2019年4月17日 (水)

自動運転のためのセンサシステム入門(17)

 これまで、電波レーダ、LiDAR、車載カメラ、超音波センサの車載の経緯を紹介した。これら自律センサだけで自動運転ができるかというと、自律センサだけでは自動化の限界が低くインフラに設置されたセンサ情報も必要となる。

 例えば、自律センサはセンサが見える範囲しか機能しない。見通しが効かないカーブの先の障害物は検知できないのである。

 そのため、更に高度な自動運転を行うため、インフラにも異常を検知するセンサを設置し、そのセンサ情報を車両に送信する仕組みが必要になる。自律センサが見ることができない物陰の障害物だけでなく、自律センサの検知距離よりも先の情報も役に立つ。また、車両間や歩行者と位置情報が双方向で受信できる方式も重要である。交通参加者自らが自分の位置情報と車両なら制御情報も含めて発信(放送)することにより、物陰や自律センサの距離限界に影響されず、互いの位置や進行方向、速度等を知ることができる。インフラ側のセンサも用いることによって、見通しの効かない交差点からの飛び出しは予測できるようになり、カーブの先の突然の渋滞開始も予見できるようになるのである。インフラ側のセンサの充実により路車間通信(V2I)が効力を発し、車々間通信(V2V)で車両相互の衝突防止が図られ、歩車間通信(V2P)により歩行者事故がなくなると期待できる。

 相互通信はまとめてV2Xと称し、世界統一の標準化活動も進んでいる。ヨーロッパはドイツが中心となり自律センサが主体となっているものの、アメリカではV2Xの活動が活発である。

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2019年4月16日 (火)

自動運転のためのセンサシステム入門(16)

 超音波センサとは、人間の可聴域(20~20000Hz)よりも周波数が高い超音波の物体までの発射受信時間から距離を計測するセンサである。1980年代にはバックソナーと称され、バンパーに埋め込んで後退駐車時の障害物警報として実用化されていた。

 バックソナーだけでなく、前方のバンパーに埋め込んでフロントソナーと称するものも現われた。また、バンパーのコーナーに装着し、コーナーソナーと称してバンパーのコーナーを擦ることへの警報装置も一般化した。

 日本で開発された超音波センサを応用した商品は、人間が駐車するときに警報で支援するものがほとんどだった。これに対し、ドイツでは超音波センサを利用した自動駐車システムの開発が進んでいた。超音波を前後バンパーに配置し、更に車両側面にも配置して車両全周囲を超音波センサで確認できるようし、自動的に駐車できるようステアリングとアクセル、ブレーキを制御したのである。2010年頃から高級車で実用化され、縦列駐車のような複雑な操作も自動化されたのである。超音波センサで駐車可能スペースを検知するため、5m程の検知距離が必要となる。日本では超音波センサだけで自動駐車するのではなく、バックカメラと併用しての自動駐車を目指していたため、超音波の検知距離は2m程度だった。ドイツでは長距離型の超音波センサを開発し、超音波センサだけで自動駐車できるよう努めたのである。

 ドイツの自動駐車はその後も進化し、ドライバが降車後に無人で自動駐車するシステムまで出現した。自動駐車に限っては、ドイツが世界一といえる。

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2019年4月15日 (月)

自動運転のためのセンサシステム入門(15)

 ディープラーニングの登場により、車載カメラが自動運転に応用できる可能性が大幅に向上したといえる。更に、モービルアイの秘密の認識アルゴリズムも必要なくなったともいえる。

 ディープラーニングの登場以前、カメラによる物体認識はその物体の画像上の特徴を発見するアルゴリズムの研究開発が中心だった。ところが、ディープラーニングは学習さえ行えば、どんな物体でも認識できてしまうのである。

 そんな魔法の様なディープラーニングがどうして生まれたのだろうか。ディープラーニングの基礎はニューラルネットワークである。ニューラルネットワークとは、生物の脳の神経細胞であるニューロンが、互いに結合しあって脳内でネットワークを作っている構造を模倣したものである。人工的に模倣したニューラルネットワークでは、3階層程しかうまく機能しなかった。これを1979年、NHKの研究所に勤めていた福島邦彦氏(後に大阪大学等の教授)が、脳の構造をうまく模倣した多層に及ぶネオコグニトロンというニューラルネットワークを発表し改善した。ネオコグニトロンは、学習によって視覚パターン認識能力を獲得していく画期的な方式であり、ほぼディープラーニングと同じ構造をしていた。しかし、当時はコンピュータの環境も今ほど一般的ではなく注目度も低かったのである。

 その後、ネオコグニトロンは海外で研究され、2012年、画像認識協議会で優勝して注目され始めました。ネオコグニトロンは、コンボリューションニューラルネットワークCNNConvolution Neural Network)と名前を変えられたものの、中心的な原理は福島先生が研究したネオコグニトロンそのものであります。

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2019年4月14日 (日)

