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2019年8月 3日 (土)

パワートレイン(13)

 パワートレインの役目がエンジン出力をタイヤに伝えることであるので,二輪駆動をベースにして四輪に駆動力を伝える四輪駆動は,パワートレインの全ての要素の集大成となる.二輪駆動(2WD:two-wheel drive)では,タイヤ2本の駆動力がグリップの眼界を超えると,タイヤはスリップを起こしそれ以上の駆動力は発揮できない.これに対し,4WDでは,車両全体で必要な駆動力がタイヤ1本当たりに対し2WDの半分になるためグリップの限界に対する余裕が生まれ,スリップを起こしにくくなる.これにより,加速性能向上,登坂性能向上,操縦安定性能向上,及び雪道等の滑りやすい路面での走破性が向上し,より高出力なエンジンへの対応も可能になる.欠点としては,駆動力を配分するための機構が追加されるため,重量,コストで不利になり,駆動抵抗が増えるため燃費が悪くなることが挙げられる.

 4WDの種類は,パートタイム方式かフルタイム方式に大別できる.パートタイム方式とは,必要に応じて前後輪を機械的に直結するもので,駆動力の分配は前後輸の荷重配分に比例させ,前後輸いずれかがスリップしてもタイヤのグリップカに応じた駆動力の分配となる.これはシンプルな機構で,燃費の良い2WDと走破性の高い4WDに切換えることが可能である.しかし,4WD時は常に前後輪の駆動輪同一回転するため,旋回時に前後輸の平均旋回半径差が生じると,タイヤと路面間に強制スリップが発生しタイトコーナブレーキ現象と呼ばれる現象を起こす.これは,タイヤの摩耗を増大させ,燃費も悪化させる.近年では,2WDと4WDのメリットを両立できるようになってきたフルタイム方式に移行している.

 フルタイム方式は,前後輸の回転差を吸収しながら駆動力を前後輪に常時伝達する.駆動力の分配方式には,固定分配式と可変分配式がある.固定分配式は,差動歯車機構で前後輸の回転差を吸収しながら前後輪へ固定された比率で駆動力を分配する.分配比は,前後輸の動的荷量配分に比例して設定する.差動歯車には,等トルクを分配する場合はかさ歯車,不等トルクを分配する場合は遊星歯車を使用する.

 可変分配式は,走行状態に応じて前後輪へ分配する駆動力の比率を可変とするものである.可変分配式には,トルク感応式,回転速度差感応式,電子制御式がある.構造的には,乗用車ではビスカスカップリング,油圧式カップリング,多板クラッチ等を前後輪の伝達経路上に配置し,SUVではこれらを差動歯車に並列配置して前後輪への駆動力分配を可変にする.トルク感応式は,LSD同様に駆動力分配と差動制限機能を合わせ持つ,ウォームとウォームホイール駆動機構内のかみ合い時に生じる摩擦力を利用したトルセンデファレンシャルがある.回転速度差感応式はビスカスカップリングや油圧式カップリングを用いる.ビスカスカップリングは,LSDとして用いる場合と同様の構造と特性になる.油圧式カップリングは,ビスカスカップリングよりも舗装路での低速走行時に走行抵抗が少ない特徴がある.電子制御式は,多板クラッチの押しつけ力を電子制御して分配比を可変とする.

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