« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »

2019年2月28日 (木)

ドライバ行動(59)

 自動車の運転は、人間が移動する特殊なケースと見做すことができる。よって、人間は進行方向を知覚しているのである。

 進行方向の知覚は、網膜に映るオプティカルフローを用いる。前方に移動しているとき、オプティカルフローは前方のある点を中心として拡大する放射運動パターンとなり、この点をFOE(Focus of extantion)と呼ぶ。

 前方に直線運動しているとき、進行方向とFOEは一致し、人間はFOEを用いて進行方向を知覚している。ランダムドットを用いた進行方向知覚の実験では、精度が最高で0.66deg、一般的にも1.2degであることが報告されている。しかも、ランダムドットの個数は10個ほどでよい。眼や頭を動かすと進行方向とFOEが一致しなくなるため、人間の進行方向知覚に影響が現れると思われる。ところが、眼球運動をさせながら実験しても、正しい進行方向が知覚される。よって、眼球運動情報も進行方向知覚に利用されているといわれている。

 視野内に他車両がありFOEを妨害する場合も、ほとんどの場合正しく進行方向が知覚される。しかし、大きな物体が横切る場合は、その物体の移動方向に引っ張られて知覚される。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月27日 (水)

ドライバ行動(58)

 追跡制御では、フィードバックを用いない。フィードフォワードのみの制御となる。

 つまり、目標コースの情報をフィードフォワードで利用することになる。しかし、制御に微分動作がない方がよい。

 微分動作がないこということは、制御を比例動作だけで構成しなければならない。そのためには、ドライバが目標コースの曲率を入力としていると考える。すると、比例動作のみのフィードフォワード制御が実現できる。

 実際に、コーナーの曲率が一定の方が運転しやすいことを考えると妥当性は高いと思われる。課題は、直線からコーナーへは曲率が一定ではないので、部分的にはそのままの適用が難しいことである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月26日 (火)

ドライバ行動(57)

 ドライバの制御特性は、非線形要素を含んでいるため伝達関数で表現できない。しかし、中には線形関係のある入出力もある。

 そこで、線形関係にある基本成分だけ考えれば、等価伝達関数で表現可能となる。この等価伝達関数を記述関数と呼ぶ。

 古くから人間の制御動作を記述関数でモデル化する研究が行われ、その結果を自動車に応用した研究例がある。例えば、ヨー角と横変位をフィードバックする二重ループモデルがある。このモデルでは、ヨー角と横変位をそれぞれ記述関数で表し、ヨー角と横変位をそれぞれフィードバックする構成としている。横変位のみのフィードバックでは、ドライバが強い微分動作を行わなければならない。しかし、人間が大きな負担なしで長時間行うことができる作業は、むだ時間を含む比例制御とごく弱い微分または積分動作と考えられている。そこで、ヨー角のフィードバックを加え、ドライバの強い微分動作を緩和したのである。

 このモデルでは、ヨー角を比例ゲインのみの記述関数で表している。すると、横変位の記述関数も簡単なものになり、安定性も向上する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月25日 (月)

ドライバ行動(56)

 ドライバは、一定の前方を見て先行き情報を利用して運転している。つまり、目標信号の未来値を利用した予見制御(Preview Control)をしているといえる。

 ドライバは、現時点までの自動車の姿勢や経路から、外挿によって将来の自動車の状態を予測することもできる。現時点までの情報で未来の状況を予測し、これによって動作を決定することを予測制御(Predictive Control)という。

 ドライバが予見で得た目標コースと、未来値と予測によって得る将来の車両位置の偏差に応じて操舵角を決めると考えたモデルを予見-予測モデル(Preview-predictive Model)、あるいは前方注視モデルという。将来の車両位置をどれほど詳しく考慮するかにより、1次予測、2次予測等がある。モデルを簡略化するため、ドライバの制御特性を比例ゲインとむだ時間のみで近似することもある。また、車両横変位誤差を距離ではなく、横変位に応じた偏角を用いたるモデルも提案されている。

