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2019年12月31日 (火)

LiDAR(31)

 ポイントクラウドの密度低下をカメラによる画像処理で補う方法は,LiDARの欠点を補間する考え方である.逆に,3D形状の推定が苦手な画像処理から見て,カメラの欠点をLiDARが補うという考え方もある.

 本ブログでは,2次元走査方式のLiDARを取り上げてきた.カメラの欠点を補うだけなら,2次元走査方式よりさらに低コストが期待できる1次元走査方式のLiDARで十分な可能性がある.

 例えば,機械学習で認識した対象物体を検出し,動画像処理でトラッキングやオプティカルフローを求めて認識精度を上げることができる.ここに,1次元走査方式のLiDARで得られた1次元のポイントクラウドを加えた場合を考えてみよう.すると,カメラとLiDARの座標系を統合できた上で,ある時点での対象物体のある高さ位置から水平方向に距離がわかる画素があることになる.その後,カメラやLiDARと対象物体が動いて,LiDARの照射ビームが対象物体に当たる位置が変わり,それ以前に照射された位置と合わせて,徐々に対象物体の絶対距離のわかるエリアが増えていくことになる.

 画像処理には非常に多くのソフトウエア資産があり,それらとポイントクラウドのフュージョン方法はいくらでも考えられる.LiDARの低コスト化に伴って,カメラとのフュージョンは今後さらに発展していくと期待できる.

 LiDARの話題は2019年と共に今日て終わりとする.みんなにとって,2019年はどんな年だっただろうか.明日,2020年からは新しいシリーズを開始する.それでは良いお年を!

 

 

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2019年12月30日 (月)

LiDAR(30)

 LiDARはレーザー光を発射して対象物体からの反射波を解析する,アクティブ手法である.電波レーダーも含めアクティブ手法は,自分が発射した電磁波しか受信しないため波長が限定され,一か所から走査して発射するため遠方に行くほど観測点の密度は低下する.

 一方,カメラ等の画像化デバイスは,対象物体が放射する電磁波を受信素子を2次元アレイにして画像を得る.よって,対象物体の情報を得やすく,遠距離になっても望遠レンズや受信素子に高密度化で対応可能である.

 そこで,LiDARとカメラの両方を組み合わせて対象物体を認識する,センサフュージョンが考えられる.センサフュージョンにより,単に遠距離で密度の下がったポイントクラウド情報を補間するだけでなく,アクティブ手法のLiDARとパッシブ手法のカメラのそれぞれの特徴を活かした,より豊かな物体認識が可能となる.すなわち,対象物体の3D形状復元が得意なLiDARと,対象物体の色の見え方,パターン,テクスチャー,シンボル等の認識が得意なカメラが合わさって,人間の感覚に近い(場合によっては人間以上の)対象物体認識が見えてくる.

 もっとも,認識するためには知覚部分のポイントクラウドや画像処理だけでなく,機械学習も含む人工知能の発展も必要である.画像処理と人工知能が合わさった研究は豊富なため,これにポイントクラウドが加わればより効率的に進化するのではないかと思われる.

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2019年12月29日 (日)

LiDAR(29)

 遠距離の密度が低下したポイントクラウトに確率共鳴をどのように適用するかというと,単純にノイズとなる偽りのポイントクラウドを加える操作を行う.これにより,ポイントクラウドの密度が上がることになる.

 単に偽りのポイントクラウドを加えるだけではなく,ノイズの種類も限定する.確率共鳴で性能向上を図るには,どんなノイズタイプでも良いわけではない.

 予め,どのようなノイズが適度なノイズになるか実験的に求める.具体的には,まず,環境中で分類すべきクラスを歩行者,二輪車,自動車という3種類に分ける.そして,それぞれのクラスの縦横高さのポイントクラウドのクラスタサイズをパラメータにして,3種類の縦横高さについて適度なノイズを探す.ノイズの種類としては,この場合白色ガウスノイズが適していることが実験的に判明した.このノイズでは分散値がパラメータとなるため,歩行者,二輪車,自動車用の縦横高さの分散値を変化させ,もっとも正しく分類できるものを探す.

 こうして得られたそれぞれのノイズを,遠距離の密度が低いポイントクラウド部分に加える.そして,ノイズの加わったポイントクラウドは,歩行者か二輪車か自動車のどれに一番近いかを検討する.

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2019年12月28日 (土)

LiDAR(28)

 ホワイトノイズのような背景ノイズは,一般的に信号検出の邪魔になるものの、微弱信号を検出するにはある程度のノイズがある方が良いときもある。この現象は確率共鳴SR(stochastic resonance )と呼ばれ,生体のニューロンで起こることが確認されている.

 具体的な例として,ヘラチョウザメは微弱な電流ノイズを流すとプランクトンを見つけやすくなり,ザリガニは静止した水中よりも,せせらぎというノイズがある方がより遠距離の餌を見つけることができる.

