2020年10月26日 (月)

自動運転の課題対策(46)

 車間距離警報システムは、車両制御がなくドライバへの情報提供のみのシステムなため、ドライビングシミュレータでの評価項目はHMIに関わるものが中心となる。警報タイミングの妥当性評価とは、システムが警報を出すときの遅れや、ドライバの反応時間も評価する警報システムとしての基本となるものである。

 警報手段の妥当性評価とは、警報を音でやるのか表示でやるのか、あるいはハンドルを振動させるハプティックでやるのかということと、それぞれの手段の内容を評価する。例えば、音で警報するなら、音色、音量、出し方等を評価し、4KHzの音を80dbの2Hzの断続音に決めるという具合である。

 車間距離警報システムが前方走行車両を検出する外界センサは、LiDAR、電波レーダー、カメラ等種々のものがある。何れのシステムも100%正しく検出することは難しい。センサの特性として、過検出(第一種過誤)と未検出(第二種過誤)が付き物のため、それぞれがドライバに許容できるか評価する必要がある。センサの種類によって、開発者はどのような状況で過検出や未検出が出やすいかを把握しているため、ドライビングシミュレータで誤検出の状況を再現可能であるため、ドライビングシミュレータでの評価が可能となる。

 また、走行シーンによって、過検出や未検出と分類できないような誤警報が発生することがある。代表的なものが、曲率が小さいカーブ路を走行するとき、センサの検知範囲にガードレールが入りそれを先行車両と誤認識する場合である。これら誤警報がどの程度ドライバに許容できるかもドライビングシミュレータで評価可能である。

 

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2020年10月25日 (日)

自動運転の課題対策(45)

 さて、ここでドライビングシミュレータで評価可能な運転支援システムと、評価可能な機能を解説しておこう。運転支援システムは自動運転のレベル1の最下層で最も自動化率が低いものの、レベル2以上の自動運転より遥かに多くの仕様であふれている。

 まずは、車間距離警報システムから。運転支援システムの中では最も古いシステムである。

 このシステムの基本機能は、同一車線を走行中の前方走行車両との車間距離を計測し、TTCがあるしきい値以下になるとドライバに警報を発することである。ドライビングシミュレータが活用できる評価項目としては、以下の項目がある。
1)警報タイミングの妥当性
2)警報手段の妥当性
3)過検出率の妥当性
4)未検出率の妥当性
5)カーブ路での商品性評価(カーブ時はガードレールを検出して誤警報を出すことがよくあったため)

 過検出というのは、前方走行車以外のものも検出することで、第一種過誤にことである。また、未検出というのは、前方走行車を検出しないことで、第二種過誤のことである。

 

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2020年10月24日 (土)

自動運転の課題対策(44)

 テイクオーバーには数々の課題があることがわかったと思う。自動運転から手動運転の切替は、容易に仕様を決めて簡単に済ますことはできないのである。

 逆に、手動運転から自動運転への切替はどうだろうか。こちらは運転支援システムで経験済みのことで、特に問題はない。

 ACCならセットスイッチをオンにするだけでよく、ドライバは安心してペダルから足を離せばよい。自動運転への切替も同様で、ドライバが任意のタイミングで自動運転がオンになるスイッチを入れればよいだろう。もし、自動運転になれば、何か特別なHMIが必要ではないかと心配になれば、テイクオーバーを実験したときのようにドライビングシミュレータで試してみればよい。運転支援システムや自動運転では、ドライバが運転操作を自動車に委ねるため、ドライビングシミュレータの活用度が大いに上がるのである。ドライバが手動で運転するときは、ハンドル操作に対する車両の挙動や、逆に車両挙動がハンドルを通してドライバに与えるフィーリング等が厳格に求められるため、ドライビングシミュレータはより運転感覚に訴求するGの発生の高精度なものが必要になる。しかし、運転支援システムや自動運転の場合は、ドライバがハンドルを通して車両に求める感覚がシビアなものでないため、ドライビングシミュレータは走行環境を表現するグラフィックスに注意しれば、手動運転時ほどGの発生は高精度なものでなくてもよい。したがって、低価格なドライビングシミュレータでも十分活用できるのである。

 

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2020年10月23日 (金)

自動運転の課題対策(43)

 一方、テイクオーバーをサポートできていない車両側の課題とは、テイクオーバー要請後にいきなり手動運転に制御を移してしまうことである。つまり、これは走行中にいきなりドライバに運転制御を移動させても、ドライバは運転動作の準備ができていないため問題が生じるということである。

