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2019年8月 1日 (木)

パワートレイン(11)

 CVT(continuous variable transmission)は連続的に変速のできる無段変速機である.近年,小排気量の自動車を中心に採用が増えているのは,燃費向上のためである.エンジンの燃費は,エンジン回転数とエンジントルクで決まる.ここで,燃料消費率を繋ぐと等燃費線(constant fuel consumption diagram)となる.また,エンジン回転数とエンジントルクが異なっても同じ出力となる等出力線(constant power diagram)を考えると,等燃費線と等出力線が接する点を結んだ線が燃費最適作動線(optimal fuel consumption operating diagram)となる.この燃費最適作動線上で走行することができれば,最小燃費で走行することが可能となる.CVTは車速に関わらず,自由にエンジン回転数を変更できるため,燃費最適作動線上を連続して変速するこが可能である.このため,CVTは自動変速でありながら,手動変速よりも優れた燃費性能を持つことができる.

 CVTは各種方式が開発されたが,主流になっている方式は,オランダの自動車技術者ファン・ドルネ(Joseph Josephus Hubert van Doorne)が開発した特殊な構造のスチールベルトを用いた方式である.このベルトは,高張力鋼鋸であるマルエージング鋼を精密に加工した厚さ約0.2mmのリングを約10枚重ね合わせ厚さ約2mmのスチールベルトとし,それに多数の金属エレメントを取りつけた構造になっている.このエレメントが押し合うときの押し力で動力を伝達する.一般の従来のベルトは引張力で動力を伝達していたことに対し,押し力で伝達することからプッシュ式ベルトとも呼ぶ.

 このベルト式CVTは,入力軸となるプライマリープーリ(primary pulley)と出力軸のセカンダリープーリ(secondary pulley)のベルトと接する半径を変化させることにより変速する構造となる.これらのプーリのV溝の斜面となるシーブ(sheave)は,固定シーブと可動シーブで構成され,可動シーブを軸方向に移動させることによりV溝の幅を変更する.この結果,ベルトが接するプーリの半径が変わり,変速比が変わる.ベルトは半径の変化につれ固定側シーブに沿って移動する.そのため,プライマリープーリ側とセカンダリープーリ側で固定シーブと可動シーブの位置を逆に配置してベルトのよじれを防ぐ構造となっている.ブーリ幅を変更するため,可動シーブ側に連結された油圧ピストンの油圧が制御される.

 CVTは変速比を自在に変更できるためエンジンの等出力線上に沿って移動させることが可能であるが,そのまま制御すれば,車両が加速しているのエンジン回転数が下がる様なドライバに違和感を与える変速をするため,理想的な燃費最適作動線上を走らせるのではなく,スロットル開度に応じたエンジン回転になるような変速線図を採用することが多い.また,アイドリング時のクリープ現象を発生させ,これまでのATと違和感を持たせないためにトルクコンバータと組み合わせたり,逆回転機構は遊星歯車セットと組み合わせたりすることが多い.

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