 その他にも,コオロギはノイズとなる気圧の変化がある方が天敵を感知しやすいことが観測されている.カエルやラットでも同様の現象がわかっており,人間においても適度なノイズにより視覚,聴覚が向上する.この確率共鳴の工学的な応用は,弱い信号を強調する分野で多く試みられている.医師が用いる手術用把持鉗子では触覚が重要になるため,振動デバイスで鉗子に振動を加えて触知覚を向上させるものが有名である.また、感覚だけでなく,行動モデルにも確率共鳴を適用するとパフォーマンスが向上することもわかっている.例えば,ライオンの集団の全個体が獲物集団を追いかけるより,時々違う方向に寄り道するライオンのいる方が全体としてより短時間で獲物集団を捕食できる.この応用例として,全車両がカーナビゲーションを使って同一短時間ルートを通ると渋滞するより,全体の3割だけがカーナビゲーションを使った方が渋滞しにくくなるという実験結果も得られている.

 感覚器官においては,適度なノイズが隠れた信号をあぶりだすといえる.そして,集団行動や仕事においては,適度なノイズがパフォーマンスを向上させるのである.

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2019年12月27日 (金)

LiDAR(27)

 これまで,LiDARのハードウエアの特性や課題を述べた.次は,LiDARで得たポイントクラウドで物体を認識する,ソフトウエアの課題を概説する.

 ポイントクラウド最大の課題は,LiDARから対象物体までの距離によって密度が変わることである.すなわち,距離が遠くなるにつれ密度が下がっていくことである.

 これは,LiDARのシャープな送信ビームが走査され広がっていくため,当然の現象である.近距離では密度が高過ぎて,データを間引くことがあるものの,距離の2乗の反比例して密度が低下する.その結果,物体の3D形状がわからず,単に物体上のどこが1点の距離を測っているだけのことになる.このような状態では,物体認識が難しくなってしまう.

 この課題を解決する方法は,ポイントクラウドだけでは確率共鳴の応用,そして,カメラとのフュージョンが検討されている.

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2019年12月26日 (木)

LiDAR(26)

 LiDARの今後の課題としては,現状使われている905nmのレーザー光から1550nmのレーザー光への変更も重要事項である.この変更の理由は眼に対する安全性であり,1550nmにするとレーザー光の出力パワーをより増大することができるからである.

 905nmは眼の網膜の吸収帯域のため,厳格に出力パワーの上限が規制される.ところが,1550nmにするとこの吸収帯域を外れるため,出力パワーを大幅に上げることができる.

 1550nmレーザーを用いた車載LiDARの提案で有名なベンチャー企業Luminar社では,レーザーの出力パワーを905nmの40倍に設定している.そのため,障害物の検出距離を250mと称している.レーザー光を使った測距では,最大測定距離時の対象の反射率を明確にしないと,実際の実用距離がわからない.905nmレーザーを使用して最大測定距離を200mと称するLiDARがあっても,そのときの反射率に注意しないといけない.よく用いられる反射率は20%である.ところが,Luminarの場合、最大測定距離の反射率を10%未満と紹介している.905nm使用のLiDARと比較すると,実用的に検知距離が2倍になるものといえる.この検出距離なら,車載電波レーダーにも対抗できるものといえる.

 ただし,1550nmは905nmより水の吸収が大きく,雨天での減衰に注意しなくてはいけない.また,1550nm帯域の受光素子のコストが高いため,すぐに905nmから1550nmには置き換わらないだろう.

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2019年12月25日 (水)

LiDAR(25)

 以上,ミラーやヘッドを回転させない走査方式として,MEMSミラー型,フラッシュ型,プリズム型,フェーズドアレイ型,プリズム型,導波路回折格子型,多層液晶型,スローライト型を紹介した.MEMSミラー型は,車載LiDARは試作段階なものの民生用では実用化されており,フラッシュ型,プリズム型も車載LiDARのサンプル出荷が行われている.

 その他のソリッドステート方式では,フェーズドアレイ型がサンプル出荷までには達してなく,導波路回折格子型,多層液晶型、スローライト型は研究段階といえる.この中で最も早く市場に登場するのは,Quanergy社のフェーズドアレイ型と思われる.

 研究段階の導波路回折格子型,多層液晶型,スローライト型の利点は,完全なソリッドスレート型であることに加え,何れの方式も高解像度化が可能ということである.また,測距方式もTOF方式,FMCW方式のどちらも使える.主な開発課題としては,導波路回折格子型は走査角をいかに拡大するか,多層液晶型は温度依存性の対策と高電圧回路処理である.スローライト型は,導波路回折格子型や多層液晶型の欠点をカバーし,研究の歴史が浅いものの,LiDARとしての試作が精力的に行われており,今後大いに期待できる技術である.

 大規模な集積回路が必要なフェーズドアレイ型に対し,スローライト型はより簡易な集積回路での実現が可能である.日本での研究開発が先行しており,日本発の本命となる自律走行車と自動運転車の眼としての実用化が望まれる.

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2019年12月24日 (火)

LiDAR(24)

 普通の導波路では,光はコア層とクラッド層の界面を全反射しながら伝搬する.そのため,コア層の屈折率をnとすると,光の群速度は、c/n となる.

