2020年7月12日 (日)

日本のITS(12)

 総務省の今年度の課題は、V2X用通信帯域の検討である。V2Xの通信帯域として700MHz帯域を確保しているものの、国際的には5.8GHz帯域が主流だからである。

 5.8GHzは日本では従来DSRCとして、ETC2.0で実績を上げた通信帯域である。V2Xにも5.8GHzを使用すると、ETC2.0との共存可能性が問題となる。

 ETCもV2Xも必要時に利用できなければならないため、タイミングを制御することは難しい。また、使用場所の隔離もできないため、ETCとV2Xは両立できないことになる。そこで、既存のETCの帯域はそのままで、V2Xの使用帯域を5.9GHzに変えてETCとの両立を検討することになった。5.9GHzに上げても、5GHz帯域のWiFiや放送事業用無線局FPU(Field Pickup Unit)との干渉を検討しなくてはならない。

 自動運転だけに限らず、移動体通信の需要は今後ますます上昇する。需給逼迫が起きないような技術検討が期待されている。

 

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2020年7月11日 (土)

日本のITS(11)

 ITS関連5省庁(国土交通省を道路局と自動車局を2省庁と数えて)の施策を紹介したので、今年度の重点施策も紹介しよう。警察庁から。

 今年度は、UTMSの推進として、歩行者等支援情報通信装置PICSの整備に重点を置いている。PICSとしてスマートフォンを利用するものを高度化PICSと称し、今年は全国でこれが普及するよう働きかけるとしている。

 高度化PICSとは、普及を目指しているため特別な装置を歩行者に持たすのではなく、歩行者が利用しているスマートフォンに歩行者用信号情報を送信するものである。送信方法はBluetoothを利用し、スマートフォン側から青信号延長のリクエスト信号も送ることができるようにして歩行者用信号機の青信号を延長できるようにしている。また、スマートフォン用のナビゲーションアプリと連携させ、地図上のどこの交差点の信号機かを表示させることも検討している。地図と連携しない場合は、音声メッセージで交差点名とどの方向の信号が青か赤かを伝える。

 このシステムは、信号機にBluetooth通信装置を追加設定することにより実現できる。既存の信号機に付加して使えることを目指しているため、普及が望まれる。

 

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2020年7月10日 (金)

日本のITS(10)

 国土交通省自動車局の最大の施策は、1991年度から始めている先進安全自動車ASV(Advanced Safety Vehicle)である。ASVでは、5年を一区切りとして進めて来ており、2020年度は第6期の最終年にあたる。

 ASVは自動車を高度なエレクトロニクスで格段に安全にすることが目的で、世界をリードする形で展開されて来た。ぶつからない車等の運転支援システムが日本で盛んなのは、ASVがあるからである。

 ASVでは技術開発だけではなく、基準や法整備、そして普及策も検討している。自動運転も十分視野に入っており、インフラを含めた広いITSにおいて、自動車の受け皿がASVという位置付けを担う。第6期で研究開発した新システムの一つに、運転中ドライバの体調が急変し運転続行不可能になったとき、路肩に自動で安全に停止する「路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システム」というものがある。更に、速度制限区間で強制的に自動車の最高速度を制限する「自動速度制御装置」も検討している。このように、自動車メーカーと一体となって研究開発から実用化のための基準を開発し、安全性の高まった自動車を普及させる努力を続けているのである。

 公共交通機関に対しては、外国人旅行者が快適に移動できる交通サービスを検討している。それは、円滑に移動できることを目的としたバスICカードシステムと、バスの位置がわかるバスロケーションである。

 

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2020年7月 9日 (木)

日本のITS(9)

 国土交通省道路局は高速道路でのITS施策に重点を置いている。一般道が警察庁、高速道路が道路局という分担があるからである。

 従来から路車協調サービスとして、都市間高速道路では10~15km、都市内高速道路では4km毎にDSRCを使ったITSスポットサービスを展開していた。DSRCとは、5.8GHz帯域の電波を使ってスポット的に情報を送るための通信である。

 ITSスポットサービスで提供する情報は、ダイナミックルートガイダンス、安全運転支援、ETCの3種類である。ITSスポットサービスの情報は、対応しているカーナビゲーションの画面に表示されることを基本とし、これら3種類の情報とリンクする。ダイナミックルートガイダンスでは、高速道路のリアルタイム渋滞情報を取り込むことにより、経路案内のルートを変更するものである。安全運転支援は、ナビゲーション画面に前方の落下物や故障車、渋滞情報等を表示する。そして、ETCとは、ナビゲーション自体がETCとして作動するということである。2018年4月時点で、全国の高速道路の1700箇所に設定されている。

 2014年からは、ITSスポットサービスという名称から、ETC2.0サービスに名称変更した。これは、従来対応したカーナビゲーションが受信機だったものが、ETC2.0に対応したETCでサービスが受けられるようになったからである。

 

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2020年7月 8日 (水)

日本のITS(8)

 経済産業省の役目は他の省庁が実際のシステムを導入することとは異なり、ITSを通じて経済を活性化させることである。そのため、自動走行ビジネス検討会という産官学が共同で課題を検討できる場造りと、ITSの国際標準化が主務となる。

 国際標準化では、経済産業省はISO活動をサポートしており、ITSの標準化となるISO/TC204や自動車の標準化ISO/TC22がITS関連となる。なおTCとはTechnical Committeeの略で、この下に多くのWG(Working Group)が活動している。

 自動走行ビジネス検討会では、これまで自動走行の将来像を明確化し、各メーカーが協調すべき領域を特定して、国際的ルールづくりの体制整備や産学連携の取組方針をつくってきた。そして、これら自動走行の実現に向けた取組方針をアップデートしながら、安全性の評価方法を検討する安全性評価環境づくり検討WG、2020年以降の制度やインフラを検討する将来課題検討WG、ソフトウエア人材の育成に取り組む人材戦略WGを設置してきた。最近の取組は、2025年までに普及させたいサービスの10領域について、実現したい姿と取組方針を明確化したロードマップを策定している。

 10領域とは、地図、通信インフラ、認識判断技術、人間工学、セーフティ、サイバーセキュリティ、ソフトウエア人材、社会受容性、安全性評価である。

 

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2020年7月 7日 (火)

日本のITS(7)

 次は総務省。総務省は電波を管轄しており、ITSで特に重要な通信システムでの周波通割当や技術基準の策定という重要な役割を担っている。

 これまで、VICS(Vehicle Information Communication Systems)やETC(Electric Toll Collection)における電波割当を行った。最近ではV2Xに用いる通信システムITS Connectでの700MHz帯域の電波割当に力を入れている。

 700MHz帯域は、従来アナログテレビの電波帯域に使われていた。これがテレビの地デジ化に伴って、空周波数帯となったため、携帯電話とITS Connectへの利用が始まったのである。携帯電話は需要がひっ迫しており、ITSがアピールしないと割当分がなくなることもあって、積極的にITS利用をアピールし、トヨタのITS Connectを利用した路車通信を利用した安全パッケージ実用化に繋げた。ITS Connectにより、車々間通信・路車間通信による交差点での出会い頭衝突事故防止、右左折衝突事故防止、追突事故防止、緊急車両情報提供が商品化されたのである。

 今後は、5Gへの取組に重点を置いている。車間距離10mで隊列走行する自動運転トラック群の実証実験を、5G通信による車々間通信を利用して新東名で行っている。

 

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2020年7月 6日 (月)

日本のITS(6)

 関係各省庁の活動状況を紹介しよう。まずは警察庁から。

 警察庁の役割は道路交通法の所管という立場から、自動運転時代の法制度の検討を行っている。また、道路交通の管理者として、信号機を中心とするインフラ面の新システムを検討している。

 法制度の検討では、2019年9月、自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準を公表している。これにより、公道での実証実験が明確になり、関係者は大いに助かっている。新インフラとしては新交通管理システムUTMS(Universal Traffic Management Systems)の研究開発を推進している。UTMSは6つのシステム(交通情報提供システムAMIS(Advanced Mobile Information Systtems)、現場急行支援システムFAST(FAST emergency preemption systems)、公共車両優先システムPTPS(Public Transportation Priority Systems)、信号情報活用運転支援システムTSPS(Traffic Signal Prediction Systems)、歩行者等支援情報通信システムPICS(Pedestrian Information and Comminication Systems)、安全運転支援システムDSSS(Driving Safety Support Systems))が各都道府県で運用中である。

 更に、自動運転のためのインフラ設備として、信号機情報を無線化して情報提供の検討を進めている。この情報提供は、クラウドを使ったシステムも検討されている。

 

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2020年7月 5日 (日)

日本のITS(5)

 内閣官房と内閣府の施策を受け、関係省庁の警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省道路局、国土交通省自動車局が自省庁管轄の施策を展開している。道路局と自動車局は同じ国土交通省だが、歴史的な経緯と管轄する領域が道路インフラか自動車かということで、ほぼ別省庁と分類した方がわかり易い。

 これら関係省庁の管轄は、警察庁が安全取り締まりと信号、総務省が通信、経済産業省がビジネスと標準化、道路局がインフラ、自動車局が自動車となる。

 内閣官房と内閣府以下、各省庁が縦割りとなっているため、管轄領域の施策は独立色が強くなってしまう。これら各省庁の動きを横断的に結びつけるものがITSともいえる。ユーザは警察庁の取り締まりと信号下で、総務省の通信を使って、経済産業省の標準化によって製造されたシステムを利用し、道路局のインフラの中で、自動車局の自動車を運転しているのである。

 旧建設省が道路局となって、旧運輸省の道路局と一体となった国土交通省になったので、密接に関連する両領域は一体化することが期待された。しかし、今もなお両領域の独立色は強い。

 

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2020年7月 4日 (土)

日本のITS(4)

 内閣府が内閣官房が立案した技術施策を補助する最大のものが、総合科学技術・イノベーション会議である。特に自動運転に関係するものは、科学技術会議が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)である。

 SIPは日本再興戦略として、いくつかの分野の重要プログラムを推進している。その中の一つが自動運転なのである。

 2014年から自動走行システムの早期実用化と普及を目指して研究開発が開始され、5年間を一区切りとするため、現在では第2期が始まっている。第1期の成果としては、自動運転のための自動車専用道路約3万キロに及ぶ高精度3次元地図の整備があげられる。2019年から始まった第2期では、自動運転の対象を高速道路から一般道に拡張し、自動運転技術を活用した物流・移動サービスの早期事業化を謳っている。高速道路から一般道への拡張としては東京臨海部実証実験が行われ、物流・移動サービスの拡張として過疎地や地方における実証実験を推進している。

 また、安全性の研究のため、各種環境天候条件下でのセンサ性能評価やセキュリティに取り組んでいる。更に、国際連携や社会への情報発信として、毎年国際会議となるSIP-adus Workshopを開催している。

 

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2020年7月 3日 (金)

日本のITS(3)

 日本の政策は内閣官房が立案し、内閣府がそれを補佐する。よって、ITS政策も内閣官房がIT基本法を立案し、内閣府が科学技術会議で補佐しているのである。

 IT基本法となる高度情報通信ネットワーク社会形成基本法に基づき、近年では官民ITS構想・ロードマップが策定されている。これの中心になるテーマは、安全運転支援・自動運転システムと交通データ利活用である。

 ロードマップの策定は、IT総合戦略本部で行われる。自動運転関連としては、2018年に「自動運転に係る制度整備大綱」がまとめられ、自動運転車の安全要件のガイドライン、道路交通法規の改正検討、事故時の責任明確化と走行記録の義務化等が織り込まれた。そして、この大綱に基づき、高速道路での自動運転と限定地域での無人自動運転サービスを実現するための課題がロードマップに織り込まれた。また、自動運転時代のMaaS(Mobility as a Service)についての検討も始まっている。

 今後は、2030年で実現するモビリティ社会に向けた課題を検討し、政府と官民の役割を検討する予定になっている。これら情報は全て内閣官房のホームページで公開されている。

 

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