2019年6月 5日 (水)

自動運転のためのセンサシステム入門(66)

 免疫ネットワークよる分散診断モデルは、各ユニットを車載外観センサとみなすと、センサ情報間の関係を理解する連想的処理過程といえる。すなわち、免疫ネットワークモデルが連合型センサフュージョンの一例とみなすことができるのである。

 そこで、LiDARとカメラで得られる情報を、次の3つのモジュールとして定義するところから始める。
(1)画像処理による車両認識モジュール
(2)画像処理による走行車線認識モジュール
(3)LiDARによる距離計測モジュール

 モジュールとして定義したのは、センサで得られる情報の関係という点を考慮したためである。モジュールとしたことによって、センサ間の関係よりも同次元でモジュール間の関係を表現することができ、モデル化しやすくなる。

 これら三つのモジュールを使って、連想的処理過程で得られる走行環境認識の一例として、「先行車両を判定するように振る舞う」ネットワークを考えよう。各モジュールは状態変数として、信用度R1、R2、R3持つ。R1は車両認識モジュールM1の画像処理によって得た車両候補が、「車両として信用されている」度合いを、R3は距離計測モジュールM3のLiDARによって得た距離データが、「車両からのものであると信用されている」度合いを示す。車線認識モジュールM2は車両を検知することはできないが、他モジュールからの問い合わせに対して車線の位置関係の判定はできる。したがって、R2は車線認識モジュールM2で認識した車線が、「前方車両と同一車線である」と信用されている度合いであるとする。前回掲載した微分方程式のダイナミクスの定義においてユニットUiを上記のモジュールMiとする。

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自動運転のためのセンサシステム入門(66)

 免疫ネットワークよる分散診断モデルは、各ユニットを車載外観センサとみなすと、センサ情報間の関係を理解する連想的処理過程といえる。すなわち、免疫ネットワークモデルが連合型センサフュージョンの一例とみなすことができるのである。

 そこで、LiDARとカメラで得られる情報を、次の3つのモジュールとして定義するところから始める。
(1)画像処理による車両認識モジュール
(2)画像処理による走行車線認識モジュール
(3)LiDARによる距離計測モジュール

 モジュールとして定義したのは、センサで得られる情報の関係という点を考慮したためである。モジュールとしたことによって、センサ間の関係よりも同次元でモジュール間の関係を表現することができ、モデル化しやすくなる。

 これら三つのモジュールを使って、連想的処理過程で得られる走行環境認識の一例として、「先行車両を判定するように振る舞う」ネットワークを考えよう。各モジュールは状態変数として、信用度R1、R2、R3持つ。R1は車両認識モジュールM1の画像処理によって得た車両候補が、「車両として信用されている」度合いを、R3は距離計測モジュールM3のLiDARによって得た距離データが、「車両からのものであると信用されている」度合いを示す。車線認識モジュールM2は車両を検知することはできないが、他モジュールからの問い合わせに対して車線の位置関係の判定はできる。したがって、R2は車線認識モジュールM2で認識した車線が、「前方車両と同一車線である」と信用されている度合いであるとする。前回掲載した微分方程式のダイナミクスの定義においてユニットUiを上記のモジュールMiとする。

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2019年6月 4日 (火)

自動運転のためのセンサシステム入門(65)


 ヤーネが提唱した免疫ネットワークをモデル化したものに、免疫ネットワークによる診断モデルがある。これは各センサを免疫とみなし、相互に抑制・制御するものとして連合型センサフュージョンの一モデルともみなせる。

 免疫ネットワークによる診断とは、いくつかのセンサユニット(以下ユニット)が相互結合した分散診断モデルの一形態である。各ユニットは互いに他を独立にテストでき、ユニットUiがユニットUjをテストしたときの評価値Tijについて

Tij≦0:Uiが正常でUjが異常
Tij>0:Ui、Uj ともに正常
Tij不定:Uiが異常

とすると、この式は、ユニットUi が正常な場合、相手を正しく評価でき、ユニットUi が異常な場合なんらかの評価をするが、その値は正しいかどうか分からないことを示している。各々のユニットで単純に評価値を集計しただけでは、どのユニットが異常か判断はできない。このネットワークに次のような微分方程式でダイナミクスを与えることによって、どのユニットが異常であるかを検出できる。

d・ri(k)/d・k = ΣTijRj(k) + ΣTjiRj(k) - Σβ(Tij+1) - ri(k)
       = ΣTij(Rj(k)-β) + Σ(TjiRj(k)-β) - ri(k)
ここで、

Ri(k) = 1 / (1 + e^(-ri(k)))

である。Ri(k)は時刻kにおけるユニットUiの信用度、ri(k) はその中間変数、TijはUi がUjをテストした評価値、βは診断調整量であり診断の厳しさを表す。