 次に,フォトニック結晶で作られた屈折率の異なる,周期的な多層膜で構成されたブラッグ反射鏡導波路での伝搬をみてみよう.この分布反射器は,DBR(Distributed Bragg Reflector)と呼ばれる.

 DBRの中では,下図に示すように,進路方向に90°近い角度で反射しながら伝搬することになる.そのため,光の群速度を極端に遅くするこが可能になり,これをスローライトと呼んでいるのである.

   Dbr

 さらに,クラッド層を薄くして光を放射すると,下図のようにDBRを伝搬してきたスローライトが放射される.スローライトの放射各θは,DBRの屈折率をnwg,光の波長をλ,これ以上の波長では伝搬しないカットオフ周波数をλcとすると,

sinθ = nwg×(1-(λ/λc)^2)^(1/2)         (7)

となることがわかっている.この式の意味するところは,光の波長がλcに近ければ少しの波長変化で大きくθが変わるということである.つまり,スローライト方式に可変波長レーザーを用いると,従来できなかった大きな走査角の走査器ができるのである.

  Photo_20191224004501

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2019年12月23日 (月)

LiDAR(23)

 スローライト型とは,スローライトにするとレーザーの波長変化で大きく屈折率が異なる現象を利用したものである.まずは,スローライトとは何かを理解しよう.

 光は約 3×10^8 m/s といういわゆる光速 c である.ところがこれは,真空中でのことであり,屈折率 n の媒質中では速度が c/n と遅くなる.

 空気の屈折率が約1.0,ガラスが約1.5と,通常1から3程度,半導体の最大値でも4程度と,遅くなるといっても十分速い.ただし,この速度は位相速度のことで,群速度に着目すると,フォトニック結晶を用いると光の群速度が低下するのである.光がフォトニクス結晶の中を伝搬すると,光パルスの波形が変化しスペクトル位相の群速度分散が生ずる.この分散が大きくなると群速度が低下し,2001年には光速の群速度を約100分の1に遅らせることに成功した.現在では,1秒間程度停止することまでできるようになっている.

 この光速からは考えられないほど遅い群速度を持つ光をスローライトと呼ぶ.

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2019年12月22日 (日)

LiDAR(22)

 多層液晶型は,液晶の分子状態によって光の向きが変化する現象を利用したものである.一層の液晶の効果を増やすため,液晶層を多層にして使用する.

 液晶の分子は細長い棒状をなしており,この分子の方向を制御して光を透過させたり遮断させたりする.液晶テレビは,この原理を利用してRGB光の透過率を制御してカラー化している.

 誘電率という観点で液晶分子をみてみると,液晶の細長い棒の長軸方向の誘電率と短軸方向の誘電率は異なるのである.液晶層に光が通過するとき,光の偏光方向が液晶分子長軸方向と一致すると,その液晶は実質,長軸方向の誘電率をもつ媒質といえる.同様に,短軸方向と一致するときは,短軸方向の誘電率をもつ媒質となる.したがって,通過する光ビームの断面内で液晶配列が異なっていると,光ビームの断面内で速度が異なり,その結果として液晶層を通過した光の進行方向を変えることができる.この液晶配列は印加する電圧を制御して行う.液晶配列を変えるイメージは下図のようになる.

Photo_20191222061501 

 この技術で液晶層にレンズ効果をもたらすこともできる.課題としては,印加する電圧が高電圧になることと,温度依存性があることである.

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2019年12月21日 (土)

LiDAR(21)

 導波路回折格子型は,回折格子での回折効果でレーザー光の発射方向を変えようというものである.導波路とは,光ファイバーのようにレーザー光の通り道である.

 Photo_20191222042901

 この通り道の終端に,下図のように回折格子を設けると,そこでレーザー光の向きが変わって発射されることになる.このとき,例えば回折格子に電圧を加えたり熱を加えると,材料の屈折率が変わるため,レーザーの発射方向が変わって走査できることになる.

   この図に示した導波路は,電圧印加による量子閉じ込めシュタルク効果を利用したものを示す.井戸層とバリア層が交互に積層された多重量子井戸層が順次積層され,その上に導波路層がストライプ状に形成されている.そして、導波路層上にエッチング技術で回折格子が形成されている.導波路層上にはクラッド層が形成され,側方にはポリイミド層が形成される.この積層構造の下面に下部電極層が,光の入射面と反対側の端面に近い側の上面に上部電極層が形成される.この素子にレーザー光を入射すると,回折格子の作用によりレーザー光は上方に回折する.このとき,上部下部電極層間に逆バイアスの電圧を印加すると,量子閉じ込めシュタルク効果により電圧の大きさに見合う量だけ導波路層の屈折率が変化し,レーザー光が回折する角度が変化するのである.

 また,プリズム型のように,レーザー光の波長を変えても回折角は変化する.研究開発課題は,走査角を広く取ることである.

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2019年12月20日 (金)

LiDAR(20)

 周波数変調には,下図1に示す時間とともに周波数が増加(アップチャープ),減少(ダウンチャープ)するチャープを用いる.送信波がチャープ信号だと受信波もチャープ信号となり,送受信の周波数差から測距を行う.

