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2019年10月31日 (木)

ITS世界会議シンガポール2019(11)

 木曜日は発表がなく、各自展示会場、デモ会場、セッション等に分散して調査、聴講した。デモ会場では、博士学生が在籍していた企業が自動運転車両をデモ走行しており盛況だったそうだ。

 修士学生2名の発表は、共に金曜の TS77 Enhanced Safety with Driver Health Monitoring だった。これは、ドライバの健康状態を監視して安全性を向上させようというセッションである。

 修士学生一人目の発表は、自動運転中にどんなタスクが覚醒度を上げるかという実験を、ドライビングシミュレータと実車で比較したというものだ。実車実験での実験統制に質問が集中した。再現性を確保するため、いろいろ工夫したことが発表ではわかりにくかったようだ。二人目の発表は、弱い眠りレベルを検出する手法として、監視タスクを実行させ、その成績と弱い眠気を関連付けようというものである。眠気の正確な測定が難しいという背景を、発表で強調すべきと感じた。

 眠気対策として、このセッションの座長は音楽が良いと示唆していた。万人にそうなのか検証が必要であり、他には会話が良いという人も多い。運転中の会話自体が負荷になる人には難しいだろう。

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2019年10月30日 (水)

ITS世界会議シンガポール2019(10)

 TS41の他の発表を紹介しよう。全部で5件の内、2件が前述の当研究室の発表で、後は中国2件、韓国1件と東アジアの発表セッションになっていた。

 自動運転や運転支援システムの発表に中国が出てきたのは新鮮な感じがする。韓国は以前から発表が続いている。

 中国の1件目の発表は、車間距離警報システムに、高精度な現在位置検出に基づくものを提案していた。発表者は高速道路のコンサルタント会社だった。新しさは感じないものの、中国でもいよいよ運転支援システムが実用化されるのかと思わせるものだった。2件目は同済大学のもので、ドラック隊列走行の制御を最適制御するアルゴリズムの報告だった。ここではまだこの分野は、やってみること自体に価値があるようだ。

 韓国の発表は、釜慶国立大学からのもので、車線変更リスク、走行経路、各レーンの交通密度が与えられると、自動運転車の走行の安全性と燃費が向上するというものだった。個人的に、韓国の発表は最適化が多いように思う。

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2019年10月29日 (火)

ITS世界会議シンガポール2019(9)

 続いては、博士学生と修士学生の2件が同一セッションになったTS41 Advanced Collision Avoidance Systems for CAVsである。博士は制御、修士はLiDARセンシングの発表を行った。

 博士学生の発表は、制御そのものの内容よりも使用しているシニアカーの方に質問が行ってしまった。次回から、制御の内容を前にだすようにすると良いはずだ。

 修士学生の発表は、LiDARで獲得したポイントクラウド密度が低いときに、確率共鳴にヒントを得て、疑似ポイントクラウドを追加して認識性能を向上させようというものである。単に疑似ポイントクラウドとして等方ノイズを追加するだけではポイント間を繋ぐ効果しかないため、如何に元の形状を復元させるようにノイズを加えるかがポイントとなる。本人はいろいろと悩んだあげく、マッチングさせたい形状からランダムサンプリングの概念を導入し、ランダムサンプリングの許容誤差の間が密となるノイズを与えることにした。

 発表内容は面白かったものの、初めて聞く聴衆にどこが独自性があるのかが伝わっていなかったようだ。学術発表といえども、アクセントを付け、クライマックスを演出しなければならない。

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2019年10月28日 (月)

ITS世界会議シンガポール2019(8)

 博士学生の発表するTS37は、自動運転用のディープラーニングとAIのセッションだった。ディープラーニングについては、SIS(Special Interest Sessions)にも組み込まれており、関心の高さがよくわかった。

 TS37の5件の発表は、日本(当研究室)、ドイツ、イギリス、フランス、台湾と国際色豊かなものだった。本校の学生は留学生なので、発表者には英語のできない日本人はおらず、座長がアメリカ人だったので、非常にスムースに英語で進んだセッションだった。

 研究室の学生の発表は、確率共鳴現象をディープラーニングに適用した結果の紹介である。ITSは応用面が重視される傾向があるため、本内容は学会の研究会での発表でないと中味の議論ができないのが残念だった。フランスの発表は、日系企業に勤めるフランス人の発表だったため、日本人にはわかり易い内容だった。これは、ディープラーニングを用いて、走行シーンの危険度をランク付けするというものだった。イギリスの発表は、機械学習を用いる自動運転のソフトウエアの安全性解析というもので、機械学習の課題に合ったものだった。ドイツはLiDARメーカーのIBEOの技術者の発表で、機械学習を自動運転に適用するときのコンセプト提案だった。

