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2018年11月 6日 (火)

車両運動力学(6)

 コーナリングフォースの大きさは,4°まではスリップ角の大きさにほぼ比例する.このときの傾きK(コーナリングパワー)が4輪すべて釣り合う着力点を,ニュートラルステアポイント(neutral steer point:NSP)という.また,旋回による遠心力は,車両の重心に発生する.このため,旋回特性は,このNSPと車両の重心の関係により決まる.たとえば,NSPはコーナリングパワーが4輪すべてで等しければホイールベースの中心になる.前輪が6,後輪が4のコーナリングパワーであれば,NSPはホイールベースを前方から4:6に分ける位置となる.

 一方, 重心は,たとえばFF車では車両前方のほうが重いし,RR車では車両後方のほうが重い.このため,FF車では重心位置がNSPよりも前方に位置し,車両が加速すると,重心とNSPまでの距離と遠心力とが,旋回する向きとは逆向きのモーメントとして働き,その結果旋回半径が大きくなりアンダーステアになる.重心位置とNSPの位置が同じだと,旋回半径は変わらずニュートラルステアとなり,重心位置がNSPよりも後方になると,旋回半径は小さくなり,オーバーステアになる.

 したがって,アンダーステアの場合は,思ったとおりに旋回しようとすれば前輪の操舵角を増やしてスリップ角を増やし,前輪のコーナリングフォースを増大させる必要がある.一方,オーバーステアの場合は,逆に操舵角を減少させ,前輪のコーナリングフォースを減少させる必要がある.ただし,アンダーステアかオーバーステアかの違いは,コーナリング特性にだけ関連するのではなく,方向安定性そのものに関連する.

 具体例として,直進走行中に急な横風や荒れた路面のため,右から横方向の外力を受けた場合を考えよう.その場合,ドライバは直進状態を保つため右へハンドルを切る状態となる.オーバーステアの場合,この状態では直進方向より右へ旋回しようとする.このときの遠心力は横からの外力と同じく右から左へと働くため,直進しているつもりが車両後輪は左に流れる状態になってしまう.アンダーステアの場合,旋回による遠心力は左から右への外力と逆に働き,ハンドルを右に切っているにも関わらず後輪テールは右へ流れることになる.すなわち,外力を打ち消す方向に作用するため,方向安定性が良いということになる.

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