Photo_20191220215801  

 送信周波数ftが時刻t1で送信開始し周波数f1とする.送信継続時間dtの間に増加して送信終了時刻(t1+dt)で周波数f2になるとして,帯域幅(f2-f1)の周波数変調を見てみよう.時刻t1に送信を開始してから,対象物体からの反射信号が受信するまでの時間Δtは,(2)式から

∆t =  2R/C                  (3)

となる.よって,反射信号を受信した時刻(t1+Δt)における送信波の周波数ft(t1+Δt)は,

ft(t1+∆t)=f1+((f2-f1)∆t)/dt     (4)

となる.また,時刻(t1+Δt)での受信波の周波数frは,対象物体が動いていない場合,時刻t1に送信した周波数と同じなので,

fr(t1+Δt)=f1           (5)

となる.したがって,時刻(t1+Δt)に(4)式で表現される送信波の周波数と(5)式で表現される受信波の周波数の差 ∆f=((f2-f1)∆t)/dt に(3)式から,

R=c∆t/2=c∆fdt/(2(f2-f1))       (6)

となり,対象物体の距離Rが送受信周波数の差から計算できる.なお,周波数の解析は,通常高速フーリエ変換FFTを用いる.

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2019年12月19日 (木)

LiDAR(19)

 導波路回折格子型,スローライト型,多層液晶型もレーザ光の波長が可変になることを前提とした走査方式である.さらに,これらの走査方式では,測距方法がTOF方式ではなく,FMCW方式を前提としている.

 FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)とは,TOFのようにパルス状のレーザ光を照射するのではなく,連続してレーザ光を照射する.しかも,周波数を変えながら照射し,測距原理は送信波と反射波との周波数差(いわゆるビート周波数)から求めるものである.

 FMCWは距離計測だけでなく,1回の計測で相対速度も求めることができる手法である.TOFで相対速度を計測するときは,2回の連続する測距結果から求めるしかなく,2回の計測点が同じ物体である必要がある.車載の監視センサでは,周辺車両等との相対速度が重要なため,この点ではFMCWを使う電波レーダがTOFのLiDARより電波レーダの方が優れているといえる.よって,LiDARがFMCWを使うことができるようになる意義は大きい.

 前回で回折した通り,レーザ光の波長を変えることは可能なため,LiDARもFMCWが使えるのである.

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2019年12月18日 (水)

LiDAR(18)

 プリズムを使った走査方式のLiDARは,オーストラリアのベンチャー企業バラハが提案している.レーザ光をプリズムの屈折を利用して走査方向を変える方式だ.

 屈折率は波長によって決まる.そのため,レーザ光の波長を変えることができれば,プリズムにより発射する方向を変えることができる.

 車載LiDARのレーザ光源は半導体のレーザダイオードLDで発生する.半導体レーザでレーザ発振の波長を可変にできるのだろうか.実は,いくつか波長を変える方法がある.例えば,温度が上がるとLDの活性層が物理的に伸びる.すると,レーザが共振する場所の長さが変わるので,発振するレーザの波長が変わる.また,温度変化で活性層の屈折率も変わる.屈折率が変われば共振周波数が変わり,発振するレーザの波長も変わるのである.レーザ媒質として GaInAsP を使うとレーザ発振波長は1200~1550nm,AlGaAs を使うと700~1000nmの間で変えることができる.

 バラハ社は可変レーザ発光源のユニットを一つ用意し,そこから光ファイバーで4つのプリズムにレーザ・パルスを分配する方式を提案している.この方式だと,LDは一つで車両の4隅にプリズムを設置し, 周囲を監視することが可能となる.

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2019年12月17日 (火)

LiDAR(17)

 レーザ光でフェーズドアレイが初めて実現したことが,2013年,MITのSun博士によって,世界的に有名な科学雑誌Natureに発表された.Sun博士は北京の精華大学を卒業後,MITに入学してPh.Dを修得し,ポスドク研究員で同MITに残っての成果だった.現在は,上級ハードウエアエンジニアとしてインテルの研究所に在籍している.

 Sun博士が製作したフェーズドアレイは,シリコン基板上にナノスケールアンテナと位相遅延導波路を一対とした9μm x 9μmサイズの基本素子を64×64(=4096)のフェーズドアレイにしたNPA(Nanophotonics Phased Array)と呼ばれるものである.このNPAで,波面制御された遠距離場パターン(far field pattern)が得られることを示した.

 さらに,位相を任意に制御するため位相遅延導波路にヒータをマウントした8×8(=64)素子からなるNPAで,任意の方向にレーザビームが発射されることも示したのである.この技術がQuanergy社に移転され,16×16(=256)素子のNPAを持つLiDARが実現できた.このLiDARのサイズは,90×60×60mmとバンパやグリルに埋め込むことができる車載サイズなのである.水平方向のFOVは120°と広く,測距範囲は0.1~150mとしている.

 量産時の出荷価格は250ドルと発表されている.これは,車載電波レーダに対抗できる驚異的な価格といえる.