 台湾の発表は、超短期億(LSTM:Long Short Term Memory)というディープラーニングの中でも、回帰型ニューラルネットワークを用いてバスの到着予想時間を計算する手法であった。LSTMの発表は1997年であり、20年度に実用的なアプリケーションに使われたことになる。

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2019年10月27日 (日)

ITS世界会議シンガポール2019(7)

 月曜の発表とオープニングセレモニーが終わって、次は水曜の発表となった。火曜日は各自聞きたいセッションや展示会を見学した。

 水曜の発表セッションは、僕が座長を務めたTS35 Safety for Vulnerable Users、博士学生が発表したTS37 Application of AI, including Deep Learning in Automated Vehicles、そして、博士学生と修士学生がそれぞれ発表したTS41 Advanced Collision Avoidance Systems for CAVsである。

 TS35の交通弱者の安全対策は5件の発表があり、アメリカから2件、シンガポール、ドイツ、スウエーデンから1件づつだった。アメリカの1件目は、インフラにビーコンを設置して歩行者のスマートフォンを認識し、歩行者行動を監視するという提案で、2件目は、インフラで設置したカメラデータから、ディープラーニングで歩行者を認識し、歩行者行動を監視するというものだった。シンガポールの発表は、1人乗りの電動スケーターのようなモビリティの挙動を予測する手法として、ドライバの視線を利用するというものだった。また、ドイツの発表は、若年の自転車の交通安全教育にドライビングシミュレータを活用するものであった。そして、スウェーデンの発表は、自転車に自動車用のミリ波レーダーを搭載し、自転車用の衝突警報システムを提案するものだった。

 このセッションで発表した、アメリカのインフラカメラのデータからディープラーニングで歩行者行動を検出する論文はベスト・ペーパーに選出されたことが閉会式でわかった。セッション中に事務局が見学に来た様子はなかったので、事前に選出されていたということになる。

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2019年10月26日 (土)

ITS世界会議シンガポール2019(6)

 TS01の発表内容は、ほとんどが自動運転から手動運転に切替えたとき(テイクオーバー)のドライバ特性を検討するものだった。少数派だった当研究室がテイクオーバーのドライバ状態を発表し始めたときから比べると、すっかりメジャーなテーマになったようだ。

 当研究室の博士学生の発表は、テイクオーバー時の眠気状態が回避操作に影響を与えることを示し、脳波のα波と眠気が相関性の高いことを示した。いろいろな質疑があり、テイクオーバー時のドライバ状態の生体信号として、脳波が心拍よりも適していることを聴衆に理解させたと思う。

 他発表で興味深かったのは、韓国(亜州大)とイギリス(ニューキャッスル大)の発表だった。何れもテイクオーバー時の反応の違いをドライバ属性の違いから論じるものだった。韓国は年齢別の違いを調査し、イギリスは性別の違いを解析したものだった。どちらの発表も、ドライバ属性の定義に疑問が残り、必ずしも納得できるものではなかった。しかし、一般的な傾向は表現できていたと思う。

 これからこの分野は、評価方法の改善と統一が望まれると思う。単なるドライバの反応は操作でなく、状況認識や判断の詳細な分類と、回避操作の是非の評価方法の統一である。

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2019年10月25日 (金)

ITS世界会議シンガポール2019(5)

 今年の世界会議での発表は、博士学生が3件、修士学生も3件、そして僕がセッション一件の座長を勤めた。学生が発表したのは、テーマ1)自動運転の範疇で、座長セッションは、テーマ5)交通弱者のカテゴリーである。

 会議は10月21日(月)から25日(金)までの5日間の日程で、毎年同様である。オープニングセレモニーは月曜の夕方に開催されるが、会議は月曜の朝9時から始まる。

 われわれ研究室のメンバーは、羽田を日曜深夜(月曜)に出発し、シンガポール着が月曜早朝だった。空港から会場のサンテック国際会議場まで地下テルMRTで移動して、ITSへの入場手続きを行い、博士学生1名の9時からの発表に臨んだ。このセッション名は、TS(テクニカル・セッション)01の Human Factors & Design for Automated Vehicles である。当研究室は初っ端の発表で、発表した学生は緊張したと言っていたが、立派に発表し質疑にも的確に答えていた。また、他発表者も彼と同範疇の研究内容で、発表後の意見交換も楽しかったそうだ。