 この微分方程式が意味するところは、ユニットが互いに相互診断をして行くので、時間の経過と共に式の値が変化して行き、ある値に収束して行く。このモデルのふるまいが、免疫ネットワークと同様なのである。

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2019年6月 3日 (月)

自動運転のためのセンサシステム入門(64)

 ヤーネは、抗体が抗原と同じたんぱく質構造を持つことから、自然界に存在する膨大な数の抗原上のエピトープが、個体自身が作り出した抗体分子上にも存在すると考えた。そして、抗体間のイデオトープとパラトープが反応することにより、Bリンパ球も含めた抗体間で巨大なネットワークを形成していると考えたのである。

 免疫ネットワーク説では、抗原、抗体、リンパ球の関係が次のように考えられている。まず、ある抗原が体内に侵入すると、その抗原は「鍵と鍵穴」の関係にある抗体を膜表面に持つリンパ球1を刺激し、侵入してきた抗原に結合する抗体を生産する。
次に、刺激されたリンパ球1はその抗原と同じ型のイデオトープも生成する。すると、そのイデオトープと「鍵と鍵穴」の関係にあるパラトープを持つ他のリンパ球2も刺激する。リンパ球1は、抗原の抗体を持っているため抗原と認識されリンパ球2を刺激し、リンパ球1を抑制する。

 また、リンパ球1に反応して抗原に対するイデオトープを持ったリンパ球3が出現したとしよう。リンパ球1はリンパ球3を抗原と認識するため、リンパ球1はリンパ球3を抑制する。このように、リンパ球の間にも刺激・抑制の相互作用が存在するとしたのである。つまり、免疫系は個々の抗体やリンパ球が独立に反応するのではなく、ネットワークシステムとして抗原を認識し抑制する並列分散処理システムと考えたのである。

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2019年6月 2日 (日)

自動運転のためのセンサシステム入門(63)

 外敵のウイルスの抗原の特徴を示す抗原決定基は、エピトープ(Epitope)と__呼ばれる部位を持っている。一方、免疫機能を担当するBリンパ球の膜表面には、抗原に反応するアンテナが多数組み込まれており、これが抗原結合部位であるパラトープ(Paratope)と呼ばれる抗原認識部位である。

 パラトープはエピトープと「鍵と鍵穴」のように特異的に反応することにより、抗原を認識し、分裂、分化し、抗体を産生することによって抗原を排除することができる。Tリンパ球にもBリンパ球と同じ様に、ある抗原に特異的に反応し、感染細胞を排除したりBリンパ球の抗体産生を調節したりする。また、抗体は抗原と同質のたんぱく質で合成されているため、抗体自身も抗原決定基を合わせ持っており抗原の特性を示す。この抗体がもつ抗原決定基はイディオトープ(Ideotope)と呼ばれている。

 人間の体内には、およそ1億種類以上の抗体が存在している。麻疹にかかって麻疹の抗体を得るのであれば、人間は1億回も病気にかからなければならなくなる。ところが、特殊なウイルス以外に対応する抗体は、病気にかからなくても自然と獲得することができる構造になっている。これは、普段食べる食べ物のタンパク質の構造を腸内で認識し、未知の外部のタンパク質構造を想定して数々の種類の抗体を生産する機構があるからと考えられている。また、免疫系は抗体が単にばらばらに体液中を浮遊して、抗原と反応しているという単純なものではなく、異なる種類の抗体間で相互に刺激・抑制しあっている複雑なシステムであることも明らかになっている。この抗体間の相互作用に対して、免疫学者のヤーネ(N.K.Jerne)は、免疫ネットワーク(イデオトープネットワーク)説を提案した。

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2019年6月 1日 (土)

自動運転のためのセンサシステム入門(62)

 麻疹から治った子供の血清中には、麻疹ウイルスとだけ結合する特殊なタンパク質が含まれるようになる。このタンパク質は免疫グロブリンと呼ばれるものであり、これが麻疹ウイルスにだけ結合する抗体である。

 免疫グロブリンを抗体と呼ぶとき、麻疹ウイルスは抗原と呼ばれ、「鍵と鍵穴」の関係は抗原・抗体反応とも呼ばれる。抗原は抗原決定基という、抗体が結合する「鍵」を持つ。抗原決定基は、複数の元素やアミノ酸で構成される複雑な立体構造で、まさしく「鍵」なのである。そして、この「鍵」と一致してカバーする構造を「鍵穴」たる抗体が持っているのである。

 なぜ一つのウイルスたる抗原に対して一つの抗体しかないかというと、抗体が対応する抗原の目印にしているからである。外敵のウイルスに対し、身体を守るためリンパ球が攻撃する目印が必要で、これがなければ何を攻撃すればわからないからである。目印なしで攻撃してしまうと、身体自身の細胞まで攻撃してしまうため、厳密に1種類の抗原には1種類の抗体が反応する仕組みになっている。