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2019年12月16日 (月)

LiDAR(16)

 フェーズドアレイの原理をもう少し詳しく紹介しよう.原理は,ホイヘンス=フレネルの原理である.

 ホイヘンス=フレネルの原理で,電磁波の向きがどうすれば変化できるのか下図を見てもらおう.この図はNO.1,2,3の3つの電磁波発生素子がある状態を示している.

  Photo_20191218000301 

 電磁波が点で発生すると,発生点から電磁波は球面状に広がっていく.No.1~3の素子は平面上に等間隔で配置しかつ同位相にすると,各素子の電磁波が重なったところが強まり,結果として電磁波は破線の方向に強まる.次に,No.2,3の位相をNo.1から同じ量だけずらしていくと,破線の方向が曲がった状態になるのである.よって,2次元平面状で等間隔に電磁波素子を配置し,全ての素子の位相が自在に制御できれば,任意の向きに電磁波を発射できることになるのである.

   Photo_20191218000302

 電波のフェーズドアレイ・レーダは,気象観測用途に1970年代には実用化されていた.車載用の電波レーダとしては2000年以降,そしてレーザ光での制御が現在試行されているのである.

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2019年12月15日 (日)

LiDAR(15)

 フェーズドアレイ型とは,電波レーダで用いられるフェーズドアレイを光(レーザ)用にしたものである.電波と光は極端に波長が異なるため,光用のフェーズドアレイは超微細技術が必要となる.

 電波レーダで実用化されたフェーズドアレイとは,複数のアンテナ素子をマトリクス状に平面配列し、ホイヘンス=フレネルの原理で各素子からから放射された電波を空間で合成して任意の方向に放射するものである.各アンテナ素子への給電位相を制御することで指向性が作られるため,位相を変えることにより電子走査が実現できたのである.

 電波も光も電磁波なので,電波でできることは光でもできるはずである.ところが,電波レーダーに使用するミリ波帯に対し,レーザ光の波長はμmである.そのため,光の位相制御は難しく光フェーズドアレイの技術開発は進まなかった.そこで,米国のDARPA(米国防総省高等研究計画局)が光フェーズドアレイを実現するプロジェクトを立ち上げた.2013年,その成果として,MITの研究者が9μm×9μmの基本素子をシリコン基板上で64×64(=4096)配置したNPA(Nanophotonics Phased Array)の製作完成を発表したのである.

 この技術は米国のQuanergy社に移転され,2015年,世界で初めて16×16(=256)素子で構成されるNPAを使ったフェーズドアレイ型LiDARの試作に成功している.

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2019年12月14日 (土)

LiDAR(14)

 MEMSミラー型と並行して,一部実用化され始めているのがフラッシュ型LiDARである.フラッシュ型は機械的可動部がなく,完全に非機械方式である.

 フラッシュ型では,対象とする視野に向けて扇状にレーザービームを放射する.それがフラッシュと呼ばれる由縁であり,受光は見たい角度に絞ったフォトダイオードを多数用意し,全体の視野角をフォトダイオードの数で割ったものが空間解像度となる.

 従来の機械走査方式からモーターによる走査部を取り除き,フォトダイオードの数だけ増やしたものとなるため,構成は単純なものとなる.欠点としては,レーザービームを拡散するため高出力なものが必要になることである.レーザービームを拡散する代わりに,多数のレーザーダイオードを使用するとコストが高騰してしまう.また,フォトダイオードの数に制限ができるため,他の走査方式に比べて空間解像度が荒くなる.

 LeddarTech社ではフラッシュ型LiDARを実用化しており,自動運転バス等に使用されている.ただし,SLAM目的ではなく車両斜め後方の死角の障害物検知に利用されている.

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2019年12月13日 (金)

LiDAR(13)

 ミラーやヘッドを回転させない走査方式として,MEMSミラー型,フラッシュ型,プリズム型,フェーズドアレイ型,プリズム型,導波路回折格子型,スローライト型,多層結晶型等が研究開発されている.MEMSミラー型の他の方式は,機械的に動く部分がないためソリッドステート方式と呼ばれている.

 MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)とは,半導体上に微細加工技術によって,微小な機械要素と電気要素を集積したデバイスである.このMEMSに微小な光学ミラーを持ったものがMEMSミラー型となる.

 MEMSミラー型とは,従来のモーターで回すミラーがMEMSミラーに置き換わったものである.MEMSミラーは振動して機械的に動いているため,厳密にはソリッドステート式とはいえない.しかし,LiDARの基板上にはチップしかないため,広義にはソリッドステート方式に分類している.MEMSミラーはモーターに比べて,小型軽量,低消費電力で高速動作可能という利点がある.欠点としては,チルトミラー型やポリゴンミラー型のような広い走査角を取ることができないため,広い走査角が必要なときは他の光学変換系が必要になることである.これは他のソリッドステート方式全般に共通する点で,一度に全周囲の走査角が取れるのは,ミラーやヘッドをモーターで回転させる機械走査方式の利点である.

 MEMSミラー型LiDARは,計測機器では実用化されているものもある.また,Innoviz社やパイオニア社が車載LiDARとして提供することを発表している.