 予見-予測モデルは最も早く提案されたドライバモデルで、初めての論文が1958年と非常に古い。その後も、複数の注視点を用いたものや、最適予見制御理論を応用するなど高度化している。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月24日 (日)

ドライバ行動(55)

 ドライバの運転特性は、人間の認知判断という基本メカニズムが未知な領域に関わっている。そのため、モデル化のアプローチとして、情報論的、意思決定論的、制御論的、確率論的等の様々なものが考えられている。

 基本的には、制御論的アプローチが多い。なぜなら、ドライバを機械的な制御装置とみなすと、ドライバの運転行動をブラックボックスとして扱えるからである。

 このドライバモデルの入力としては、ドライバの運動感覚情報(Motion Cue)、筋肉感覚情報(Proprioceptive Cue)、そして視覚情報(Visual Cue)の3つになる。出力は、横運動に関する操舵角・トルク、前後運動に関するペダルの踏み込み量・踏力の2種類になる。ドライバの制御動作は、予覚制御(Precognitive Control)、追跡制御(Pursuit Control)、補償制御(Compensatory Control)の3種類に分類できる。

 予覚制御は開ループ制御となり、追跡制御はフィードフォワード制御となる。そして、補償制御が自動車の状態フィードバックとなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月23日 (土)

ドライバ行動(54)

 現在のところ自動運転が当たり前にはなっていない。そのため、自動車の運動は人間のドライバによる操縦が不可欠である。

 すなわち、自動車の運動力学を検討するためには、ドライバの特性も考慮したドライバ-自動車系として考えなければならない。一意に表現できるドライバ特性に至っていないため、種々のドライバモデルが提案されている。

 認知レベルによるドライバ動作の分類においては、技能ベースの動作、規則ベースの動作、知識ベースの動作の3種類に分類できる。技能ベースの動作とは、熟練した操縦者が機械的・無意識的・反射的に行う自動化された動作である。規則ベースの動作とは、あらかじめ用意された規則や経験則と外界の状況を比較した結果に基づいて決定される動作である。知識ベースの動作とは、過去の経験から得た知識を利用して外部状況を認知・解釈し、これに基づく目標達成のための高度な意思決定を含む動作である。

 知識ベースの動作はモデル化が困難であり、規則ベースの動作も難しい。そのため、ドライバの運転制御モデルとして、ほとんどが技能ベースの動作を対象としている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月22日 (金)

ドライバ行動(53)

 産業技術総合研究所の自動車ヒューマンファクター研究センターで、過去に高齢ドライバーを対象とした対処行動の調査を行った。認知機能の衰えを自覚している高齢ドライバー100名と、自覚していない高齢ドライバー100名でそれぞれアンケート調査したのである。

 その結果、衰えを自覚しているドライバーは明らかに対処行動を取っていたのである。具体的なものは次のようになる。

・状況知覚低下の自覚:二重タスクを避け運転に集中する。同乗者とおしゃべりをせず運転に集中する。悪天候夜間での運転を避ける。信号の少ない道路を選択する。

・状況理解・予測低下の自覚:交通標識を意識する。

・判断・意図形成能力低下の自覚:広い道や走り慣れた道路を選択する。

・実行能力低下の自覚:他車の動きを気にせずマイペース運転をする。

 二重タスクを避け運転に集中することは、状況知覚低下だけでなく、状況理解・予測低下や判断・意図形成能力低下にも関係する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月21日 (木)

ドライバ行動(52)

 具体的な認知機能を列挙するとこうなる。

・反応時間/処理の早さ:反応の速さだけでなく動作の早さも含める。この機能は道路上の変化に対する反応に影響する。
・注意機能:運転に必要な情報に適切に注意を向けることができる機能と、運転に必要でない刺激を無視できる能力である。
・短期記憶:意思決定のために情報を保持し、情報を利用するために加工する機能である。
・実行機能:複雑な状況に直面したとき、知覚運動による反応や認知的反応を適切に計画し調整する機能である。