 それでは、長くなったのでこのセッションの内容は明日に。

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2019年10月24日 (木)

ITS世界会議シンガポール2019(4)

 ITS世界会議では、毎年開催国がテーマを掲げて内容を企画している。今回のシンガポールが打ち出したテーマは、Smart Mobility, Empowring cities である。

 都市国家シンガポールは、海に面した港湾都市でもあり、港湾物流に力を入れている。奇しくも、来年開催のロサンゼルス、再来年開催のハノーバーとも港湾都市であり、当面の間は物流が注目されそうだ。

 大会トピックスとしては、次の8テーマとなる。

1)インテリジェント、コネクティッド、自動運転車両
2)クラウドソーシングとビッグデータ分析
3)持続可能なスマートシティ
4)マルチモーダルな交通
5)ドライバーと交通弱者のための安全
6)政策、標準及び調和
7)革新的な料金制度と交通需要管理
8)サイバーセキュリティとデータプライバシー

 当研究室の研究テーマは、1)に該当するが、2)も関係する。そして、5)も含まれる。今年の発表は1)の範疇で行い、僕が座長を務めたセッションは5)のテーマだった。

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2019年10月23日 (水)

ITS世界会議シンガポール2019(3)

 ITSの前置きがだいぶ長くなるが、もう一回分だけ。ITS世界会議の参加者について。

 通常、学会の参加者は、大学教員と学生、そして関連する企業の技術者である。ところが、ITS世界会議では、通常の学会参加者に加えて、政府関係者も参加する。

 なぜなら、交通システムは技術者がいくら良いものを研究しても、実践しなければ意味がない。そして、実践するにはその国の為政者を含めて、官の立場の方々の協力が必要なのである。インフラや法律が伴わなければ、交通システムは実現しない。そのため、官の人々が、新しい交通システムの研究を見るだけでなく、各国の官の立場の要人と話し合うために世界会議に出席するのである。

 ITS世界会議の規模は、毎年参加者1万人を超える巨大なものである。世界中から新交通システムに感心のある産官学の人々が集まるからである。

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2019年10月22日 (火)

ITS世界会議シンガポール2019(2)

 ITS、すなわちIntelligent Transport Systemsを、日本では「高度道路交通システム」と称している。つまり、自動車ではなく交通システムを高度化しようというのが狙いである。

 交通ということなので、自動車だけでなく、船舶や飛行機も対称となる。交通という観点から見れば、自動車、船舶、飛行機は全て移動手段なのである。

 しかし、ITSで中心となる移動手段は自動車である。船舶と飛行機は、利用者視点で自動車交通との繋ぎという点で関心が持たれるものの、船舶や飛行機の中味にまでは取り上げられていない。ところが、自動車は自動運転を始め、先進運転支援システムまでITSの対象とされる。陸上交通がメインになるため、交通弱者という観点で、自転車や歩行者も取り上げあれる。結果として、当研究室のテーマと重なる部分が多く、ITS世界会議は発表対象の学会となるのである。

 ITSで最近流行している用語 Maas(Mobility as a service)が、ITSでの自動車の捉え方を端的に表している。CASEによって自動車がMaasになるのである。

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2019年10月21日 (月)

ITS世界会議シンガポール2019(1)

 秋は学会シーズンといわれ、国内外で多くの学会の発表会が開催される。当研究室では、国内は自動車技術会の秋季大会に全員聴講に行って、国外は大学院2年生以上にITS(Intelligent Transport Systems)世界会議で発表することを目標にしている。

 自動車技術会の秋季大会は各地方で開催され、今年は仙台だった。来年の開催は北九州国際会議場が予定されており、小倉に行くことになる。

 一方、ITS世界会議は毎年各国で開催されるも、開催地のルールがある。それは、アジア・オセアニア、アメリカ大陸、ヨーロッパと3極を順にローテーションするというものである。今年の開催地はシンガポール(アジア・オセアニア)だった。来年はロサンゼルスとアメリカ開催で、再来年はハンブルグとヨーロッパである。何れの会議も、開催都市のITSをデモするので、発表と聴講だけでなく実際のシステムを体験することができる。

 それでは、明日から今年のITS世界会議の様子を何回かに分けて紹介していこう。

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2019年10月20日 (日)

自動車工学(20)

 自動車工学は,エンジンを中心として発展してきた.エンジンがなくなっても,パワートレイン,ボデー,シャシ技術はそのまま使うことができ,空力はドローンにも活用できるだろう.