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2019年12月12日 (木)

LiDAR(12)

 現在の実用化されているLiDARは,以上解説したように,走査方法では,ミラーやヘッドをモーターで回転させてスキャンする機械式である.また,測距方法では,投光するレーザーをパルス状に発光して飛行時間を計測するTOF方式である.

 これから実用化の研究開発が進められているLiDARは,走査方式と測距方式とも大きく変化するものである.すなわち,機械式スキャンを電子式スキャンに,そして,測距TOF方式からCW方式への変更である.

 LiDARはいわゆる電子部品である.自動車業界では,電子部品に対し少なくとも10年間はメンテナンス不要にしたいという要望が根強い.そのため,モーターで回転する機械式を好まない傾向がある.かつて車載LiDARが電波レーダに置き換わったのも,機械式スキャンのLiDARに対し,電波レーダが電子スキャンだったことも理由の一つであった.また,レーザー光はコヒーレント光であり,出力している間は一定の周波数で直進し続けるため,TOF方式よりもCW方式の方がより利点が強調されている.更に,CW方式は一回の計測で計測点の相対速度が求められるという利点もある.

 それでは,近い将来に登場する各電子式スキャンとCW方式を紹介していこう.

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2019年12月11日 (水)

LiDAR(11)

 ヘッド回転型は,64個ものレーザーダイオードによる64本のレーザービームを全周囲に照射するVelodyne社のHDL64Eの登場で開始され,以降の自律移動車用LiDARの標準となった.しかし,搭載位置が全周囲を見渡せるルーフになるため,乗用車用の普及型車載LiDARとしては採用されていない.

 Googleが開始した特定区間の自動運転サービスの様な自律移動車に近い乗用車や,研究開発用の乗用車には採用されている.しかし,ルーフ上での配置では,空力性能や意匠的な見映えの点で一般の乗用車では敬遠されるのである.

 また,LiDAR本体そのものを回すため,ポリゴンミラーやチルトミラーより遥かに重い重量をモーターで回すことになり,振動騒音面で若干不利になる.更に,レーザーダイオードを多く使用するため,本体のサイズも大きくなるため,車載センサとして位置付けは難しく思える.実際,Velodyneではヘッド回転型のLiDARは計測装置という位置付けで販売している.それでも,後発の自律移動車向けの環境センシングLiDARは,Velodyneタイプのヘッド回転型LiDARに類似するものが多い.

 Velodyne社のヘッド回転型LiDARのラインアップは,従来,レーザーダイオードの個数が64,32,16個使いのもので順に小型になっていた.最近,64個使いのタイプから小型化になった上で128個ものレーザーダイオードを使って高解像度化を狙い,かつ計測距離を250mと従来の100mから高性能化したものが発売されている.

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2019年12月10日 (火)

LiDAR(10)

 チルトミラー型は平面ミラーを回転させる最も単純な構造であり,ほぼ全周を走査することが可能である.しかし,初期のADAS用車載LiDARとしては,レーザーダイオードを複数個使うためポリゴンミラー型よりもコストが高くなり,採用されることはなかった.

 IBEO社が提案したチルトミラー型LiDARは,レーザーダイオードの使用個数を4個,または8個としていた.最終的に車載に採用されたものは,4個タイプである.

 レーザーダイオード4個は,高さ方向に分けられた4本の照射ビームを形成する.一番下側のビームは路面を照射し,主に道路端部を示す白線の検知用に用いる仕様となっている.チルトミラー型は投光用のレーザーダイオードが発するビームをチルトした角に反射する単純な構造のため,レーザーダイオードとミラーの光路の延長上に受光用フォトダイオードを設置できるため,投光窓と受光窓を共化することが可能である.そのため,雨粒による影響は,ポリゴンミラー型より抑えられているといえる.また,高さ方向で異なるレーザービームの発光タイミングを変えれば,受光側でどのビームからの反射光かを特定することも可能である.

 Audiに採用されたチルトミラー型の車載LiDAR,SCALAは,水平視野角145°という仕様である.バンパー位置に内蔵されており,前方監視用の視野角としては,ほぼ理想的なものである.

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2019年12月 9日 (月)

LiDAR(9)

 ポリゴンミラー型が,ファンビーム型の車載LiDARとして最初に登場した.他の型はレーザーダイオードLDが複数個必要なことに対し,ポリゴンミラー型は1個だけとなるため,コスト的に有利なためと思われる.

 LDは高価なため,ポリゴンミラー型はLD1個で十分なファンビームを生成するために考え出されたといえる.LDが1個でありながら,水平方向のみならず垂直方向にもビームを投光できることが最大の特徴である.

 当時の高速道路を主体としたADASのための前方監視では,チルトミラー型やヘッド回転型のように全周囲は必要なく,前方20°程度で十分だった.そのため,6面の1面で最大60°を確保可能なポリゴンミラー型で十分だったのである.6面の垂直方向の角度は全て異なるため,この型のファンビームは,高さ方向が異なる6本のビームに相当する.デンソー製のものは,縦×横:4.4°×16°の視野角FOV(Field of View)内で,6×105点のポイントクラウドを生成した.これは,前方を複数台走行する車両を分離するのに十分だったのである.

