« 車両運動力学(8) | トップページ | 車両運動力学(10) »

2018年11月 9日 (金)

車両運動力学(9)

6.4.モデル式の解による旋回特性の解析

 アンダーステア,ニュートラルステア,オーバーステアという3種類の旋回特性は,前節で導入したモデル式をスリップ角βと角速度rを解くことにより解析可能となる.

 (6・14)式,(6・15)式の未知数はβとrだけである.2つの方程式で未知数が2つなので,lをホイールベース長として,βとrは次のように解くことができる.

β=(1-m/2l lf/(lr Kr ) V^2)/(1+AV^2 )  lr/l δ                          (6・16)
r=1/(1+AV^2 )  V/l δ                              (6・17)

ただし,Aを次式とする.

A=-m/(2l^2 )  (lf Kf-lr Kr)/(Kf Kr )                          (6・18)

 スリップ角βとヨーレートrを表す(6・16)式,(6・17)式は,前輪の操舵角δが全体に掛かる形となり,直進状態のδ=0ではβ=r=0となる.そして,前輪をある角度δで操舵すれば,その角度δに応じてスリップ角β,ヨーレートrが決まる.両式中に速度V項があるので,一定速度の一定舵角ではβとrが一意に決まり,これは車両の運動状態としては,一定速度,一定舵角での円旋回を表す.この円旋回は定常円旋回である.

 ここで,定常円旋回時の回転半径をRとする.すると,R=V/lであるから,(6・17)式に代入すると,

R=(1+AV^2)l/δ                              (6・19)

となる.

 この式からわかることは,A>0であれば,速度Vが増加すると回転半径Rが増大するということである.逆に,A<0であれば,速度の増加と共に回転半径Rが減少することがわかる.

 すなわち,舵角一定の定常円旋回で,車両を加速させたときの旋回半径の変化はAの値だけで決まる.そのため,Aをスタビリティファクタ(stability factor)と呼ぶ.そして,Aの値が正の車両をアンダーステア,Aの値がゼロの車両をニュートラルステア,Aの値が負の車両をオーバーステアとすることができる.スタビリティファクタAの符号は(6・18)式から,lfkf – lrkrで決まることがわかる.すなわち,前述の通り,前輪のコーナリングパワーと後輪のコーナリングパワーの強さ,そして重心位置がステア特性に大きく関与するといえる.

|

« 車両運動力学(8) | トップページ | 車両運動力学(10) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/16253/74575218

この記事へのトラックバック一覧です: 車両運動力学(9):

« 車両運動力学(8) | トップページ | 車両運動力学(10) »