 これら機能により、道路線形、他車の挙動、ハザード等を適切に知覚することが可能となる。そして、この機能に身体機能が加わる。

 運転行動に関わる身体機能とは、首がスムーズに回るかとか、身体の衰えがあるかどうか等である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月20日 (水)

ドライバ行動(51)

 運転行動は、ドライバ個人によって差がある。これはどのドライバ能力の差によるものだろうか。

 それを明確にするため、ドライバの認知機能と運転行動の関連を模式的に表現した安全運転多要因モデルが提案されている。このモデルが開発された目的は、高齢ドライバの運転行動の低下が、どのおうな心身機能の低下からきているのかを理解するためである。

 安全運転多要因モデルは、高齢ドライバの認知的パフォーマンスと事故の起こる可能性を過去の事故歴と、実路での運転パフォーマンスを調査して検討されたものである。これら調査結果から、心身機能、安全運転をするための能力、運転行動という3要素の関連を提案したのである。このモデルの運転行動は、安全運転に必要な能力とその運転能力の自覚で決まる。安全運転に必要な能力は、有効視野とハザード知覚で構成される。運転能力の自覚には、これら有効視野とハザード知覚の加齢による衰えをドライバ自身が認識しているかどうかと、自身の認知的・身体的能力の衰えの自覚も含まれる。

 安全運転多要因モデルの特徴は、運転能力の衰えの自覚によって運転行動が変わることを明示した点である。認知機能が衰えると、運転能力の自覚も衰えるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月19日 (火)

ドライバ行動(50)

 ドライバ人口の高齢化に伴い、認知機能の評価が必要になっている。ところが、認知機能は直接計測することができないため、代替手段として与えられた課題の達成成績で評価する。

 そのため、まず、運転行動に必要と考えられる認知機能を仮定する。そして、それを評価する課題を設定しなければならない。

 ドライバ特性に関する機能のモデルを想定し、運転行動と機能的能力を決める。次に、その機能の各種検査方法と指標を調べてマッピングし、必要な検査を決めるのである。例えば、運転行動には視覚機能を用いる。視覚機能の各種検査方法を調べ、他に必要とする機能と重複していれば効率的に検査が行えることがわかる。これらの研究は、高齢者用のものより先に脳卒中患者の運転復帰に向けたものが行われた。その研究例として、レイ複雑図形がある。これは複数の線分と内部に三つの点がある円で組み合わされた無意味で複雑な図形を書き写す検査である。書き写す条件(見ながら/見た直後/3分後)が決まっており、採点個所も決まっている。写した図形の正確さを採点した点数が指標である。

 このレイ複雑図形の点数を、脳卒中患者の運転復帰スクリーニングとして使うのである。高齢者に有効かどうか現時点では不明なものの、参考になることは間違いない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月18日 (月)

ドライバ行動(49)

 運転能力検査は、視覚運動協応の評価といえる。特に、高齢者講習用の運転操作検査機器は、視覚運動協応の能力を問う項目が多い。

 その項目としては、単純反応検査、選択反応検査、ハンドル操作検査、注意配分・複数作業検査がある。これら検査において、単純反応検査では反応の正確性と速度、選択反応検査では反応のむら、ハンドル操作検査では反応の正確性・偏り・練習効果、注意配分では正確性・速度・むらが検査指標となる。

 この検査方法に複数の心理テストを加えるものが提案されており、より視覚運動協応に向けた検査が模索されている。例えば、Complex Attention という検査方法では、簡易DSでモニタに表示される青信号の位置をステアリング操作でトラッキングする。モニタ上で背景を黒とし、画面真ん中に緑の縦線が引かれ、緑線左右の上半分にグレーの矩形がある。そのグレー矩形のどちらかに青い丸(青信号をイメージ)が表示され、被験者はステアリングで左右に連動する下半分に表示された上向き矢印記号↑を動かし、青い丸が表示されたグレー矩形の下側に来るようトラッキングする。