 ポリゴンミラー型は投光方法が他方式より複雑になるため,投光窓と受光窓を分けたレイアウトになる.そのため,雨粒がそれぞれの窓に付着すると,投光側も受光側もビームの方向が変わることが弱点である.

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2019年12月 8日 (日)

LiDAR(8)

 TOFで測距ができるようになれば,次は投光ビームを走査して広い範囲の計測となる.レーザー光の走査はミラーを回転して容易に行うことができる.

 一定方向の走査により扇状に広がるビームをファンビームという.ちなみに,直交する2方向に走査すれば,立体的に広がるコーンビームとなる.

 ミラーによる走査方式の代表的なものは,下図のようなチルトミラー型,ポリゴンミラー型,ヘッド回転型の3種類である.チルトミラー型が最もシンプルな走査方法で,傾けた平面ミラーを回転するものである.ポリゴンミラー型は,6面の垂直方向の角度が徐々に変わるポリゴンミラーを回転するものである.そして,ヘッド回転型は,レーザー本体ごと回転させる方式である.

 チルトミラー型はIBEO,ポリゴンミラー型は車載LiDAR全盛期のデンソー,ヘッド回転型はVelodyneが採用している.

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2019年12月 7日 (土)

LiDAR(7)

 LiDARは悪天候に弱いと一般的にいわれるのは,空気中の雨粒や雪粒のせいではない.搭載状態によって,塔体のレンズに付く雨粒によるビームの散乱や,雪の付着による目隠し効果によるものである.

 LiDARのレンズに雨粒が付着すると,雨粒自体もレンズ効果を発揮し,レーザービームの鋭さが災いして投光方向が変わってしまうのである.根本的な対策は,雨粒を払拭する機構を設けることになる.

 車載LiDARの装着位置は,グリルやバンパーが一般的であり,雨粒を払拭する機構は好まれない.そこで,室内に設置し,ウインドシールド(前面ガラス)のワイピングエリアから投光する方式も現われた.この方式では,降雪時も対応可能となり,天候状態の影響度はほぼなくなった.また,ルーフに搭載するヘッド回転型は,雨粒も雪も回転によって吹き飛ばすため問題ない.雪の中での自動運転デモは,ヘッド回転型のLiDARが使われる.ただし,ヘッドが更にフィルターで覆われ固定されているタイプは対象外である.

 LiDARが問題となる天候は,人間も視界が遮られるような霧である.905nmの近赤外では,可視光が遮られる霧ではやはり減衰が大きく,使用することができない.

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2019年12月 6日 (金)

LiDAR(6)

 TOFで測距したとき,雨天や降雪時の雨粒や雪からの反射はどうなるのだろうか.それぞれの状況のイメージを下図に示す.

 晴天時は問題なく,対象物体に投光したパルス光が反射して帰って来てものを受光すれば良い.雨天時では,雨粒から反射するレベルは微小であり,対象物体からは晴天時から若干減衰した反射光を受光することができる.

 ただし,高速道路等では先行車が路面の水を跳ね上げたスプラッシュを発生させる.スプラッシュは水の塊のため,スプラッシュ後端で投光したレーザー光が反射してしまう.そのため,車間距離を数mから数十m短く誤測距することがある.ところが,スプラッシュを通り越して車両から反射する反射光も続いて帰って来るため,何回かに分けてTOFを計測すると車間距離が正しく計測可能となる.

 降雪時は雪の粒に反射するため,一度の計測では対象物体の測距は難しい.しかし,複数回計測すると,雪粒に当たらず対象物体まで到達した反射光を受光することが可能となる.

Lidar 

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2019年12月 5日 (木)

LiDAR(5)

 TOFの計測原理は,パルス状のレーザー光を投光したときから受光するまでの時間を計測することである.物体までの距離をR,時間をt,光速をcとすると,

R = C・t/2          (2)

となる.

 t/2となるのは,往復時間を計測したためである.この時間計測は,通常クロックで計測する.

 計測用クロックは電圧がハイとローが一定間隔で繰り返されるパルスであり,光速を測定しているので超高周波数のものを用意しなければならない.光速をおよそ30万km/sとすると,0.1mの距離分解能を得ようとすると,少なくとも1.5GHzものクロック周波数が必要となる.ギガ単位の周波数になると,最新のCPUのクロック数のようで高価なものになってしまう.更に,距離分解能を上げて0.01mの距離分解能と高精細化しようとすると,15GHzと実現が難しくなる.そこで,ある程度は高速なクロックを使って,それ以上は,計測クロック以下の時間計測をコンデンサにチャージさせた電荷量を測定することで補間したりする.

 このような内挿技術を使用したり,繰返し加算計測してピーク値を推定することもある.これらの技術を使い,本来なら150GHzのクロックが必要な,距離分解能0.001mも実現することができる.

