2018年5月22日 (火)

EV,FCV,HV(22)

8.4.大容量バッテリーの活用
 EV,FCV,HVは,エンジンだけの車両に比べ,巨大な容量の駆動用バッテリーを持っているため,家庭にも電気を供給するという新たな活用方法がある.例えば,旧型の日産リーフのバッテリー容量は24[kWh]で,これは一般家庭2日分の電気量である.すなわち,EV等の大容量バッテリーは,停電時の家庭用バックアップ電源として活用できるのである.

 また,車両の大容量バッテリーを家庭で充電する際,夜間電力を利用すれば電力の分散利用に貢献出来る.夜間電力は昼間より安価なため,経済的でもある.

8.5.ソーラーカー(solar car)
 EVへの電源供給方法として,太陽光発電も可能である.実際に,二次電池を使用せず直接太陽光発電で走行するソーラーカーもある.


 現状の太陽光パネルは,変換効率が20%程度しかなく,1[m2]で出力200[W]となる.太陽光パネルを付けられる車両ルーフやボンネット等の面積を6[m2]とすると,得られる出力は1200[W]となる.太陽光パネルの電圧を昇圧するためのコンバータの変換効率等を考慮すれば1[kW]程度の出力となる.これから計算すると,日産リーフの容量24[kWh]のバッテリーを満タンにするには24時間もの充電時間が必要になる.当然太陽のない時間は十分に充電はできないので,1日の日照時間や晴天率等を考慮すれば,必要な充電時間は一週間程度にもなる.このため,太陽電池の変換効率の向上が実用化に向けての課題である.ただし,車両に載せた太陽光パネルの利用は難しくても,住宅用太陽光パネルの活用は可能である.

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2018年5月21日 (月)

EV,FCV,HV(21)

(4)シリーズパラレルHV(1モータ方式)
 2013年に登場した日産・スカイラインは,インテリジェントデュアルクラッチコントロールと名付けられたシリーズパラレル方式を提案した.これは,エンジンとモータの出力軸を同一直線上に並べ,エンジンとモータ間(クラッチ1),モータと駆動軸間(クラッチ2)にそれぞれクラッチを設け,2つのクラッチの状況により1モータのシリーズパラレル方式を実現するものである.

 エンジン,クラッチ1,モータ,クラッチ2,駆動軸の順に配置することにより,クラッチ1を離しクラッチ2を繋げればモータだけによるEV走行が可能となる.通常走行時はクラッチ1とクラッチ2を繋ぐと,エンジン出力が利用でき,エンジンだけの走行やモータ駆動力も合わせたパラレル状態が可能となる.減速制動時は,クラッチ1を離してクラッチ2を繋ぎ,モータによる回生を行う.

(5)PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)
 モータ駆動用バッテリの蓄電量を上げ,家庭用コンセント等の外部電源からプラグで直接そのバッテリに充電できるようにしたものがプラグインハイブリッド(PHV)である.PHV同様に,EVに適用したPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)もある.HVやEV方式は何でも良く,独立にプラグでの充電機構を持つ.PHVがプラグで充電した電力だけで走行可能な距離は,バッテリ容量により,20[km]から60[km]以上に及ぶものまである.

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2018年5月20日 (日)

EV,FCV,HV(20)

3)シリーズパラレルHV(2モータ方式)
 1997年に登場したトヨタ・プリウスは,THS(Toyota Hybrid System)と名付けられたシリーズパラレル方式を提案した.これは,エンジンを発電だけに機能させるのではなく,駆動力として使用することも出来る方式である.そのため,必要に応じてエンジン出力とモータ出力の両方を使って,シリーズ方式よりも強力な駆動力を得ることができる.また,完全にエンジンを停止させ,モータだけで走行することも可能である.

 THSは,エンジンと駆動用モータの他,発電用モータと動力分割機構から構成されている.駆動用と発電用のモータを2つ持っているため,2モータ方式とも呼ばれる.この動力分割機構で,エンジン出力を車輪の駆動力と発電モータ用の駆動力に分割する.

 車両停止状態ではエンジンを停止させ,発進は駆動モータだけで行う.すなわち,EV状態となる.発進後はエンジンを始動し,動力分割機構により発電モータ用と車輪駆動用にエンジン出力を分割する.分割比率は走行状態によって異なり,動力分割の比率は遊星歯車によって配分される.急加速時は,バッテリからの電力で駆動用モータを回転させ,エンジンの駆動力にモータの駆動力を加えるパラレル状態とする.減速制動時は,駆動用モータの回生エネルギーを充電用に使う.車両が停止すると,再びエンジンも停止させる.バッテリの消費状態によっては,充電用にエンジンを始動させる.

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2018年5月19日 (土)

EV,FCV,HV(19)

8.3.1.HVの方式
 HVはエンジン出力とモータ出力をどのように組み合わせて駆動するかにより,シリーズ(series)方式,パラレル(parallel)方式,シリーズパラレル(series parallel)方式の3種類がある.
 
(1)シリーズHV
 エンジンは発電のためだけに使用し,駆動はモータだけで行うのがシリーズ方式である.この特徴から,エンジン発電機を持ったEVと見なせる.図8.16にシリーズ方式の構成を示す.エンジンは発電に適しており,発電だけに使えば燃料消費率の良い定回転を行える.モータは低回転時にトルクが大きいので駆動に活かすことができる.このように,それぞれの用途を分けることでトータルでの燃費を良くしている.また,バッテリ容量によっては,エンジンを停止して電力だけで走行する状態も可能となる.そのため,大型バッテリを搭載可能な、大型車両で採用される傾向にある.

 充電はエンジンによるだけでなく,減速時にモータを回生ブレーキとして働かせることでも行う.エンジンはガソリンの場合もあればディーゼルの場合もあり,燃料電池をエンジンに代わるものと見なせば,FCVもシリーズ方式の範疇となる.

(2)パラレルHV
 エンジンとモータの両方を駆動力として使用するのがパラレル方式である.エンジン出力と変速機の間にリング状のモータがある.これにより,車両発進時や加速時にモータの駆動力をアシストに使い,減速時は回生ブレーキとして使う.この方式ではモータのトルクを大きく取らないため,モータ用のバッテリーも小さくでき、内部構造をコンパクトにまとめることが可能である.

 通常のエンジン用のバッテリー以外にモータ用の高圧のバッテリーを持ち,このバッテリーの充電は,エンジンとモータの両方で行う.通常は駆動用モータの減速時を回生ブレーキとし,そのときモータを発電機として利用する.

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2018年5月18日 (金)

EV,FCV,HV(18)

8.3.HV(Hybrid Vehicle)
 ハイブリッドとは,2種類以上の異なったものを組み合わせることであり,エンジンとモータを組み合わせた車両をハイブリッドカーHVと呼ぶ.モータ出力が弱くエンジンのアシスト程度のものをマイルドハイブリッド,モータ出力が強くモータだけによる走行も可能なものをストロングハイブリッドと呼んでいる.

 HVは,エンジンとモータそれぞれの長所を相補的に使う.エンジンの最大の長所は燃料供給インフラが充実し,いつでもどこでも容易に燃料が入手可能なことである.一方,モータの最大の長所は,モータに給電しないときは充電機として扱えることで,減速時に回生エネルギー が得られることである.これらによりHVはつぎのような長所がある.

・加速時はモータトルクを上乗せでき,エンジンを小型化して燃費を向上させることができる.

・減速時はモータが発電した電力をバッテリーに回生し,また発電による減速効果を上乗せして車両全体のブレーキ力を向上させることができる.

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2018年5月17日 (木)

EV,FCV,HV(17)

8.2.3.高圧水素タンク(high-pressure hydrogen tank)
 FCVの燃料となる水素は気体である.気体を効率よく大容量搭載するには圧力を高めて貯蓄する必要がある.そこで開発されたのが,高圧水素タンク(high-pressure hydrogen tank)である.現在では,700気圧タンクが実用化されている.

 高圧水素タンクは,内層に水素を封じ込めるプラスチックライナー,中層に耐圧強度を確保する炭素繊維強化プラスチック層,表層に表面を保護するガラス繊維強化プラスチック層の3層構造でできている.多くのFCVではこの高圧水素タンクを複数個搭載している.

 高圧水素はそのまま燃料としては使えないため,インジェクタによって700気圧から10気圧程度にまで減圧されてからFCスタックに供給される.

 水素を高圧水素タンクに充填するときは,水素ステーションの充填ノズルから,車両のレセプタクルを経由して車両の高圧水素タンクに水素を送る.水素は気体のため逆流が見えず,また高圧で充填するため異物が流入する危険性もたる.そのため,レセプタクルは水素ガスの逆流防止,及び異物流入防止という重要な機能を備えており,水素ステーションと充填速度を制御するための赤外線通信機を装備している.なお,水素ステーションで高圧水素ガスを高圧水素タンクに充填するわけだが,断熱圧縮のためタンク内のガス温度は上昇する.これにより,タンクの許容温度を超えてしまうことがあるため,高圧水素タンク内には温度センサが設置されている.充填の際は,この温度センサと水素ステーションの装置がつねに通信し,タンク内が許容温度以下であるようになっている.

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2018年5月16日 (水)

EV,FCV,HV(16)

8.2.2.燃料電池
 燃料電池の発電原理は,水の電気分解の逆の原理であり,水素と酸素を電気化学反応させ電気を作るものである.化学反応をまとめるとつぎのようになる.

(負極)H2 → 2H+ + 2e-
(正極)(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O
(全体)H2 + (1/2)O2 → H2O

 この反応を行うため,燃料電池は,電極となる両側のカーボンと電解質の間に触媒として作用する白金で合成された燃料極を入れた構造となっている.そして,燃料極には水素,電極には酸素が流れるようセパレータで密閉した板状のセルを基本単位とする.一つのセルが発生する電圧は約0.7[V]と低いため,必要な電圧を得るために,セルスタックというセルを積み重ねた構造とする.

 燃料電池には,その材料や方式の違いによりいくつかの方式があるものの,固体高分子膜形燃料電池PEMFC(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)方式が採用されている.PEMFC方式は,起動が早く,運転温度も80~100℃と比較的低い.触媒には高価な白金を使用するものの,室温動作であり小型軽量化が可能なため,自動車用の燃料電池となったのである.

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2018年5月15日 (火)

EV,FCV,HV(15)

8.2.1.FCV構成
 FCVの構成は,電子制御装置,ACモータ,パルス幅変調(PWM)インバータ,トランスミッション,駆動用バッテリーとなる.この構成はEVと基本的には同じである.

 FCV特有のものとしては,高圧水素タンク,FCスタック,昇圧コンバーターがある.高圧水素タンクは,燃料電池に供給する水素の貯蔵庫である.FCスタックは燃料電池本体であり,発生した電気を一旦昇圧する昇圧コンバーターと電気をモータへ送る駆動バッテリーから構成されている.原理的には,燃料電池で発生した電気で,直接DCモータを駆動することが可能であるが,ACモータを使用して効率的に使える電圧に昇圧することが一般的である.

 昇圧コンバーターはEVでも使うことがあるため,FCVだけに必要な技術は,燃料電池のFCスタックと,高圧水素タンク,および高圧水素の制御技術である.

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2018年5月14日 (月)

EV,FCV,HV(14)

8.2.FCV(Fuel Cell Vehicle)
 EVが航続距離を延ばすためには電気容量の大きい二次電池が必要となる.このため,各種二次電池の研究開発が進められているが,二次電池の代わりに燃料電池を積んで航続距離をガソリン自動車並に延ばそうと考えたものが燃料電池自動車(fuel cell vehicle:FCV)である.

 FCVは,水素と酸素の化学反応によって発電する燃料電池を使う.駆動方法はEVと同じくモータであるが,燃料として水素を使用するため,必要なインフラ(水素ステーションなど)や水素タンク等の貯蔵・制御方法がEVとは大きく異なるため,FCVとして区別することが一般的である.

 FCVの長所として,次の点が挙げられる
・走行時の排出が水蒸気のみである
・エネルギー効率が高い
・石油以外の多様な燃料が利用可能である
・騒音が少ない
・充電が不要である

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・コストが高い
・燃料供給インフラが必要である

 本節では,まずFCVの構成を説明し,続いて,FCVの特徴である燃料電池のしくみと高圧水素タンクについて説明する.

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2018年5月13日 (日)

EV,FCV,HV(13)

5)キャパシタ(capacitor)
 ここまで説明してきた電池は化学反応で電気を発生させていたが,化学反応ではなく,電荷そのものを蓄積するいわゆるコンデンサを使ったものもある.そのデバイスをキャパシタという.蓄積容量を上げると,二次電池として使える可能性があり,電気二重層コンデンサ(electric double-layer capacitor)の大容量化が研究開発されている.しかし,EV用ほどの大容量化がまだ難しく,HV用の比較的小容量のものが実用化されている.

 電気二重層キャパシタは,図8・12に示すように電極材料に活性炭が使われ,電解液と電極の界面付近に電荷が配向する電気二重層現象により電荷を蓄える.化学反応により電気を蓄える二次電池と異なり、活性炭表面におけるイオンの物理的な吸着だけでエネルギーを蓄える.必要となる電圧を得るため,複数のセルをつなぎ合わせたバンク構造で使用するが,各セルの電圧のバラツキを抑えるためのバランス回路が必要になる.

 キャパシタの長所としては次の点が挙げられる.
・内部抵抗が低く短時間で充放電が行なえる
・充放電による劣化が少ないので製品寿命が長い

 しかし,短所としては,次の点が挙げられる.
・電圧が低い
・自己放電によって時間と共に失われる電気が比較的多い
・充放電時に電圧が直線的に変化する
・価格が比較的高い

 キャパシタは,単独でEVのエネルギーを全てまかなえるほどの大容量は難しいものの,他の二次電池を補完する補助電池やHV用として実用化されている.

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