« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »

2019年1月31日 (木)

ドライバ行動(31)

 MHPの10の動作原理を下記に紹介する。

①認知プロセッサの認識-動作サイクル:作業記憶内で照合する長期記憶内のアクションを実行
②知覚プロセッササイクル時間の変動原理:知覚プロセッサのサイクル時間は刺激の強度に反比例
③符号化特定性原理:長期記憶に記憶する内容は知覚された内容によって決定
④弁別原理:記憶検索の難易度は、検索の手がかりで決定される候補に依存
⑤認知プロセッササイクル時間の変動原理:知覚プロセッサのサイクル時間は、タスク要求が多いと短くなる
⑥FiTTSの法則
⑦練習のべき法則:タスクを試行したときの実行時間はタスク回数の0.2~0.6乗に反比例
⑧不確定性原理:決定時間は判断や決定に関わる不確定性とともに増加
⑨合理性原理:タスク構造、情報入力、知識の範囲、情報処理能力の限界があるとき、合理的なアクションでゴールを達成
⑩問題空間原理:人間は次の4つの項目で問題解決する。i)知識の状態ii)状態を更新するためのオペレータiii)オペレータを適用する際の制約条件iV)次に適用するオペレータを決定するための制御知識

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月30日 (水)

ドライバ行動(30)

 認知モデリングの一つとして、米国ゼロックス社でコンピュータを利用してタスクを遂行する行動選択プロセスのモデルとしてモデルヒューマンプロセッサMHP(Model Human Processor)が開発された。

 MHPは、外界から入力される視覚情報や聴覚情報を、知識を利用して処理する3種類のプロセッサ(知覚プロセッサ、認知プロセッサ、運動プロセッサとして定義する。また、3種類の記憶(イメージ貯蔵庫、作業記憶、長期記憶)とそれらの性能を示すパラメータとして容量、減衰時間、データ型とそれらの結合の仕方を規定する記述を定義する。そして、どのように動作するのかは、10の動作原理によって定義されている。

 MHPを用いてタスクをシミュレーションすると、タスクが遂行される様子を定量的に把握することができる。その結果、タスクがどのような順序で遂行されるかや、タスク遂行に必要とされる時間を見積もることができるようになる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月29日 (火)

ドライバ行動(29)

 ドライバ行動は論理的な思考だけでなく、非論理的・無意識的な活動の結果として生じる。そのため、ドライバの行動を生み出す認知メカニズムを理解し、行動を分析する必要がある。

 ドライバの内部状態は刻々と変化し、情報の入出力は絶え間ない。すなわち、行動選択の結果は、次の時点での入力となっている。

 また、行動選択のメカニズムは複雑であり、運転行動は複数のスレッドによって織りなされている。この行動を理解するためのアプローチとして、行動を要素に分解し統合することによって理解する還元的アプローチと、要素に分解せず全体から統一的に理解する構成的アプローチがある。ドライバ行動は、時間の経過と共に変わっていく交通状況に対応しているため、構成的アプローチが適していると考えられている。よって、ドライバの行動を構成的アプローチで観察し、その結果をもとに認知的行動プロセスのモデル化を行うのである。

 ドライバの遂行するタスクの目標は明確である。したがって、ドライバの認知的行動はモデリングが可能であるといえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ドライバ行動(28)

 古典的な多変量解析の手法に対し、近年発達した代表的な統計的モデリング手法を紹介しておく。教師あり学習として、サポートベクターマシーンとロジスティク回帰、教師なし学習として、対数線形モデルがよく使われる。

 サポートベクターマシーンは2クラスを識別する手法で、クラス間を超平面で分離する。このとき、クラス間に最大マージンを与えるベクトル(サポートベクター)が重要になるため、この名前が命名された。

 ロジスティク回帰は一般化線形モデルの一つである。目的変数が説明変数の線形式で予測できないとき、予測値のリンク関数で非線形変換を行う。そのリンク関数にロジット変換を用いるため、ロジスティク回帰とよばれる。ロジスティク回帰では目的変数は2値であり、個数や頻度が目的変数の場合はポアソン回帰が使われる。特に説明変数が質的な場合、ポアソン回帰が対数線形モデルとよばれる。これらモデルは独立変数の組み合わせで表現されるため、それ以外の構造ではグラフィカルモデルで変数間の関係を確率的依存で説明する。