 評価指標としては、上向き矢印が緑線を超えるまでの時間を用いる。この検査には、操作の正確性だけでなく精神的かつ肉体的疲労の影響も含まれるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月17日 (日)

ドライバ行動(48)

 自動車の運転は、知覚した情報を基に手足を動かして運転操作を実行する行動である。つまり、知覚運動協応ということができ、特にほとんどの情報を視覚に頼っているため、視覚運動協応といえる。

 視覚運動協応では、リーチング課題、トラッキング課題、文字の鏡面描写課題等が用いられる。評価指標としては、課題に対する素早さや正答率を用い、個体差の研究が行われている。

 知覚運動協応のメカニズムを捉える実験方法論としては、欠如(Defect)、孤立化(Isolation)、組換え(Recombination)がある。欠如実験の例としては盲人の空間知覚を対象にしたもの、孤立化では身体運動の視覚的フィードバックを抑制するもの、そして、組換えでは逆さ眼鏡を用いたものがある。小脳における視覚運動協応に必要な内部モデル構築の様子が、脳活動の変化から示すものもある。

 自動車運転での視覚運動協応の研究では、ドライバの運動側の研究や検討が行われてきた。しかし、視覚運動協応そのものの研究は少なく、現状が萌芽期といえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月16日 (土)

ドライバ行動(47)

 高齢ドライバの運転行動評価の研究例では、このようなものがある。調査対象は62歳以上のアメリカ人407名の、自身の過失による事故経験者である。

 これら事故経験者と未経験者に対し心理検査を実施したところ、80%の正答率で事故経験者が識別可能だった。心理検査内容は、コンピュータ上での走行シーンに対しての運転行動である。

 評価項目としては、交差点走行、単路走行、カーブ走行、車線変更、合流、注意配分において、どのような行動を取ったか取らなかったかというものである。例えば、交差点ではターンシグナルを事前に出したか、単路では指示速度を守ったか、カーブでは進入時に安全な速度まで減速したか、車線変更では事前にターンシグナルを出したか、合流では適度な速度に変更したか、注意配分では適切な速度を維持したか等の当たり前の行動を評価項目とした。ところが、コンピュータ上で検査すると識別可能でも、実路で検査すると識別できなかったのである。

 他にも種々の運転行動評価法が提案されているものの、自動化されたものは少ない。運転行動評価は社会的要素も含まれるため、交通参加者に広く合意を得られるものがよい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月15日 (金)

ドライバ行動(46)

 ドライバが安全に自動車を運行する能力の評価指標が研究されている。その一例として、始業点検から降車に至るまでの一連の遵守すべき行動が記述されている。

 運転行動の記述を有用なものにするため、次の3つの課題をクリアしなければならない。①各国の交通法規への対応②定量評価できること③その行動が不十分な場合の事故に至る危険性の程度。

 日本では、運転免許を取得する際の技能試験で、乗車から降車までの運転行動評価項目が定められている。その実施要領で、採点官の採点基準が公開されている。例えば、車両走行時の車体感覚として、大きく脱輪したり大きく接触したときは危険行為とみなし即検定中止、脱輪程度が中や接触程度が小なら20点減点、脱輪程度が小や後方間隔不良や巻き込み防止措置不適なら10点減点、停止位置不適なら5点減点という具合である。

 これら技能試験の基準は、国内法に対応し、定量化され、事故への危険性を反映している。すなわち、運転行動記述による評価指標の3つの課題をクリアしていると考えられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月14日 (木)

ドライバ行動(45)

 計測の負荷効果をなくすため、運転終了後に評価する手法もある。それが、主観的評点付けSART(Situation Awareness Rating Technique)である。

 これは短時間で実施でき、実験装置も不要である。そため、状況認識の評価によく使われる。

 やり方は簡単で、運転終了後ドライバ本人が、その状況へのなじみ度、注意の配分、情報の量、情報の質、状況の不安定性、状況の複雑さ、タスクへの集中度、覚醒度、情報処理資源容量の余裕度について7点法で回答するだけである。それぞれの項目に対応した具体的な質問に答える形を準備するので、ドライバは容易に対応できる。SAGATやリアルタイムプローブ法に比べ運転には干渉しないメリットがあるものの、リアルタイム性はなく記憶に頼るため精度は低くならざるを得ない。