 内装系の表示・操作機器,空調,シート,エアバッグもそのまま使うことができる.特に人間工学やヒューマンファクタは乗物である限り,自動車工学で開発された技術が適用可能である.

 レベル5の自動運転が実用化すれば,操縦する必要がなくなるため,ドライバに必要だった人間工学も不要となる.しかし,乗員が必要な快適性等の人間工学は不変である.人間を無視した揺れがあれば,動揺病を発生させ利用者がいなくなってしまう.

 つまり,自動車工学で培った技術は,そのまま今後のモビリティ開発に活かすことが可能である.また,自動車工学を知らなければ,ニューモビリティも開発することができないともいえる.

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2019年10月19日 (土)

自動車工学(19)

 これからの自動車は,CASEにより大きく変わる.筆者が思うのは,自動車は自動車という概念に拘らない(パーソナル)小型モビリティとして社会が認知するものに変わって行くだろうということである.

 スケートボードも電動化すると,立派な短距離用の移動モビリティとなる.既にパリの観光客は,電動スケートボードを利用してパリ市内を観光している.

 更に,有人ドローンが実用化されれば,路上だけでなく空中での移動モビリティが実現する.友人さいずになると,ある程度地上の移動も必要なので車輪が付くはずである.ドローンというよりは,路上での移動がメインで,必要に応じて浮き上がる空陸兼用のモビリティも不可能ではない.

 誰もが製造可能で自由な形態のモビリティが,これからの自動車の姿である.諸君が自動車会社のオーナーになる可能性もぐんと上がる.

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2019年10月18日 (金)

自動車工学(18)

 これまでの自動車や開発手法が変わるすると,どのようなことが予想できるだろう.まずは,従来の自動車メーカーだけでなく,多くのメーカーやベンチャーが自動車製造販売に参入するものと思われる.

 事実,最近の東京モーターショーを見学すると,初めて聞く名前のメーカーが電気自動車を出品している.これらメーカーの多くはベンチャーである.

 そして,自動車の形態が変わる.なぜかというと,電気自動車化するからである.これまでエンジン自体の体積,重量,冷却要件が自動車のデザインを規制していた.ところが,電動化になるとこれらの規制要素がなくなってしまうのである.ホイールインモーターになると,動力用のスペースは不要であるし,冷却も要らないためフロントのグリル開口が不要になる.ロングノーズやミッドシップ等はエンジンによるデザインの規制を逆手に取っていたのだが,これらのデザインは不要になる.

 つまり,タイヤが3つか4つあり,必要人数が乗ることができる形をデザインすれば良い.これまで培ってきた空力を活用するため,極端にデザインが変わることはないだろうが,デザインの自由度が増すことは確実である.

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2019年10月17日 (木)

自動車工学(17)

 これまで,今までの自動車開発手法を紹介してきた.自動車が所有の対象となり,購入者がドライバとなるオーナーカーの開発はこれまでの商品開発手法で良かった.

 自動車はこれからCASEで変わろうとしている.CASEとは,Connected(繋がる)Autonomated(自動運転)Sharing(カーシェアリング)Electrified(電動化)である.

 CASEは自動車だけでなく,自動車の開発手法も一変させる.自動車はこれまでエンジン開発が主体となり,その自動車メーカー固有のノウハウや技術力で自動車を製造販売してきた.ところが,自動運転や電動化技術は,従来の自動車メーカーのものではなく,電気系メーカーが強い.また,エンジン開発が不要になると,モーターやバッテリーを部品として購入できるため,誰もが自動車(電気自動車)を開発することが可能となる.

 更には,カーシェアリングになるとオーナーカーではなくなるため,特定層を狙った車両開発ではなく,汎用的に利用形態に即した自動車開発が中心になる.これらが,CASEは自動車も開発手法も変えてしまうという根拠である

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2019年10月16日 (水)

自動車工学(16)

 自動車の開発を,工学という点から関連事項を列挙すると次のようになる.開発手法として,CAD,CAE,要求性能の明確化,プラットフォームとモデルラインの構成,開発プロセスの定義,開発マネジメントの分類,評価方法の確定,製造ラインの構成,サービス等である.

 自動車の開発は,これらの開発要素を最適に組み合わせることはもちろんのこと,商品開発という側面が非常に重要になる.商品として成功させるためには,次の要素に注力しなければならない.