自動運転のためのセンサシステム入門(14)

 一方、単眼カメラは機能を絞れば、ステレオカメラより早く実用化していた。1990年代から、車線認識センサとして登場していたのである。

 道路白線の検出は、物体検出に比べると容易であり機能も複雑でないため車載センサ化しやすい。そのため、車線逸脱警報システムや、前方走行車が自車線上を走行しているかどうかの判断に使われた。

 その他の歩行者認識や車両認識機能が実用化したのは、2000年以降になる。もともとAIの応用分野だったこともあり、多くの企業や大学で実用化が図られた。その中で最も成功しているが、イスラエルから企業したモービルアイ社である。モービルアイは二人の研究者が1999年に興したベンチャー企業で、運転支援システム用の前方監視車載カメラに向けたアルゴリズムの研究開発とチップ化に徹底し、現在の車載単眼カメラの認識チップを寡占している。モービルアイの開発したビジョン・チップは、前方走行車、歩行者、自転車、車線等の認識と距離計測機能があり、性能もすこぶる良い。これらの認識アルゴリズムは全て非公開のため、中味の詳しいことはわからないもののディープラーニングを使っていないことだけは公開されている。

 現在の車載カメラの心臓部はモービルアイの寡占状態なものの、今後はライバルが多数出現することが予想される。なぜなら、ディープラーニングが登場したからである。

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2019年4月13日 (土)

自動運転のためのセンサシステム入門(13)

 車載レーダから始まり、LiDARが実用化されても車載カメラの研究が続けられたのはなぜだろうか。それは、レーダやLiDARにない魅力がカメラにあるからである。

 レーダやLiDARの物体計測の基本は、自身が送信した物体からの電波や光の反射波を利用することである。そのため、反射波が帰って来ない物体や状況では適用できないのである。

 ところが、カメラは人間が見ているように、映像化された画像そのものが解析対象となる。つまり、画像からどの部分が対象とする物体かとか、その物体までの距離を検出する方法さえ発見発明すれば、すべての物体や状況に適応できる可能性があるということになる。実際、歩行者や自転車は電波でも光でも反射率が低いため、当時のレーダやLiDARでは検出が難しかった。また、車線を示す道路白線はレーダでは検出不可能である。これに対し、車載カメラは歩行者、自転車、車両、道路白線等、交通に重要なもの全てが検出対象である。そのため、前方走行車に絞らず、自動運転も見据えて全ての道路交通環境を認識しようとすると、カメラが必要になるのである。

 しかしながら、カメラには映像化できる環境しか使えないという避けがたい欠点がある。例えば、太陽を直視したり、真っ暗闇という状況では使用が難しい。

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2019年4月12日 (金)

自動運転のためのセンサシステム入門(12)

 車載カメラに映る画像をコンピュータで解析し、走行レーンと障害物を認識しようという研究は、1960年代アメリカのスタンフォード大学で始まった。人工知能AI(Artificial Intelligence) による画像解析である。

 日本でも1970年代、国立の機械技術研究所で車載カメラによって車線と障害物を認識するシステムが発表された。スタンフォード大学は単眼カメラで始め、機械技術研究所は2眼を用いるステレオカメラで始めたのである。

 単眼カメラ方式は、画像のパターンを解析して物体形状を認識するためAIが必要になる。これに対し、ステレオカメラ方式は、二つのカメラに映る物体の距離によるずれ(視差)を検出するため、単眼カメラに用いるAIよりは容易になる。そのため、本格的に車載カメラを運転支援システムに用いたシステムは、ステレオ方式を用いたものの方が実用化が早かったのである。世界に先駆けてステレオ方式の車載カメラを実用化したのは、1999年スバルである。スバルレガシィランカスターに搭載され、ランカスターADA(Active Driving Assist)という名称で発表された。ランカスターADAのステレオカメラは、道路の車線位置と先行車までの車間距離を検出し、車線逸脱警報、車間距離警報、ACC機能を実現したのである。

 ランカスターADAはその後アイサイトと名称を変え、追突防止機能を装備して現在に至る。世界に先駆けて車載カメラによる運転支援システムを実用化したことは、日本人としてとても嬉しく思う。

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2019年4月11日 (木)

自動運転のためのセンサシステム入門(11)

 2009年、Googleは自動運転の一般道での公道実験を開始した。スタンフォード大学のアーバン・チャレンジチームが引き抜かれ、方式も何もかもそのまま継続したのである。

 この方式は、ベロダイン社製のHDL64EなるスキャニングLiDARを車両天井に搭載し、事前走行して得た環境のポイントクラウドデータに対してNDTでスキャンマッチングしてSLAMを行うことが基本方式である。アーバン・チャレンジと違っていたのは、使用した車両くらいのものである。

 HDL64Eは2007年のアーバン・チャレンジのために開発されたLiDARである。当時、環境が複雑で地図のない一般道を、車両を自動で走行させるためには精度の良いポイントクラウドデータが必要なことがわかっていた。そのため、車両天井から縦方向に送射する64本のレーザビームを受光素子毎360°回転させ、自車周囲360°の環境の3D情報たるポイントクラウドデータを得るのがHDL64Eの使命だった。このLiDARがスキャンするレートは5~15Hzで、検知最大距離は100mである。つまり、1秒間に最大15回、自車周辺360°の100m以内のポイントクラウドデータが得られるのである。

 Googleシステムは、車両天井中央に配置されるLiDARがメインセンサーである。この方式で自動運転がやりやすいのはわかったものの、普段使用する量産車で天井中央に飛び出したLiDARが市民権を得られるかどうかは意見の分かれるとこだろう。

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2019年4月10日 (水)

自動運転のためのセンサシステム入門(10)

 ACC用センサとしては抜群の相性を示したミリ波レーダは、自動運転用センサとして使おうとすると大きな欠点がある。それは空間解像度が低く、追従走行以外には使いづらいということである。

 相対速度が容易にわかるため、高速道路では前方走行車とそれ以外からの反射物を分離することは問題なかった。ところが、空間解像度が低く物体形状を見ているわけではないので、停止車両とガードレールの区別は付かないのである。

 そのため、前方停止車に対する自動ブレーキ制御、いわゆる「ぶつからない車」への適用が難しいという問題があった。また、一般道路では交通環境が複雑になり、ACCとしての使用も難しくなり、高速道路以外で使うためには画像処理とのフュージョン等が必要になったのである。この頃から、Googleが自動運転の一般道路での公道実験を始め、自動運転の可能性を示し始めていた。Googleが使ったセンサはミリ波レーダではなく、スキャニングLiDARだった。Googleシステムは、2007年のアメリカ国防高等研究計画局DARPAが行ったアーバン・チャレンジに優勝したスタンフォード大学チームの方式をそのまま適用したものである。

 Googleシステムを使うと、ミリ波レーダでできなかった一般道路の自動運転が一気に可能になった。以降、この方式が現在までのデファクト方式となっている。

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2019年4月 9日 (火)

自動運転のためのセンサシステム入門(9)

 ドイツから始まったミリ波レーダの流れは日本にも波及し、日本のスキャニングLiDARもミリ波レーダに置き換わって行った。こうして2010年頃には、日本市場から車載LiDARは消えて行ったのである。

 LiDARからミリ波レーダに変わった理由は、性能差だけではなく適用システムに依存することころも大きかった。当時の最大の適用システムは、高速道路で前方車に追従走行するACCだったのである。

 ミリ波レーダが採用した物体検出に使う信号処理はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式だった。FMCW方式、すなわち周波数変調連続波は、周波数を変調した連続波を送信し、送信波と反射波のビート周波数の差から距離を求める方式である。この方式の特徴は、距離だけでなく相対速度も同時に計測できることである。LiDARのTOF方式で相対速度を計測する場合、一回の計測では距離しか求めることができない。そこで、2回計測してそれらの距離差から相対速度を求めることになる。つまり、相対速度の計測が1回の計測分遅れることになる。ACCでは前方走行車の相対速度計測が重要な制御要因になるため、ACCへの適用はミリ波レーダが圧倒的に有利だったのである。

 ドイツのアウトバーンでACCを利用するとき、使用速度域の関係から車間計測距離が長く、相対速度を速く、そしてある程度の霧や霞でも使えることが重要である。そのため、当時、ACCへの適用はミリ派レーダがベストマッチといえた。

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2019年4月 8日 (月)

自動運転のためのセンサシステム入門(8)

 ファンビーム方式のLiDARの登場により、日本における高速道路でのACC用センサとしては、ほぼ問題はなくなっていた。ただし、それは晴天時に限ったことだった。

 当時、LiDARを使ったACCでは、雨天時に動作させない仕様が多かった。具体的には、ワイパースイッチがオン状態では、ACCが作動しないようになっていたのである。

 ACCが雨天時に作動させないのは、レーザ光は雨による減衰があるので、雨天時は計測精度が落ちるためと思われていた。実際は、雨による減衰はあるものの、車間距離計測の精度が極端に落ちるほどではなかった。問題は、LiDARを室外に設置しているため、前述のように投光レンズ窓の前に付着した雨粒により本来の光路が歪み、更に受光レンズ窓に付着した雨粒により光路が歪むため、対象物体の位置情報が大きくずれてしまったのである。更に、前方車が跳ね上げる路面水のスプラッシュ自体を検出し、車間距離を短く計測するという問題もあった。そのため、自動車業界ではLiDARは雨雪に弱いというレッテルが貼られた。

 ドイツではボッシュがミリ波レーダを登場させ、ACC用センサは固定ビームLiDARからミリ波レーダに置き換わった。ミリ波レーダはLiDARよりも車両検出距離が長く、雨に強かったのである。

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