2017年11月23日 (木)

EVの効果の実態

 著名な科学評論家のスミル氏が電気自動車の普及についてSpectrumに投稿していた。冷静な意見だと思うので紹介しよう。

 2008年、ドイツ銀行が予測した2016年までのアメリカ市場におけるEVの普及予測は7%だったものの、現実は0.9%に過ぎない。2011年、オバマ大統領は連邦議会の演説で2015年までに要求した100万台のEVは、達成しないままである。

 それでも、国際エネルギー機関のEVの見通しは、2025年までに世界で4000万から7000万台、2030には1憶6000万から2億台の普及と予測している。EVが炭素排出を削減するという環境への好影響を期待するなら、EVに供給される電力には、化石燃料の燃焼で発電されたものを使ってはならないはずである。ところが、2016年の世界電力は68%が化石燃料に由来していた。5.2%は風力と太陽光からで、残りは水力と核からであった。この割合は国によって大きく異なる。ノルウェーとカナダのマニトバ州、ケベック州は水力だけで賄え、完全にクリーンなEVが得られる。フランスも核で充電できるため、クリーンなEVが可能である。しかし、インド、中国、ポーランドでは、電力を石炭で作るためEVは石炭車でしかない。EVがすべて再生可能な電力で充電できたとしても、水力発電ダム、風力タービン、太陽光発電パネル用のセメントや鉄鋼の生産時には、温室効果ガスが排出されているのである。また、世界的なシンクタンクのアーサーDリトルは、EVの製造がガソリン車の3倍の毒を環境に垂れ流すと報告している。これは主に、重金属の大量使用によるものである。

 EVの普及率だけでなく、環境への効果も過大評価されているのである。客観的に事実を捉えるところから始めないと、EVの真の普及はあり得ないのである。

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2017年11月22日 (水)

テスラの新型スポーツカー

 テスラが電動トラックを発表した日、新型ロードスターも発表した。初代ロードスターが製造されていたのは、2008年から2012年だった。

 この新型ロードスターはスーパーEVであり、0-時速60マイルをたった1.9秒で加速する。これは平均的F1よりも速いのである。

 ガソリン車のスーパーカーを凌ぐ性能ながら、EVの特性を利用して4座を備える。最高速は時速250マイル(時速402km)と最速の自動車となる。バッテリ容量は200kWhとなり、航続距離は620マイル(998km)にも及ぶ。ベースモデルの価格は20万ドル(2250万円)からとなり、予約金に5万ドルが必要である。もちろん、ロードスターというように、ルーフは電動で開閉可能である。販売は2020年となる。

 ゼロヨン加速に相当するSS1/4マイル加速は8.9秒だ。イーロン・マスクは、EVがガソリン車よりも速いことを証明したのである。

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2017年11月21日 (火)

テスラの電動トラック

 テスラモーターズが電動トレーラ「テスラ セミ」を発表した。これまでのテスラEVと同じように、自動運転や大型スクリーンを運転席に備えている。

 36トンをけん引し、一回の充電で806kmも走るセミは運送業界を変えるのだろうか。製造開始は2019年である。

 トラックの台数は乗用車に比べて少ないものの、排気量が大きくディーゼルによる有害物質の排出量は多い。そのため、テスラはトラックの電動化に取り組んだのである。バッテリー容量は非公開で、モデル3に用いるモーターを4個使用するため、セミの出力は1032馬力と推定される。同クラスのディーゼルエンジンの2倍もの出力を誇り、低速トルクはモーターが得意のずば抜けた高トルクが予想されるので、ディーゼルトラックを遥かに凌駕する加速が期待できる。問題は、売れるのかどうかと、トラックの走行パターンがEVに適していないことを解決しているかどうかである。売れるかどうかは、セミの販売価格と維持費に関わる。価格は高そうなものの、維持費は電力がディーゼルより更に安いため期待できる。

 ところが、トラックの走行パターンは自動車専用道を高速で一定に走行するもので、これはEVには最も辛い走行パターンである。なぜなら、減速による回生が期待できないからであり、これをクリアできるかどうかがセミの性能の見せどころと思われる。

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2017年11月20日 (月)

自動運転の法的整備(最終回)

 一方、自動運転で事故が起きた場合の法整備も進み始めている。2017年4月26日時点の国交省が主催する「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の論点整理内容はこうなっている。

 まず、自賠法の責任主体「運行供用者」についてどのように考えるかは、3通りの考え方がある。すなわち、従来の運行供用者責任を維持しつつ求償の実効性を確保するか、従来を制度を維持しつつ新たに自動車メーカーに一定の負担を求めるか、新たな立法で自動車メーカーに事実上の無過失責任を負担させるかである。

 また、システムがハッキングされ損害が起きた場合は、現在の盗難車による事故と同様に政府保障事業として対応しうるかを検討する。システムの欠陥による自損事故については、2通りの考え方がある。一つは、製造物責任法(メーカー)、民法(販売店)のほか、任意保険で対応し、もう一つは、現行の自賠責保険を見直して自賠法の対象とするというものである。運行供用者の注意義務としては、ソフトウェアや情報をアップデートして自動運転車に対応した義務を負うこととし、外部データの誤謬、通信遮断による事故は、自動車の構造上の欠陥又は機能の障害といえるかを検討しなければならないとしている。

 法整備が完了するまでに起こる事故については、個別に検討が必要である。しかし、ここ2、3年が法整備の山場であり、間もなく自動運転の法整備は明らかになる。

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2017年11月19日 (日)

自動運転の法的整備(13)

 2017年3月、警察庁は自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会の調査報告書を公開した。2017年度は、技術開発の方向性に即した自動運転の段階的実現に向けた調査研究が必要であるとし、次のような課題があるとした。

 高速道路での実用化に向けた課題としては、先ず、速度規制を見直すかどうかである。これは、法定速度と実勢速度の差があるため、時速110キロ程度の試行が必要でないかということである。

 また、高速道路での本線への合流は、道路交通法施行令11条によれば時速60キロとなっているのは課題になるか。渋滞時の合流については、渋滞中の車両の前方に自動運転車が差し込む行為は道交法75条の6に違反するのかどうか。そして、自動走行システムの故障時に、緊急時における路側帯の通行・停車は問題があるか等が課題として認識された。その他、遠隔監視は操作の新たな運転免許や資格が要るのではないかとか、一人で複数台の車両を監視・操作したときの交通違反や事故時の責任、車両に乗車している者は誰でも緊急時には停止させるべきか等も課題としている。トラックの隊列走行については、電子連結の保安基準、車間距離に係る道交法の扱い等を策定する必要があるともしている。

 遠隔型自動運転については、現段階では道交法77条の道路の使用許可を適用して許可基準を策定することとした。これを受け迅速に展開し、6月1日には遠隔型自動走行システムの公道実証実験に係る道路使用許可取扱い基準が通達された。

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2017年11月18日 (土)

自動運転の法的整備(12)

 2017年2月16日に開催された政府の未来投資会議で、首相は自動運転の法整備に意欲を示した。この会議では、高齢者送迎を狙った無人運転バスや物流の効率を図る隊列走行の実現に向け、制度改革を集中的に検討することとした。

 合意事項として、2017年度中に自動運転の実用化に必要な法整備を洗い出し、2020年での実現を目指すこととなった。そして、2月21日、国家戦略特区諮問会議で公道実験の規制緩和が決まった。

 官民ITS構想のロードマップ2016でも、2017年を目途に、特区制度の活用等も念頭に過疎地等での無人自動走行による移動サービスに係る公道実証を実現するとしていたことを受け、自動運転車の公道実証実験を可能とする措置として、ハンドル・アクセル・ブレーキペダルのない車両での自動運転については、例えば次のような安全対策を講じることで公道走行が可能となった。

・実証実験の実施環境の制限(時間・天候等)
・走行速度の制限
・走行ルートの限定
・緊急停止スイッチの設置
・保安要員の乗車

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2017年11月17日 (金)

自動運転の法的整備(11)

 世界の動きに対し、日本でも各省庁の法律関係検討会議が始まった。まずは、各省庁共、法律学者を入れ法律問題の有識者会議を開催したのである。

 警察庁は、2016年6月に「自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会を設置した。これは、道路交通法の改正課題を中心に、実用化に向けた法規制の議論を行うものである。

 国土交通省では、2016年11月、「自動運転における損害賠償責任に関する研究会を開始し、交通事故が起きた場合の自賠責のあり方の検討を始めた。また、経済産業省においては、技術・法律・消費者の代表から成る有識者会議として、2016年10月、「自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究を開始し、製造物責任法の欠陥相場観、社会的受容性の検討を始めた。そして、2015年2月、経産省と国交省は共同で「自動走行ビジネス検討会」を設置し、自動運転の社会実装に係る将来ビジョンの整理検討を始めた。

 これらの議論を基に、具体的な法律の検討に入ることになった。その法律とは、警察庁の道路交通法の改正、国土交通省の自動車損害賠償保障法・道路運送車両法・保安基準の改定に、経済産業省の製造物責任法である。

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2017年11月16日 (木)

自動運転の法的整備(10)

 自動運転の特別な形態として、遠隔操作がある。ベンツやBMWが商品化している、ドライバが降車後にスマホ操作で行う自動駐車を指す。

 官民ITS構想のロードマップ2016の議論に、この遠隔操作型の検討が加わった。この議論では、まず遠隔操作型の位置づけを自動運転のレベル分類に当てはめてみた。

 遠隔操作型は、ドライバがスマホ等からシステムに動作開始の指令を与え、その後はシステムが自動的にタスクを実行するため議論ではレベル4に位置付とした。ただし、遠隔型自体のレベルを2と3に分け、遠隔型レベル2をドライバが遠隔で監視義務を負うもの、遠隔型レベル3をドライバは監視義務がないもののシステム故障時にはドライバが操作するものとした。すなわち、遠隔型自体はドライバが降車しているためレベル4の位置づけではあるものの、遠隔型の中身はドライバが乗車しているときのレベル2と3と同様にしたのである。

 2016年4月1日、国連作業部会WP1で下記解釈統一が行われ、現行条約の下での実験が可能とした。その統一解釈とは「自動運転車両の実験について、車両のコントロールが可能な能力を有し、それが可能な状態にある者がいれば、その者が車両内にいるかどうかを問わず」というものである。

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2017年11月15日 (水)

自動運転の法的整備(9)

 警察庁では、2015年から自動走行の制度的課題等に関する調査検討委員会が設置され、2016年3月まで5回開催された。この検討内容は2016年4月7日に公表した。

 また、将来の道路交通法など法令の改正課題の洗い出しを2016年6月から開始し、関連法令の改正議論が始まっている。そして、直近のテスト車両に対し、自動走行システムに関する公道実証実験のための下記構成となるガイドラインを示した。

1 趣旨
2 基本的制度
3 実施主体の基本的な責務
4 実験施設等における安全性の確認
5 公道の道路交通環境に即した安全確保措置
6 テストドライバーの要件
7 テストドライバーに関連する自動走行システムの要件
8 公道実証実験中の実験車両に係る各種データ等の記録・保存
9 交通事故の場合の措置
10 賠償能力の確保
11 関係機関に対する事前連絡

 特に、11では、自動走行システムに関する公道実証実験を実施する場合、十分な時間的余裕を持って、実施場所を管轄する警察、道路管理者並びに地方運輸局に対し、当該公道実証実験の計画について事前に連絡すべしとしている。

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2017年11月14日 (火)

自動運転の法的整備(8)

 損保協会ニューリスク研究会が公表した内容を見てみよう。2016年9月のものである。

 損保協会としては、自動運転は事故や環境負荷が減るので期待しているものの、事故時は従来と異なる責任が生じるので検討したとしている。まず、自動運転レベルを1から4の4段階で定義した。これはほぼSAEのレベルと同様である。

 すると、レベル2と3においては、現行法に基づく責任の考え方を適用できるとした。すなわち、対人事故は自賠法による運行供用者責任、対物事故は民法による過失責任である。しかし、レベル4になると、従来の自動車とは別のものと考えるべきで、自動車に関する法令を抜本的に見直すことが必要とした。また、その他の課題として、事故データ記録の必要性、システム欠陥時の製造物責任との関連、サイバー攻撃による事故の可能性、救済すべき被害者の範囲、過失割合の複雑化を挙げている。

 私見としては、損保協会はレベル3も現行法の適用が可能としていることが珍しい。システムが事故を起こしたときは製造物責任との関連で考えているからだろうか。

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