・市場の明確化
・モデルの位置付け
・ブランド力
・モデルの完成度

 市場の明確化とは,対象となる自動車の市場があるか,つまり誰に売るのかを明確化することである.次に,モデルの位置付けとは,対象市場にはライバル車が多くあるため,売り出す特徴を明確化することである.また,ブランド力とは,自動車会社の市場での評判を踏まえた商品であることということである.そして,モデルの完成度とは,時代に合った最新装備等を装着しユーザーニーズに応えることである.

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2019年10月15日 (火)

自動車工学(15)

 更に、音で重要なことは、あくまでも人間がどう聞こえるかということである。そのため、人間工学だけでなく、感性の領域まで踏み込まなければならない。

 人間工学や感性の基本は、設計者や開発者がどう感じるかである。設計者、開発者も当然人間であり、まずは自分が平均値として考えれば良い。

 人間の最小可聴音圧は20マイクロパスカルといわれている。その音圧を0db(デシベル)として定義すると、通常の会話の音圧は60dbとなる。10が基底なので、会話の音圧は、最小可聴音の100万倍にもなる。鼓膜がやぶけずに聞ける音の上限は140dbなので、人間は驚くほど広いダイナミックレンジを持っているといえる。また、聞こえ方は音の周波数によっても異なるため、人間の聴感特性を押さえる必要もある。

 これらの特性の上で、車室内では「こもり音」「ロードノイズ」等が聞こえるのである。よって、騒音と感性の関係を押さえながら対策を検討することになる。

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2019年10月14日 (月)

自動車工学(14)

 振動騒音からもドライバは必要な情報を読み取ることがわかったと思う。音に関するドライバの重要な情報源は、ラジオの音声である。

 ラジオから交通情報や緊急情報が入手可能であり、カーナビの音声案内も情報音といえる。ドライバは視覚を運転のための外界の変化を読み取ることに集中するため、聴覚を使用した音は貴重な情報入手手段なのである。

 騒音、情報音の他、音にはもう一つ重要な要素がある。それは、音楽等の快適性である。多くのドライバが、ラジオやオーディオの音楽を楽しみながら運転していることは言うまでもまい。車内でいかに快適に音楽を楽しめるかということも、自動車を開発する上では欠かせない項目になっている。

 音には、騒音、情報音、快適音の3種類がある。この3種類をバランス良く車内外に配置する必要があることがわかったと思う。

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2019年10月13日 (日)

自動車工学(13)

 振動騒音はドライバにも、周囲の人々のためにも完全になくなった方が良いかというと、そうではない。多少はある方がよい場合がある。

 例えば、ドライバは路面から伝わる振動騒音を頼りに路面状態を知ることができる。車外の救急車のサイレンも聞こえなくなるほど室内を遮音すると危険である。

 また、歩行者は自動車のエンジンや吸排気音を聞いて、自動車の接近を知ることができる。電気自動車になるとエンジン音がなくなって接近がわからないので、わざわざ車外向けにスピーカを設定し疑似エンジン音を流しているのである。

 もちろん、騒音は許されるものではなく、法律でも規制している。ちょうどよい頃合いの振動騒音に仕立てる必要があるといえる。

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2019年10月12日 (土)

自動車工学(12)

 今回から振動騒音の話。自動車業界では、振動騒音のことをNVHと呼ぶ。

 Nはノイズ、Vはバイブレーションのことで、Hはハーシュネスを意味する。ハーシュネスとは、路面の凸凹やつなぎ目を通過する際の突き上げ感や、ボデーのガタピシ感のことである。

 自動車の振動騒音源となるものは、主に、エンジン、吸気系、排気系、変速機、ドライブシャフト、ブレーキ、タイヤ、サスペンション、そしてボデーの立て付けと多岐に渡る。そして、それぞれ単体で発生するのではなく、これらの部品が影響し合う。例えば、吸気-エンジンー排気は関連することがわかり易いが、これらの振動騒音はボデーを通してドライバーに伝わり、ステアリングに振動が伝わることもある。また、タイヤの振動はサスペンションだけでなく、ボデーやステアリングにも伝わる。

 そのため、振動騒音に関わるエンジニアは、自動車全体の構造と仕組みを理解しなければならない。そして、それら構造と仕組みの理解を前提として、具体的に振動騒音対策を提案できる開発力も必要といえる。

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2019年10月11日 (金)

自動車工学(11)

 操作表示系の表示系も,操作系以上に進化している.速度やエンジン回転表示といえば,針タイプの丸いメータが当たり前だった.