 グラフィカルモデルでは無向と有向モデルがあり、無向モデルはマルコフネットワーク、有向モデルはベイジアンネットワークとよばれる。ベイジアンネットワークでは、有向リンクが条件付き確率で結ばれる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月27日 (日)

ドライバ行動(27)

 多変量解析の基本となる手法が、回帰分析である。回帰とは、目的変数が説明変数の関数モデルで表現できるとき、そのモデルへの当てはめのことである。

 1次元モデルなら線形回帰、2次元以上なら重回帰とよばれる。線形回帰では回帰係数を最小二乗法で求めることが一般的で、モデルとの残差が正規分布に従うと仮定し統計的手法を用いる。

 目的変数が質的な場合、教師あり学習を識別という。いわゆるパターン分類が識別に相当し、古典的な線形判別分析から機械学習により盛んに研究されている。潜在変数が量的な場合を次元削減とよび、代表的な手法が主成分分析である。類似の手法に因子分析がある。また、各個体の所属するクラスが未知の場合、特性値だけで固体を分類するクラスを形成する手法がクラスタ分析である。これには、階層的手法と非階層的手法がある。

 これら、回帰、識別、次元削減、クラスタリングは多変量解析の基本手法である。この分野は進歩が著しいので、基本手法の解析だけで満足してはならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月26日 (土)

ドライバ行動(26)

 行動をモデリングする手法として、基本的に多変量解析を用いる。多変量解析で扱う多変量データの基本データ形式は、各列が変数、各行が固体を意味する表形式である。

 変数は量的変数と質的変数に区別され、量的変数の値は実数、カテゴリと呼ばれる質的変数の値は文字列や自然数である。質的変数のカテゴリ数を同数のダミー変数(カテゴリに該当するとき1、それ以外で0)に置き換えることで、量的変数と同様に扱える。

 標本平均を元のデータから引くことをデータの中心化といい、標準偏差で割ることを標準化という。中心化されたデータ行列 X に対し、個体数を n とすると、共分散行列 S は、

S = (1/n)X'X

となる。標準化されたデータ行列 X に対し、相関係数行列 R は、

R = (1/n)X'X

となる。S や R は主成分分析、因子分析、構造方程式モデル等によって分析する。

 機械学習では、変数を目的変数と説明変数に分け説明変数によって目的変数を予測する教師あり学習と、データが与えられた観測変数からデータを持たない潜在変数を推定する教師なし学習がある。目的変数が量的な場合の教師あり学習が回帰、目的変数が質的な場合の教師あり学習が識別、潜在変数が量的な場合の教師なし学習が次元削減、潜在変数が質的な場合の教師なし学習がクラスタリングに当たる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月25日 (金)

ドライバ行動(25)

 ラスムッセン教授は人間の行動をヒューマンエラーの観点から、スキルベース行動、ルールベース行動、知識ベース行動の3段階に分けた。よって、それぞれの段階でエラーが発生する。

 スキルベースでのエラーは、一般にうっかりミスと呼ばれる。運転行動では、スキルベースにおけるエラーが発生する確率が最も高い。

 英国の心理学者リーズンは、不安全な行動を意図しないエラーと意図したエラーに分けた。意図しないエラーは、ど忘れや不注意で起こるラプス(記憶の誤り)とスリップがある。意図したエラーには、ミステークと違反がある。ラプスやスリップは、操作機器や表示器の工夫により発生を抑制することが可能である。しかし、意図したエラーは心理学・社会学的背景を伴うため、防止が容易ではない。例えば、シートベルトの非着用や、飲酒運転がこれに相当する。

 意図したエラーを防止するためには、罰則の強化や運転者教育が必要である。更には自動車をインターロックする等の手法も考えられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月24日 (木)

ドライバ行動(24)

 アクションスリップは、更に細かく次の6つのタイプのエラーに分類することができる。

①乗っ取り型エラー(Capture Error)頻繁に行う行動が、意図していた行動を乗っ取ってしまうエラー
②記述エラー(Description Errors)意図の記述の不確かさが不十分な場合に起こるエラー
③データ駆動型エラー(Data-driven Errors)データ駆動型(自動化された)の活動が、実行中の行為に割り込むエラー
④連想活性化エラー(Associative Activation Errors)頭の中の連想が行為を引き起こすエラー
⑤活性化消失エラー(Loss-of-activation Errors)行為の目的の活性化が失われるエラー
⑥モードエラー(Mode Errors)複数のモードの操作において、あるモードで適切な行為が他のモードでは違う意味になるエラー