 計画的なテイクオーバーでは、直線路でのみテイクオーバー要請が発せられると仮定した。これは、直線路でないとドライバが対応できないだろうということから考えたのである。

 前述のように、直線路でテイクオーバーを完了後すぐに車線変更したときと、テイクオーバー完了後しばらくそのまま同一車線で走行してから車線変更した方が、ほとんどのドライバでハンドル操作が滑らかだった。これは、ドライバの手動運転には、慣熟走行が必要なことを示していると考えられる。また、カーブ走行時にテイクオーバーさせると、ハンドル操作が乱れるという他研究もある。

 以上のことから、テイクオーバー時に車両制御をやめるのではなく、レーンキーピング等のレベル1の車両制御は継続しておいた方がよいのではないだろうか。ただし、障害物回避のため素早いハンドル操作が必要なときに、レーンキーピングが働いていて問題がないかどうかは検証が必要である。

 

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2020年10月22日 (木)

自動運転の課題対策(42)

 当研究室では、ドライバの覚醒度低下問題について、覚醒度が低下してから警報するという立場でなく、覚醒度が下がらないようにするにはどうすればよいかという立場で研究を続けている。自動運転は運転するという重いタスクをドライバから解放しているため、覚醒度が下がらないように新たなタスクを課す場合も、極力ドライバへの負荷が少ないものを選んでいる。

 ドライバへの負荷を無視すれば、覚醒度が下がらないタスクはいくつもある。積極的な会話や歌唱をしていれば覚醒度は下がらないものの、ドライバへは負荷がかかる。

 当研究室で試した覚醒度を下げないタスクは、ハンドルを把持、走行地点に応じた情報提供、覚醒度が高い状態の呼吸数に応じたLEDの点滅、サッカード刺激を誘発するLEDの点滅等である。この中で顕著に効果のあったものは、ハンドル把持とサッカード誘発だった。ハンドルを把持していると、これまでの運転習慣から覚醒度が下がらないものと思われる。サッカード誘発は、人間の生体特性から効果があるものと思われるが、自発的に実施できるかどうかという課題がある。

 ハンドル把持が覚醒度の低下防止に有効というのは、自動運転レベル1の延長にあって、かつコストがかからない方法である。自動運転レベルが1から2や3に進化しても、ドライバに運転姿勢を維持させてハンドルを把持したままにさせるのが、テイクオーバーにとって最も有効な手段といえる。

 

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2020年10月21日 (水)

自動運転の課題対策(41)

 以上の実験で、走行中にテイクオーバーを行うと問題が生じる場合があることがわかった。この問題は、ドライバ側に課題があることと、車両側に課題があることがわかる。

 ドライバ側の課題は、テイクオーバー要請が発せられたとき、ドライバが即座にテイクオーバーが可能な状態にあるかどうかということである。そして、車両側の課題とは、テイクオーバーをサポートできていないということである。

 ドライバがテイクオーバー可能かどうかというのは、テイクオーバー要請が出たとき即座に前方監視ができて状況認識が行え、スムーズに運転操作に移行できるかどうかということである。つまり、ドライバには十分な覚醒度があるということである。そのため、テイクオーバー要請時、あるいは要請前のドライバの覚醒度を判定するため、ドライバモニタの必要性が議論されるのである。ドライバモニタを設置し、自動運転時は常時ドライバを監視し、覚醒度の低下が検出されれば覚醒度を戻すように警報を出したり刺激を与えればよいだろうか。

 ドライバモニタが正確にドライバの覚醒度を監視できればよいが、もし、誤って覚醒度が低下していないのに警報を出すとどうなるだろうか。重大なミスではないものの、快適な自動運転を楽しんでいるドライバには、その警報は不快なものに感じらえるのではないだろうか。

 

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2020年10月20日 (火)

自動運転の課題対策(40)

 以上の実験では、ドライバは障害物回避時、全員が最終的にハンドル操作で障害物を回避していた。これは、運転経験が浅いドライバが多かったからかも知れない。

 そこで、運転経験が20年以上のドライバ32名に、これらのドライビングシミュレータ実験に協力してもらった。TTC7秒で、サブタスクは行わず、自動運転中どうするかはドライバに任せた。

 32名中、62%にあたる21名は、テイクオーバー要請に気付くと,まずブレーキで減速しその後再び加速しながらハンドル操作で車線変更して障害物を回避した。19%の6名は,ブレーキ操作なしで速度を維持しながらハンドル操作で回避した。16%にあたる5名は、ブレーキで減速し障害物の手前で完全に停止した。そして、ブレーキで減速しながらハンドル操作で障害物を回避した後、停止した者が1名(3%)という結果になった。よって、81%にあたる27名がハンドル操作で障害物を回避したことになる。直進のままブレーキ操作で停止した者は16%のため、少数派といえる。

 運転経験を増すと、ハンドル操作せず停止する者も増える傾向は確認できた。しかし、それは少数派であって、走行中にテイクオーバーすると、走行を維持しながら状況に対処しようとする者が多数派といえるのではないだろうか。

 

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2020年10月19日 (月)

自動運転の課題対策(39)

 次に、混在交通でテイクオーバーが成立するかどうか、先の実験と同様にドライビングシミュレータ上で実施してみた。TTCは7秒で、テイクオーバー要請が呈示されてから、斜め後方から追越車両が接近するというシナリオである。

 実験毎に追越車両がいたりいなかったりし、いたとしても出現するタイミングを変化させ、ドライバが実験シナリオを学習することがないように工夫した。実験協力者は先の実験と同じ14名である。

 14名中13名は、混在交通環境でも各種タスク下で問題なくテイクオーバーが成立した。ところが、数回行った実験の中で一回だけ1名のドライバが接触事故を起こしたケースが発生した。それは、斜め後方の追越車両の発見が遅れ回避操作ができず、減速も不十分だったため障害物に接触するという事故だった。トータルで100回程の実験で1回しか起こらなかったものの、テイクオーバーが成立しないケースがあることを示すには十分である。つまり、TTC7秒という余裕がある状況でも、テイクオーバーがいつでも成立するとはいえないのである。

 なお。この実験では後続車の確認方法を、通常のドアミラーで行う場合と、メーターの両側に左右のドアミラーの代わりとなる液晶表示のモニタを設定した場合の比較も行った。すると、液晶表示モニタの場合は、ドアミラーのように視線を移動しなくても視界に入るため、斜め後方の追越車両の発見遅れは発生せず、全試行回数でテイクオーバーが成立していた。

 

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2020年10月18日 (日)

自動運転の課題対策(38)

 TTC3.6秒でもテイクオーバーが成立していたため、テイクオーバー要請は障害物の3.6秒前までに出せばよいかというと、そうではなさそうだ。なぜなら、ドライバはTTCに余裕がないと不安を覚えるからである。

 TTC7秒では、ドライバは全員とも障害物を回避するためにレーンチェンジするとき右のドアミラーを目視して、斜め後方に車両がいないことを意識的に確認していた。ところが、TTC5秒になると、全員とっさにレーンチェンジしたため、ドアミラーで後続車の確認ができなかったと言っていた。

 ところが、実験のときに録画した各ドライバの顔表情を見てみると、レーンチェンジするとき全員とも視線が右のドアミラーに向かっていたことがわかったのである。つまり、ドライバはレーンチェンジのとき無意識にドアミラーを見ており、不安体験から自分の動作を覚えていなかったといえる。物理的に障害物を回避できるTTCだからといって、ドライバが不安を覚える操作を強いるのは問題があるといえる。したがって、TTCは余裕がある7秒以上を確保した方がよいと思われる。

 ただし、この実験は、自車両がコースを単独で走行する特別な状況だった。通常の他車両も混在走行している状況ならどうなるだろうか。

 

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2020年10月17日 (土)

自動運転の課題対策(37)

 TTC7秒と5秒の場合の、障害物を回避するためのハンドル操作を見てみると、滑らかさが異なっていた。すなわち、TTC7秒は滑らかにハンドルを操作していたが、TTC5秒では急峻にハンドル操作をしていた。

 これは、TTC7秒では障害物までの距離に余裕があるため、ドライバが冷静に対応したためと思われる。一方、TTTC5秒のときは、障害物までの距離に余裕がなく、ドライバは慌ててハンドルを操作したためと思われる。

 14名のハンドル操作の開始時点の分布を調べると、TTC7秒の方がTTC5秒よりばらついていた。これは、TTC7秒では余裕があるため、回避操作を自分の好みのタイミングで行っていたものと考えられる。ところが、TTC5秒になると余裕がないため、即座に回避操作を開始するため、分布はばらつかなかったのだろう。そして、14名全員について、TTC7秒と5秒のハンドル操作の上記違いは共通していた。

 実験協力者の実験後の感想としては、やはりTTC5秒は余裕がなく焦ったというものが多かった。しかし、その後TTC3.6秒での実験を行ったところ、全員が障害物を回避したため、TTCの限界値は3.6秒以下といえる。

 

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