 ところが,近年,メータに液晶が使われるようになり,表示の概念が一変した.液晶表示として針タイプを表示したり,その画面がナビ画面に変わったり,メンテナンス画面に変わったりとパソコンのディスプレイの様に変わりつつある.

 また,ウインドシールドに表示を透過させるヘッドアップディスプレイも登場している.ヘッドアップディスプレイは走行シーンを目視しながら,必要な情報が読み取れる画期的なアイデアといえる.

 実は,ヘッドアップディスプレイが当所するより遥か昔から,ドライバは走行シーンを目視しながら情報を得ていた.それはカーラジオからである.現代の音声認識と音声合成,ならびにインターネット接続により,音声のやり取りで情報を取得できる時代になりつつある.

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2019年10月10日 (木)

自動車工学(10)

 内装部品の中でも操作表示系は,年々進化するカーエレクトロニクスに対応し変化し増加している.それでも,ドライバが操作し視認するという人間工学に基づく基本は変わらない.

 操作系においては,ドライバや乗員が届く範囲に設置しなければならないし,機能に応じて設置場所を決めなければならない.また,操作の優先度に応じた設置位置となる.

 従来からある基本機能の操作系では,機能と優先度に応じた設置位置は固定されている.ところが,カーオーディオやカーナビゲーションの操作系に必要なスイッチは,基本機能の操作系に対し爆発的な増加となる.そのため,スイッチが単機能を担当するのではなく,画面や音,音声を伴った階層構造となる複雑なものも出現している.例えば,BMWが採用している「iDrive」というナビ用の操作系は,センターコンソールに大きなダイヤルがあるだけで,そのダイヤルを回すか押すかで画面を見ながら機能を選択する.これを単機能スイッチで対応させようとすると,インパネ全てに小さいスイッチを配置しても設置場所が足りなくなってしまう.

 更に,音声認識の進化に伴い,スイッチの代わりに音声で操作するものも出現している.インターネットに繋がったナビで各種検索が可能になっていれば,スイッチより音声認識の方が便利なのは間違いない.

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2019年10月 9日 (水)

自動車工学(9)

 内装部品は,シートや操作表示系を始め,すべてドライバが直接触り関わる部品である.そのため,人間工学を駆使した快適性や安全性を追求した仕様になっている.

 内装部品を機能面で分類すると,メータやスイッチの操作表示系,エアコンやヒータの空調系,シートやエアバッグの拘束系となる.操作表示系はドライバが求める情報提供を行とドライバの意思を反映し,空調系で快適さを確保し,拘束系でシートによる快適さを確保しつつ衝突時の安全性を保証する.

 車室内は一般にインテリアと呼ばれ,ドライバが室内を見たときの見映えも重要である.そのため,操作表示系を備えるダッシュボードやコックピットは意匠が映える設計を行う.また,シートは乗り心地や安全性だけでなく,特に後席のレイアウトを多彩にして車室内空間の有効利用を図る設計も重要である.

 安全性については、現代の乗用車は衝突時の衝撃を軽減するためのエアバッグが標準的に備わっているため,エアバッグの動作原理を理解しておく必要がある.

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2019年10月 8日 (火)

自動車工学(8)

 外装部品では車体の他,ランプ,ワイパ,ミラーの機能部品がある.これらの部品性能はドライバからの車外への視認性を決めるため法規化されており,法規要件を守るように開発しなければならない.

 ワイパ,ミラーはドライバが視界を確保するため,ウインドシールド面積の何%以上を払拭することという法規要件がある.ワイパはゴムのブレードでウィンドシールドの水滴を拭うという構造で,昔ながらの構造といえる.進歩したのはワイパーの動力が手動からモータへと変わり,間欠差動タイミングが雨滴センサと組み合わさって自動化されたところである.

 ランプについては,夜間のドライバの視界を確保するためだけでなく,車外から他人や他社が見たときの要件もある.ヘッドランプは夜間のドライバーから明るく見やすいという点を追求し,白熱球からハロゲン球,そして放電式への進化し,最近はLEDランプが登場している.明るく小型になったため,外装デザインにも影響を与えている.ただし,明るくなると他車からは眩しくなるため,ロービームの照射エリアが厳密に定められており,乗車人数により車体姿勢が変化したときのヘッドランプ光軸調整を行うエイマが装着されるようになった.

 また,ランプはヘッドランプだけでなく,スモール(ポジション,クリアランス)ランプ,前後左右のターンシグナルランプ,テールランプ,ストップランプ,バックランプ,ナンバープレートランプ,フォグランプ等,非常に種類が多い.そして,これら全てのランプにも法規要件がある.