 運転支援システムはドライバが不慣れで、その操作スイッチが従来の車両よりも多くなる。ドライバがどんなモードで走行しているのかを理解していないと、モードエラーが発生する危険性がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月23日 (水)

ドライバ行動(23)

 人間信頼性解析から導かれたエラー分類として、オミッションエラーとコミッションエラーがある。オミッションエラーとはするやるべきことを省くエラーで、コミッションエラーとはするべきことと違うことをするエラーである。

 右左折時にターンシグナルを出さずに曲がることはオミッションエラーであり、アクセルとブレーキの踏み間違いはコミッションエラーである。エラーを形態から分類したものといえる。

 ヒューマンエラーは人間の認知情報処理の失敗なので、認知情報処理のメカニズムを研究することが対策に繋がる。そこで、認知心理学的にエラーを分類するものに、ミステークとアクションスリップがある。ミステークとは行為の意図を形成する段階で発生するエラーで、アクションスリップとは意図を実行する段階で発生するエラーである。ミステークは思い込みエラーであり、アクションスリップはうっかりミスである。

 人間の行為は、知識の体制下化された集合体のスキーマが活性化され起動したものと考えらている。すなわち、アクションスリップは、活性化-トリガー-スキーマシステムATS(Activate-Trigger-Schema System)のエラーとして説明可能である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月22日 (火)

ドライバ行動(22)

 自動車の運転は、認知・判断・操作という枠組みで考えることが一般的である。そのため、ヒューマンエラーも認知・判断・操作に関連付けて分類するのが一般的である。

 認知エラーは外界の情報を受入れ感覚中枢で認知するまでの過程で起きたエラー、判断エラーは最適な行動を意思決定し運動中枢から指令を出すまでの過程で起きたエラーである。そして、操作エラーは運動中枢から動作の指令は出された後、動作操作段階で起きたエラーである。

 これらエラーの他、ドライバの人的要因としてドライバの状態や状況が大いに関連する。身体的・生理的なものとして、アルコールによる機能低下、薬物による機能低下、疲労、疾病、身体的ハンディキャップ、視力低下等がある。また、精神的・情緒的なものとして、情緒的混乱、他車両からの圧力、急ぎの気持ち、精神的欠陥等がある。更に、経験・危険を受ける度合いとして、経験の浅さ、車への不慣全てのれ、道路への慣れすぎ、道路不慣れ等がある。

 交通事故をドライバの人的要因を分類すると、認知エラー、判断エラー、操作エラーでほぼカバーすることができる。カバーできないものは、故意の事故と意識喪失の場合だけである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月21日 (月)

ドライバ行動(21)

 ヒューマンエラーとは、人がやるべき機能を果たせなかったり、許容範囲を逸脱した場合に、その人を含むシステムの機能を劣化させることである。機能劣化の危険性が生じてもヒューマンエラーである。

 自動車の運転の場合、ドライバがシステムの重要な構成要素のため、ヒューマンエラーは交通事故につながる。すなわち、ドライバのヒューマンエラーとは、ドライバの判断や操作の失敗といえる。

 警察庁の交通統計でヒューマンエラーに該当するものは、信号無視、通行区分、最高速度、横断・転回等、追越し、踏切不停止、右折違反、左折違反、優先通行妨害、交差点安全進行、歩行者妨害等、徐行違反、一時不停止、整備不良、酒酔い運転、過労運転おようび安全運転義務違反(運転操作不適、漫然運転、脇見運転、動静不注視、安全不確認、安全速度)等である。

 交通統計での分類では、どれがヒューマンエラーかわかりにくい。例えば、信号無視では、見落としたのか初めからドライバの意思で無視したのかで意味合いが異なる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月20日 (日)

ドライバ行動(20)

 自動車の運転においては、人間に入力された感覚を行動に変換するプロセスが連続して行われる。つまり、入力から出力への変換が繰り返されるループが構成されていると考えることができる。

 これを表現するモデルがE-COMモデル(Extended Contextual control Model)である。これは、安全の研究で有名なエリック・ホルナゲル教授が提唱したモデルである。