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2019年5月31日 (金)

自動運転のためのセンサシステム入門(61)

 免疫ネットワークを説明する前に、まず、免疫とは何かを知ってもらう必要がある。なお、ここでの免疫とは、身体を守る仕組み全体をさす広義の意味ではなく、予防接種して免疫を獲得するという狭義の意味である。

 筆者が幼少の頃、近所で麻疹の子供が発症すると、麻疹にかかっていない子供を親がわざわざその家庭に連れて行って、麻疹がかかるようにしていた。もちろん、麻疹の免疫を得るためである。
麻疹が治ると免疫ができるため、もう麻疹にかかることはなくなる。ところが、耳下腺炎(おたふく風邪)にはかかってしまう。麻疹と同様、耳下腺炎に一度かからなければ、耳下腺炎の免疫はできていないからである。このように、麻疹ウイルスの感染によって獲得した免疫は、別のウイルスには効かない。つまり、ある特定のウイルスとその免疫は、「鍵と鍵穴」の関係なのである。

 現代では麻疹も耳下腺炎も、それぞれのウイルスに対するワクチンを予防接種し、わざわざ病気にかからなくてもよい。しかし、「鍵と鍵穴」の関係から、結核、百日咳、小児麻痺と、それぞれのワクチンを接種しなければならないのである。

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2019年5月30日 (木)

自動運転のためのセンサシステム入門(60)

 以上、複合型、統合型、融合型のセンサフュージョン例を紹介した。センサフュージョンの最終段階が連合型であり、単独センサだけでは考えられないような多彩な結果を導くことが可能となる。

 センサフュージョンとは、「複数のセンサ情報の処理過程の総体を工学的に実現すること」であった。例えば、人間は目、耳、鼻、舌、皮膚というそれぞれのセンサで情報を取り込み、脳内でこれら複数センサの処理を行った結果、非常に多彩な結果を得ることができる。そして、食べ物であれば、単に目から入った情報から匂いや味を連想し、そのときの状況や感じたことまでも思い出すことができる。これが、連合型がセンサフュージョンの最終段階といわれる由縁である。

 まず、工学的に連合型センサフュージョンを実現するため、複数センサを利用した免疫ネットワークを紹介する。そして、免疫ネットワークを利用した相互診断ネットワーク処理を紹介し、これを応用した走行環境を認識する方法を連合型センサフュージョンの実施例として紹介する。

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2019年5月29日 (水)

自動運転のためのセンサシステム入門(59)

 路面上の高さのない物体か、高さのある障害物かの違いは、パターン認識能力の高いカメラに判定させる。この高さがあるかないかは、カメラ画像が被写空間を透視投影していることを利用する。

 つまり、カメラが静止した物体に向かって前進すると、物体が高さのある車両の場合、水平エッジパターンの拡大率Ehと垂直エッジパターンの拡大率Evは同じになる。ところが、物体が高さのない道路のマーキングの場合、両者の拡大率が異なって観測される。なぜなら、透視投影で撮影されるため、対象物体までの距離が変化すると、縦と横の変化の比率が変化するからである。よって、水平と垂直の拡大率Eh,Evを観測することにより、路面反射物を前方車と識別することが可能となる。

 路面反射物に接近した場合と車両に接近した場合の、水平、垂直方向のエッジパターン拡大率を積分して行くと、両者の違いがわかり易くなる。両シーンのデータを比較すると、路面反射物の水平、垂直拡大率の積分値が、前方車両に比較して大きくなることが分かる。そのため、両者を分ける閾値を設定することにより、水平、垂直の拡大率の積分値が大きい場合は前方車両ではないと判定することが可能となる。

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2019年5月28日 (火)

自動運転のためのセンサシステム入門(58)

 LiDARが認識した物体の横幅精度不足は、カメラによる横幅計測の精度が高いことを利用する。すなわち、LiDARによる横幅とカメラによる横幅を採用する割合を、カメラ側に高く取るのである。

 まず、エッジヒストグラム法によりカメラ画像から先行車の車幅を切り出しWiとする。この画像から算出した車両幅WiとLiDARが計測した物体幅Wrの採用割合を調整することで、横幅の計測精度を向上させるのである。調整方法については、画像の採用割合αiを設定し、エッジヒストグラムが鮮明に出ているときは画像処理による車両幅Wiが安定度しているとしてαiを高くする。LiDARとカメラのセンサフュージョンによる車両幅Wfは次式で決定する。

Wf=αi*Wi+(1-α)*Wr

 このようにカメラ画像と融合することにより、LiDARがレーザ光の反射率が高い車両リフレクタの両端ではなく、実際の車両端の計測が可能となる。また、雨天等走行中に発生する不安定な横幅計測値の補正等も可能となる。

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