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2019年10月 7日 (月)

自動車工学(7)

 エンジンの動力をタイヤに伝達するパワートレインについては,7月22日から8月3日に連載した.また,足回りのシャシについては7月8日から7月21日にかけて連載したので,遡って読んで欲しい.

 エンジン,パワートレイン,シャシの次はボデーについて.

 自動車のボデー部品は非常に多種類に及ぶため,いろいろな角度から分類することができる.まず,外から見てわかる外装部品と,車室内の内装部品.内外装部品とも,全ての部品はメーカーに関わらず共通している.バンパー,グリル,ボンネット,フェンダー,ドア,A,B,Cピラー,トランクリッド等の外装部品名称,シート,インストルメントパネル,コックピット等の内装部品名称は馴染みがあるところだろう.そして,機能面からはアンダーボデーとアッパーボデーに分類できる.アンダーボデーはエンジン,パワートレイン,シャシを装着する主に走行機能を担当する部位で,アッパーボデーは車室内や見た目を担当する部位である.アンダーボデーを共通としてアッパーボデーだけを変更することにより,セダンやクーペ等の見た目を変えることが可能である.

 造り方からは,ボデー部品は板金部品が多く2枚以上重ねるためインナーとアウター,左右対称が多いためライトとレフト,そして前後を区別するためフロントとリヤという分類になる.

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2019年10月 6日 (日)

自動車工学(6)

 レシプロエンジンは燃料の種類やストロークの違いに関わらず,上下に動くピストン運動をコネクティングロッドでクランクの回転運動に変えるため,どうしても振動が出る.そのため,各気筒の配置を考慮して燃焼順を決めバランスを取るようにする.

 直列4気筒エンジンでは,1・4番が上死点にあるとき,2・3番を下死点にあるようにすれば質量の重心はクランク回転中心と同一になり1次慣性振動がなくなる.また,2次慣性振動もバランサーで解消できるため,4ストエンジンで最も標準的で大量生産されているものが直列4気筒エンジンなのである.

 エンジンの振動には,上記慣性振動の他,エンジン自体が回とうとする偶力も発生する.偶力にも1次と2次があり,4気筒エンジンではシリンダーの動きでバランスが取れるためどちらも発生しない.

 慣性力,偶力とも1次,2次ともバランスが取れ発生しないエンジンが直列6気筒エンジンである.また,水平対向6気筒エンジンも,直列同様全ての振動が発生しない.

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2019年10月 5日 (土)

自動車工学(5)

 ディーゼルエンジンの燃焼サイクルもガソリン同様に,吸気,圧縮,燃焼,排気の4行程である.ピストンストローク数についても,4ストと2ストがある.

 ディーゼルエンジンには点火プラグがなく,圧縮して空気温度が上がっているところに燃料を噴射し着火するため,燃料噴射が必要となる.ディーゼルエンジンの圧縮比はガソリンより高圧のため,更に高圧の燃料噴射ポンプを要する.

 ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより圧縮比が高いため,熱効率が高く低燃費である.ところが,高い圧縮比を達成するためピストンストロークの長いエンジンを頑丈に造る必要があり,そのためどうしても大きく重くなってしまう.したがって,4ストディーゼルエンジンは大排気量のしてトラック用に用いられることが多い.また,2ストディーゼルエンジンは船舶での利用が多い.

 近年,低燃費ニーズの高まりから,乗用車用小型ディーゼルエンジンが開発されるようになった.ロングストロークエンジンは回転数が上がらず低出力になるため,それを補うためにターボチャージャーを装着したものもある.

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2019年10月 4日 (金)

自動車工学(4)

 ガソリンエンジンの燃焼サイクルは,吸気,圧縮,燃焼,排気という4つのサイクル(行程)がある.これをピストンの4ストロークでやるか2ストロークでやるかが,いわゆる4スト,2ストの違いである.

 4ストでは4つのサイクルそれぞれを,順に1つのピストンストロークで行う.燃焼室は吸排気バルブが閉じると完全に独立した構造で,吸排気行程で吸排気バルブを開けて混合気の吸気と燃焼後の排気を行い,圧縮と燃焼行程ではバルブを閉じている.そのため,バルブ開閉機構やバルブ開閉タイミングが重要となる.

 一方,2ストでは4つのサイクルを個別に行うのではなく,シリンダとクランクケースを利用して,ピストンが1往復する間に排気と圧縮,燃焼と吸気を同時に行う.4ストのような吸排気バルブは不要な代わりに,シリンダとクランクケースを混合気が通る経路が必要である.また,逆流を防止するためクランクケースにディスクバルブや吸気ポートにリードバルブを設定したものもある.