 EーCOMモデルは、リアルタイムで制御操作を行うTracking層、そのTrackingの目標値たる走行ラインを決めるRegulating層、目的地までの経路を走っているかを確認するMonitoring層、そして目的地を決めるTargeting層の4階層で構成されている。それぞれの層では、上位層から降りてきた目標に従っているか確認しながら行動が行われ、場合によっては下層から上層に目標の変更が要請される。例えば、路面の状況が変化すれば走行ラインを変更するときがこれに相当する。それぞれの層でループを回す時間は異なり、Tracking層では数秒、Regulating層では数十秒から分単位、Monitoring層では数分となる。

 E-COMモデルの下3層は、ミコンの3階層モデルとみなすことができる。また、SAモデルはRegulating層での情報処理と考えられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月19日 (土)

ドライバ行動(19)

 これまで、各種人間の情報処理モデルを解説した。これらはそれぞれ異なる研究分野で提案されたものである。

 そして、それらのモデルを自動車に適用したのである。自動車を運転している状態から提案されたものではないことに注意しよう。

 各種モデルはそれぞれが妥当なものである。なぜなら、人間の機能をその研究分野から見てモデル化したからである。異なる視点で人間の機能をみていることを明確化するため、情報処理プロセス軸、行動タイプ軸、タスク階層軸で3次元化すると各種モデルの関係がみえて来る。異なるモデルを高い次元で統合し俯瞰することによって、モデル間の関係がわかるのである。

 この俯瞰方法を使うと、要求する事象に対し一つのモデルを無理に適用しなくともよくなる。すなわち、認知・判断・操作のどれを支援するか、SRKのどれを使っているか等とし適用を広げることができるようになる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月18日 (金)

ドライバ行動(18)

 デンマーク王立研究所のラスムッセン教授は、原子力プラントでのヒューマンエラーの観点からSRKモデルを唱えた。Sはスキルベース行動、Rはルールベース行動、Kは知識ベース行動を意味する。

 人間の行動は、このSRKに支えられているという考え方である。すなわち、日々の習慣で獲得した無意識行動がスキルベースであり、決められた規則に従うルールベースを遵守し、知識を使って行動を決定する知識ベースが備わるということである。

 運転もSRKの観点から解釈することができる。基本的な運転行動はスキルベース行動といえる。交通法規を遵守して走行することがルールベース行動であり、目的地に到達する経路を考えることは知識ベース行動といえる。SRKモデルでは同一行動でも、その行動を決定したプロセスの違いに着目している。例えば経路選択で、知識を総動員して経路を選択すれば知識ベース、誰かに書いてもらった道順に従った場合はルールベース、毎日の通勤路であればスキルベースとなる。

 ステアリング操作においても、急に出現した障害物の回避はスキルベース、路面の矢印記号に従って車線変更すればルールベースというように行動決定の理由によって意味合いが異なる。そのため、3階層モデルに似ているものの、まったく異なったモデルといえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月17日 (木)

ドライバ行動(17)

 行動の時間軸での違いを明確にしたモデルに、ミコンが提案した行動の3階層モデルがある。これは戦闘での概念を導入し、行動を操作、戦術、戦略の3層に分けたものである。

 操作(Operational)、戦術(Tactics)、戦略(Strategic)をそのまま自動車の運転に適用できない。そこで、運転に適用するときは、Contorl、Maneuvering、Strategicとする。

 上位概念層から説明すると、目的地到達のための経路選定は Strategic、その経路に従い交差点での右左折が Maneuvering、道路から逸脱しないように運転するのが Control である。別の側面では、ドライバが安全のため車線の真ん中を走行しようと思っていればそれは Strategic である。それに従って、車線真ん中を走行しようとするのは Maneuvering となる。また、走行速度の選定や車線の選択も Maneuvering となる。

 3階層モデルは情報処理モデルの認知、判断とは別の観点である。Strategic を成すためにカーナビの地図情報を認知し、最適経路を判断するのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月16日 (水)

ドライバ行動(16)

 状況認識とは、そのときの状況に応じた最適な行動を起こすため、自分が置かれている状況を認識することである。状況認識モデルはSA(Situation Awareness)モデルと呼ばれる。

 SAモデルは、マイカ・エンズリーがアメリカ空軍の主任科学者がった1995年に提案したものである。彼女は空中戦のパイロットの思考に着目し、このSAモデルをまとめたのである。

 パイロットは自機の態勢や味方の状態及び敵機の状態等を認知し、どこへ逃げるかあるいはどにように攻撃するかを意思決定する。この意思決定プロセスはSAモデルを使うとわかりやすいのである。自動車の運転も同様で、自車周囲の他車の挙動から潜在的なリスクを認識判断しながら運転している。SAモデルでは、大まかに状況認識、意思決定、行為の実行と3段階に情報処理プロセスに分ける。そして、更に状況認識段階を、外界を知覚する段階をレベル1、単に対象物体の形や位置を知覚するだけでなく、それら位置関係や動きが自分にとってどういう意味があるかを理解することをレベル2、この状態が今後どのような状態になるかを予測することをレベル3と細分化するのである。

 SAモデルでは、同じ状況であってもドライバによって予測の結果が異なる。個人の性格、能力、経験に依存し、かつ運転している自動車によっても結果が異なるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月15日 (火)

ドライバ行動(15)

 人間情報処理を何段階の機能に分けるかは、注目する機能に依存している。そのため、必要に応じて細かく分けることも行われる。

 著書「誰のためのデザイン」で有名なアメリカの認知科学者、ドナルド・アーサー・ノーマンは、7段階の機能に分けた。この7段階とは、知覚、知覚の解釈、解釈の評価、ゴール、実行の意図、行為系列、行為系列の実行である。

 ノーマンの7段階モデルとは、行為の7段階モデルとも呼ばれる。ノーマンは人間が行為を実行する際の行動と思考プロセスをモデル化したである。この7段階モデルは知覚から順にステップを踏むのではなく、ゴールからスタートする。なぜなら、人間が行為を実行するとき、まずはゴールを設定するからである。そのため、ゴールの次が実行の意図、行為系列と進み行為系列を実行する。実行後、外界の変化を知覚し、自分の行為がどの程度影響したかを解釈した後に評価し、ゴールにフィードバックさせるというものである。

 ノーマンの7段階モデルは、外界→知覚→知覚の解釈→解釈の評価→ゴールという外界からゴールに至る系列がある。そして、ゴール→実行の意図→行為系列→行為系列の実行→外界というゴールから外界に至る系列があるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月14日 (月)

ドライバ行動(14)

 脳には記憶機能があり、記憶や注意も考慮した情報処理モデルが提案されている。心理学では記憶を、短期記憶、長期記憶、作業記憶(ワーキングメモリ)に分類する。

 短期記憶は感覚器で得られた数秒間保持されるもの、長期記憶は思い出すことができる事象だけでなく意識にのぼらないものも含める。ワーキングメモリは一時的に使われる記憶機能で、知覚したものを頭の中で一致しているか参照する機能である。

 形状の知覚はテンプレートを使うと考えられており、知覚には長期記憶が使われている。知覚から行動を選択するとき、その目的と照らし合わせて知覚内容を判断している。また、目的に応じて対象のどの属性に注目すべきかが異なるため、長期記憶から検索するときもワーキングメモリが使われる。

 これらの記憶を使って、知覚・判断・行為を実行しタスクを達成する。そのため、これらに注意のリソース(注意資源)を投入しなければならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月13日 (日)

ドライバ行動(13)

 ドライバ行動を知るため、人間工学が基本となる。更には、人間工学に取組むため、人間の情報処理・認知モデルが必要となる。

 モデルはあくまでも人間を理解するための枠組みであり、人間の中身がモデルに正確に対応しているわけではないことに注意しよう。その前提で、最も簡単な人間情報処理モデルが、感覚系、中枢系、運動系の三つの要素からなるモデルである。

 感覚系で外界の情報を受け取り、それを中枢系で解釈して、運動系で外界に働きかける。三つの要素で3段階の処理を行い、それぞれの要素は感覚器、中枢神経、運動器に対応する。これのアナロジーが機械では、センサ、中央処理装置、アクチュエータとなる。自動車技術では、認知・判断・操作系という3段階として使われている。第一段階から第二段階へは、感覚から知覚、知覚から認知と進んで行くとみなすものの、それらの境界は明確ではない。

 そもそも、脳の情報処理は直列に進むのではない。脳神経は相互に結合し、行きつ戻りつする情報処理そするため、このモデルはあくまでも単純化した見方にすぎないのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月12日 (土)

ドライバ行動(12)

 注意は事象から発生するボトムアップ要因だけで決まるのではない。ドライバの意思によるトップダウン要因の影響も受ける。

 トップダウン要因は次の3つにまとめることができる。第一は物体に関する知識、第二はシーン全体の理解を応用、第三は課題要求である。

 物体に関する知識とは、街中で特定のチェーン店を探す場合、そのチェーン店のシンボルとなる看板の色や形状を探すということである。複雑な状況下では、逐次探索するしかないため、その場合は視野内での逐次的な物体認識モデルと等価になる。次に、シーン全体の理解を応用とは、交差点を左折する場合、左折した先の横断歩道上に歩行者がいるかどうかを優先的に探索するということである。このように、人はシーンの知識を利用すると、より高速に情報を抽出することが可能となる。そして、課題要求とは、運転するという状況の場合、そのときの運転行動に従った注意の配分をするということである。

 課題要求の視行動への影響は、二重課題でより顕著になる。例えば、カーナビの操作が運転行動に影響するのは、視行動が機器操作という副次課題の要求に従うからである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月11日 (金)

ドライバ行動(11)

 人の視覚系の特徴の中心視野の解像度が高く周辺で低いというのは、眼と脳の構造に由来する。その結果、解像度の高い情報を得ようとすると、その対象に視線を向けなければならない。

 よって、視線の移動は注意の移動は連動するものと考えられる。視覚的注意モデルの基盤には、特徴統合理論がある。

 これを基に、顕著性マップという概念が提唱されている。これは、視覚系で色や明るさ、線分の方向といった基本的な特徴処理を行う段階(特徴マップ)と、これらを統合した段階(顕著性マップ)が注意を決めるというものである。ある位置の特徴マップと周囲との特徴を比較して特徴コントラストを抽出し、特徴コントラストが位置毎に線形加算されて顕著性マップができ上ると考える。注意のスポットライトは、この顕著性マップの値が高いところから順に移動するというのが、顕著性マップによる視覚的注意モデルである。

 このモデルは人の視覚探査行動をある程度は説明できるものの、人の期待や知識によるトップダウン要因が反映されていないため限界がある。更に、静止画像のみに対応しており、運転に必要な動画には適用できないのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月10日 (木)

ドライバ行動(10)

 視覚イベントが発生中に、聴覚や触覚等による刺激(プローブ)を独立して与え、プローブに対する事象関連電位を計測することをプローブ法とよぶ。視覚情報に集中しているときは、プローブに対する事象関連電位の振幅が減少するのである。

 もっとも、これは注意資源量が一定と仮定した場合である。一般的に、注意資源配分量が少ないイベントに対する事象関連電位の振幅は減少する。

 プローブに対する事象関連電位の振幅が小さい場合、視覚課題に対する注意資源配分量が多いと推定できるのである。プローブ法には、プローブ刺激系列内に逸脱音を検出させる等の課題を加える課題関連法と、プローブ刺激系列は無視するように教示する課題非関連法がある。課題関連法の方が、視覚情報への注意資源配分量の推定精度は高くなると考えられる。しかし、二重課題方は主課題に影響する可能背があるため、自然な作業環境での評価を目的とする場合、課題非関連法が推奨される。

 プローブ法は比較する総資源量が一定という仮定がある。したがって、心的疲労や眠気によって覚醒水準が条件間で異なる場合、適用できないことに留意しなければならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 9日 (水)

ドライバ行動(9)

 全ての事象関連電位が実際の運転で使えないのではなく、眼球停留関連電位は使える可能性がある。これは、サッカーディック眼球運動の終了時点を基準とした、脳波の加算平均処理で得られるものである。

 運転中ドライバは頻繁にサッカーディック眼球運動を行っているため、数分間のデータで眼球停留関連電位の算出が可能なのである。心的疲労により視覚情報に対する注意資源分配量が減少すると、これに変化が現れる。

 眼球停留関連電位は、眼球運動終了後の停留位置における新しい視覚情報の取込みに関連している。眼球運動終了時点から約100ms後、後頭部で惹起する陽性成分(P100成分)は、注意資源配分量が減少すると振幅が減衰する。運転中に空間的作業記憶負荷を伴う妨害課題を行うと、P100成分が減衰する。つまり、運転中にP100の振幅が減衰すると、外界視覚に対する注意資源配分が減少したとみなすことができるのである。

 ただし、P100成分は注意資源配分量だけではなく、外界の明るさが変わっても振幅が変化するという特性がある。そのため、昼間と夜間というように視覚環境が変わると比較できなくなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 8日 (火)

ドライバ行動(8)

 安全に運転行動を行うため、次の2つが重要である。すなわち、外環境で発生するイベント情報を処理するための十分な注意資源量が確保されていることと、必要な情報に注意が向けられており選択的に処理していることである。

 注意資源量は覚醒水準と関係しており、心的疲労や眠気によって減少する。この状態の生理指標として、脳波では13Hz以下の低周波数帯域が増大することが知られている。

 つまり、脳波を計測して低周波数帯域が増大すれば心的疲労か眠気があり、注意資源が減少しているため不注意になりやすいと分かる。覚醒水準が高く注意資源量が確保されていても、意識の脇見があれば安全運転が遂行できない。そこで、ドライバがどのような情報処理をしているかを神経生理的に評価する手法として、事象関連電位がある。事象関連電位は、視覚イベントに対する注意資源の配分量を反映して振幅が変化する。注意を向けることによって初期成分の振幅が増大するのである。

 ただし、事象関連電位の計測は、類似イベントに対する脳波を繰り返し収集し加算平均を取る必要がある。また、ミリ秒単位での計測が必要となり、実際の運転状況を計測することは難しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 7日 (月)

ドライバ行動(7)

 有効視野も加齢の影響を受ける。中心視野での情報処理速度、中心視野での分割的注意、中心視野での選択的注意について、全ての項目で年齢が高いほど、性能が劣化する。

 有効視野の大きさも、加齢に伴って小さくなる。ただし、上記情報処理速度等は、訓練すると性能が向上することも報告されている。

 また、高齢者の有効視野の大きさと、事故頻度が関連するといわれている。中心視野での情報処理速度等が劣化すると、運転パフォーマンスも低くなる。有効視野が小さくなると、周辺視野での認知機能が低下する。高齢者の事故経験者は、無事故の者より有効視野が小さく周辺視野での認知機能が低い。有効視野の機能はトレーニングで向上するものの、そのトレーニングが高齢者の事故抑止につながるかどうかは確認されていない。

 なお、視覚的注意の加齢変化は、広く認知機能の加齢変化の一部とも考えられている。そのため、加齢変化の原因として認知資源減少に起因する処理容量低下仮設と、関係ない情報を抑制する機能低下に起因する抑制機能低下仮設が提唱されている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 6日 (日)

ドライバ行動(6)

 運転行動においては、危険な対象を探し出すため有効視野を効率よく移動させなければならない。すなわち、広い空間からスポットライトに視覚注意を移動させる必要がある。

 注意移動は内発的注意移動と外発的注意移動があった。内発的注意移動は自分の意志、外発的注意移動は外部刺激によって自動的に注意が移動するものである。

 加齢効果により注意移動がどのような影響を受けるかというと、この2種類の注意移動で異なるのである。外発的注意移動では加齢効果がなく、内発的注意移動のみ加齢効果があることがわかっている。

 内発的注意移動はトップダウン制御である。加齢により動作が緩慢になるように、意思による注意移動が緩慢になるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 5日 (土)

ドライバ行動(5)

 運転中、ドライバは前方の交通状況から危険な対象を探し出して対応しなければならない。すなわち、連続的に視覚探索を行っているとみなすことができる。

 視覚探索では、一つの特徴に基づいて探索する特徴探索と、複数の特徴に基づいて探索する結合探索がある。基本特性として、特徴探索は探索にかかる時間が刺激数に影響を受けず、結合探索は刺激数に応じて長くなる。

 結合探索は複数の特徴を統合するため、処理効率が相対的に下がるのである。加齢によって、視覚探索の傾向が変わり、特徴探索と結合探索で傾向が異なる。特徴探索では探索時間自体は伸びるものの、妨害刺激の数に影響を受けなくなる。そのため、高齢者と若年者の特徴探索の探査時間は同等になる。一方、結合探索では妨害刺激の数による探索時間が、高齢者は若年者よりも大きくなるのである。

 結合探索は複数の特徴が組み合わさるため、選択的注意が必要となる。加齢により、複雑な処理が必要な状況に影響が出ているということになる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 4日 (金)

ドライバ行動(4)

 加齢により身体的・心理的機能の変化が生じ、それは運転行動にも影響を及ぼす。老眼や白内障という変化は高齢者も自覚することができるものの、視覚的注意の機能変化は自覚しにくい。

 高齢者と若年者とでは、運転時の情報獲得行動が異なる。例えば、高齢者は若年者よりも車に近い場所を注視する特性がある。

 逆に、走行車線や対向車線上の車への注視が少ない。そのため、運転に影響する対象物への注視が遅れてしまう。高齢者の逆走問題も、この特性によるものかも知れない。この行動特性の違いは、加齢により注意機能が変化したと考えられる。すなわち、要素が複数になったときの視覚的注意機能が、自分に近いものから注視するという特性に変化するものと思われる。

 認知機能の加齢による変化の研究では、選択的注意、焦点的注意、分割的注意、持続的注意に特徴が現れるとしている。運転行動に重要な、視覚探索、注意の移動、有効視野にも影響が現れる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 3日 (木)

ドライバ行動(3)

 人間の視野は180°から210°もある。しかし、視力の高い中心視は2°しかない。

 ところが、視覚情報が中心視だけから得られるにではなく注視点周辺からも得られる。この認知に寄与する範囲を有効視野と呼び、さまざまな要因によって4~20°まで範囲が変わる。

 有効視野を変更させる要因としては、中心視負荷、刺激背景の空間的密度と類似性、予期・刺激の文脈性から、課題への誘因と動機付け、作業環境の温度、危険感等がある。実際の運転場面では、走行環境の混雑度が高いほど有効視野が狭くなる。これは、混雑によって注意が劣化したのではなく、より深く情報を得ようと集中するため有効範囲が狭まるのである。有効視野の測定法は標準化されておらず、各研究者が有効視野の定義に基づいて独自に測定手法を考案し適用している。すなわち、中心視課題と同時に周辺視課題を行い、周辺視課題の成績によって検出範囲を求めるというものである。

 ドライビングシミュレータを用いた実験でも、混雑度の高い市街地コースで有効視野が小さくなることが報告されている。また、認知負荷が高い加算課題を行っても、有効視野は小さくなることも確認されている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 2日 (水)

ドライバ行動(2)

 注意定位が起きた後、注視点での情報選択により対象が認識される。色や線分という特徴は注意しなくても自動的に視覚機能で処理されるものの、その対象を認識するためには注意が向けられなければならないのである。

 意識的に注意を向けないと、視覚刺激として十分に認識されない事象が発生する。不注意により見落とし(Inattentional Blidness)や、変化の見落とし(Change Blindness)なる現象が起きるのである。

 ドライビングシミュレータを使って、容易に見落とし実験が可能である。実験シナリオは、走行ルート沿いに設置した看板を注視するよう指示した上で、ハンズフリー通話のありなしを行うというものである。すると、ハンズフリーで会話を行うと、看板の内容を想起できる確率が下がるのである。つまり、会話に注意が向けられることにより、視覚情報の入力に対する注意が不足したからである。

 見落とし実験の有名な実施例は、白い服のチームと黒い服のチームが入り乱れてパスを行う映像を観察し、白い服チームのパス数を数えるものである。実験途中、黒い熊の着ぐるみを着た者が映像中に現れても被験者は気付かない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 1日 (火)

ドライバ行動(1)

 あけましておめでとうございます。本年も新技術や専門領域の解説から、学生に役立つ情報を続けて行きます。今月はドライバ行動から。

 ドライバ行動に関わる人間特性として、最も重要な機能が視覚的認知機能である。自動車運転における視界情報の重要性は説明するまでもない。

 外界の視覚的情報は膨大であり、その中から必要な情報を選択する視覚的注意が重要な機能といえる。視覚的注意の中でも、運転時に重要性が高いものが注意の移動(定位)、注視点での視覚情報の選択、有効視野の3点である。
 
 人間の視力は中心視野のみで高いため、広い範囲の視覚情報を得るためには視点を動かし続ける必要がある。ドライバがどのように注視点を移動するかは、注意点がどこに向いているかによる。注意の移動は自分の意志に基づいて行われる内発的注意制御と、出現した刺激により自動的に注意が移動する外発的注意制御の2種類の制御に基づいて行われる。前者はトップダウン的、後者はボトムアップ的注意の制御である。心理学実験では空間手がかり法を用いて、内発的注意制御と外発的注意制御の注意定位速度を計測する。これによると、注意定位速度は外発的注意制御の方が早く(100~300ms)、内発的注意制御は300ms程度の時間がかかることがわかっている。

 すなわち、車載ディスプレイを見て前方を見るという内発的注意制御は時間がかかるということになる。また、危険事象を知らせる警報表示では、外発的注意制御が誘発できるかどうかが重要ということにもなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »