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2018年11月10日 (土)

車両運動力学(10)

 一般的な自動車では,4輪とも同じタイヤを履くため,前後輪のコーナリングパワーは同じである.すると,スタビリティファクタAの符号は,重心位置だけで決まるといえる.すなわち,車両レイアウトでのコンポーネント配置で重心位置が決まるため,車両レイアウトによりステアリング特性が決まるのである.一般的に,前エンジン前輪駆動のFFでは重心位置が車両前方に偏り,lf < lr となってAの符号は正となる.よって,FFはアンダーステアが大きくなり,後エンジン後輪駆動のRRではアンダーステアが小さくなる.

 速度が非常に遅いときは,V^2=0とみなせるので,このときのスリップ角β0,ヨーレートr0,旋回半径R0は(6・16)式,(6・17)式,(6・19)式を変形して次のようになる.

β=β0=lr/l δ                         (6・20)
r=r0=V/l δ                          (6・21)
R=R0=l/δ                           (6・22)

 この状態は,極低速時の旋回と呼ばれ,スリップ角が0なので横力を発生せず,アッカーマンセンターで旋回していることを表す.

 ステア特性とスタビリティファクタの関係を見るため,R/R0を考える.R/R0は1+AV2となるため,横軸にV2,縦軸にR/R0を取ったグラフを書くと,A>0のときV2=0で1から単調増加する直線,A =0のときR/R0=1の直線,A <0のときR/R0=1から単調減少する直線となる.

 A>0はアンダーステア,A =0はニュートラルステア,A <0はオーバーステアを表し,オーバーステア時は速度Vcで旋回半径が0となる.この速度Vcを臨界速度と呼び,次式で表される.

Vc=√(-1/A)                            (6・23)

 ヨーレートと車速,スリップ角と車速の関係は,(6・16)式,(6・17)式を計算するとわかる.実際に計算してみると,オーバーステア特性では,ある速度でヨーレート,スリップ横とも発散する.すなわち,オーバーステア特性では定常円旋回ができないことを表し,このときの速度が(6・23)式の臨界速度である.ニュートラルステア特性では,車速の増加とともに線形的にヨーレートが増加し,スリップ角は減少する.アンダーステア特性では,ある車速でヨーレートは最大値をとり,それ以上の速度で徐々に減少する.スリップ角は車速の増加で減少する.(6・16)式でVを∞とすると,δ・lfKf/(lfkf – lrkr)に収束する.アンダーステア特性では,lfkf – lrkr<0なので,これはスリップ角が負の一定値に収束することを意味する.すなわち,オーバーステアには限界速度が存在し,方向安定性の観点からも,通常の自動車には望ましい特性ではないといえる.

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