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2019年12月 4日 (水)

LiDAR(4)

 車載LiDARの測距(距離測定)方式は,パルス状のレーザー光を投光し,対象物体から反射した光が何秒後に受光できるかを計測する飛行時間計測TOF(Time of Flight)が一般的である.投光時のパルスは,立ち上がり時間0.数 ns~10 nsで半値全幅が数 ns~数10 nsというものが一般的である.

 そのため,受光するデバイスは,数100 MHz以上の高速応答性が必要となる.更に,受光するときの光量が非常に小さくなるため,高感度なものが求められる.

 それくらい高感度なものが必要か,簡単な反射モデルでみてみよう.LiDARの投光用と受光用レンズから対象物体面までの距離をLとすると,受光強度は次式で与えられる.

P = E・A・R・P(1/L^2)     (1)

ただし,E は係数,A は受光レンズ面積,R はターゲットの反射率,P は投光レーザー光の強度である.Eを0.1,Aを直径40 mm レンズでの面積,Lを100 m,Rを10 %とすると,受光する光の強度Pは,0.93 × 10^(-9)となる.すなわち,投光を100 Wもの大容量としても,受光には93 nWしか戻って来ないということである.実際,クラス1の安全性を保つために投光容量が制限されるため,受光側のフォトダイオードPDはアバランシェ効果を用いたアバランシェフォトダイオードAPD(Avalanche Photo Diode)を用いることが多い.

 半導体中に大きな電場があると,光子が衝突で発生する電子は,他の半導体原子に加速して衝突し複数の電子を弾き出し,この現象が繰り返す連鎖反応を起こす.この爆発的連鎖反応をなだれ(アバランシェ)効果といい,このアバランシェ増幅が弱い受光レベルを増幅するのに用いられているものがAPDである.

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2019年12月 3日 (火)

LiDAR(3)

 LiDARを扱う以上,レーザー光の目に対する安全性は必ず知っておかなければならない.なぜならレーザー光は,単一波長でエネルギー密度が高いため,見つめると眼の水晶体で集光され網膜の一点に高密度のエネルギーが到達するからである.

 可視領域のレーザー光なら,眩しくて反射的に目を閉じる.ところが,赤外領域の不可視光は気付かないまま網膜の一部が焼けてしまうのである.

 レーザー光に対する安全基準を最初に設けたのはアメリカのANSI(American National Standrds Institute)で,次いで国際電気標準IEC(International Electorotechnical Commission)により国際基準が規定された.日本でも「JIS C6802レーザー製品の安全基準」が制定されている.これら基準では,人体に対する最大許容露光量MPE(Maximum Permissible Exposure)を決めている.車載LiDARでよく用いられるANSIクラス1では,MPEを可視光では0.39μW以下とし,人体に対し何の危険性もないものとしている.

 したがって,諸君がLiDARを取り扱う場合,まずクラス1に適合した製品かどうかをまず確認しよう.電源を投入するのはそれからである.

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2019年12月 2日 (月)

LiDAR(2)

 分子や原子はある特定の周波数の電波を吸収するため,その周波数の電波を供給すれば共振して発振するはずという考え方から始まった.そして,マイクロ波を共振して発生させるメーザー(Maser:Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation)が発明され,更に波長を短くして光にしたものがレーザーである.

 ある波長の光を励起状態から基底状態に戻るとき放出する媒体の中で,下図に示すように,媒体の両端で反射を繰り返すうち位相,波形がそろって発振し,ハーフミラー側を飛び出したものがレーザー光となっている.このレーザー媒体は,個体,液体,気体があり,LiDAR用には媒体に半導体を用いたものを用いる.

Photo_20191203065801 

 下図に半導体レーザーの構造を示す.この構造のものは,端面からレーザー光を発するため,端面発光半導体レーザーと呼ばれる.多用される波長は905nmの近赤外光である.この波長は人間には見えず,かつ網膜の吸収帯域のため,目に対する安全性を考慮しなければならない.LiDARとして製品化されているものは,米国ANSI規格のクラスⅠを満足しているため問題はない.しかし,不可視領域のLiDARは覗き込むこまない方が良いだろう.

Photo_20191203065802 

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2019年12月 1日 (日)

LiDAR(1)

 11月は自律移動車を解説し,LiDARがキーワードということがわかったと思う.そこで,12月はLiDARを詳しく解説して行こう.

 LiDARとは,Light Detection and Ranging または、Laser Imaging Detection and Ranging の略である.前者と後者の違いで大きいところは,光(Light)なのかレーザー(Laser)かである.

 現在のLiDARが,ほぼレーザーを使用したものを指すことから,ここではやはりレーザーを使った距離計としよう.まず、レーザーを理解しておこう.レーザーとは,Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(輻射の誘導放出による光増幅)の頭文字を取ったアクロニムで,レーザーといえばレーザー光を発生する装置を指す.レーザーを理解する前に,どのような光がレーザー光かを理解しよう.レーザー光とは,レーザーによって作られた人工的な光である.可視光だけでなく,赤外光や紫外光もある.レーザー光と他の光の最大の違いは,レーザー光がコヒーレント光であるということである.

 コヒーレント光とは,単一の周波数で光波の位相が時間的に不変な光である.自然界にコヒーレント光は存在しない.

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