 バルブ機構がないため2ストの方が4ストより構造が簡単で,メンテナンスし易く製造コストも安いというメリットがある.しかし,各行程が独立していないため燃焼効率や排ガス性能が劣るため,自動車での採用はなくなり小型二輪車での利用だけとなった.

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2019年10月 3日 (木)

自動車工学(3)

 最も一般的で代表的なエンジンは,4ストロークサイクル4気筒エンジンである.4気筒エンジンなので,4つのピストンが4つのシリンダ内で上下に移動してクランク軸を回転させるピストンエンジンの内燃機関(internal-combustion heat-engine)といえる.

 ピストンエンジンの基本動作は,シリンダ(cylinder)内部に空気と混合された燃料を供給して圧縮し,燃焼させることにより,ピストンをシリンダに沿って押し下げ,熱エネルギーを機械運動に変換する.すなわち,この熱エンジンはエネルギー変換器ともいえる.

 上下に動くピストン運動を回転する駆動力に変換するため,シリンダ内の直線的なピストン運動は,コネクティングロッドを介してクランクシャフトに伝達し回転運動に変換される.ピストンが往復運動を繰り返すため,ピストンエンジンはレシプロエンジン(reciprocating engine)と呼ばれる.

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2019年10月 2日 (水)

自動車工学(2)

 外燃機関とは燃料をエンジン外部で燃やす方式であり,蒸気機関がこれに相当する.小型化が難しいため,歴史的に自動車から淘汰され蒸気機関車のような大型のものだけとなった.これに対し,内燃機関はエンジン内部で燃料を燃やす方式で,自動車の進展と共に進化し続けた.

 内燃機関としての基本構造は,ロータリーの回転により燃焼サイクルを行うロータリーエンジンと,ピストンの往復運動をクランクの回転に変えるレシプロエンジンに大別できる.ロータリーエンジンは特殊な構造で量産化が難しく,現在の主流はレシプロエンジンである.

 次に,エンジンはガソリンかディーゼルという燃料の種類によって,構造の一部が大きく異なる.ガソリンエンジンは点火プラグが必要であり,火花点火(S.I.:Spark Ignition)エンジンと呼ばれる.しかし,ディーゼルエンジンでは圧縮により自然着火するため,圧縮着火(C.I.:Compression Ignition)エンジンと呼ばれる.

 そしてレシプロエンジンには,ピストン運動が4行程2往復で燃焼行程を終える4ストロークサイクルと2行程1往復で燃焼行程を終える2ストロークサイクルの2種類がある.4ストロークサイクルでは各燃焼工程がピストン内部だけで行われるため吸気ポートと排気ポートの入口を開閉するためのバルブ機構が必要であり,2ストロークサイクルではクランクケースも燃焼行程に利用して吸排気バルブを不要としている.現代では,2ストロークサイクルの自動車での利用は希少なものの,燃焼サイクルの理解を深めるため原理だけは理解しておいた方がよい.

 

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2019年10月 1日 (火)

自動車工学(1)

 今年の後期は例年開催している自動車工学がないので、基本的なところだけしばらく連載する。まずはエンジンから。

 自動車のエネルギーが電気に代わろうとしている.しかし,自動車の技術は,ガソリンやディーゼルを燃料とするエンジンに関連して発達したと言っても過言ではない.エンジン特有の重量や寸法の仕様,出力特性,振動,騒音等に対応して,自動車の動力伝達機構,シャシ,ボデーの主要部位の技術が開発されてきたのである.もし,自動車が電気モータのまま発達していれば,現在の自動車のこれら主要部位の技術は,大きく変わっていたものと思われる.そのため,自動車と自動車技術を理解するためには,エンジンの基礎を知ることは避けて通れないのである.

 燃料を燃やして動力を得るエンジンは,下図のように大きく分類できる.基本的な燃料をどこで燃やすかということによる外燃,内燃の分類から,エンジンの構造上のロータリー,レシプロという分類,そしてガソリンかディーゼルかという燃料の違いに,4サイクルか2サイクルかという燃焼サイクルの違いで分類する.

 (基本) (構造)  (燃料)  (サイクル)
┬外燃機関
└内燃機関┬ロータリー
     └レシプロ ┬ガソリン  4サイクル
           ├      2サイクル
           ├ディーゼル 4サイクル
           └      2サイクル

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