 注意点としては、走行後のパフォーマンスが良ければ状況認識もできていたと回答してしまうことである。これは、事故を起こさなかったので、適切な状況認識ができていたとドライバが自己評価するからである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月13日 (水)

ドライバ行動(44)

 SAGATはどうしても不自然さがあるため、より自然な運転が可能な手法がリアルタイムプローブ法である。やはり、主観的SA評価法である。

 ドライビングシミュレータや実際の運転中に、実験参加者にSAGATで使用したSAレベルに応じた質問に答えてもらう方法である。シーンのフリーズがないため、連続的な運転状況で行うことができる。

 ただし、走行中に質問に答えるため、運転に影響が出る懸念もある。そして、SAレベルに応じた質問をするため、実験参加者が無意識に質問に即した認識対象を探したり、質問に応じた運転を場合もある。質問を意識した状況認識は、通常の実験参加者の状況認識とは異なる場合もあることに注意しなければならない。

 計測で注視すべきは、負荷効果である。リアルタイププローブ法にも負荷効果があるということである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月12日 (火)

ドライバ行動(43)

 主観的SAの評価法として有名なものが、シーンをフリーズさせ消える状況を答えさせるものである。SAGAT(Situation Awareness Global Assessment Technoque)と呼ばれている。

 実車では難しく、一般的にはドライビングシミュレータを用いる。実験中のある時点で運転シーンを消す実験である。

 フリーズさせるタイミングはランダムとし、全ての手がかりを消すため車室内のメータ類の表示も消してしまう。その状態で実験参加者にそのときの状況を回答させる。SAレベルに応じて質問するため、レベル1用には、乗用車は何台あったかとか、赤い服を着た歩行者はどこにいたか等を質問する。レベル2用には道路を横断しようとしている歩行者はどこにいたか、レベル3用には自車の速度や位置と周りの状況から次はどのように行動するか等を回答させる。SAレベルに応じず、交差点形状や交通参加者の配置を紙に描かせる場合もある。

 SAGATはシーンをフリーズさせるため、運転自体が不自然になる点は考慮しないといけない。また、消えた瞬間を思い出すことから記憶力の課題も含まれている点にも要注意である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月11日 (月)

ドライバ行動(42)

 状況認識SA(Situation Awareness)とは、自車両の走行状況だけでなく、他車両との関係も理解することである。SAモデルでは、知覚のレベル1、状況の意味を理解するレベル2、予測のレベル3の3段階で構成されている。

 ドライバのSA状況がわかれば、警報や注意喚起システムの効果が評価可能となる。また、ACC等の使用によりSAが悪化していないかも評価できるようになる。

 SAの状態を測る方法として、シーンをフリーズさせる方法、リアルタイムプローブ法、主観的評点付け、観察者による評点付け、タスクのプロセスから評価する方法、タスクのパフォーマンスから評価する方法等がある。これら手法で、観察者が評価するものは、観察者の推察する能力に依存した手法である。また、プロセスから評価する方法ではドライバの視行動をアイカメラ等で計測した結果から、注視方向や時間を判断することになる。

 外部から観察・計測する他覚的方法では、ドライバのSAレベルを正確に知るかは困難といえる。そのため、主観的評価方法が重要となる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月10日 (日)

ドライバ行動(41)

 ライダーは意識的にどの部分を使用して操縦するかは、ライダーがどのような手順で操作を行っているかということである。これがわかれば、操作動作モデルを決定することができる。

 操作手順の検討は従来不要だった。ところが、二輪シミュレータを製作したときに必要が生じたのである。

 シミュレータの主入力を操舵トルクにしたところ、熟年ライダーから強い違和感を指摘されたのである。そこで、実車走行とシミュレータを用いて、ライダーの操作手順を解析したのである。すると、方向を変えるとき、第一段階でライダーは身体を傾ける動作が行われ、次に第二段階として操舵トルクが入力されることが判明したのである。

 シミュレータ上でこれを再現すると、ベテランライダーでも違和感のない入力ができるようになった。人間-二輪車系の解析は未だ不十分といえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 9日 (土)

ドライバ行動(40)

 二輪車の動きで影響を受けるライダーの身体の影響をどのように扱うかは、台上評価が一般的である。前述のライダーの動きが二輪車に与える影響を、より詳細に検討するためのものである。

 二輪車には2つの固有振動モードがある。ハンドルに現れる4~8Hzのウォッブルと、車体に現れる2~4Hzのウィーブである。

 ウォッブルはハンドルに現れるため、ライダーの腕を加振する。そのため、腕の振動特性が重要である。腕が加振されると、腕が等価質量、等価ダンパ、等価バネとなるため、運転状態が固有振動モードに影響することになる。台上実験で、ハンドルへの押し付け力や握り力を変えると、ハンドルの振動特性が変わる。

 つまり、ライダーが走行中に緊張してハンドルを強く押し付けたり握ったりすると、ハンドル軸回りの等価慣性モーメント、等価ねじりばね、等価ねじりダンパの値が変わり、ハンドルの振動を抑える側に等価力学要素がは変化するのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 8日 (金)

ドライバ行動(39)

 ライダーの身体のどの部分の動きが二輪車に影響を与えるかは、ドライバに比べて身体拘束装置がないため重要となる。ドライバであればシートの背もたれとシートベルトの拘束があり、ライダーにはどちらもない。

 ライダーと二輪車との接触点は、シート座面、ハンドル、ステップ、膝で挟むタンクである。そのため、過去にはこれら接触点における行動と二輪車の運動が研究された。

 これら過去研究で、ハンドルトルク入力が二輪車の主要運動に最も関連するとわかっている。また、ライダーを上体と下体に分け、下体は左右方向に動き、上体はこれに対し回転運動を行うとし、これら両方の動きが操縦に重要としている。さらに、ライダーが左右に身体を傾ける行動が、ある周波数領域で車両運動に影響を与えることがわかっている。二輪車旋回時のライダーのリーン(傾き)姿勢には、二輪内側に身体を傾けるリーン・イン、二輪のロール角と身体のロール角が一致するリーン・ウイズ、二輪車外側に身体を傾けるリーン・アウトの3種類があり、これらの姿勢がタイヤの力学的諸元を変化させることもわかっている。

 タイヤの力学的諸元のキャンバ・スティフネスがリーン姿勢で変化する。つまり、ライダーの身体の動きが、直接タイヤ特性に影響するのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 7日 (木)

ドライバ行動(38)

 二輪車の運転パフォーマンスでは、乗用車の方向安定性の他、直立安定性を検討する必要がある。また、二輪車固有の振動モードであるウィーブモード、ウォッブルモード、キャップサイズモードがあり、速度域によって不安定になるため、車両単体の解析が注目されてきた。

 しかし、二輪車の運動は人間(ライダー)の動作に大きく影響されるため、人間-二輪車系として扱うことが重要である。実際、ライダーと二輪車の質量比は1:1から1:8程度と、乗用車と比べると人間の質量比が大きい。

 ライダーが与える影響として、乗車姿勢による重心点や慣性モーメント計測、各種環境下での運転行動、乗車姿勢の影響、ライダーの身体の力学的特性、ライダーの情報処理過程、制御入力、制御動作、生体負担、視線行動等の研究がおこなわれてきた。多く研究されているようなものの、ドライバの研究と比べると圧倒的に少ない。人間-二輪車系の場合、何に着目するかによって検討内容が大きく異なる。例えば、二輪車はロール角が大きく非線形性が強いため、精度良い計測が難しい。そのため、運転パフォーマンスについても、項目を絞る必要がある。

 二輪車の運転パフォーマンスとしては、ライダーの身体のどの部分の動きが二輪車の運動に影響を与えるか、二輪車の動きで影響を受けるライダーの身体の影響をどのように扱うか、ライダーは意識的にどの部分を使用して操縦するかが重要と考えられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 6日 (水)

ドライバ行動(37)

 バックを伴う駐車では、難易度を感じる個人差が大きい。いわゆる車両の取回しの得手不得手は、性別や運転経験だけでは決まらず、認知情報処理の個人差に依存するのである。

 これまでの研究で、取回し性は身体座標と外部座標との対応付けに関する情報処理能力が関係することがわかっている。特に後退時では、情報処理能力の影響が大きい。

 この身体座標と外部座標の対応付け能力は、ステアリング操作を伴う試験でなくても、マウスカーソルの動きを左右反転させるだけでも調べることができる。つまり、マウスの動きとカーソルの動きを左右反転させ、指示に従って画面上にランダムに現れる文字と数字をできるだけ早くたどる試験を行うのである。この試験では、視覚的な外部座標の知覚と、自己身体運動の対応を再構成することが求められる。運転操作とはかけ離れた試験ではあるものの、この試験の成績と実際の後退を含む駐車能力との関連が明らかになっている。概して、男性の方が女性より成績が高く、女性の駐車苦手意識を説明できるのである。

 また、取回し能力には、どのような進路を通過するか視覚的に予測できるイメージ能力も重要である。視覚的イメージ能力は、ある提示した図形と回転させたようなその図形が同一なものか判定させるメンタルローテーション課題によって計測可能といわれている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 5日 (火)

ドライバ行動(36)

 左右方向で前後方向にない特徴が、道路に対する相対位置指標である。すなわち、車線内のどこを走行しているかが、左右方向の運転パフォーマンス指標になるのである。

 ただし、道路の基準として、車線間の中心位置、通過した前車両の走行軌跡の平均値、車線端という3つの場合が用いられる。また、車両の基準として、前方車軸の左右中心点、タイヤの端、車両の重心の3つが用いられる。

 左右方向の運転パフォーマンスとして最もよく使われるのが、車両横位置偏差SDLP(Standard Deviation of Lane Position)である。ある区間の車線横位置データの標準偏差より算出し、該当区間での車両横方向のふらつきを表す。通常走行では、0.2~0.3mのSDLP値となり、年齢、道路環境、車速によって変化する。もう一つの指標として、TLC(Time to Line Crossing)もよく用いられる。これは左右方向のTTCともいえる。すなわち、このまま何もしなければ、後何秒で道路端に到達するかという時間を表す指標である。横距離を速度と加速度で除算するという、近似的な算出方法も提案されている。TLCが0.5秒以内では近似法が使うことができ、0.5秒を超えると不適切な値になるといわれている。

 TLCが小さいほど、横位置の制御成績は低いといえる。しかし、大きすぎても問題なため、大きすぎる値は除く必要がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 4日 (月)

ドライバ行動(35)

 前後方向に対して、もう一つの重要な運転パフォーマンスが左右方向運転パフォーマンスである。左右方向の運転パフォーマンスも、SAEで次のように定められている。

 何らかの操舵が必要な刺激提示時点から、操作開始時間点までをステアリング反応時間(Steering Reaction Time)、操作開始時点から操作終了時点までをステアリング動作時間(Steering Movement Time)、反応時間と動作時間を合わせたものをステアリング応答時間(Steering Response Time)とよぶ。これら指標は、車線逸脱警報や車線維持支援システムの評価に使用する。

 短い時間の中で、ステアリングをある方向から反対方向へ、ある切替角度以上の操舵することを修正舵という。ある切替角度は3度、5度、6度が提案されている。この角度が小さすぎるとステアリング振動のノイズが含まれ、大きすぎるとドライバによる微修正を反映できない。そのため、修正舵を算出するときは、閾値を明記する必要がある。ディストラクションの度合いが高くなると、修正舵の回数は減少するものの、大きな修正舵が当てられるという特徴がある。

 ステアリング操舵の滑らかさを評価する方法としては、以前にも紹介したステアリングエントロピー法がある。ステアリング操作に集中していれば予測誤差は0となり、副次タスクを行っていると予測誤差分布が広がる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 3日 (日)

ドライバ行動(34)

 車間距離は重要な指標ではあるため、定義を明確にしておく必要がある。車間がどこを指しているかは、さまざまなバリエーションがあるからである。

 交通工学では、先行車の前端から後続車の前端を車間距離としている。これは、定点観測で車両の前端を基準とするためであり、車頭感覚ともいう。

 センシングの観点からは、車間距離とは先行車の後端から後続車の前端の距離を意味する。そのため、交通工学での車間距離より、車両の長さ分だけ短くなる。SAEでは、交通工学の車間距離を Headway センシングの車間距離を Gap と定義している。ドライビングシミュレータでは、車両ダイナミクスが車両の重心を基準にしているため、車間距離を指定すると先行車の重心と後続車の重心の重心間距離になることが多い。しかし、車両ボデーの中心間距離を用いるものや、車両回転中心間の距離を用いるものもあり統一できていない。

 LiDARで先行車を計測したとき、車間距離としてどの値を示せばよいだろうか。1車種について決めた方法が、多様な形状を示す全車種に適用できるとは限らない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 2日 (土)

ドライバ行動(33)

 運転パフォーマンスの評価はさまざまな指標があるものの、確立されてはいない。しかし、運転パフォーマンス指標は、SAEでも次のように定められている。

 前後方向の自車状態を表す指標の基本は、自車速度(車速)である。車速を時間で一階微分したものが加速度、加速度をもう一階微分したものが躍度(ジャーク)である。

 加減速、停止の反応時間では、ドライバの足とペダルの関係を明確にすることが重要である。フロアに足を置いている状態から反応したのか、ペダルに足を置いているのか、ペダルを少し踏んだところかで反応時間が異なるからである。よって、反応時間の測定結果を示すときは、開始時点と終了時点を正確に記載しなければならない。また、自車と先行車との空間的余裕を示す車間距離と車間時間では、THW(Time Headway:車間距離÷自車速度)とTTC(Time to Collision:車間距離÷相対速度)が代表的である。THWは速度変動が少ない状況で、ドライバの追突リスク感覚を表しているといわれている。TTCについては、ドライバはTTCの逆数に基づいてブレーキ開始を判断するといわれている。

 THWとTTCの関係が検討されており、TTCの時間微分値、TTCの二次予測値等も提案されている。前後方向の運転パフォーマンスは、未だ検討の余地があるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年2月 1日 (金)

ドライバ行動(32)

 MHPは車載機器のモデル化に適しているものの、環境が時々刻々と変化する運転動作のモデル化には適していない。運転中のドライバ行動モデルに適したものが、ACT-Rモデル(ACT-R認識アーキテクチャ)である。

 ACT-Rは人間の認知理論であり、行動の計算モデルも構築可能である。ACT-Rでは。宣言的知識と手続き的知識の2種類の知識が仮定される。

 宣言的知識は符号化された小さな論理的単位(チャンク)で構成され、宣言的チャンクにエンコードされる情報には、事実、現在のゴール、瞬間的な状況の情報が含まれる。チャンク間の想起性はパラメータで記述され、学習によって変化し、チャンク活性度は時間の経過で減少する。手続き的知識は、宣言的知識と外部環境情報を利用するときのスキルを表現するプロダクションルールである。個々のプロダクションルールは条件と行為を対にした規則であり、条件はアーキテクチャに備えられた視覚バッファや想起バッファに格納されている現在値と照合する。すべての条件が満たされて発火したルールは、宣言的知識に情報を加える等し、種々の情報を更新する。

 ACT-Rを運転行動に適用する最大の利点は、ドライバの能力を模倣する特徴が組み込まれることである。そのため、ドライバの注意散漫を予測することも可能となる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »