている。これらの技術には、速度計の背景色を変化させてドライバのアクセル操作やブレーキ操作のエコ運転度を伝えるコーチング機能、燃費運転法を伝えるティーチング機能、過去の燃費を振り返ることができる機能が活用されている。

 また、エコ運転度に応じたポイントを社会貢献活動に寄付できる仕組みや、通信機能を使った燃費ランキングによりソーシャル性をもたす工夫も行われている。これらは、エコドライブに対するフィードバックをドライバに行うものであり、更に自発的なエコドライブを促す取り組みもある。

 エコドライブ支援システムEDSS(Eco-Driving Support System)では、1分毎の燃費を評価し、運転技能に見合った目標時を提示(目標の難易度と表示内容はドライバが設定)してドライバにエコドライブを促している。新しいアプローチとしては、ゲーム設計のノウハウをまとめたゲームニクス理論を応用してエコドライブを楽しめるようにしたカーナビゲーションもある。これらのシステムは視覚情報の提供だけでなく、音声情報や効果音も付加して聴覚情報も同時に提示している。

 EVにおいては電欠が致命傷となるため、電費を良くする電費計と充電スタンド位置の表示は不可欠である。アクセルペダルの反力を発生させ、燃費の良いアクセル操作を促すシステムもある。

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2018年11月28日 (水)

運転中のインタラクション(49)

 国内におけるガソリン車の10・15モード平均燃費は、1993年に12.3km/lだったものが、2012年には21.1km/lになっている。20年間で約70%も向上したのである。

 これは省燃費技術の開発によるところが大きく、今後も向上していくものと思われる。これに加えて、ドライバが省燃費運転(エコドライブ)を心がければ、更に省燃費が期待できる。

 警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省が共同で設置したエコドライブ普及連絡会が下記の「エコドライブ10のすすめ」を策定し、エコドライブの普及を進めている。

1.ふんわりアクセル「eスタート」
2.車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
3.減速時は早めにアクセルを離そう
4.エアコンの使用は適切に
5.ムダなアイドリングはやめよう
6.渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
7.タイヤの空気圧から始める点検・整備
8.不要な荷物はおろそう
9.走行の妨げとなる駐車はやめよう
10・自分の燃費を把握しよう

 項目10は、ドライバ自身がエコドライブの効果を知り、更なる燃費改善を促すことが目的である。燃費計を提示するだけで燃費が向上したり、エコドライブ講習会を受講することで燃費が向上することも知られている。

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2018年11月27日 (火)

運転中のインタラクション(48)

 メニューを設計した後、ドライバがメニューシステムを利用して目標を達成できるかどうかを評価する。利用者は目メニューシステム利用の初心者と経験者の2パターンを想定する。

 初心者の場合、メニューシステムの階層構造がメンタルモデルと矛盾しないことが必要条件となる。すなわち、十分な時間があれば、メニュー項目を目標に照らし合わせ、必要なメニューを選択できるということである。

 また、ドライバが達成したい目標の心的表象と、選択すべきメニュー項目の表象が意味的に類似している必要もある。初心者はインタフェースで提供されるラベルから、目標に意味的に近いものを選択したり、ラベルの近傍にあるオブジェクトを操作することが知られている。このとき、初心者は操作を発見している状態ということができ、このときの初心者の戦略をラベル追従戦略という。

 経験者の場合は、目標を達成するためのメニュー項目へのアクセスを無意識に行っており、ラベルを読むのではなく記憶にあるものを引き出して操作を行う。この状態では操作速度が評価対象となる。

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2018年11月26日 (月)

運転中のインタラクション(47)

 メニュー設計のガイドライン例として、「広がりが小さく階層の深いものよりも、広がりが大きく階層の浅い構造にすること」の他、次のようなものがある。

・タスクの意味構造を利用してメニューを構成すること
・グラフィックス、番号、タイトルによりメニュー構造中の位置を示すこと
・項目の名前を次のメニュー(サブメニュー)のタイトルとして使うこと
・メニュー内の項目を意味のあるグループに分割すること
・メニュー内の項目を意味のある順序で提示すること
・項目の表記は簡潔にし、項目のはじめにキーワードがくるようにすること
・文法やレイアウト、用語に一貫性があること
・タイプアヘッド、直接ジャンプなどのショートカット手段を許すこと
・直接のメニューやメインメニューへのジャンプができること
・オンラインヘルプや新しい選択方式、応答時間、表示速度、画面サイズを考慮すること

 これらのガイドラインは、自動車以外でもパソコンアプリやゲーム機でよく見かけるものである。

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2018年11月25日 (日)

運転中のインタラクション(46)

 カーナビゲーションはさまざまな案内表示方法が工夫されている。曲がるところを大きく矢印で表示するターン・バイ・ターン表示、地図上に案内ルートを重畳表示する経路表示、走行すべきレーンを強調するレーン表示等がある。

 また、交差点拡大図により交差点付近ではデフォルメしたわかり易い表示をし、高速道路ではハイウェイマップで表示する。更に、安全運転支援のための案内表示や、VICS(Vehicle Information and Communication System)を使って交通情報表示を行う。

 このように多彩な機能のあるカーナビゲーションは、メニューにも工夫が必要である。視覚的シンボルとして全項目を表示できれば、ドライバがシンボルを選択することによりコマンドを起動できる。しかし、表示メニューよりもコマンドが多い場合は、階層構造のメニュー設計が必要になる。メニュー設計の基本原則は、ドライバが設定する多様な目標を、コマンドによって確実に実行できるようにすることである。そのため、メニュー項目に適切なラベルを付け、適切に配置し、適切に階層化する。ただし、階層構造で目的にたどり着かない場合は第一階層まで戻らなくてはならないという欠点がある。

 メニュー階層は狭く深いものより、広く浅いものが好ましいという研究結果がある。このような成果を集めて、メニュー設計のガイドラインが提案されている。

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2018年11月24日 (土)

運転中のインタラクション(45)

 カーナビの地図表現には、ノースアップ、ヘディングアップ、鳥観図の3種類がある。ノースアップは北を常に画面上部に表示し、ヘディングアップは進行方向を常に画面上部に表示し、鳥観図は街全体を斜め上から立体的に俯瞰表示したものである。

 これらの地図表現は、デジタル地図データを基に合成される。デジタル地図データは、道路をリンク、交差点をノードとしたネットワークデータの形式で構成されている。

 ネットワーク上の各ノードに座標データ、リンクには道路の種類や幅員等の情報が格納されている。地図表示するときは、リアルタイムに道路ネットワークをレンダリングして描画しているのである。道路以外の森林や河川は背景表示として描画テクスチャを基に描画する。また、施設や道路名等を文字表示し、ランドマークは地図記号、ピクトグラム、ブランドアイコン、任意アイコンを用いて地図に重畳表示する。任意アイコンには市街地表示の鳥観図表示に用いる3Dランドマークが含まれる。

 これら表示に加え、経路案内時は目的地までの残距離や所要時間等を表示する。表示方法は文字やゲージ残量表示等を目的地までの距離や状況で切り替える。

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2018年11月23日 (金)

運転中のインタラクション(44)

 運転中のインタラクションのデファクトになっているものが、カーナビゲーションの経路案内といえる。安全かつ効果的に表示するための仕様を見ていこう。

 まず、運転中に地図を見る必要があるため、日本自動車工業会はガイドラインを設けて表示規則を定めている。例えば、走行中は細街路(幅員4m以下)を表示せず、見やすい地図にしている。

 また、ドライバは目的地まで経路選択を行うとき、自分のメンタルマップを参照している。メンタルマップとは、地図情報のドライバの内部表現で認知地図ともいわれ、ランドマーク、パス、ノード、ディストリクト、エッジの次の5要素を基本要素として構成されている。
・ランドマーク:目印となる特徴的な建物や看板等
・パス:道路
・ノード:パスとパスが交わる地点、すなわち交差点
・ディストリクト:公園等の広がっている個所
・エッジ:壁や川等の通過できない境界線

 メンタルマップは、これら5要素を、ランドマーク知識をベースに、手続き型知識、ネットワーク型知識、マップライク型知識と表現を変えて利用される。手続き型知識はターン・バイ・ターン型経路誘導、ネットワーク型知識は簡易図形による経路誘導、マップライク知識はカーナビの地図画面による経路誘導に対応する。

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2018年11月22日 (木)

運転中のインタラクション(43)

 表示が必要な機器として、古くはラジオやオーディオ機能だけだったものが、エアコンの状況やナビゲーションが追加されるようになった。このため、1つの表示器にこれら情報や車両情報も統合して表示されるようになった。

 表示だけに留まらず、コントロール機能も一括されるので統合コントローラと呼ばれるようになった。統合コントローラの表示量は、各ドライバが許容可能なものにするべきとの見解も一般的になっている。

 更に、コネクティッドカーと呼ばれるインターネット接続が可能な車両においては、車室内でパソコンやIT機器の利用が可能となった。しかし、民生用のパソコンやIT機器がそのまま車室内で使えるわけではない。車載で使用するためには、リアルタイム性、安全性、信頼性、品質、コスト等の要件が民生用より厳しく、開発サイクルも大きく異なってくる。そのため、コネクティッドカーでのITサービスを統合しようとすると、民生でのITサービスとは違った課題が発生する。

 コネクティッドカーへの要求は、導入国がガイドラインという形で各国単位で標準化されている。携帯電話やメールの送受信はNHTSAのガイドラインがよく参照されている。

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2018年11月21日 (水)

運転中のインタラクション(42)

 操作感に拘らず、更に操作性を高めるには音声入力を導入する。ドライバが前方を監視しながら無理なく操作できるものとしては、音声入力が最も良いともいえる。

 ただし、車内には走行ノイズやオーディオからの音、ドライバ以外の乗員の音声等の考慮が必要である。更には、言葉そのものの訛りや方言、多言語対応等の問題もある。

 音声入力システムの車載に際しては、ノイズを考慮したマイクの位置が重要である。そのため、実車両での事前検討を入念に行う必要がある。また、音声入力に使用する適当なコマンド(言葉)の選定も重要である。多くのコマンドはすぐには覚えられないので、画面でコマンドを表示したり、音声ガイドでコマンドを案内する。画面に表示する方法では音声入力のメリットが弱まるので、システムからの音声ガイドに従って双方向に進めるものが良い。ただし、これに頼ると操作性は上がっても操作スピードは減少する。

 音声入力は最良の手段にみえるものの、ドライバが音声ガイドとのやりとりに時間を取ってしまうと運転への集中が途切れてしまう。そのため、音声ガイドなしで短い覚えやすい言葉をコマンドに選ぶ必要がある。

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2018年11月20日 (火)

運転中のインタラクション(41)

 自動車に要求される機能の増加に伴い、数々の機器やシステムが車載されるようになった。これらのシステムには、ドライバとの良好なインタラクションが求められる。

 これらの機器についての標準化も進み、JISD0033では操作装置を安全に使うための規定や視認性要件が規定されている。また画像表示装置については日本自動車工業会のガイドラインや、ヘッドアップディスプレイを安全に使うための指針も運輸省から出されている。

 インタラクション全般については、解析、評価、設計法がISO9241-110に規定されているものの、商品性については言及されていない。そのため、実際の自動車のHMIは市場調査を踏まえながら設計する必要がある。また、車載機器の操作は視線を前方に置きながらでも可能なように、これまでは単一スイッチが多用されていた。ところが、機能の多彩化に伴い画面にメニュー形式で表示してそれを選択する必要性がでてきた。視線を機器に向けずにメニュー選択させるため、スイッチを操作したような押下感を出してフィードバックさせるデバイスも開発されている。

 皮膚の感覚は、100から300Hzの帯域が敏感である。この周波数の振動を発生させる透明なアクチュエータを画面に被せて実現させているものがある。

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2018年11月19日 (月)

運転中のインタラクション(40)

 システムの使い易さは、ユーザビリティテストで評価する。評価の主眼は、あくまでもシステムのインタフェースが使い易いかどうかである。

 典型的な実施方法は、ユーザが評価対象のシステムを実行している様子を観察者が記録するというものである。簡便に行うには最小4~5人の小規模なもので行う。

 記録内容は、タスクを遂行するのに要した操作時間、犯したエラー、つまずいた操作の滞り、それをどのように解決したかの問題解決方略、そして、習熟するまで何回の試行が必要だったかの学習時間等である。より詳細に行動を記録するためには、ビデオで撮影し、インタビュー等とも組み合わせる。テストを行うためには次の6段階のプロセスを実施する。①測定項目の決定②プロトタイプの製作③実験計画④実験実施⑤結果分析⑥まとめ

 テストから有意義な結果が得られるかどうかは、実験計画と結果分析次第である。特に計画時のユーザレベルの選定が重要であり、これらの過程の適切な文章化も再現性の精度を高めるため重要視されている。

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2018年11月18日 (日)

運転中のインタラクション(39)

 パソコン画面のGUI(Graphical User Interface)の操作では、ユーザは予め目標達成の操作系列を思い浮かべなくてもよい。操作の結果で示される次の手順を理解し、次の目標を設定し操作を進めるのである。

 このようにして生成される行為は、状況的行為(situated action)と呼ばれている。状況的行為は、操作が実行されシステムが応答するたびに状況的理解が形成され、その理解に基づいて次の目標が設定されるのである。

 ユーザが目標達成のための操作を選択するとき、ラベル追従戦略が取れるようにすると使い易いシステムといえる。ラベル追従戦略とは、次の操作を示す画面上に示されるというものである。例えば、カーナビゲーションで目的地を設定するとき、目的地とラベルの付いたボタンが画面に表示されるということである。

 GUIはパソコンだけでなく、携帯電話やスマホ等の情報機器の複雑な操作を簡単にするために研究されている。ラベル追従戦略は携帯電話操作をより簡易にするために提案された手法である。

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2018年11月17日 (土)

運転中のインタラクション(38)

 機器上の画面、スイッチやボタンを操作して、ドライバはその機器に望む意図を達成する。そのため、機器のインターフェースがドライバの意図を満たすような外観である必要がある。

 例えば、押すことが前提のボタンでは、ボタンの中心が丸く突起した形状にデザインされておりデザインも◎が印刷され、さも押すような感じのものになっている。これを、◎は押すことをアフォードするという。

 または、◎は押すというアフォーダンスを持つともいう。このアフォーダンス(Affordance)という用語は、心理学者のギブソンが提唱したもので、環境が生物に対して提供する意味や価値を示す。元々のアフォードという言葉は、できる、とか、提供する、という意味であり、ギブソンは環境が生物に対してどのような可能性があるかを示していると考え、アフォーダンスという用語を提唱したのである。ドアの取っ手は、手で握るというアフォーダンスを持っており、取ってのデザインは握ることをアフォードする形状にすれば良いということである。

 車内機器には多くのスイッチ・ボタン・表示が使われており、これらが操作するためのアフォーダンスを持っていると使い易いといえる。極端な例では、アフォーダンスを持っていないと使えないものもあるほどである。

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2018年11月16日 (金)

運転中のインタラクション(37)

 メンタルモデルの典型的な特定の形式とは、状態遷移モデル、オブジェクト・アクションモデル、マッピングモデル、類推モデルである。以下、この4形式を解説する。

 状態遷移モデルは、ドライバがシステムの状態変化として観測するため導入された。これは、システムが異なったモードを切り替えるように見える場合に適用される。

 オブジェクト・アクションモデルとは、カーナビゲーション等のようにボタンや表示が多数あるシステムの場合に適用する。ドライバはオブジェクト(ボタンや表示)と、それを操作したり表示されたときのアクションを認識しているということである。システムの機能がオブジェクトのタイプに従って構造化しているとき、ドライバがオブジェクト・アクションモデルに従って操作するといえる。また、ドライバは目的を達成するためどのような操作を行えば良いかを知っている。すなわち、目的に対して操作系列をマッピングしていることみなし、マッピングモデルを適用することができるのである。マッピングモデルは、オブジェクト・アクションモデルよりも操作系列が複雑な場合に適用し、操作系列が要求される場合、最初はオブジェクト・マッピングモデルで初めても、マッピングモデルに切り替えて適用する。

 類推モデルは、新しいシステムに対して経験のあるよく似たシステムを当てはめる場合に適用される。パソコン画面のファイルやごみ箱は、現実世界のファイルやごみ箱を類推させるものとして設計されており、パソコン画面のアイコンがメタファー(隠喩)として提供されているのである。

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2018年11月15日 (木)

運転中のインタラクション(36)

 ドライバと機器間のインタラクションは、実行ステージと評価ステージの繰返しとみなすことができる。実行ステージとは機器の状態を認識してすべきことを決定し実行するものであり、評価ステージとは機器の状態を知覚・認識・理解し、正常に動作しているかを評価するものである。

 評価ステージで正常動作が評価できれば、次に達成すべき目標を設定し実行ステージに移行する。以下、最終目標が達成するまで実行と評価を繰返すことになる。

 実行、評価ステージどちらでも、機器の状態を認識することが重要なため、機器(システム)の状態を認識しやすいものは使いやすいシステムといえる。ドライバは自分の知識を利用してシステムの状態を認識し、この知識はメンタルモデルと考えることができる。メンタルモデルは、次々に変化するシステムの状態を因果の連鎖としてドライバが体系化して知識としたものである。したがって、ドライバはシステムの状態をメンタルモデルを利用して現在状態とその理由を知るのである。また、現在の状態からシステムがどのように変化するかも予測することもできる。

 メンタルモデルは因果関係のあることがモデル構築の必要条件となる。そのため、特定の形式をもつことになる。

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2018年11月14日 (水)

運転中のインタラクション(35)

 運転状況においては、ドライバの主タスクは運転である。そのため、全ての機器の操作は副タスクとなる。

 ドライバは主タスクの運転操作を行いながら、副タスクの機器を並列的に実行している。そのため、基本操作系列を並列的に実行できるCPM(Cognitive, Perceptual and Motor)-GOMSモデルを利用する。

 CPM-GOMSでは、視覚的に外界からの情報を取得する視覚プロセス、右手を動かす右手運動プロセス、左手を動かす左手運動プロセスと、独立かつ並列的にモデル化できる。人間の基本操作のサイクルタイムは50m秒とするため、ある行動をモデル化するときは50m秒単位でタスクを並べていく。例えば、情報に注意を向ける(50m秒)、眼球運動を起動(50m秒)、左手移動を起動(50秒)というプロセスから始まり、眼球運動を起動してからは眼球運動プロセスが並列に走り、左手移動を起動してからは左手運動プロセルが並列に走る。

 CPM-GOMSモデルで、新たに導入する機器の操作を解析しておくと容易に使いやすさの解析が可能となる。情報機器では事前検討で導入後の使いやすさを評価している。

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2018年11月13日 (火)

運転中のインタラクション(34)

 GOMSモデルは情報機器とのインタフェースで考えられた。すなわち、モデル化の対象は情報処理タスクである。

 タスク目標は複数の手順で達成でき、代表的にプログラム形式か系列形式かに分かれる。運転中に利用する機器では無意識的に操作をこなすことを前提とするため、系列形式のGOMSモデルとなる。

 情報処理タスクとして提案された系列形式のGOMSモデルに、打鍵レベルモデルKLM(Keystroke Level Model)がある。これは最も単純なモデルである。タスクを遂行するために実行される、手の移動、キーの押下、という無意識に実行される基本操作系列に、結果の確認、次の手順を行う意識的な心的準備オペレータMを挿入する。Mの挿入規則は、

・規則0:すべてのKの前にMを挿入
・規則1:操作が予測できるときはMを削除
・規則2:MKの繰返しが認知できるときは最初のMを残しその他を削除
・規則3:Kが冗長なときはその前のMを削除
・規則4:Kが一定の文字列を終了させるもののときはその直前のMを削除

 Mは意識的に操作するときにあるべきものなので、無意識に行うものを削除するという規則になっている。KLMモデルは基本操作が系列的に実行されるタスクを扱うものなので、自動車の機器にはそのまま当てはめるには単純すぎるといえる。

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2018年11月12日 (月)

運転中のインタラクション(33)

 GOMSモデルの4要素のG(目標:Goals)は複数形で示されるように一つではない。ある目標を達成するためには、その下位のサブゴールも達成するという考え方であり、更にサブサブゴールも設定可能な階層構造を前提としている。

 次の要素O(基本操作:Operators)とは、ある状態から別の状態に移行させる操作のことである。ドライバが操作に習熟しているという前提で、基本操作と名付けられている。

 基本操作なので、どのような状態で操作されるかは考慮せず操作時間を一定とみなす。そして、要素M(手順:Method)とは、基本操作の系列を意味する。階層構造に定義された目標を達成するために、無意識かつ自動的に行う基本操作系列ということである。よって、実行中のメソッドが一時中断されたときは、最初からやり直すこととする。最後の要素S(選択規則:Selection Rule)とは、目標を達成する手順が複数ある場合にどれを選択するかの規則である。これはある一人のドライバでは一貫して同じ規則を選ぶことがあっても、別のドライバは別の選択をするということも含む。

 暑いときはファンスイッチを入れてから設定温度を下げるか、設定温度を下げてからファンスイッチを調整するか複数の選択肢がある。どれを選ぶかは状況依存ではなく、個々のドライバ独自の規則と考えられる。

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2018年11月11日 (日)

運転中のインタラクション(32)

 ドライバインタラクションを再開する。システムの使いやすさから。

 ドライバは運転操作以外に、エアコンやカーナビゲーション操作や、クルーズコントロール等のさまざまなシステムを利用する。運転操作に邪魔にならないように、これらシステムは使いやすさが重要となる。

 ドライバはそのシステムを利用するため、システムが備えた機能にアクセス、実行、モニタリング、評価し終了させる。これらはドライバの認知行動プロセスとなり、運転操作への認知行動プロセス資源への影響を少なくするため、システムの使いやすさの必要条件は速く正確に実行できることになる。システムの目標が明確で繰り返し実行するタスクであるときは、目標指向のルーチンタスク(Goal-oriented Routine Task)と呼ばれる。このタスクで利用される知識は、目標(Goals)、基本操作(Operators)、手段(Methods)、選択規則(Selection Rules)の4要素で表現できるため、GOMSモデルという。

 GOMSモデルで扱うタスクはルーチンタスクなので、タスクの手順や実行に要する時間は一定である。そのため、GOMSモデルを構築すると、ドライバの作業手順と時間を予測することができる。

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2018年11月10日 (土)

車両運動力学(10)

 一般的な自動車では,4輪とも同じタイヤを履くため,前後輪のコーナリングパワーは同じである.すると,スタビリティファクタAの符号は,重心位置だけで決まるといえる.すなわち,車両レイアウトでのコンポーネント配置で重心位置が決まるため,車両レイアウトによりステアリング特性が決まるのである.一般的に,前エンジン前輪駆動のFFでは重心位置が車両前方に偏り,lf < lr となってAの符号は正となる.よって,FFはアンダーステアが大きくなり,後エンジン後輪駆動のRRではアンダーステアが小さくなる.

 速度が非常に遅いときは,V^2=0とみなせるので,このときのスリップ角β0,ヨーレートr0,旋回半径R0は(6・16)式,(6・17)式,(6・19)式を変形して次のようになる.

β=β0=lr/l δ                         (6・20)
r=r0=V/l δ                          (6・21)
R=R0=l/δ                           (6・22)

 この状態は,極低速時の旋回と呼ばれ,スリップ角が0なので横力を発生せず,アッカーマンセンターで旋回していることを表す.

 ステア特性とスタビリティファクタの関係を見るため,R/R0を考える.R/R0は1+AV2となるため,横軸にV2,縦軸にR/R0を取ったグラフを書くと,A>0のときV2=0で1から単調増加する直線,A =0のときR/R0=1の直線,A <0のときR/R0=1から単調減少する直線となる.

 A>0はアンダーステア,A =0はニュートラルステア,A <0はオーバーステアを表し,オーバーステア時は速度Vcで旋回半径が0となる.この速度Vcを臨界速度と呼び,次式で表される.

Vc=√(-1/A)                            (6・23)

 ヨーレートと車速,スリップ角と車速の関係は,(6・16)式,(6・17)式を計算するとわかる.実際に計算してみると,オーバーステア特性では,ある速度でヨーレート,スリップ横とも発散する.すなわち,オーバーステア特性では定常円旋回ができないことを表し,このときの速度が(6・23)式の臨界速度である.ニュートラルステア特性では,車速の増加とともに線形的にヨーレートが増加し,スリップ角は減少する.アンダーステア特性では,ある車速でヨーレートは最大値をとり,それ以上の速度で徐々に減少する.スリップ角は車速の増加で減少する.(6・16)式でVを∞とすると,δ・lfKf/(lfkf – lrkr)に収束する.アンダーステア特性では,lfkf – lrkr<0なので,これはスリップ角が負の一定値に収束することを意味する.すなわち,オーバーステアには限界速度が存在し,方向安定性の観点からも,通常の自動車には望ましい特性ではないといえる.

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2018年11月 9日 (金)

車両運動力学(9)

6.4.モデル式の解による旋回特性の解析

 アンダーステア,ニュートラルステア,オーバーステアという3種類の旋回特性は,前節で導入したモデル式をスリップ角βと角速度rを解くことにより解析可能となる.

 (6・14)式,(6・15)式の未知数はβとrだけである.2つの方程式で未知数が2つなので,lをホイールベース長として,βとrは次のように解くことができる.

β=(1-m/2l lf/(lr Kr ) V^2)/(1+AV^2 )  lr/l δ                          (6・16)
r=1/(1+AV^2 )  V/l δ                              (6・17)

ただし,Aを次式とする.

A=-m/(2l^2 )  (lf Kf-lr Kr)/(Kf Kr )                          (6・18)

 スリップ角βとヨーレートrを表す(6・16)式,(6・17)式は,前輪の操舵角δが全体に掛かる形となり,直進状態のδ=0ではβ=r=0となる.そして,前輪をある角度δで操舵すれば,その角度δに応じてスリップ角β,ヨーレートrが決まる.両式中に速度V項があるので,一定速度の一定舵角ではβとrが一意に決まり,これは車両の運動状態としては,一定速度,一定舵角での円旋回を表す.この円旋回は定常円旋回である.

 ここで,定常円旋回時の回転半径をRとする.すると,R=V/lであるから,(6・17)式に代入すると,

R=(1+AV^2)l/δ                              (6・19)

となる.

 この式からわかることは,A>0であれば,速度Vが増加すると回転半径Rが増大するということである.逆に,A<0であれば,速度の増加と共に回転半径Rが減少することがわかる.

 すなわち,舵角一定の定常円旋回で,車両を加速させたときの旋回半径の変化はAの値だけで決まる.そのため,Aをスタビリティファクタ(stability factor)と呼ぶ.そして,Aの値が正の車両をアンダーステア,Aの値がゼロの車両をニュートラルステア,Aの値が負の車両をオーバーステアとすることができる.スタビリティファクタAの符号は(6・18)式から,lfkf – lrkrで決まることがわかる.すなわち,前述の通り,前輪のコーナリングパワーと後輪のコーナリングパワーの強さ,そして重心位置がステア特性に大きく関与するといえる.

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2018年11月 8日 (木)

車両運動力学(8)

 左右のタイヤ特性が等しく,左右輪の横力も等しいとみなすと,Yf1=Yf2=2Yf,Yr1=Yr2=2Yrとなり,式(6・4),(6・5)は次式のようにさらに簡略化できる.つまり,車両を前後2つのタイヤだけのモデルとして考えるわけである.この車両モデルは2輪モデルと呼ばれる.図6・9に示ように,左右のタイヤの横力は等しくなるため,Yf1=Yf2=2Yf,Yr1=Yr2=2Yrとなり,(6・3),(6・4)式は次式となる.

m(v ̇+ur)=2Yf+2Yr                             (6・6)
Ir ̇=2lf Yf+2lrYr                             (6・7)

これは車両を前後2輪としたものであり,の車両モデルは2輪モデルと呼ばれる.

 コーナリングフォースパワーが線形なのは,実際のスリップ角βがは4°程度までなので,コーナリングパワーは線形となる.その程度までであればスリップ角βが小さいため,車両横速度y成分uは進行方向の速度V とほぼ等しいとみなせる.ここでvを表すVsinβをVβと近似する.すると,vの時間微分は次式となる.

v ̇=Vβ ̇                                      (6・8)

すなわち,式(6・6)はスリップ角βを用いて表現することが可能となり,次式となる.

mV(β ̇+r)=2Yf+2Yr                           (6・9)

 つぎに,これらの式を解ける形にするため,横力のコーナリングパワーを用いた表現を考える.スリップ角は前後のタイヤで異なるため,前輪のスリップ角をβf,後輪をβrとする.そして,前後輪のコーナリングパワーをKf,Krとすると,前後のタイヤの横力は次式となる.

Yf=-Kfβf                                       (6・10)
Yr=-Krβr                                      (6・11)

 前輪の操舵角をδとすると,βf,βrは次式で近似することができる.ただし,重心から前輪までの距離をlf,重心から後輪までの距離をlrとする.

βf=β+lf/Vr-δ                                (6・12)
βr=β-lr/Vr                                   (6・13)

 これらの式を式(6・9),(6・7)に代入すると次式が得られる.

mV(β ̇+r)=-Kf (β+lf/V r-δ)-Kr (β-lr/V r)        (6・14)
Ir ̇=lf Kf (β+lf/V r-δ)+lr Kr (β-lr/V r)               (6・15)

これらの式は,スリップ角βと角速度rだけが未知数の線形連立常微分方程式となり,車両の運動特性が解析可能なことを表す.

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2018年11月 7日 (水)

車両運動力学(7)

6.3.旋回特性のモデル化

 旋回特性のしくみがわかったので,コーナリング特性をモデリングしてみよう.

 簡単にするため,車両を一つの剛体とみなし,コーナリング中のロール(前後の軸に対して回転(あるいは傾斜)する動き)を無視する.すなわち,車両運動を横方向の並進運動と旋回方向の回転運動の2自由度だけに簡略化する.すると,定常円旋回中の動きは,並進運動と回転運動の二つの方程式で表せる.

①並進運動
車両質量×横向き加速度=横向き外力
m(v ̇+ur)=Yf1+Yf2+Yr1+Yr2                             (6・4)

②回転運動
慣性モーメントI×角加速度=外力
Ir ̇=lf(Yf1+Yf2) +lr (Yr1+Yr2)                              (6・5)

ここで,mは車両質量,vは進行方向の速度Vの車両縦速度となるx成分,uは車両横速度y成分,rは車両重心回りの回転角速度(ヨーレート)とする.また,車両重心から前輪までの距離をlf,後輪までの距離をlr,前輪左右輪の横力をYf1,Yf2,後輪左右輪の横力をYr1,Yr2とする.

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2018年11月 6日 (火)

車両運動力学(6)

 コーナリングフォースの大きさは,4°まではスリップ角の大きさにほぼ比例する.このときの傾きK(コーナリングパワー)が4輪すべて釣り合う着力点を,ニュートラルステアポイント(neutral steer point:NSP)という.また,旋回による遠心力は,車両の重心に発生する.このため,旋回特性は,このNSPと車両の重心の関係により決まる.たとえば,NSPはコーナリングパワーが4輪すべてで等しければホイールベースの中心になる.前輪が6,後輪が4のコーナリングパワーであれば,NSPはホイールベースを前方から4:6に分ける位置となる.

 一方, 重心は,たとえばFF車では車両前方のほうが重いし,RR車では車両後方のほうが重い.このため,FF車では重心位置がNSPよりも前方に位置し,車両が加速すると,重心とNSPまでの距離と遠心力とが,旋回する向きとは逆向きのモーメントとして働き,その結果旋回半径が大きくなりアンダーステアになる.重心位置とNSPの位置が同じだと,旋回半径は変わらずニュートラルステアとなり,重心位置がNSPよりも後方になると,旋回半径は小さくなり,オーバーステアになる.

 したがって,アンダーステアの場合は,思ったとおりに旋回しようとすれば前輪の操舵角を増やしてスリップ角を増やし,前輪のコーナリングフォースを増大させる必要がある.一方,オーバーステアの場合は,逆に操舵角を減少させ,前輪のコーナリングフォースを減少させる必要がある.ただし,アンダーステアかオーバーステアかの違いは,コーナリング特性にだけ関連するのではなく,方向安定性そのものに関連する.

 具体例として,直進走行中に急な横風や荒れた路面のため,右から横方向の外力を受けた場合を考えよう.その場合,ドライバは直進状態を保つため右へハンドルを切る状態となる.オーバーステアの場合,この状態では直進方向より右へ旋回しようとする.このときの遠心力は横からの外力と同じく右から左へと働くため,直進しているつもりが車両後輪は左に流れる状態になってしまう.アンダーステアの場合,旋回による遠心力は左から右への外力と逆に働き,ハンドルを右に切っているにも関わらず後輪テールは右へ流れることになる.すなわち,外力を打ち消す方向に作用するため,方向安定性が良いということになる.

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2018年11月 5日 (月)

車両運動力学(5)

6.2.車両の旋回特性

 前節では,単純化するために,タイヤ1輪で考えた.タイヤの力学を考える際にはそれで十分だが,旋回の状態をくわしく考えるためには,車両全体,つまり4輪まとめて考える必要がある.そこで,本節では,高速状態で曲がる4輪の状態について説明する.

(1)定常円旋回

 高速旋回時のタイヤの状態を図6.5に示す.このとき,前輪に発生したコーナリングフォースは,車両の重心点に対して内側に回転するZ軸まわりに自転させる力(ヨーモーメント)として作用する.一方,重心点を挟んだ後輪は,前輪の動きによって外側に回転することになり,前後輪のコーナリングフォースは逆向きの力となる.これらがバランスして釣り合うとヨーモーメントは消滅する.このように,高速旋回は,前後輪に発生したコーナリングフォースの総和と,4輪に働く遠心力が釣り合っている状態であり,これを定常円旋回という.

(2)旋回特性

 定常円旋回の状態で操舵角を一定に保ったまま加速すると,車両が描く軌跡はつぎの三つの状態のいずれかになる.

1)アンダーステア:旋回半径が大きくなる
2)ニュートラルステア:旋回半径が変わらない
3)オーバーステア:旋回半径が小さくなる

旋回特性にこのような違いが生じるのは,前後輪のコーナリングフォースが関係している.

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2018年11月 4日 (日)

車両運動力学(4)

 また,タイヤ前後力に対して直角な横方向の力を横力という.横力は,タイヤと接地面との摩擦により生じる車両の進行方向に対して逆向きのコーナリング抵抗と,コーナリングフォースからできる四角形の対角線の強さになる.タイヤ前後力をFx,横力をFyとすると,コーナリング抵抗(車両の進行方向への逆向きの力)は,

 √(F_x^2+F_y^2 )      (6.1)

と表すことができる.タイヤ前後力と横力の関係は円形となり,タイヤ前後力と横力からなる四角形の対角線は最大摩擦力である.したがって,コーナリングフォースは次式で決まる。

 μFz≥√(F_x^2+F_y^2 )       (6.2)

ここで,μは路面の摩擦係数であり,タイヤの輪荷重が増える(摩擦力が増える)ほどコーナリングフォースが大きくなる.ただし,摩擦力の範囲内に限られる.

 式(6.2)から駆動力がかかっていないときは,コーナリングフォースがタイヤの摩擦力を最大に使え,加減速時はコーナリングフォースが低下することがわかる.たとえば,氷上路でブレーキをかけると,タイヤがロックしてスリップした状態になるが,これは横力が発生せず,コーナリングフォースが効いていないためである.この状態ではステアリングホイールを操舵しても,車両をコントロールできない.このため,タイヤロックを防止するブレーキ制御としてアンチロック・ブレーキング・システムABSがあるが,これは,ブレーキによるタイヤロックを防止することで横力を発生させ,ブレーキング時にもステアリングで車両をコントロールできるようにするしくみである.また,急発進すると,その場でタイヤだけ空転するホイールスピンが起こり,ステアリングで操舵ができないが,これを防ぐ機構としてトラクション・コントロール・システムTRCがある.TRCも,ホイールスピンを防止することで駆動力を発生させるしくみである.TRCはもともとぬかるみ路から発進できるようにするために開発された.

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2018年11月 3日 (土)

車両運動力学(3)

(2)タイヤの力学

 高速走行時に旋回しようとハンドルをきると,車両の進行方向とタイヤ前後力がはたらくタイヤの進行方向がずれる.このずれをスリップ角βという.このスリップ角ができたことにより,タイヤには,車両の進行方向に対して直角な横方向にコーナリングフォースという力が生まれる.車両はこのコーナリングフォースを利用して旋回する.スリップ角βがおよそ4°まではスリップ角と共にコーナリングフォースは直線的に増大するので(線形特性),次式のように表せる.

Fy  = - Kβ                                                      (6・1)

ここで,Kは比例定数で,コーナリングパワーという.

 それ以降もスリップ角の増加にともないコーナリングフォースは増加するが,増加割合は徐々に減少していく(非線形特性).そして,スリップ角が10°くらいになると,減少に転じる.この減少期を滑り領域という.車両はコーナリングフォースにより旋回しているため,このコーナリングフォースの減少により,スピンする可能性が出てくる.

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2018年11月 2日 (金)

車両運動力学(2)

6.1.タイヤの力学

 車両がまっすぐ前方や後方に動く場合,タイヤは進行方向に対して真正面を向く.この動きは,単純に考えれば,タイヤの回転運動だけである.一方,車両が曲がるときは,慣性の法則から前方へ進む力もはたらくため,タイヤの向きと車両の進行方向が完全には一致しない.本節では,旋回時のタイヤの動きを説明してからタイヤの力学について説明していこう.

(1)旋回時のタイヤの動き

 車両を旋回させるには,ステアリングを操作して前輪の向きを曲がりたい方向に向ける.遠心力を無視できるほどのゆっくりした速度では,前輪が回転する方向はほぼ車両の旋回方向と同じになる.ところが,遠心力が発生するほどの高速状態で旋回すると,前輪タイヤは回転方向に転がるだけでなく,車両の進行方向に押し出される.このときのタイヤにはつぎのことが起こっている.

① まずタイヤの接地面が路面との摩擦で捻じれて接地面にたわみが生じる.
② つぎに,弾力により,捻じれが元に戻る.

 連続してこれが繰り返され,その結果,タイヤの進行方向は,タイヤの回転方向に対して外側にずれていく.

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2018年11月 1日 (木)

車両運動力学(1)

 今月は,以前掲載した自動車工学シリーズの見直し内容を順次掲載する.まずは,車両運動力学から.

6.車両運動力学(Vehicle Dynamics)

 なめらかに発進,加速し,止まりたいときに止まる.また,スムーズに曲がる.これらは,自動車に求められる当然の性能であり,この発進加速,減速停止,コーナリングは自動車の運動性能の三大要素といわれている.発進加速性能は主にエンジン仕様と駆動方式によって,減速停止性能は主にブレーキ構造によって決まる.コーナリング性能は主にサスペンション構造で決まるが,乗員,エンジンやパワートレイン等の重量物をどこに配置して車両のサイズをどうするかという車両レイアウトも大きく影響する.

 適切な運動性能を発揮する自動車を設計するために必要なのが,車両運動力学である.最近では,いちいち試作車で運動性能を確認していては,開発工程における無駄が大きいため,開発前に数式でモデリングしてシミュレーションを行うが,その際の基礎としても重要となっている.

 自動車が道路と接する点はタイヤなので,車両運動力学ではタイヤ特性を明確にするタイヤの力学が基礎となる.また,「進む」「止まる」動きは単純であるのに対して,「曲がる」動きは前後輪で異なるなど動きが複雑であるため,コーナリングの力学を理解しておくことがもっとも重要となる.そこで,本章ではまずタイヤの力学を説明し,その後に,旋回時の動きをモデリングしてコーナリング性能について説明する.

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